バッテリーが上がってしまうという体験をした方はけっこうおられると思いますが、
ドライバーとしての経験が長い方でもせいぜい二度、三度くらいなのではないでしょうか。
またプロのドライバーさん、タクシー運転手さんとか運送関係とかですが、
この方々でもバッテリー上りはそれほど経験しないかもしれません。
むしろ、運送業者さんにとっては車のエンジンがかからなくなることは、
業務に大きな影響を与えてしまう非常に重大な過失になることもあり、
一般的な運転手さんが乗るマイカーよりはきちんと整備されているかもしれません。
バッテリー上りをよく経験する職業とは
では、車のバッテリーが上がってエンジンが始動できないという状況を経験する機会が多い職業といえば、やはり「レッカーサービス」の業務をする方たちででょう。
とくにJAFの隊員さんなんかはバッテリー上りの救援なんて、毎日というくらい経験していますね。
では、その次にバッテリー上りを経験する職業といえば、やはり自動車整備士です。
僕自身も自動車整備士を20年ほどやってきましたが、バッテリーが原因でエンジンがかからなくなったというトラブルはいくらでも経験しました。
ほとんどの場合は、ルーム球のつけっぱなしなどの運転手の過失やバッテリーの寿命が原因なのですが、
なかにはもっと深刻で修理費がかさんでしまった事例もたくさんあります。
今回は、バッテリーの大切さや、さまざま運転条件などでのバッテリーに関するトラブルを僕自身の体験からちょこっとだけご紹介していきます。
もしかしたら、「明日は我が身」かもしれませんよ。
新品のバッテリーが一週間で上がったケース
そのお客様は、少しでも安くバッテリーを購入しようと、ホームセンターでバッテリーを購入し、そのお店で交換作業もしてもらいました。
ところが、ほんの一週間ほどでバッテリーが上がってしまい、整備工場に相談にこられました。
「一週間でまたバッテリーが上がった」
とのご相談を先にいただいていたので、診断を担当した私はバッテリーそのものを疑っていませんでした。
それでも、まずは交換して一週間しか経たないバッテリーの健全性を専用のバッテリーチェッカーで調べました。
案の定充電量はほとんどなくなっていました。これは、バッテリーがどの程度ダメージを受けているのかを知りたかったわけで、
あまりにも充電量がゼロに近いと、バッテリー事態の寿命が極端に短くなってしまうのです。
次に、車両側に問題がないかを調べます。まずは「暗電流」をチェックします。
暗電流とは、エンジンを止めて、キーも抜いて駐車場に止めてあるような、
もっとも電気を消費しない状態で、どれくらい電気が流れているかを計ることです。
車には様々な電装品が装着されていて、カーオーディオの時計もつねに機能していますし、
車を制御するメインコンピューター(ECU)にもバッテリー電源が常時供給されています。
はたして、暗電流を測定すると、正常時の五十倍くらいの暗電流がつねに流れていました。
これではバッテリーがすぐに上がってしまっても不思議ではありません。
「やっぱりね」とつぶやきながら、次は暗電流が過剰な原因を探し始めます。
これも僕の勘があたり、「たぶん発電機でしょ」という予想通りの展開でした。
発電機はオルタネーターともいいますが、エンジンの力を借りて回転する構造で、発電しています。
かなり多いケースだと、走行中に発電機が不良になり、バッテリーに蓄電されていた電気を使い切った時点でエンジンがとまってしまいます。
今回は少し珍しいのですが、エンジンをとめている間に発電機の回路不良で電気をリークさせていたことが原因でした。
さて、こうなると発電機を交換することになるのですが、このオルタネーター、結構な値段します。
新品だと軽自動車クラスで60,000円くらい、ミドルクラスの乗用車だと、80,000円から100,000円くらいします。
ですが、ほとんどのお客様は「再生品があります」と説明すると、そちらを選択されます。再生品とは、別名「リビルト」ともいいます。
結局はこのお客様もリビルト品のオルタネーターを選択され、新品のものを使うよりもだいぶ安く終わらすこととなりました。
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バッテリーが不良品だったケース
バッテリー交換を依頼され、かなり高価な国産品のバッテリーを取り付けたところ、エンジンが全くかかりません。
というかセルモーターが「カチリ」ともいいません。
「え?ヒュージブルリンクでもショートさせた??」と焦りましたが、新品のバッテリー電圧を計るとなんと8ボルトしかありません。
これ、ある意味レアなトラブルです。今どきこんな不良品、しかも高価なバッテリーが??と驚いたものでした。
板金修理が原因で・・・
「雨の日の次の日にだけバッテリーがあがる」という、ほんまかいな?という相談を受け、他のメカニックが診断していました。
ですが、どうしても原因がわからず、症状も確認できずエンジンは正常に始動します。
仕方なくお客様に様子をみていただくことになりいったんお返ししました。
ところがまたエンジンがかからない、バッテリーが上がっていると連絡がはいり車をお預かりして診断するも、やはり正常。
このやりとりが2度ほど続いてしまい、ついにお客様もご立腹されてしまいました。
ここからは当整備工場の総力戦というか、ほぼ全員のメカニックたちの
「あーでもない、こーでもない」のお互いの経験談を出し合い、
ついに突き止めた原因が、「雨漏り」でした。
しかも室内のヒューズボックスのすぐ近くに雨がじわじわ流れ込み、ハーネスの付け根を腐食させていたのです。
完全なショートだとヒューズがぱちりと飛ぶのですが、微妙なショートなのでわかりませんでした。
ボディの裏側はさびでびっしり、どうやら交通事故で板金修理をした場所だったみたいでした。
しかしなんとも粗い板金あとに、「ひどい仕事だ」とあきれたのを覚えています。
エンジンルームの搭載されている位置が悪い?
すんごい古い車の話で恐縮なのですが、ホンダのインスパイアって車をご存知でしょうか。初代のやつです。
あの車ってね、リリースされた当時は整備士の間では結構話題になってたんですよ。
というのも、エンジンは縦置き、でもフロントタイヤを駆動するという、なんとも変わった駆動レイアウトなんですよ。
普通はエンジンを縦置きにしてる車ってマークⅡとかローレルとかクラウンとかセドリックとか、全部後輪駆動なんですよ。
当時はそれが当たり前。
「フロントエンジン、リアドライブ」ってヤツ。
ですが、ホンダはあえてめんどくさい(?)ことをやって、
エンジニアたちの理想を追うようなことをしたんです。
で、ここからがバッテリーの寿命の話に関係してくるんですけど、このインスパイアは、エンジンルームのかなり後方、
つまり運転席に近い(正確には助手席前方でしたが)場所にバッテリーを搭載させてありました。
ご興味がある方は、グーグルの画像検索で「ホンダ インスパイア エンジンルーム」と検索してみてくださいね。
ところがこのインスパイア、ことごとくバッテリーが長持ちしないんですよ。マジで。
理由はおそらく、エンジンのすぐ近くで、なおかつ熱が排熱されにくい場所にバッテリーを搭載させたことで、
熱が逃げにくいからなんだと、当時の先輩から教わりました。
確かに、走行直後にエンジンルームのバッテリーを触ると異常なくらいに熱かったのを覚えています。
「そうか、どの車に使用されるかでバッテリーの寿命も変わってくるんだなぁ」
と、あの当時すごく納得したのを覚えています。
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