今回は車検などでおススメされることがある「アンダーコート」の必要性についてのお話です。
マイカーを車検に出して、その見積もりを見たときに、下回りの塗装に関する項目が入っていることがあります。
下回りの防錆のことだろうけど必要なのかなぁ
アンダーコートって、新車のからしてるんじゃないの・・・?
こんな疑問が浮かんだユーザーさんもいるのではないでしょうか。
僕自身、整備士として「アンダーコートねぇ・・。」と思ったこともあります。
ちなみに、アンダーコートとは新車から施されているもので、車検などで整備工場がするのはシャーシブラックが多いです。
シャーシブラックは「アンダーコートの仲間」と思ってください。
なお、先に結論を言ってしまうと雪国にお住いのユーザーさんには内容によっては必要な作業かな、と思ってます。
車検毎にアンダーコートの施工は必要?
そもそもアンダーコートとは
アンダーコートとは車の下回りの、おもにフレームや足回りなどのシャーシに対して施工されている防水、防錆を目的として塗装の総称です。
車の製造過程で、フレームだけの状態から下回りだけではなくフロア周辺など車内側からもアンダーコートは施されます。
その時にフレーム周りに吹き付けられるのは、ゴム質のコーキング剤に近い材質が使われています。
フレームを形成するときに、別々の鋼板を重ね合わせ、スポット溶接などで溶着させた場合、鋼板と鋼板の隙間を埋めるために詰め込むように入れていくタイプのものもあります。
これらのゴム質のコートは、水分や塩分に対しての耐久性にも優れ、通常の使用条件なら剥がれることがありません。
つまり、メンテナンスも再施工もほぼ必要ないくらいの丈夫な防水処理の部分には、その上からアンダーコートはする必要がありません。
ここ10年以内に作られた国産車の下回りを見ていると、ゴム質に近い、おそらくチューブタイプのコーキングが要所にされているのがわかります。
積雪地帯や沿岸部など、凍結防止剤や塩害とは無縁の地域での使用なら、アンダーコートを車検などでする必要なないのではないかと感じます。
僕自身も自分の車は新車から10年以上乗っていますが、シャーシブラックなど、一切やっていません。
アンダーコートが無いとどうなる?
鉄の部分がむき出しのままの自動車はありませんが、アンダーコートがまったくされていない状態で車を使用していくと、車体の下回りはサビで覆われていくことになります。
錆を放置しておくと、その部分からどんどん錆が広がっていき、最終的には車体に穴が開いたり、まるで癌細胞のように周りに転移していきます。
さらに、下回りの防錆処理ができていない場合は整備性が悪くなることもあります。
シャーシや足回りのボルトが緩まなくなる?
車の修理や整備をしていて必ずというくらい出くわすのが、ボルトが緩まないというトラブルです。
本来なら規定のトルクで締め付けられた状態のボルトをレンチなどで緩める場合は、そのボルトの太さに比例して締め付けトルクも高く、緩める場合も力が必要になります。
ところが、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどがボルトやかん合部分に入り込んだままで放置していると、錆びでボルトなどが膨れ上がり、外れなくなります。
マフラーなどの熱が入る部分でもよくあることですが、その場合だとアセチレンガスなどで高温に熱することでボルトを緩めることができます。
ところが、塩害や防錆処理不足の場合は、ボルトそのものの強度が失われ、無理に緩めようとすると、いとも簡単にボルトが折れこんでしまうことがよくあります。
アンダーコートが定期的に必要な使用条件とは
車の下回りが錆びる主な原因
路面凍結防止剤は車を錆びさせる
毎年恒例のように積雪があるような地域では、11月下旬からの気候に応じて融雪剤や路面凍結防止剤が幹線道路や山間部などに散布されるようになります。
これらの凍結防止剤などの雪や氷を解かすためのものは塩分を多く含んでいて、金属に塩分が付着することで水分を吸収し、金属の錆を促進してしまいます。
車が海風にさらされるエリア
