ワゴンRのメーターにオイルランプがチラチラ点灯した本当の原因

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今回は整備士としての体験談としてのお話で、

前回のスズキ・ワゴンRのK6A型のエンジンがいきなり焼き付きついた話の続きです。

エンジンオイル交換をかなりサボっていた女性のお客様に、

よかれと思ってエンジンフラッシングをおすすめしました。

ところが作業直後に、エンジンから異音と振動が発生、

交差点で車が止まるという、とんでもないトラブルが発生してしまいました。

その原因とは・・・

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オイルストレーナーが詰まるという現象

大量のスラッジが流れ込んでいた!

エンジンオイルパン内部のスラッジ

お客様から、エンジンオイルの警告灯が点灯してエンジンが止まったと電話で報告を受けてから、少し待つとお客様がワゴンRに乗って工場に帰ってこられました。

エンジンをかけてみると普通にエンジンはかかるのですが、メーターの中ではエンジンオイルの警告灯がちらちらと点灯します。

オイルプレッシャーランプ警告灯1

さらにエンジンの回転を上げるとガラガラと大きな音をしています。

そのワゴンRの運転手である奥様が、

「ここで作業するまではこんな変な音はしなかったのに・・・」

と不信感をあらわにしていました。

そこで症状を細かく確認するためにお客様にお願いして車を預かることになりました。

お客様からは不信感をもたれることもなくすんなりと車を預からせてもらえることになりました。

これも最初の段階で、エンジンオイルがきちんと入っていたことやオイル漏れや、ドレンボルトの閉め忘れがなかったことも幸いしました。

まず最初にした事はエンジンオイルがどれほど汚れているかと言うことで、一旦交換したはずのエンジンオイルを抜いてみました。

するとフラッシングオイルを抜いたときと同じような、きれいなエンジンオイルが抜け出てきました。

ただ少し気になったのがオイルが抜けながら最後のほうになると、少し黒ずんだオイルが出てきたことです。

結局これだけでは結論が出なかったので、エンジンの下側のエンジンオイルパンを丸ごと外すことになりました。

スズキのこのK6A型エンジンの場合は、オイルパンを外す際にフロントチェーンカバーやタイミングチェーンを外さなくてもいいので、かなり効率よく外すことができました。

そして外したオイルパンの底を見たとき驚愕の事実が発覚しました。

オイルパンの底にびっしりとヘドロのようなスラッジが溜まったままになっていたのです。

オイルドレンの位置がちょっと上にある?

つまりこのエンジンの場合オイルパンの底が深すぎてオイルドレンを外してもそこに溜まったヘドロ状のスラッジは抜け出ることがないと言う事だったのです。

 

外側から見たオイルドレン

↑外側からみたオイルドレンはこんな感じでエンジンの下側についています。

K6A型エンジンオイルパン2

分解したオイルパンの内側からみたオイルドレン。少し見にくいですが、ポツリと穴のようになっているのがドレンです。

この画像は上から撮影していますが、ドレンのさらに下側の、オイルパンの底に大量のスラッジが溜まっているのが見えます。

 

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タイミングチェーンが運び込んだスラッジ

K6Aタイミングチェーン

そしてエンジン側のエンジンオイルを吸い上げるオイルストレーナーと言う部分を見て、今回の不具合の全てを理解しました。

オイルストレーナーと言うのはフィルター状になっていて、きれいなオイルだけをエンジンの内部に吸い込むようになっています。

ところがこのエンジンの場合オイルストレーナーがオイルパンの底のギリギリのところにまであるので、ヘドロ状のスラッジを一気に吸い込んでしまったのだと考えられます。

結果的に、エンジンフラッシングでエンジンの内部を洗浄したことによりエンジンのヘッド部分の大量のスラッジがタイミングチェーンの回転とともにオイルパンに流れ落ちて溜まってしまったようです。

