電気自動車などを除くほぼすべての車にはエンジンが搭載されていて、エンジンは冷却水で冷やされています。
エンジンの冷却装置といえばラジエーターですが、そこにセットされている「ラジエーターキャップ」にはあまり注意がいきません。
ラジエーターキャップはじつは非常に重要な役割をしていて、本来の機能が失われるとエンジンのオーバーヒートにも繋がります。
ラジエーターキャップの点検方法とは
エンジンが熱いときには絶対に開けない
ラジエーターキャップはラジエーターを始めとする、冷却水が循環する内部の圧力を一定以上の圧力にならないように制御することがそのおもな役割です。
もしもエンジンが暖まっているときにラジエーターキャップを外すと、大気圧まで圧力が下がった冷却水が一気に沸騰することがあり、高温の冷却水が吹き出すことがあり非常に危険です。
そのため、ラジエーターキャップの点検をするときは必ずエンジンが冷えているときにするようにしましょう。
大事なのはラジエーターとの密着
ラジエーターキャップはラジエーターの一部といってもいいくらい、冷却装置の重要な役割を果たしています。
ラジエーター本体との密着度が低くなっていると、キャップの取付面から冷却水が漏れてくることもあります。
また、加圧するための弁を押し下げているバネの部分が本来の力でなくなると、ラジエーター内部の内圧が低い状態でも冷却水をリザーブタンクに戻そうとしてしまいます。
そのため、十分な冷却機能が確保できないことがあるので、ラジエーターキャップを外したら、弁の部分を指で押してみて、なめらかに動くかどうかを確認しておきましょう。
ラジエーターは消耗品
そもそも、ラジエーターキャップは高温にさらされるうえに、重要な弁の部分がゴムでできているため、経年劣化で硬くなってしまいます。
点検をすることはいいことではありますが、もしも二年以上交換したことがないのであれば、交換してもいいでしょう。
ラジエーターキャップの交換時期はどれくらい?
一年ごとは少し早い?
ラジエーターキャップのメーカーでは一年ごとの交換を推奨していますが、新車から5年以上経過している場合でも問題なく使用できていることもよくあります。
民間車検場では、車検のたびにラジエーターキャップの交換をユーザーにすすめているとこもありますが、二年ごとくらいなら妥当かもしれません。
とはいえ、年間走行距離やエンジンにどれくらいの負荷をかけているかによってもラジエーターキャップの交換サイクルは違ってもいいと考えています。
整備士が考えるラジエーターキャップの交換時期
僕自身が整備をしていて思うのが、ラジエーターキャップが正常に機能しているかどうかは、リザーブタンクの冷却水の液面の変化で判断することができるということです。
リザーブタンクは大事なチェック項目
リザーブタンクとは、ラジエーターの内圧が上がってきたときに、一時的に冷却水を逃しておくためのタンクです。
エンジンが完全に冷えている状態なら、リザーブタンクの液面は、上限と下限の間くらいにあるのが望ましいです。
エンジンが暖まってきて、ラジエーターの電動ファンが作動するくらいに冷却水の温度が上がった来た場合は、リザーブタンクに冷却水が逃されているため、液面は上昇しています。
このときに、冷間時のリザーブタンクの液面とあまり変化がない場合は、ラジエーターキャップがきちんと内圧を逃してくれていない可能性があります。
その一方で、エンジンが冷えていても、リザーブタンクの冷却水の液面が下がっていない場合は、リザーブタンクに逃されていた冷却水をとりもどせていないことになります。
ようするに、エンジンが冷えているとき、電動ファンが回転するくらいにエンジンが暖気されているときなどで、リザーブタンクの内部の冷却水の量が変化しないといけないということです。
もしも変化がない場合は、ラジエーターキャップが機能していない可能性がありますので、すぐに交換してみることが望ましいです。
サーモスタットの異常に気付くことも
今回のお話からは少し余談になってしまいますが、ラジエーターキャップの点検や冷却水の循環が正常かどうかをチェックするためにリザーブタンクの液面の変化や、それぞれの水ホースの温度を確認していると「あれ?」と異常に気がつくことがあります。
たとえば、電動ファンがなかなか回転しないので、ラジエーターの上部につながっているアッパーホースと、下部につながっているロアホースの温度差を確認することがあります。
すると、本来はラジエーターの上から流れ込んだ冷却水が、ラジエーターを通過するときに冷却されていくので、アッパーホースよりもロアホースのほうが明らかに温度が低いはずなのに、あまり変化がないことがあります。
つまり、アッパホースがあまり熱くないという現象が起きているのですが、この場合は、サーモスタットと呼ばれる、冷却水が循環する経路をエンジンが冷えているときと暖まっているときで切り替えている部品が壊れていることがあります。
この場合は「オーバークール」とよばれる現象で、サーモスタットが開いたままで動かなくなっている状態になっています。
冷却水の状態にも気をつける
オーバーヒート後はキャップも交換
ラジエーターキャップを外してみると、冷却水が焦げ臭いことがあり、これはエンジン内部の冷却水がオーバーヒートを起こしたことが原因です。
いちどでもオーバーヒートをすると、ラジエーターキャップにもダメージを受けていることがあり、水漏れやサーモスタットの開閉異常などでオーバーヒート気味になったことがある場合は、水漏れ修理などの際は必ずセットでラジエーターキャップの交換もするようにしています。
冷却水も定期的な交換が望ましい
今回はラジエーターキャップにフォーカスしたお話ですが、車の健康状態を維持するためには、冷却系統全体のチェックも大事です。
とくに、冷却水(クーラント)は一定期間経過すると、泡立ち防止機能や防錆機能が失われていくだけでなく、ゴム部品を劣化させてしまうこともあります。
そのため、ラジエーターに直接つながっているアッパーホースやロアホースはもちろん、ラジエーターの弁の部分のゴムの劣化を早めてしまうこともあります。
つまり、冷却水が劣化しきってしまう前に交換することで、冷却経路を内部から保護することにつながるのです。
まとめ
ラジエーターキャップは、車のメンテナンスとしては、やや忘れられがちな部分ですが、もしも不良になってしまうと、オーバーヒートの原因になったり、ラジエーターの破損につながることもあります。
数年以上もラジエーターを交換したことがないのであれば、簡単でローコストでできるメンテナンスですので、交換してみるといいでしょう。
とはいえ、正常な状態のものを交換した場合、新しいものに交換してもなんの変化も感じられないのが普通です。
普段から愛車のエンジンルームをチェックすることはなかなか難しいですが、冷却水の量がどれくらいなのか、エンジンの暖気後と冷間時で変化があるのかを見比べることで、なにかしらの異常に気付くことができるかもしれません。
自分で管理をするのは大変ですが、交換の目安としては車検のときに交換が必要かどうかを整備士やサービスフロントに聞いてみるのもいいでしょう。
この場合、無理に高性能なものを使う必要はありませんし、キャップの内圧が既定値と違うものにするようなことは避けるようにしましょう。
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