いきなり余談ですが、
「CVTオイル」と「CVTフルード」は同じものを指しています。
正しくは「CVTフルード」です。
CVTフルードは車の無段変速機(CVT)の中に入っている非常に重要な油脂ですが、
メンテナンスに関してはエンジンオイルの交換ほどはっきりとしていません。
各自動車メーカーの推奨する交換時期も違っていたり、
なかには無交換でかまわないとするメーカーやディーラーもあります。
では、なぜCVTフルードの交換に関して、
各メーカーや各ディーラーでの交換推奨時期が違うのでしょうか。
今回はCVTフルードの交換時期や交換距離などについてお話していきます。
ただし、この記事の中で推奨しているCVTフルードの交換時期や交換距離などは、
あくまでも整備士としての僕自身の経験などから、
「自分の車ならそうする」
という、一つの意見として参考にしてください。
▼CVTに関するまとめ記事はこちら▼
【CVTまとめ】フルード交換・異音・運転方法などを解説
CVTフルードの交換時期はどれくらいの期間?
CVTフルードとは(基礎知識編)
そもそもCVTとは?
CVT(Continuously Variable Transmission)とは車の変速機のひとつです。
C(コンティニュアスリー)
V(バリアブル)
T(トランスミッション)
車の変速機は、ギアとギアの組み合わせでエンジンの力を効率よくタイヤに伝えるためのものですが、そもそもCVTの場合はギアがないタイプの変速機です。
段階がなく変速をしていけるので「無段変速機」などと呼ばれています。
CVTフルードはCVT専用のオイル
CVTには「CVTフルード」と呼ばれる専用のオイルが使われていますが、油圧を伝える役割をする液体は「オイル」ではなく「フルード」と呼びます。
これまでのオートマチックには、「ATフルード」とか「ATF」と呼ばれるフルードが使用されていました。
ATフルードとCVTフルードにはそれぞれ違った性能が求められるため、基本的には共通のフルードは使うことができません。
メーカーでもATとCVT、それぞれ専用のフルードを使うよう推奨しています。
CVTフルードに求められる性能とは
現在主流なCVTは、金属製のスチールベルトと自動的に幅を変えることができる二つのプーリーと呼ばれる部品で構成されています。
CVTは無段変速機なので、このプーリーとスチールベルトのつながるポイントが変化することで自由にギア比を変えることができます。
ところが、スチールベルトとプーリーが直接触れている部分は、エンジンの力を伝える場所なので、ここが滑ってしまうとうまく動力を伝えることができません。
そのため、CVTフルードはこれまでのATフルードのように潤滑(滑らせる)するだけの機能ではうまくいきません。
ATフルードとは全く正反対の「滑らせない機能」が求めらるのがCVTフルードの大事な機能なのです。

