今回はルノー・カングーのオイル漏れ修理の作業記録です。
カングーは日本でも人気の高いフランス車ですが、輸入車を乗るうえでネックになるのがディーラーの店舗数が少なく、修理を依頼できる整備工場が少ないことです。
車検はともかくオイル漏れの修理となると「ディーラーで修理してもらってください」と断られることも多いようです。
ディーラーに依頼した場合と、輸入車の整備や修理を受けている整備工場では修理費用はどれくらい違うのか、地域や競合店の多さでも違ってきます。
カングーのオイル漏れトラブルはどんな修理が多いのか、修理をする場合はどれくらいの費用が想定できるのか、という内容です。
ルノーカングーのマニュアル車のオイル漏れの原因
↑ ルノー・カングーのエンジンルームはこんな感じ。ごく普通のエンジン横置きの前輪駆動車のレイアウトです。
まず今回のルノーカングー(以下カングー)の場合はお客様から「駐車場にオイルらしいシミがある」と相談をうけたことでオイル漏れの診断をすることになりました。
ドライブシャフトとの連結部分からオイル漏れ
漏れていたのはドランスミッションのオイルで、この車両はマニュアルトランスミッションなのでミッションオイルが漏れていたことになります。
診断は比較的にやりやすく、車をリフトアップさせることで左側のドライブシャフトとミッションケースの間からミッションオイルが漏れて滴になっています。
この部分からのオイル漏れは日本車でもわりと発生することがあり、車検で発見することや、今回のようにユーザーさんから相談を受けることで見つけます。
このオイル漏れが起きる車種はエンジンを横置きに前輪を駆動する、いわゆる「FF」と呼ばれる車種の定番トラブルです。
定番とはいうものの、日本車なら5年10万キロ未満で起きることは珍しく、メーカー保証で修理することも珍しいです。
今回のカングーは12年経過で走行距離も12万kmオーバーの車体なので漏れても仕方がない時期です。
マニュアルトランスミッションだけとは限らない?
ミッションケースからのオイル漏れはマニュアルトランスミッション(MT)だけでなく、オートマチックトランスミッション(AT)でも起こりえることです。
ただし、ドライブシャフトの長さや使っているオイルシールの種類はおそらく別の品番なのでサイズも違っているので、MT車では起きてもAT車ではあまり起きないということもあります。
どちらにせよ、オイルが滴になるくらいの漏れが発生している場合は車検にも合格できませんし、そのままで放置するとミッションオイルが不足してミッションを傷める可能性があります。
オイル漏れは「にじみ」から「漏れ」に悪化したときが修理のタイミングといえます。
ミッションケースに打ち込まれたオイルシール
↑ 中央に見える丸い部分にドライブシャフトが差し込まれていてゴム製のオイルシールが打ち込まれているのが見えます。
オイル漏れの直接の原因はオイルシールと呼ばれるゴム製の部品が硬化や変形、摩耗したことによります。
とくに経年劣化による硬化でドライブシャフトに直接接触しているリップの部分の弾力がなくなってオイル漏れが少しづつ始まります。
別名「デフサイドオイルシール」と呼ばれる
日本車では前輪駆動車のドライブシャフトがミッションと繋がっている部分を「デフサイド」と呼ぶことがあり、そこに打ち込まれたシールを「デフサイドオイルシール」と呼びます。
フランス車であるカングーの場合は母国ではどんな名称で呼ばれるかはわかりませんが、基本的にはまったく同じ用途です。
用途が同じだけにオイル漏れする原因も同じで、リップの弾力が経年劣化で固くなると少しづつミッションオイルやオートマチックオイルが漏れ始めます。
シールとドライブシャフトの接触面にキズが・・
今回のシール交換をしたカングーのドライブシャフトを抜いたあとで確認してみると、デフサイドオイルシールとの当たり面に傷が入っていました。
ゴム製のシールが当たり続けた結果、ドライブシャフトの金属部分が削れてしまい、オイル漏れの原因になっていたかもしれません。
この場合はシールを打ち込む深さを意図的にずれすことでオイル漏れが再発しにくくすることもできますが、今回はシールをオフセットさせるスペースの余裕がありませんでした。
ルノーカングーのミッションオイル漏れの修理費用
今回はミッションオイルがドライブシャフトとミッションケースの間のシールから漏れていました。
部品の価格は、どの整備工場でもほぼ同じくらいになりますが、作業工賃に対する考え方は整備工場で違ってきます。
輸入車に対しては割増の工賃を設定している場合も多く、作業中におこりうるリスクに対して上乗せしていることもあります。
ドライブシャフトを外す必要がある
この修理をするうえで必要な工程が、ストラットとハブを繋いでいるボルトを緩め、さらにアクスルナットも外してドライブシャフトをまるごと抜いてしまう必要があります。
ドライブシャフトを外すだけでそれなりの工賃を乗せてくる整備工場も多く、時間工数なら1.5時間前後を想定しているはずです。
レバーレートが10,000円の整備工場なら15,000円、レバーレートが12,000円なら18,000円の工賃に消費税がプラスされます。
レバーレートはディーラー系の整備工場が高く設定する傾向にあり、輸入車であるカングーの場合は比較的高い作業工賃になります。
正規ディーラーでの修理費用
デフサイドオイルシール交換 | 18,000円~22,500円 |
部品代金 | 4,000円 |
ギアオイル | 1,500円 |
合計 | 23,500円~28,000円 |
ディーラーのレバーレートは「時価」??
輸入車の整備や車検をしていると、お客様から輸入車ディーラーの修理見積もりを見せていただくことがあります。
部品代に利益がしっかりと含ませてある場合もありますが、レバーレートが高く設定されている場合も多く、「輸入車の整備士は給料が高い」と言われる理由でもあります。
とはいえ、同じ車種を扱うディーラーでもそれぞれの地域
輸入車を扱う整備工場の修理費用
デフサイドオイルシール交換 | 15,000円~18,000円 |
部品代金 | 3,000円 |
ギアオイル | 1,500円 |
合計 | 19,500円~22,500円 |
最後に
ルノー・カングーは輸入車のなかでもかなりの台数が売れていることもあり、車検やオイル交換、修理の相談を受けることが多い車種です。
「輸入車はディーラーでしか修理をしてもらえない」と考えているユーザーさんも多いですが、カングーのような大衆車の場合は比較的にハードルは低いです。
今ではカーセンサーやグーネットに加入する整備工場がブログを残しているところもあり、カングーの整備記録がある工場では整備を受けてくれるでしょう。
そのいっぽうで、他社との比較をあまりしないままで飛び込みで修理を依頼すると、ディーラー並みの修理費用になることもあります。
国産車よりもしっかりとリサーチしておくことも大事で、グーグルマップの口コミなども参考にしてみましょう。
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