普段から沿岸地域など、海際に停めている車の場合、潮風が車のさまざまな部分に吹きかけられることで、塩分が付着し、錆が進んでいきます。
結局のところ塩分こそが車の下回りを錆びさせてしまう大きな要因であることは間違いないです。
ウィンタースポーツをするなら必要
スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツをするために、積雪地帯を走行するケースなどもアンダーコートは必要になるでしょう。
融雪剤を使用する積雪地域では必須かも
北日本や日本海側では、冬の時期になると、かなりの積雪があるため融雪剤も使用されます。
とくに除雪車も常備されているような地域での融雪剤の成分は塩化カルシウムが主に使用されていて、-50℃までの雪や氷も解かすことができます。
ちなみに路面凍結防止剤には塩化ナトリウムが、融雪剤には塩化カルシウムが使われることが多く、より気温が低くなる地域では塩化カルシウムの融雪剤がメインで使用されます。
塩化ナトリウムと塩化カルシウム、どちらも塩分には違いないのですが、融雪剤に使用される塩化カルシウムのほうが融雪の効果も高いです。
ただ、融雪剤は車の下回りを錆びさせてしまうというデメリットも大きく、これらが使用される地域では、車のアンダーコートは車検のたびに確認、または再塗装をしたほうがよさそうです。
アンダーコートが剥がれる可能性
山道を走るなら下回りの点検がおすすめ
轍(わだち)が深く掘れているような山道では、車体の下側を岩などで擦ってしまうことがあり、その際にアンダーコートが剥がれてしまうこともあります。
脱輪や事故でも塗膜が剥がれることがある
多少の塩分では問題なく錆びを防げるアンダーコートなどでも、固いコンクリートなどに物理的に接触してしまうと、その部分から錆が広がり始めることがあります。
とくにロアアームなどは脱輪などで傷が入ることがあるので、あとで確認しておく必要があります。
もしも部分的に傷がある場合は、その部分だけにアンダーコートなどの防錆処理の塗装をしておきましょう。
車のアンダーコートは車検では不要な地域もある?
費用対効果は地域で変わってくる
塩害や凍結防止剤に縁のない地域では不要かも
先に結論を言ってしまうと、2010年以降くらいから新車として販売されている国産車なら、間違いなくアンダーコートはしっかりとされています。
※それ以前に製作された車でも、おそらくアンダーコートはしっかりとされているはずです。
そのうえで、車検や定期点検でアンダーコートを施工する必要があるとすれば、しっかりとした防錆処理が必要な地域での使用を前提とする場合でしょう。
アルミのパーツにはアンダーコートは不要ないかも
車の部品のなかにはアルミ合金で作られた部分もかなり多くなっています。
・アルミ製ロアアーム
・アルミ製エンジンブロック
・アルミ製エンジンオイルパン
・アルミ製ラジエーターコア
・アルミ製コンデンサー
などなど。
他にも自動車に使われるアルミ製のパーツはありますが、今回のテーマは、『車の下回りなどにアンダーコートは再施工する必要があるのかどうか』というテーマにフォーカスした内容ですので、アンダーコートを施工することができない部分についてのお話は割愛します。
アルミパーツが多用されているような車なら、少なくともアルミ部分に関してはしっかりとしたアンダーコートはあまり必要性を感じません。
もしもアンダーコートをするとしたら、アルミパーツ以外の部分だけに防錆処理をすればいいのかもしれません。
もしくは、水性のクリア系のものを軽くスプレーしておくくらい。
車にアンダーコートを追加でするデメリット
使用用途に合わない施工は割高になってしまう
費用対効果を確認しよう
車検などでアンダーコートを勧められた場合、その施工内容を確認しておく必要があります。
たとえば豪雪地帯で使用される車に水性のアンダーコート塗装しても、耐久性も防錆効果も高くないので、安価で施工してもらえる場合はともかく作業料金をしっかり請求されるならコスパが悪くなってしまいます。
その逆のパターンでいえば、年間を通してほぼ雪が降ることがないような地域でノックスドール(Noxudol)などの、本格的な雪国用のコートをしても、高い施工費がかかるというデメリットが目立ってしまいます。