CVTフルードは、ATフルードとは真逆の「滑らせない機能」
が求められる特殊なフルードなのです。
CVTフルードの交換時期はどれくらい?
CVTフルードの交換に関しては期間ではなく距離を目安にしています。
エンジンオイルも交換の目安を同じく距離にしていますが、CVTフルードも走っただけ汚れて劣化していくものです。
ただし、年間走行距離があまりにも少ない場合は距離よりも期間を優先してもいいかもしれません。
たとえば、年間の走行距離が5,000㎞の車だと、五年間で25,000㎞しか走っていないことになります。
この場合、距離を基準に考えると交換するにはまだ早いでのですが、交換してしまってもいいかもしれません。
なぜなら、CVTフルードもオイルやフルードの仲間ですから時間が経てば劣化していきます。
おそらく、新車から五年経過で走行が25,000㎞の状態だと、ディーラーにCVTフルードの交換を依頼しても「まだ交換しなくていいですよ」と言われるでしょう。
ここで僕が『五年たったら交換しましょう』と奨めるのは、長くその車に乗りたいと考えている方への「念のため」くらいのニュアンスです。交換目安の基本は距離です。
CVTフルードの交換距離は平均で何万㎞くらい?
CVTフルードに関しては、走行距離を基準にして交換していくことが基本です。
ただ、各メーカーによって交換距離が違ってくることがあり、余計に情報が交錯してしまうこともあるようです。
各メーカーで推奨する距離が違いますが、
僕なら一回目のCVTフルード交換は40,000㎞未満でディーラー系に依頼しますかね。
高いですけど。
関連記事▶CVTフルード交換の費用を知りたい!その効果は?頻度はどれくらい?
なぜ一回目はディーラーがいいのか?これには「メーカー特別保証」の問題が絡んできます。
以前、僕自身がディーラーとやり取りした経験ですが、特別保証期間が切れていない時期に
純正ではないCVTフルードを交換するから交換要領に関する資料を送ってほしいと依頼したことがありました。
すると、
「CVTに関しては指定したフルード以外を使用した場合はメーカー保証の対象外になる場合があります」
いと言われたことがあります。
(汚ねぇな・・・・)
内心はそう毒づいてしまいました(笑)
ようするにディーラー以外で整備した場合は正しい油脂類を使用してないかもしれないから保証もしないよって言ってるわけです。
たしかに油脂の選択間違いもあり得ますし、利益優先で汎用のATフルードをぶち込む整備工場もあるらしいので、間違いじゃないですけど。
というわけで、一回目はなにかあったらスムーズに保証してもらわないといけないのでディーラー系で交換を依頼するのがいいでしょう。
CVTフルードを無交換で走り続けるとどうなるのか
CVTフルードを交換せずに走り続けていると、燃費も少しづつ悪くなります。
また、CVTの内部からの音も大きくなってきたり、今までしなかった異音もするようになってきます。
それでも交換をせずに走り続けると、最終的にはCVTの内部が壊れたり、CVTのスチールベルトが切れたりすることもあるようです。
【外部リンク】トヨタ エスティマ ACR50W 走行不能 CVT スチールベルト切れた・・・
僕の勤務する整備工場ではCVTのベルトが切れた事例はありませんが、異音や滑りは結構ありました。
不具合が発生するタイミングとしては、100,000㎞をオーバーしたあたりからぽつぽつと起きます。
また、どんな使用条件なのかもかなり大きな要素となりますので、大人しい運転なら無交換で18万キロなんて車両もありました。
【メーカー別】CVTフルードの交換距離は?
トヨタ車のCVTフルード交換時期
トヨタの車には、大きく分けて二種類のCVTが採用されています。
基本的にはトヨタの車両はCVTフルードの交換は、
無交換、またはシビアコンディションでは100,000㎞毎となっています。
ですが、面白いことにディーラーではCVTフルードの交換を推奨してバンバン獲得しているところもあります。
メーカーとディーラーのメンテナンスに対する見解の違いやホンネと建前というのは整備士にはよくわかります。
トヨタの小型車のCVTフルード交換時期
おもにヴィッツなどの、1,500cc以下の小型車に採用されているCVTがあります。
トヨタで「Super CVT-i」と呼ばれていタイプのCVTはメーカーでは基本的に無交換となっています。
ですが、トヨタ系のディーラーでも交換を推奨しているところもあり、車検に出せば交換しませんか?と普通に言ってきます。
ヴィッツ、オーリス、ラクティス、ポルテ、スペイド、シエンタ(HV以外)、イスト、プロボックス、サクシード、カローラルミオン、カローラフィールダー、カローラアクシオ など
トヨタの中型クラス以上のCVTフルード交換時期
ヴォクシィ・ノア兄弟(エスクァイア含む)エスティマ、アルファード、ヴェルファイアのそれぞれハイブリッドモデルも無交換またはシビアコンディションは100,000㎞毎となっています。
初回はディーラーで交換を依頼し、「交換しなくていい」と断られた場合は、大手の自動車整備工場など、知識を豊富に持っていそうな整備工場などで交換を依頼しましょう。
おすすめする距離は初回で40,000㎞未満、以降は40,000㎞毎くらいがいいでしょう。
とくに重量がある「アル・ベル兄弟」は早めに交換するほうが賢明だとおもいます。

アル・ベル兄弟とは??
アルファードとヴェルファイアの二車種を
整備士たちはこう言うこともあります(笑)
ノアとヴォクシーで「ノア・ボク」とかもありますねw
トヨタのハイブリッドカーのCVTフルード交換時期
プリウスやアクア、SAI、カムリHVなど
こちらもやはりメーカー推奨は「無交換またはシビアコンディションなら100,000㎞毎」となっています。これらの車両もCVTなのでCVTフルードの交換ができます。
駆動用のモーターはけっこうトルクがありますので、CVTもそれなりに負担がかかっていますが、パワートレインをうまく使い分けている賢い車です。
それでもCVTフルードは交換するほうが望ましいとは思います。
初回は40,000㎞、二回目以降は50,000~70,000㎞前後、運転の条件などで交換を早めるなりするといいでしょう。
簡単な下抜きで交換できるのでディーラー以外の整備工場でも交換作業を受けてくれるでしょう。
日産車のCVTフルード交換時期
日産車のCVTフルード交換時期
日産車に関してはCVTフルードの交換はディーラーのみの交換がいいかもしれません。
僕自身、初代のセレナのCVTで大変な目にあってますので(笑)
ディーラー系のホームページでも「ATFは40,000㎞ごと」とだけありましたので、CVTフルードに関しては直接の明言をさけていると判断できました。
初期のCVTが出たころ、日産ディーラーでは不具合に対する対応に追われていたそうです。

