整備士と車の販売担当を兼任しているとよくあるのが、「なんか安くておすすめな軽自動車ない?」みたいなお問い合わせです。
個人的な好みも含まれますが、とにかくコスパがいい軽自動車といえば、僕ならダイハツのエッセを挙げます。
「安くていい軽自動車に興味があるけどエッセはちょっと違うかなぁ」
そう思われた方にも最後まで読んでいただきたい理由があります。
それは、なぜ整備士の僕がおススメだというのか、販売をしていてエッセがお得だと思ったのか。
その理由を知っていただければお得な軽自動車の探し方のヒントになると思います。
安い中古の軽自動車はハズレが多い?
今回のテーマは安い軽自動車を買うならどんな車種がいいの?という問い合わせに対しての僕なりの回答として「エッセとかオススメですよ。」という話です。
ではどうしてエッセがオススメなのか、その理由をお話していくことで、中古の軽自動車のなかでもコスパのいい車を見つけるコツがわかってきます。
まずその前に安い軽自動車の中古車を選ぶ難しさについてお話をしていきます。
なにかを我慢しなければ安くはならない
そもそも軽自動車は税金などの維持費が安く、車検やメンテナンスも安くすることができるため、かなり年式が古くても需要があります。
つまり欲しがる人が多いわけで、需要と供給のバランスから考えても車両本体の価格があまりにも安い軽自動車はなにかしらの「訳あり」な物件が多いです。
たとえば、走行距離が多い過走行車だったり、誰もが敬遠するような奇抜なボディーカラーや不人気なデザインなどなど。
比較的にデザインもよくて使い勝手のいい軽自動車だと、それなりに人気があるので、走行距離がかなり多いものや外装が傷だらけとか内装が汚いなどの妥協点を求めらます。
走行距離が多い中古車を選んでしまうと故障のリスクが高く、購入して一年も経たないのに高額な修理が発生する可能性もあります。
結局のところ、ある程度の予算を用意しておかないと、かえって高くつくような車を買ってしまうことが多いのも格安軽自動車でよくある失敗例です。
安いけど壊れにくい軽自動車のおすすめは?
とにかく故障が少なくて長く乗れる軽自動車を中古で探すとなると、なにかを諦める必要があります。
今回は安い軽自動車を選ぶということにフォーカスしたお話なので、壊れにくくて維持費がかからないことに重きをおいた車選びの判断基準が優先されます。
そこで軽自動車としての信頼性とは関係のないような、「便利装備」や「エアロパーツ」へのこだわりを外してしまえば、質素だけどコスパのいい車を見つけることができます。
そうなると、車のグレードが低いモデルを選ぶのか、そもそも車体も小さくて他の車のプラットフォームを流用したような廉価版の車種を選ぶことになります。
新車での本体価格が安いモデルを選ぼう
たとえばスズキなら「アルト」、ダイハツなら「ミラ」などの低いグレードのモデルがこれにあたります。
そもそも新車のときの車両本体価格が安いモデルなら、中古車としてもさらに安い本体価格になっっているからです。
とはいえ、アルトのバンとかミラのバンみたいな貨物ベースの車種はあまりにもシートアレンジが質素で乗り心地が悪かったりするので、乗っていて疲れやすくなってしまいます。
できれば乗用ナンバーの軽自動車のほうが最低限の乗り心地は確保できます。
ここまでのお話をまとめると、安くて故障が少ない軽自動車を選ぶには
・新車時の車両本体価格が低い車を選ぶ
・グレードが低いモデルを選ぶ
この条件を満たすような軽自動車なら、走行距離が少ないものでもかなり安く購入することができます。
新しい技術は選ばない
故障が少ない車の特徴の一つとして、長年作り続けられたエンジンやミッションを使って安いコストながら、熟成されているメカニズムを使っていることです。
たとえば、軽自動車のオートマチックなら、新しいCVTよりも、古いタイプのATのほうが故障は少なく、燃費性能は劣るものトラブルが少ないです。
ダイハツの軽自動車でも、CVTを初めて搭載することになったL375のタントなどは、CVTからの異音や振動がひどく耐久性にかなり問題がありました。
とくにこの当時のダイハツのCVTは自社開発ということもあり、完成度があまり高くありませんでした。
CVTの内部からの異音が発生し保証期間が切れている場合はユーザーが自費で高額修理をすることになっていました。
※CVTとは無段階変速ができる比較的新しいタイプのオートマチック
※ATとはギアの変速を自動でする従来のオートマチック
「古いけど強い」だからこそお得
それに対してATの場合は、軽自動車でも4速ATになっていて故障がかなり少なく安心して長く乗ることができます。
それまでに他のモデルにも使われ続け、リコールや年次改良を繰り返してきたことで完成度が高められてきました。
軽自動車にとって4速ATは、ATの多段化の最終形態であり、「コスト」「強度」「燃費性能」そして耐久性もある、非常にコストパフォーマンスに優れたものに仕上がっています。
整備士がダイハツのエッセを評価する理由
これまでのお話で、古いテクノロジーをそのまま採用して作られた軽自動車は、目新しさはないものの、車両本体価格を抑えつつ耐久性にも優れていると説明しました。
そのなかでも整備士を20年以上やってきた僕がお得だなと感じた軽自動車の一つがダイハツのエッセです。
エッセは流用の集大成のような軽自動車?