どちらにせよ、アンダーコートをすることは全くの無駄にはなりませんが、車の維持費としてはコストがかかってしまうというのが最大のデメリットといえます。
不慣れな施工業者には頼まないのがベター
アンダーコートやシャーシブラックには、それなりの時間と塗料の代金がかかります。
とくに、コートをする前の下処理はかなり重要で、汚れや油分、すでに付着している塩分などををスチーム付きのハイウォッシャーなどで丁寧に洗い流しておく必要があります。
さらに、下回りの洗浄をしたあとは、エアガンなどで水分を飛ばしておき、しっかりと乾かしてから塗装前にマスキングなどの養生もしていく必要があります。
これらの作業は、これまでにこなしてきた経験数がかなり重要で、塗装するスタッフの技量や丁寧さでもアンダーコートとしての耐久性が違ってきます。
そのうえ、車の下回りに対する作業なので、ユーザーの目に留まりにくいこともあり、適当に作業をしてしまう業者もいますし、手抜きや塗装のムラが出てしまう可能性もあります。
アンダーコートが上手な業者とは
あくまでも僕の経験上でのお話ですが、シャーシブラックやアンダーコートに関しての施工回数が多いのは、大型車やバスを扱っている整備工場などです。
とくに自社のトラックやバスではなく、顧客としての車両を扱っている整備工場は、下回りの塗装にも厳しいチェックをされることもあり、作業に従事するスタッフも、自分の仕事の出来栄えにこだわっている人もいます。
量販店などで車検を依頼した場合、、普段からシャーシブラックや防水処理をやっていないスタッフが、ユーザーからの依頼で渋々でブラック塗装をやっているであろうケースもあり、その出来栄えは・・・。
車検でのアンダーコートの料金はどれくらい?
工賃仕事は○万円?
車検での付帯作業として勧められるアンダーコートにもいろいろな種類があります。
ざっくりとした料金はこんな感じ(※あくまでも参考程度にしてください)
・軽自動車~コンパクトカー[\4,000~\6,000] ・ミドルクラスのセダンやミニバン[\5,000~\7,000] ・クロカン四駆やSUV[\5,000~\7,000]
・軽自動車~コンパクトカー[\8,000] ・ミドルクラスのセダンやミニバン[\8,000~¥10,000] ・クロカン四駆やSUV[\8,000~¥10,000]
・軽自動車~コンパクトカー[\25,000~¥30,000] ・ミドルクラスのセダンやミニバン[\28,000~¥32,000] ・クロカン四駆やSUV[\30,000~¥40,000]
まとめ
・アンダーコートの再施工は基本的に必要ない
・ただし融雪剤を使用するエリアでは車検ごとにアンダーコートの確認や再施工が必要
・車検でアンダーコートをするデメリットは使用条件によっては割高になってしまうこと
・作業に慣熟していないスタッフの施工は費用対効果がかなり落ちてしまう
【関連記事】車は9万キロ越えで車検するな?!買い替えと買取のバランスが大事?
コメント
車買うときは必ず付けて買ってます
まぁ豪雪地帯なんで笑
1シーズンはもつって話なんでやっぱ車検毎くらいが一番良いんですかね~
来年10月に車検なんでまた付けてもらいます
買ったときのはスリーラスターってやつらしいですけど4万ちょいなら本格的なやつなんですかね?
購入したときの契約書を見て、ふと思ったのですがガラスコーティングとかコーティング系の記事ってありますか??
タカハシ様
いつもコメントをありがとうございます。
やはり豪雪地帯では下回りの予防整備は大事ですよね。
四万円ほどのコーティングなら間違いなく本格的なものだと思います。
この手の商品は「錆びるか錆びないか」という、結果がはっきりとわかるものなので
効果があるものしか残らないですしね。
YouTubeで「ノックスドール VS スリーラスター」という動画まで出ていましたね。
>ガラスコーティングとか
>コーティング系の記事ってありますか??
↑ 残念ながら今のところはこれらについての記事は書いておりません。
なので、自分の知識で記事にできないか検討しますね。