できれば初期のCVTはなにもしないほうがいいと僕自身も思います。
ただし、
初期型以外のCVTに関しては走行距離が少ないうちにディーラーで交換してもいいでしょう。
↑ これはある日産車の取扱説明書ですがエクストロイドCVTは100,000㎞毎、HyperCVTは60,000㎞毎の交換となっています。
ただ、日産のディーラーではカストロールのCVTフルードで交換していることろもありますので依頼すれば交換作業をしてくれると思います。ステッカーを見ると40,000㎞毎の交換を薦めていました。
セレナ、エクストレイル、ティーダ、ティアナ、キューブ、ノート、ウィングロード、スカイライン、NV150AD、マーチ、ジューク、エクストレイル、ブルーバードシルフィ、フーガなど
日産車の軽自動車のCVTフルード交換時期
三菱と共同開発したため、フルードの交換時期は三菱軽自動車と準じます。
※初代ルークスはスズキOEM車です。
デイズ、デイズルークス
ダイハツ車のCVTフルードの交換時期
ダイハツの純正CVTフルードは「アミックス」で統一されています。公式サイトや整備書の中ではCVTフルードの交換は50,000㎞毎となっています。
一回目の交換はやや早めでもいいように思います。おもに加速と減速を頻繁に繰り返す街乗りがメインなら40,000㎞未満でもいいでしょう。
【外部リンク】ダイハツ公式サイトCVTフルードに関するページ>>
ミラ、ミライース、ミラトコット、タント、ウェイク、ムーヴ、ムーブキャンバス、キャスト、ミラココアなど
ダイハツの小型車クラス以上のCVTフルード交換時期
ダイハツ車として販売されている小型車のなかにはベースがトヨタ車である車種もありますので、CVTフルードの交換に関してもトヨタ車として考えるとわかりやすいです。
トール、ブーン、メビウス(プリウスαのOEM)、アルティス(カムリOEM)
スズキ車のCVTフルード交換時期
スズキに関してはCVTフルードの交換はかなり消極的で、基本的には無交換となっています。
ですが、抜いたフルードを見ても交換が望ましいと感じました。初回は使用条件などで判断しおすすめは40,000㎞前後でしょうか。
ただ、スズキ車の場合はディーラーではほとんどCVTフルードの交換作業を受けていないようなので、信頼できる整備工場に相談するといいでしょう。
2020年5月21日追記
スズキのディーラーのオイル交換のステッカーにCVTフルード交換に関する項目が増えています。
おそらく、お客様からの要望などもあって、CVTフルードの交換をディーラーとしても受注するようになっていっているのでしょう。
貨物車を除く、ほとんどの軽自動車、小型車
ワゴンR、アルト、ハスラー、アルトラパン、MRワゴン、スペーシア、ソリオ、クロスビー、イグニス、スイフト、バレーノ、SX4、など
マツダ車のCVTフルード交換時期
マツダ車のCVT車に関しても「無交換」とだけしか説明がありませんし、各ディーラーのホームページなどにもほぼ記載されていません。
僕の整備工場でも交換したことはありませんので、データがありません。今後、問い合わせをしてみることがあるかもしれませんので、その都度加筆していきます。
スバル車のCVTフルード交換時期
スバル系のカーディーラーのホームーページではCVTフルードに関する記載はありませんでした。
おそらく「無交換で」とだけ現場でも答えていると思われます。
もしもCVTの本体が壊れたら「まるごと載せ替え」とだけ宣告されるんでしょうね・・。
当工場でもスバル系の普通車のCVTフルードの交換実績はありませんので、なんともいえません。
ただ、スバルのCVTの場合、スチールベルトではなくチェーンタイプを採用していて、コストはかかるものの強度、耐久性に優れるとのことです。
スバル車の軽自動車のCVTフルード交換時期
スバルの軽自動車は「スバルオリジナルの軽」と「中身はダイハツ車の軽」と大きく分けて2種類あります。
2012年の2月末をもってスバルオリジナルの軽自動車は生産を終了しました。それ以降の軽自動車はすべてダイハツの軽自動車が名前を変えて販売される「OEM車」となります。
そのため、2012年3月以降のダイハツからのOEM供給のスバルの軽自動車なら基本的にはCVTフルードの交換もダイハツ車と同じでいいということになります。
そのため50,000kmまたは、4年ごと(どちらか早い方で実施)となっています。
おそらくですが、スバル系ディーラーの現場サイドはCVTフルードはあまり交換したくないのが本音なんだと思います。

