車のバッテリーの交換は注意するべきところを押さえておけばそれほど難しいことではありません。
ただし、バッテリーを交換していて、うっかりバックアップに失敗してしまうとあとが大変です。
とくに新しい車ほど高度な制御やセキュリティがあり、それぞれのセットアップ内容が車に保存されています。
バックアップがうまくいかなかった場合はこれらの設定などがすべて初期化されてしまうおそれもあり、リカバリーのためにディーラーに依頼するケースもあります。
今回はDIYでバッテリーの交換をする際に行う、バックアップ電源の種類や接続方法についてのお話です。
DIYでのお勧めの電源の取り方や便利なアイテムなども紹介していきます。
余談にはなりますが、整備士がやっている『オススメじゃないけど最速のバックアップ方法』も紹介します。
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バッテリー交換とバックアップのやり方
OBDカプラーからバックアップ
↑ 運転席や助手席のの足元から見上げると台形のカプラーが見つかりますが、
これこそコンピューターなどの常時電源に簡単にアクセスできるOBD接続カプラーなのです。
結論として、車のOBD(On-Board Diagnostics)カプラーとバックアップ電源を接続するこの方法が簡単で確実なのでDIYでバッテリー交換をする方にはおすすめです。
あとで詳しく説明しますが「早く知りたい!」という方はこの記事の後半にショートカットしちゃってください。
シガーソケットから給電
手軽で確実にできるのが、シガーソケットからバックアップ電源を供給させるやり方です。
ネットなどでもシガーソケットからバックアップさせる便利アイテムは多くあり、価格もさまざまです。
使い方はどれも基本的に同じで、シガーソケットに接続して車をアクセサリの状態にすればバックアップができています。
オススメなのは、車両側と接続できていることがインジケーターランプなどで確認できるタイプのもので、シガーソケットの接触不良などでバックアップに失敗しなくてすみます。
バッテリー端子に直接給電
ワニ口クリップなどでバッテリーのプラス端子とマイナス端子にそれぞれ接続してバックアップ電源と接続する方法もあります。
ただ、この方法はあまりおすすめではなく、バッテリーを車から取り外すときに、端子に繋いでいるクリップが外れてしまったりで邪魔になります。
バッテリーは重いのですばやく作業をしないと落としてしまったり、腰が痛くなってしまうこともあります。
ジャンプ用の端子に給電
↑ たとえば30系プリウスならエンジンルームのジャンプ用端子に
バッテリー電源を接続してしまえばバックアップ完了。
そのままトランクルームのバッテリーを交換することができます。
バッテリーが室内やトランクルームにあるハイブリッドカーなどは、バッテリー上がりの際に他車から電気をもらうための端子がエンジンルームにあります。
そのプラス端子と近くのボディーに接続すれば補機バッテリーを交換するために取り外してもバックアップはできています。
できればバッテリーチャージャーや他の車からのエンジンを始動(システム起動)させられるくらいの確実な電源をつなぐほうが間違いないです。
弱っているバッテリーなどでは電圧が足らずバックアップが取れていないこともあります。
他にも輸入車や一部のスポーティカーなどはトランクルームにバッテリーを搭載している車種があり、ボンネットを開けるとプラス端子が見つかることがほとんどです。
オススメじゃないけど最速のバックアップ方法
リスクがあるのであまりお勧めしませんが、もっとも簡単ですぐにできるバッテリー交換時のバックアップ方法があります。
エンジンをかけたままでバッテリーを外す
プロの整備士でもけっこうやっている人はいますが、エンジンをかけてアイドリングさせた状態でバッテリーを交換してしまうやり方もあります。
メリットは「速い」「簡単」「かなり確実」
メリットは交換作業が最短でできることと、バックアップの道具や手間がいらないこと、かなり確実に車のメモリーを飛ばさずに作業できることです。
プロの整備士なら、エアラチェットなどを使いつつ作業性のいい車なら30秒ほどでバッテリーの脱着をしてしまいます。
デメリットはショートさせてしまった時のリスク
