今回はスズキのエブリィやエブリィワゴンで、上り坂で白煙が出て焦げ臭くなるという事例のお話です。
とはいえ、ターボがついていないエブリィバンやキャリーでも無関係ではないお話です。
さらに言えば、上り坂で白煙が出るというのは別の車でもよくあることですので、他の車種にお乗りのユーザーさんにも参考になると思います。
まず先に結論というか原因を言えば、エンジンオイルの管理が悪い車ほど起きやすい故障です。
エブリィから白煙が出る原因
ターボが故障して白煙を出す
エブリィワゴン、つまり乗用ナンバーのエブリィはすべてターボ車で、ターボが壊れるとマフラーから白煙が出ることがよくあります。
ただ、今回のお話のメインは『上り坂で白煙が出て焦げ臭い』ということなので、タービンブローに関する事例ではありません。
タービンの故障で白煙が出るケース
そもそも、タービンに不具合が出て白煙が出る場合は、ターボの内部からエンジンオイルが入りこみ、燃焼室で燃えてマフラーから白煙として出ていきます。
つまり、白煙はマフラーから出てくるわけで、車の周辺から焦げ臭いニオイや白煙がでることはありません。
※タービンブローに関するお話はまた別の記事にてご説明します。
ターボが原因なら上り坂じゃなくても白煙は出る?
タービンが壊れたことで白煙が出る場合は、
・エンジン回りからは白煙は出ない・上り坂でなくても白煙は出る
といった感じで、わりと判断がしやすいことがあります。
そのうえ、いくらエンジンを暖機しても空ぶかしでは白煙はあまり出ません。
タペットカバーパッキンからのオイル漏れ
今回の「白煙が出る」「焦げ臭い」の原因としての大本命がエンジンの上側にあるタペットカバーのパッキンからのオイル漏れです。
パッキンから漏れたエンジンオイルが焦げていた
エンジンオイルは可燃性の油脂ですが、引火するほどではありません。
とはいえ、エンジンオイルが高温になったエキゾーストマニホールドやマフラーに付着すると、焦げ臭いニオイとともに「もわもわ」と白煙も立ちのぼってきます。
つまりエンジン本体から漏れたエンジンオイルがすぐ真下にある遮熱板などに付着して焦げていたことが白煙の原因です。
しかもエブリィの場合エンジンが左側に傾いたように搭載されているので、車体の左側のほうに集中して漏れたエンジンオイルが流れていくようになっています。
エンジンの左側と言えばエキゾーストマニホールドやタービンが取りまわされているため、さらに高温になりやすい部分です。
タペットカバーとタービンが近い
タペットカバーから漏れたオイルがターボチャージャーユニットの近くに流れ込んでいくことで、焦げ臭いニオイが出やすくなっています。
高温になるタービンに近いからこそ、タペットカバーのパッキンが劣化してオイル漏れが起きやすいのかもしれないと思うこともあります。
スバルの水平対向エンジンのオイル漏れの記事でもお話したことですけど。
車が上り坂で焦げ臭いニオイを出す原因
上り坂はエンジンに高い負荷をかける
オイル漏れを起こすと、漏れたオイルがマフラーやマニホールドに付着することで白煙が出たり焦げ臭くなることがあります。
これはエンジン周辺が高温になるほど発生しやすいのですが、エンジンが高温になるのはエンジンがたくさん仕事をしている時でもあります。
たくさんの荷物や人を乗せているときや、高速道路を法定速度いっぱいで走らせているときはエンジンに高い負荷をかけています。
とくに上り坂を走行しているときはエンジンにかなり高い負荷をかけています。
そのぶんエンジン周辺は高温になっているので、普段よりも漏れたオイルが高温にさらされてしまい、白煙と焦げた臭いが多く発生します。
普段から白煙は少しづつ出てる?
