
あのさ、オートマチックのオイルは交換するのに、
なんでCVTオイルは交換しなくていいんだ?
CVTを搭載する車が増えると、CVTフルードの交換についての質問が多くなってきました。
僕が勤める整備工場でもたくさんの新車を販売してきました。
そのなかにはCVT車も含まれていますので、新車を販売する整備工場としては、お客様の質問にはお答えしないといけません。
今回は少し趣向を変えて、実際にお客様から受けたCVTフルードの交換に関する質問を対話形式で綴ってみました。
普段は言えない、整備士としての僕の超リアルな本音もチラホラ出てます(笑)
CVTオイル(フルード)はなぜ無交換でいいのかという質問
今回のお話は実際にあったあるお客様とのやりとりを
わかりやすく整えたものを対話形式で進めていきます。
登場人物は二名、僕、サボカジとお客様

← サボカジ(整備士)

常連のお客様 →
ディーラーでCVTフルードの交換を断られた
エスティマで来店されたお客様との会話

(客)
このまえさ、トヨタディーラーでCVTオイル換えてくれっていったら、
べつに交換しなくても大丈夫って言われたよ。
普通さ、オートマチックのオイルって定期的に換えるだろ?

そうですね、ディーラーにもよりますけど、交換しなくていいって言うとこもわりと多いですよね。

(客)
え?そうなの?
普通に考えて換えないとダメだろ?オイルだろ?

(整備士)
ええ、まぁ、正確にはオイルじゃなくてフルードなんですがね。

(客)
どっちでもいいよ、そんなの。
なにが違うんだよ

(整備士)
オイルは潤滑するもので、フルードは油圧を伝える役割でして。
なので、「CVTオイル」じゃなくて「CVTフルード」が正しい呼び方ですね。

(客)
知るかよ!とにかく換えないとダメなんじゃないの?
なんでディーラーは換えたがらないわけ?

(整備士)
ええ、交換をすすめてるトヨタ系のディーラーもありますけど判断基準にはバラつきありますね。

(客)
余計にわからん。
なんでそんなに違うわけ?おんなじトヨタだろ?

(整備士)
ウチはディーラーじゃないんで言いますけど、整備の収益に対する考え方の違いでしょうかね

(客)
どういうこと?
ディーラーでも儲け方が違う?

(整備士)
まぁ、整備部門でも単独の黒字を出すのか、車の販売で儲ければいいのかっていう考えなのか・・・。

(客)
車が売れたらそれでよしって考えてるディーラーがあるってこと?

(整備士)
個人的にはそう思うことも多々あります。

(客)
車が壊れるのを待ってるって?

(整備士)
ええ。CVTフルードの交換サイクルをディーラーに問い合わせすることもあるんですが、『無交換でいいです』しか言わないディーラーやメーカーもあります。

(客)
どこのメーカー?
メーカーによってCVTフルードに対する考えが違う?

(整備士)
言いたくないです(笑)
ええっと、
車に付属してる整備書に無交換ってだけ書いてるメーカーですね(笑)

(客)
で、実際はどうなの?あんたはどう思う?

(整備士)
そうですね・・・おそらくメーカーはCVTフルードなんて無交換でも十数万キロは壊れないと考えてるんじゃないですかね。
だから、メーカーの特別保証である十万キロを無事に走れて、さらに数万キロ走れたら、
あとはCVTが壊れたら、
CVTを丸ごと交換するか車の乗り換えを勧めるかどちらかってことでしょうね。

(客)
だからCVTフルードは交換しなくてもいいって?
壊れたら高い修理費を払えって?

(整備士)
はい・・・
そう考えてるディーラーも多いように感じてます。

(客)
まぁ、たしかにそれくらいの距離を走ったら
乗り換え考えるかもな・・・
汚れないオイルなどない

(整備士)
ですが、汚れないオイルなんてないって僕は思ってますので。
ですので、その車が好きで、長く乗りたいってお考えになるならCVTフルードを交換するのもいいと思うんですよ。

(客)
なるほど

(整備士)
それに、比較的に壊れない車種とよくトラブルになる車種もあります。言えませんけど(笑)

(客)
へぇ、そうなんだ・・
しかし壊れやすい車種を買ったら損だな

(整備士)
ですよね。
なので整備士自身が自分の車を買うときは
そこらへんのことをいろいろ知ってて車種を選んでる場合もあるかもですね。
僕ならコスパを考えるとトヨタのアクアとかプリウスは、
トランスミッションのトラブルなんか聞いたことないし
会社の営業車なんかにはうってつけって思いますね。
CVTフルードもあんまり汚れないし。
CVTフルードの交換にはリスクがある?

(客)
でさ、結局、CVTフルードって交換するほうがいいの?換えなくてもいいの?

(整備士)
・・・・・難しいですね・・・。

(客)
なんだよ、それ!