まるでダイハツのエッセのプレゼンをするためのような「前フリ」ですが、まさにエッセはローコストな手法をふんだんにつかって作られた車です。
熟成されたエンジン
エッセに搭載されているKF型エンジンは、他のダイハツ車にも使われていたことで設計は古いものの、故障する部分は定番のもので決まっていました。
お決まりのウォーターポンプからの異音、水漏れ、燃費性能は他社に遅れを取っているもののオーバーヒートにもそれなりに強いエンジンです。
逆に言えばトラブルは予測しやすく、エンジンオイルの管理さえしっかりしていれば15万キロくらいは確実に走ることができます。
20万キロ以上を走っているKFエンジンもざらにいます。
ただしオイル消費はかなり進んでいてエンジンオイルの量の確認は頻繁にする必要があります。
エンジンは車の部品のなかでも最も開発に時間とお金がかかるので、より多く作られることで開発費を回収することができ、製造コストも抑えることができます。
4速ATとしては最安値?後期型エッセは超お買い得
エッセのなかでも後期型にあたるモデルは、前期型とほとんど車両本体価格が変わらないままで3速ATから4速ATにマイナーチェンジされました。
当時、車両本体価格が80万円で4速ATの軽自動車などほかに見当たりませんでした。
たしか本体価格が1万円くらいの価格アップなのに4速化されていて、かなりお買い得になっていました。
中古車のエッセを買うなら絶対に後期型がおすすめです。
エッセよりも以前は軽自動車の中でも4速ATが搭載されるのは上位モデルがほとんどでしたが、にもかかわらず4速ATのモデルのほうが故障が多かったのです。
少し尖った若いユーザーに大人気だった「ミラターボ アバンツァート」の4速ATはよく壊れていて、同じ車のATミッションを2回交換したこともありました。
それらの故障を乗り越えてエッセには改善され尽くした4速ATが安い価格のままで採用されたのです。
エッセは車両重量が軽い!軽さは七難隠す
エッセの車両重量は700kg前半というかなり軽い部類に入り、車体の軽さのおかげでキビキビと軽快でクセのない乗り味に仕上がっています。
抜群のコーナリングの安定性
今では軽自動車の主流ともいえるハイトワゴンやスライドドアのスーパーハイトワゴンは背が高いことで車両重量もそれなりにあるので車体のフラつきも起きやすいです。
それに対してエッセに関しては車内空間はそこそこ広くなっているものの、背の低さもあって加速もよくブレーキングでの姿勢変化も安定しています。
コーナリング中のロールも少なくフットワークのいい曲がりをしてくれるので、足回りはさすがにグニャグニャなものの、スポーティな走りもできます。
また、ミラなどの足回りの流用がされていることで社外品のダウンサスも簡単に安く手に入り、スパルタンな仕様にして楽しむこともできます。
エンジンやミッションへの負担が少ない
車体が軽いとエンジンにかかる負荷は軽くなり、トランスミッションの耐久性にも好影響を与えます。
エッセは他のムーヴやタントなどよりも、エンジンもオートマチックも壊れにくく最後まで調子よく走ってくれる車でした。
デザインも悪くない
ダイハツ:エッセのデザインは、おもに女性ユーザーが使うことを前提にしていたこともあり可愛さと居住性を両立させた丸みを帯びた「ころん」としたものです。
男性が乗ってもわりと似合う
とはいえ、ボディーカラーを黒やシルバーにすれば男性が乗っていても違和感はなく、チープな内装がかえってストイックに見えるくらいです。
しかもエッセには「エッセ:カスタム」というグレードも追加され、車体下側には赤いラインが入ってまるでスポーツ仕様のような出で立ちでなかなかかっこよかったです。
僕なら5速マニュアルの黒を選びますかね。軽いこともあって乗ってて楽しそう。
ですが、近年はマニュアル車のほうが希少性が高く中古車価格が上がっています。
まとめ
今回はやたらとエッセを推したような記事になってしまいましたが、ここで知っておいていただきたかったのは、車の成り立ちはモデルによって違うという点です。
全くの専用設計や新しい機構などをふんだんに盛り込んだ車は、時としてリコールや不具合が続出してしまうことがあります。
それに対して、今回のエッセのような
・既存のプラットフォームを使ってコストを抑えている
・古いぶん、熟成されたエンジンやミッションを流用して車両価格を安く設定
・シンプルなデザインがかえって万人向けに仕上がっている
・それなりに売れた車なら中古車としても多く流通している
こんな「薄利多売」の戦略で出された車の中には内容がよくて割安な中古車が見つかることが多いです。
流行りのデザインなどではありませんが、シンプルなままで乗っていると、車に対して割り切っているポリシーが滲んでいるように感じます。
まるでミニマリストのような「こだわらないことのカッコよさ」と映るかもしれません。
また、それとは対照的にシンプルなエッセをチューンして見るのも面白く、ドレスアップ次第ではフィアットのようなオシャレさも出すことができるのもシンプルなエッセならではの魅力です。
コメント
エッセは親が乗っています
免許取ってレガシィ買うまでは結構な頻度で乗っていました
3ATなので前期型ですかね?
親はオイル管理悪いので(1年に1回、しかも継ぎ足し・・・)なので秋頃になると私がオイル交換しています笑
今で11万キロほど走っていて全然不具合にあっていないので、壊れることには電動車ばかりの時代になっているかもしれません笑
タカハシ様
エッセってじつは運転しやすいですよね。
しかも軽いからキビキビ走らせることもできて、
免許をとったすぐの初心者さんにもオススメな車だと思います。
ウォーターポンプからの異音は定番のトラブルですが、
オイル交換を定期的にやっていればかなり長く乗れますよね。
これも軽さの恩恵なのかも。