バッテリーを交換するさいに気をつけないといけないのは、バッテリーのプラス端子をボディアースに接触させてショートをさせないことです。
エンジンがかかったままで端子をショートをさせてしまった場合、最悪の場合はコンピューターが壊れてしまう可能性があります。
イグニッションをオフにしたままだと、プラス端子をショートさせても問題ないケースは多いのです。
それに対してエンジンがかかった状態だとすべての回路がつながっているので故障する範囲も広くリスクも高くなります。
このやり方はかなり車に詳しい人や、リスクを覚悟できる人でないとやらないほうが無難です。
うっかりエアコンが入ったままで
バッテリー端子を外してしまうと電力消費が多いので
コンプレッサーが入った途端にエンジンが止まってしまい
バックアップも失敗します。
バックアップをする前に確認すること
ルームランプなどはすべてOFFにする
作業上、ドアを開けたままにする場合はルームランプやカーテシランプ(ドアの内側のランプ)などが点灯していると、バックアップ電源の電気がうばわれバックアップができないことがあります。
バックアップ電源を車に接続するまえにこれらの照明類はスイッチOFFにしておきましょう。
ドアを開けているとキーの抜き忘れ警報の音などいろんな機能が働いてしまうので、窓ガラスを一箇所開けておいてドアを締めておくのもオススメです。
カーオーディオはできるだけOFFに
バックアップをするためにイグニッションキーやスタートボタンでアクセサリーモードにしますが、オーディオからの音楽が再生されたままだとバックアップ電源に余計な負荷がかかります。
オーディオをOFFにしておくほうが無難で、サブウーハーなどを取り付けしている車ならかなりの電力を消費しています。
大事な情報は記録しておく
一部のカーナビなどではHDDのなかにナビに入力した情報を保存しておく機能もあります。
万が一バックアップに失敗したときのためにハードディスクの中に記録できるならやっておきましょう。
他にもナビの中にしか記録していないような位置情報や電話番号は念のためにメモしておくと安心です。
バッテリー交換のバックアップ電源でおすすめは?
OBDカプラーからバックアップ電源を給電する
↑ 僕が愛用しているのがストレート製のOBD2メモリーバックアップ 9V電池/12Vバッテリー接続用で、赤くランプが光ってブザーが鳴るときはバッテリー電圧が低すぎることを教えてくれます。
世界共通のダイアグノーシス接続用の台形のカプラーからバックアップ電源を給電するタイプは接続に失敗することもないのでオススメです。
バックアップをとる内容のなかで、もっとも大事なのはエンジンの制御などのECUを中心とした学習内容や電装品などの設定内容です。
このやり方のメリットは失敗が少ないことと接続間違いになりにくいこと、ECUへの接続も確実にできることなどです。
バックアップにおすすめなアイテム
OBD接続にもいろんな商品がある
OBDテスターのカプラーから接続するアイテムにもいろんなタイプがあり、乾電池をバックアップ電源にするタイプのものから、別の車用バッテリーから電力をもらうものまでさまざまです。
電源がしっかりしているとバックアップも成功しやすい
これらのアイテムに共通しているのはOBDテスターのカプラーを接続するということで、手軽で確実に接続できるのは作業に慣れていない人でも確実にできます。
ただしバックアップが飛んでしまうリスクを避けるには、できるだけスタミナのあるバッテリーから電源をもらうやりかたです。
乾電池で給電するよりもモバイルバッテリーを使ったり他の車のバッテリーを使うやり方のほうが、バックアップ電源としては安定しています。
接続が確認できるものがおすすめポイント
バッテリー交換のバックアップでよくある失敗事例が「接続できていると思ったらできていなかった」という接続不良に関するものです。
その点に関しては「今は接続できてますよ」という表示が出るようなアイテムのほうが、安心してバックアップを気にせず作業に専念することができます。
価格もいろいろありますが、DIYでバッテリー交換をするとなると、バッテリーの購入費がずいぶんと安く上がるので、確実にバックアップできるものを購入しても元を取ることはできるでしょう。
バックアップに失敗してしまうパターン
これから紹介するのはバックアップに失敗してしまった例ですが、失敗例を知っておくことでリスクを下げることができるので紹介しておきます。