エンジン周辺の温度が高いほど焦げた臭いなどは出やすくなりますが、夏場の炎天下で渋滞にはまったときや高速道路のサービスエリアなどでも白煙は発生しています。
ただ、もっとも顕著にこれを感じるのが上り坂などで、車のスピードがあまり出ないこともその原因になっています。
上り坂はスピードが出ない。だから臭いに気づきやすい
走行風が当たらないのに高負荷
上り坂ではスピードが落ちていくことも多く、その分エンジンルームにも走行風が入ってきません。
上り坂ではエンジンに高い負荷がかかりつつ走行風でエンジンやラジエーターの冷却効率も落ちていることでオーバーヒートになりやすい状況です。
とくにエンジンルーム周辺からの焦げ臭いニオイなども、走行風がしっかりと車の前面から後ろにかけて通過していけばあまり気にならないことも多いです。
高速道路ではエンジンに負荷をかける走行をしていますが、スピードが出ていることもあり白煙も焦げ臭いニオイも気にならないのです。
ようするに、普段から白煙も焦げた臭いも少しは出てますが、走行風のおかげでエンジンルームに溜まらないだけなのです。
上り坂という、高負荷でスピードが出ない走行条件だからこそ運転手にもわかるようなレベルになっているんですよね。
エブリィなどのキャブオーバータイプは臭いが気になりやすい
運転席とエンジンが近いというデメリット
エンジンルームから発生する臭いが気になる場合、エンジンと運転席が近いケースが多いように思います。
とくに今回のスズキのエブリィのように、運転席の真下にエンジンがあるような「キャブオーバータイプ」の車の場合、エンジン周辺の臭いが車内に入ってくることがあります。
そのうえ走行距離が多くなりシートの下側とエンジンルームとの継ぎ目のパッキンが劣化してきたりすると、エンジンからの騒音や異臭なども室内に入ってきやすくなります。
タペットカバーは助手席の真下にある
エブリィの場合はエンジンが縦置きで左にバンク(傾いている)しているので、タペットカバーパッキンからのオイル漏れは運転席に近いです。
それだけに車が上り坂で斜め上の状態になっていることで、エンジンルームの前側上方に白煙や臭いがとどまったままになるのかもしれません。
今回の事例は、以前からエブリィにお乗りのご夫婦でしたが、運転していた奥様が「上り坂ですごい焦げた臭いがしたからビックリした!」とおっしゃってました。
オイル漏れが発生しやすい原因
劣化したエンジンオイルはパッキンを劣化させる
別の記事で書く予定ですが、今回のエブリィワゴンオイル漏れ修理はタペットカバーパッキンの交換となりました。
エンジンオイルの交換を定期的にしないと、劣化したエンジンオイルがゴム製のパッキンの劣化を早めてしまう傾向にあります。
さらに、劣化したエンジンオイルはエンジンの密閉性を下げてしまうため、燃焼室から吹き抜けてくる「ブローバイガス」が増加し、タペット内部の内圧が上昇することで更にオイル漏れが進んでしまいます。
ちなみに、このエブリィワゴンの場合は、エンジンオイルの交換を10,000キロ近くサボっていた時期もありました。
【まとめ】スズキ・エブリィで起きた事例
上り坂で白煙が出て焦げ臭いニオイがする原因
・エンジン上部のタペットカバーからのオイル漏れが原因になりやすい
・タペットカバーとタービンが近いのでオイル漏れしやすい
・タペットカバーからのオイル漏れはエンジン周辺から煙が出る
・ターボが壊れた場合の白煙はマフラーから煙が出る
上り坂で白煙が出やすい理由
・上り坂なのエンジン負荷が高い
・スピードが出ていないので走行風で冷却されにくい
・エンジン周辺に走行風があまり入らないので白煙や臭いが出ていきにくい
タペットカバーからのオイル漏れ修理について
エブリィの場合は助手席のシートをはねあげてエンジンルームにアプローチします。
エブリィやエブリィワゴンのタペットカバーパッキンの交換に関する記事を参照してください。
※近日公開予定です
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