(整備士)
その車との付き合い方による、と僕は思うんですよ。
新車で買って、すごく気に入っているのなら、
しかるべき時期に交換してもいいなって僕は思います。
ですが、中古車で買って、前のオーナーがどんな扱いや整備をしているのかがわからないし、
あくまで道具として割り切って乗ってるって方は、整備士が交換しないほうがいいって場合はホントにしないほうがいいケースが多いんですよ。

(客)
いつ壊れるのかが読めないわけか。

(整備士)
はい、CVTフルードを交換したあとで不具合が発生しても、
何が原因かわからないんですよ
結果的にCVTフルードを交換した整備工場が責任を問われることになるんです

(客)
言いがかりにされるのか。

(整備士)
ええ。
もうね、こういう状態になると大変なクレームに発展していって、
何十万円もの修理費を持つとか持たないとかで大変ですから。

(客)
だから換えたくないのか。
じゃあディーラーは?新車から知ってる車のも換えたがらないよ。

(整備士)
ディーラーの整備士さんって、
『中途半端な整備は二度手間だから無駄』
って考えてることも多いんですよ。

(客)
はぁ?

(整備士)
CVTフルードなんか抜き換えて延命しても、壊れるときは壊れる。
だからCVTが壊れたら丸ごと交換するしか選択肢がないって考えです。

(客)
ずいぶん極端な考え方だな

(整備士)
いえ、そうとも言えないですよ。
整備士もベテランになるほど、新車しか買わないし、
一定期間乗ったらさっさと売っちゃうって考え方の整備士も多いですから。
中古車のCVTフルードは交換しないほうが得策?

(客)
新車しか乗らない?

(整備士)
まぁ、新車しか乗らないのか、
またはボロボロのヤツをタダでもらって
自分で修理するか、どちらかですかね。

(客)
中古車って、得たいが知れないからあんまり深入りしたくないわけか

(整備士)
どんな中古車が流通してるかわからないですから。

(客)
あんた、そんなこと言ったら中古車が売れなくなるぞ

(整備士)
そうですね(笑) お付き合いの長い○○さんだから言いますけど。

(客)
で、CVTフルードはどうすりゃいい?ディーラーは断ってきたぞ

(整備士)
その車種ならウチのCVTチェンジャーで交換できますし、交換実績もかなりありますよ。

(客)
じゃあ交換してくれるか?

(整備士)
ええ。長く乗りたいなら交換してもいいですね。六万キロ以下だし、大丈夫です。まぁ十万キロも乗らない予定なら交換しなくてもいいですし。

(客)
おいおい、どっちでもいいのかよ(笑)

(整備士)
だから中古車って怖いんですよ(笑)

(客)
なるほど(笑)
解説
CVTフルードの交換は早め?または無交換?
メーカーが推奨するCVTフルードの交換距離には、かなりばらつきがあります。そこには各メーカーのCVTのメンテナンスに対する考え方の違いが感じられます。
CVTの内部へのメンテナンスは基本的にはなにもできませんので、CVTのスチールベルトなどの主要なパーツはもちろん、小さなパーツですら交換をすることは難しいです。
つまり、なにか不具合が出たらCVTの場合は丸ごと載せ替えすることが基本となりますので、メンテナンスはいらないと考えているメーカーが多いようです。
極論をいえば、CVTフルードさえ交換をしなくてもいいというか、交換してもしなくてもどのみち10万キロ以上走れば、故障や不具合、すなわち全部交換、だからCVTフルードも交換しなくていいという考えです。
そのいっぽうで、「どうにかして20万キロくらいはCVTの載せ替えをせずに走りたい」と考えているユーザーさんも少なくありません。
言い方を変えれば、新車から買って、廃車にするまでCVTの載せ替えなんてしたくないという場合です。
そのためには、大きな負荷がかかるスチールベルトやプーリーへの摩耗などを少しでも遅らせるという意味ではCVTフルードが汚れ切ってしまう前に交換することも有効です。
できればメーカーの特別保証が残っている期間に交換しておくのがベストかもしれません。
今回のお話は全て実話です。
会話の内容は読みやすく整えてますが、
CVTフルードに対する整備工場や整備士の考え方や認識をお伝え出来たと思ってます。
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コメント
ディーラーが交換を嫌がる理由は簡単。交換後のクレームがあまりにも多い為、マニュアルに交換禁止を追加した訳。さらにCVTFレベルチェッカーに封印を付けた事でディーラー側の責任も0になったと言う訳。
コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、CVTの交換に関してはディーラーもかなり慎重になっています。
とくにニッサン車だとゲージに封印をしてありますよね。
なかには封印をはずしてでも交換作業をうけるガソリンスタンドさんもあるようで、
なかなかリスクと利益の折り合いのバランスが難しい作業ですね。