接続が確実にできていなかったケース
↑ かなり年代もののバックアップ用のケーブルですが
接続が上手くいっていなかったのか、
たまにバックアップが飛んでしまっていたことがありました。
シガーソケットの接触不良
バッテリーバックアップの失敗例でかなり多いのがシガーソケットから電源を供給するときにソケットのプラス端子側がうまく接触していないケースです。
しっかりと差し込んでいたつもりがコードのあたりを触っているうちに数ミリ浮いてしまっていてプラス端子が中で離れてしまっていることがあります。
OBDカプラー接続が抜けていた
自己診断機能の内容を確認するためのOBDカプラーからバックアップ電源を供給するやりかたは手軽で失敗が少ないやりかたです。
ただ、カプラーに抜け防止のツメがないのでコードを引っ張ると意外と簡単に抜けてしまいます。
できれば接続ができていることが確認できるインジケータランプがあるものを使って、バッテリー端子を外す前に再度確認しておきたいところです。
ワニ口クリップの接触不良
バッテリーの端子に直接電源を入れるやり方では、ワニ口クリップでプラス端子とマイナス端子をはさみますが、クリップのバネが弱いものだと接続できていないことがあります。
小さなタイプのクリップではとくになりやすく、バッテリー端子の丸い部分と形がそぐわないと面でなく点でしか接触できていないときはうまく接続できていないことがあります。
ルームランプが点灯したまま
これもよくある失敗事例で、室内のシガーソケットやOBDカプラーにバックアップ電源を接続するためにドアを開けていたらルームランプが点いたままのパターン。
とくに複数のルームランプやマップランプが点きっぱなしだとバックアップ電源がすぐに上がってしまいます。
ドアの内側にあるカーテシランプなども要注意で、基本的には窓ガラスを開けてドアを閉めてから交換作業を始めることが望ましいです。
とくに屋外で作業をするときはドアが開いたままだとなにかと事故になりやすく、風でドアが動いてしまって傷や凹みができてしまうことにもなります。
ストップランプを点灯させた
初心者の整備士がたまにやらかすのが、不用意にブレーキペダルを踏んでしまってバックアップ電源が落ちてしまうことです。
車のストップランプはかなり明るく点灯する灯火なのでそれなりに電気を消費します。
ルームランプなど比にならないくらいの電気消費なのでブレーキペダルを踏んだ瞬間に乾電池などのバックアップ電源なら落ちてしまいます。
作業中にバックアップ電源が上がっていた
乾電池などでバックアップをする場合は要注意で、バッテリーを外してから新しいバッテリーを取り付けるまでに時間がかかってしまうとバックアップ電源が力尽きていることがあります。
ヒュージブルリンクが高額だった件
僕が直に見たことのある事例で高額修理になってしまったのが、クラウンアスリートだったでしょうか?長期間放置で完全にバッテリーが上がってしまった車のケース。
エンジンが掛からないのでブースターケーブルを接続してエンジン始動させようとしたところ、作業者によると「ボディーアースに触ったかも・・。」ということでした。
その後エンジンはいっこうに始動せず、複数の整備士でしらべていくと、エンジンルームのヒューズボックスの奥のヒュージブルリンクがショートして溶断していました。
ところがこのクラウン、ヒュージブルリンクが単体ではなく、一体型のユニットになっていて、まるごとを交換することになり、たしか5万円くらいしたように記憶しています。
この話、エンジンをかけたままの交換作業ではありませんが、同じことになる可能性はあると思います。
高級車ほどトラブルがおきると
部品代や修理費が高額になることが多いですね。
まとめ
今回は車のバッテリーを自分で交換する際に大事なバックアップ電源のつなぎ方や注意点のお話でした。
・オーディオは事前にOFFにしておく
・運転席の窓を開けてドアは閉めておく
・ルームランプ、マップランプ、トランクルームなどの照明すべてOFFにする
・カーナビに重要な情報がある場合は別のメディアなどに記録しておく
バッテリーを外す前にしっかりと準備をして落ち着いて作業すれば難しい作業ではありません。
それではみなさま、ご安全に。
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