今回は日産のノート(E11)の不具合のお話です。
お客様への問診によると、走行中に突然エンジンがストップし、そのまま惰力で走行、路肩に停車したが、エンジンはすぐに再始動できたそうです。
エンジンが止まるというのはただ事ではないのですが、整備士からすれば珍しいことでもありませんし、走行距離が増えてくればそのリスクも高くなります。
日産ノートのエンジンが止まる事例
[DBA-E11]エンジン型式HR15
今回の事例は、走行中になんの前触れもなくエンジンが止まり、そのまま惰力だけで路肩に車を寄せた状態になってしまったというものです。
【原因】P2138アクセルポジションセンサー
今回のノートの不具合の結論を先にいうと、アクセルポジションセンサーという、いわゆるアクセルペダルそのものが不良でした。
お客様との問診内容
運転手は男性で、比較的落ち着いていたので、少し落ち着いて再度エンジンを始動しようとしたところ、なんの問題もなくエンジンがかかってしまったとのことでした。
その話を聞いていて整備士の僕が感じたことは、『すぐにエンジンが始動できたということは不具合は一瞬だけ起きる?』ということです。
一瞬だけ起きるということは、なにかが物理的に壊れたり外れたりするような、一度壊れたら壊れたままになるようなことではないといえます。
電子制御にはよくあるトラブル
お客様に説明するときによくする例えとして、『車の電子部品がいつ壊れるかなんて整備士でも予測できません。パソコンやスマホがいつ故障するのかがわからないのと同じで。』
こんな感じで電子部品の故障の確率や頻度について、先に説明することが多いです。
実際、たった一度だけ起きた不具合に対して二週間くらい車をお預かりして試運転をしたこともありました。結果はわからずじまいでしたが。
予防整備という考え方
今回の場合、走行中にエンジンが止まるというかなり重大な症状なので様子を見ていただくという提案は難しく、ご本人もかなり不安に感じていました。
オフボードテスターで故障履歴を呼び出してみると、アクセルポジションセンサー異常というエラーコードを検出していたので、該当する部品の不具合が怪しいことは確かです。
とはいえ、一度だけの症状で決めつけると単なる周辺の配線や接続部分の不具合ということもあり得るので誤診の可能性もあります。
こんな時、僕ならお客様に現状の説明をするとともに、『とりあえずその部品を交換してみませんか?』と勧めることもあります。
ただし、あまりにも高額な部品や修理費がかかるようなケースや、不具合が起きても運転手や周辺に対して重大な被害なないようなケースならこの限りではありません。
アクセルポジションセンサーは14,000円ほど
エンジンが走行中にストップしてしまうというリスクと、交換する部品の価格を比較してみて、今回は「とりあえずその部品を交換してみましょう」ということになりました。
お客様も不安に感じていましたし、センサーの交換費用に関しても「それで故障のリスクを回避できるなら」というお考えでした。
もしもそれで不具合が解消できない場合は、部品本体ではなく、その前後の配線などに問題があるという仮説を立てることもでき、実際はほぼその流れでトラブルシュートは完了していきます。
エンジンが止まることはなくなった
その後、試運転をしたりアイドリングで放置しておいたりしてもエンジンが止まるような症状は発生せず、お客様に車をお返ししても不具合の連絡はありません。
整備士にはよくある、「たぶん大丈夫なんだろうな」ということはよくあるのです。お客様からの「調子よく走ってるよ」という報告をいただけることはほとんどありません。『便りがないのがいい便り』の状態ですね。
急速TAS学習も忘れずに・・
アクセルポジションセンサーの交換作業は簡単に終わり、あとは日産車ではおなじみの急速TAS学習をしていきます。
急速TAS学習とは、日産車でよくする作業ですが、スロットル本体やエアフロメーターなどの、エンジン制御をするうえに重要な情報を検出しているような部品を交換したときに必要な作業です。
作業とはいっても、外部診断機を車に接続して、「大事な部品を交換したから学習しなおしてね」という指示を車のECU(メインコンピューター)に出すだけです。
センサーの不具合で走行中にエンジンが止まる原因
コンピューターが補正できなくなる?