整備士ってね、
成功体験よりも失敗体験で物事を判断する人種なんですよ。
「やったことのないことはやりたくない」
と考えるメカニックさん、
ディーラーにもかなりいます。
もしも交換を断られた場合はカーショップや、ダイハツのディーラーに依頼してもいいかもしれません。
ステラ(ムーブのOEM)
プレオ+(ミライースのOEM)
シフォン(タントのOEM)
スバル車のトヨタOEMのCVTフルード交換時期
スバルではトヨタ車をスバル車の名前を付けて販売しています。これらの車種もCVTフルードの交換に関してはトヨタ車として判断するといいでしょう。
ジャスティ(ルーミー/タンクのOEM)、トレジア(ラクティスのOEM)など
ホンダのCVTフルード交換時期
メーカー、ディーラーともに40,000㎞ごとでの交換を推奨しています。

↑ 整備士の僕がおすすめする交換時期も同じです。
N-BOX、N-BOX SLASH、N-WGN、N-ONE、N-VAN,フィット、フィットHV、オデッセイ、ステップワゴン、フリード、フリードスパイク、CR-V、ヴェゼル、シビック、インサイト、S660など
ミツビシのCVTフルード交換時期
基本的には他のメーカーのCVTフルード交換時期と同じでいいとでしょう。
ただ、「デリカD5」と言う名のスズキソリオだったりと、OEM車はオリジナルのメーカーに合わせたほうがいいでしょう。
デリカ、アウトランダー、エクリプスクロス、RVR、デリカD:2、ミラージュ
、ekワゴンなど貨物系の軽自動車以外の全車
まとめ
もしも「新車で買ってから、10万キロも走らないし5年も乗らない」という車との付き合い方をするなら、CVTフルードの交換は必要ないかもしれません。
メーカーも「あまりCVTに長持ちされても新車が売れない」という本音がちらちら見えるときもあります。
CVTを製造しているメーカー(注1)はそれぞれありますが、ほとんど同じ機構を使っているメーカーのものを採用しているにも関わらず、CVTフルードの交換時期にバラつきがあります。
ディーラーによってCVTフルードの交換時期にばらつきがあるのは、いろんな思惑があってのことだと推測できます。
最近の整備業界は、車の進化や、構成部品の変化で整備からの収益が少なくなってきています。
それはディーラーも同じことで、メーカーから「無交換でいい」と説明があるCVTフルードの交換を積極的にすすめる事情もそこにあるのです。
その一方で、ディーラーも含め、積極的に収益にしようとしてCVTフルードの交換を勧める場合の交換時期は少し早すぎない?と感じることも確かです。

20,000㎞毎の交換を否定はしませんが、実際に抜いたオイルを見ると、ちょっと早いかな?と感じることはあります。
以上が整備士としての僕の個人的な意見です。
今回は自分の車ならそうするだろうな、という視点で記事にしてみました。
また、CVTフルードの交換に関して、常連のお客様以外には言わない「整備士の本音」の部分をつづった記事も書いてみました。
▼関連記事▼
「CVTオイルが無交換な理由を知りたい」というお客様にお答えしたときの話

↑ これはちょっと本音が出すぎてヤバいかもしれません(笑)
▼ その他の関連記事▼
軽自動車のCVT車は慣らし運転が必要?その方法と距離の目安
(注1)
トヨタの関連会社でもある「アイシン」がトヨタ系のCVTを主に設計・製造
日産、三菱、スズキが出資している「JATCO」(ジャトコ)
ホンダは自社開発
マツダはアイシン製などを採用
ダイハツは内製
スバルの普通車で水平対向エンジン搭載車などは自社開発製
軽自動車はダイハツのOEM車となります。
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