エアフロメーターやアクセルポジションセンサーなどが不具合になった状態になると、ECU(メインコンピューター)は、「フェイルセーフモード」という、緊急モードになります。
フェイルセーフになるとエンジンの回転なども制限されてしまい、とりあえずエンジンが止まらず、なんとか車を走らせることができる最低限の状態になります。
ところが、いきなりセンサーからの信号がまったくなくなった場合や、異常な数値を検出した場合など、ECUの制御できる範囲を大きく外れた情報が入力されたり、まったく入らなくなるとフェイルセーフモードに移行できずエンジンが止まってしまうことがあります。
今回のように運転手がアクセルペダルを踏んで走行している状態から、いきなりアクセルポジションセンサーから異常信号が送られたり、信号が消えたときがまさにこんな状態です。
あくまでも一瞬の不具合に対する現象なので、車を停めて再始動させようとイグニッションスイッチを回せば、いとも簡単にエンジンがかかってしまったのでしょう。
アクセルポジションセンサーが不良になる原因
今回の日産ノートの不具合ですが、センサーが「ごくたまに不具合を起こす」という、再現性の低い事例でした。
センサーを交換しなくてもしばらくはなん問題もなく走行できる可能性もありましたし、もしかしたら一年以上も不具合だ出なかったかもしれません。
電子部品は気まぐれ?
アクセルポジションセンサーの付け根には運転手がどれくらいアクセルを踏み込んだかを細かく検出できるような機構が付いています。
たとえば0から100までの100段階の信号をECUに送ることができれば、100通りの細かいアクセルワークができることになります。
↑ ゲームのコントローラーのアナログスティックみたいなものですね。
ところが、何度もアクセル操作をしているうちに電子部品を構成しているトランジスタやプリントカードとのはんだ付けなどに通電不良やドランジスタのパンクなどが起きます。
原因は熱が入りやすい場所や部品自体が発熱する、それから振動を繰り返し与え続けるなど、さまざまな要因があります。
まとめ
トラブルを避ける秘訣
今回のような、走行中にいきなりエンジンが止まって原因がわかりづらいような不具合は、どのメーカーのクルマにも起こりうることです。
ただ、「いつどこでエンジンが止まるかわからない」ということは、一般ユーザーさんにとっては非常に不安ですし、なかには、「このクルマって、もう寿命ですかね?」と聞いてくるお客様もかなりいます。
たしかに電子部品を多用している現在の自動車では、まるでいたちごっこのように故障が連続することもあり、走行距離が多く年式が古い車ほどそのリスクは高いです。
そのことを考えると、ある程度の走行距離、年式で車の乗り換えをすることが、予測しづらい不具合に備えることだといえます。
10年・10万キロのどちらか早いほうで
車検や故障診断をしていると、お客様から「いつ、どのタイミングで車を乗り換えるといいの?」といったご質問をされることがよくあります。
この質問に対しては、ざっくりと『10年・10万キロのどちらか早いほうで乗り換えましょう』という感じでお答えしています。
ただし、車種によってはもっと長くトラブルなく乗れるケースもありますし、一概には言えないのですが、ケースバイケースな話をするとお客様には小難しくなってしまいます。
堅実に車との付き合いをしていきたいのであれば、普段のメンテナンスをしっかりと管理しつつ、『古くて酷使した道具は壊れやすい』という認識も持っておく必要があります。
車の買い替えには高額なコストがかかり、古くて走行距離が多い車に乗り続けることは、故障するリスクと付き合うことになります。
高額な修理や事故を回避しつつ車の買い替えとのバランスを考えながら、適正なリスクを取ることを意識することも大事なのです。
コメント
以前、NE11型ノートを会社で乗っていて社用車ということもあり走行距離は20万キロを等に超えてました。
ガタは来ていましたが走行には支障のない部分でした
が、3年前の冬に急に4wdの警告灯が点灯し2wdにして帰ったことがあります。
北海道の豪雪地帯の夜を4wdが使えない状態で帰るという決死の思いでした
その後は車検が近いというのもあり、使われていなかった別の車両(NT31)を使い今も使っています
ノートは車検で直したのか春には別の人が使っていましたが、その半年後単独事故で廃車になりました…
という一連のことをブログを読んで思い出しました笑
タカハシさま
コメントをありがとうございます^^
社用車だと、どうしても走行距離が多くなり、ファミリーユースよりも過酷な使用条件になってしまいますよね。
僕もたくさんの法人様の社用車を整備してきましたが、修理をするタイミングやコストのかけ方も会社様によってずいぶんと違いました(笑)
それにしても、豪雪地帯を二輪駆動で走行するのはかなりヒヤヒヤされたことでしょう。