焼き付いたエンジン

タイミングチェーンが、まるでベルトコンベアーのようにエンジンの上側から下側のオイルパンにめがけて大量のスラッジを送りこんだわけです。

これもエンジンフラッシングの清浄分散作用が高すぎることによるリスクといえます。

今まで動くことのなかった大量の汚れが一気にオイルパンに流れ込み、しかもオイルドレンからも抜け出ないような深い場所に溜まり、その近くのオイルストレーナーの網の部分が全て詰まってしまったのでした。

さすがにメーカーもこんなことは想定していないでしょうね。

後で先輩メカニックにかなり厳しく言われましたが、エンジンオイルが非常に汚れたエンジンには、エンジンフラッシングはするべきではないとの事でした・・・。

ではこの場合、どうすればよかったのか考えてみました。できることといえば、エンジンオイルパンを外して直接汚れをこそげ落とすことだったと思います。

なぜならエンジンオイルが一瞬でも間に合わない状態でエンジンに負荷をかけてしまうと、メタルと呼ばれるエンジンの軸受の部分が致命的なダメージを受けてしまいます。

エンジンの回転を上げたときにガラガラと大きな打音を出していたのは、このメタルが傷ついていたからです。

その後のお客様とのやりとり

K6Aエンジン載せ替え
エンジン下側のエンジンオイルパンを外すことで、大量の汚れがオイルストレーナーを詰まらせてしまったことが判明し、そのことをお客様にお伝えしました。

百聞は一見に如かず、分解した状態のエンジンをお客様ご夫婦に見ていただくことになりました。

エンジン内部の凄まじい汚れを見たご主人様の第一声が

「うわー!これヒドイな。お前、いつからオイル交換してなかった?」

でした。

どうやら僕の説明をしっかりと理解していただけていたようで、エンジン内部で突然おきた「心筋梗塞」に納得していただけました。

「え・・・でも・・・オイルがキレイになったのに・・・あんな・・・」

奥さまは少しバツが悪そうにしながらも、完璧に詰まっていたオイルストレーナーをじいっと眺めていました。

ここまでを読まれた方からすると、スズキのK6A型エンジンは弱いのかな?と感じたかもしれません。

エンジンにとってエンジンオイルは血液のようなもので、1トンちかくの車を動かすための動力源となるため、高い負荷をエンジン内部に受けます。

そのためエンジンオイルが一瞬でも間に合わなくなれば潤滑不足となり、軸受のメタル部分が焼き付いてしまうのです。

スズキのK6A型エンジンは、かなりの期間作られていたスズキの軽自動車に搭載される主力エンジンでした。

それ以前の主力エンジン「F6A型」よりもトータルでは改良されていますし、タイミングベルトを廃止してタイミングチェーンを採用したことで整備性もよくなっています。

今でもそのお客様とは仲良くして頂いていて、ご本人様も笑い話として話題になることありますが、僕にとっては悪夢のような出来事でした。

 

 

 

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コメント

  1. 奥山則彦 より:

    とても興味深く記事を拝見しました。
    実は我が家のワゴンRもオイルレスをやってしまい、どうやらピストンクランクの軸受け部のメタル(?)を痛めてしまったようで、修理工場から再起不能と判定されました。
    下手をするとメタル部が割れてピストンが飛び出す事もあると、言われました。
    この時、メーターパネルには「エンジンマーク」が点いた状態でした。
    これは、何とかこのまま利用していく方法はないですか?。今現在、オイルを一杯まで入れて、かつ、過走行エンジン用のオイル添加剤も入れて、そうっと舞わしてたまに乗っています。
    今、エンジンマークは消えています。

    • サボカジ サボカジ より:

      奥山様

      コメントをありがとうございます。

      残念ながら、ほんの一瞬でも油圧不足にしてしまうと、クランクシャフトやカムシャフトのメタルに損傷を受けてしまうことがほとんどです。

      メーターに点灯したエンジン警告灯は、ノックセンサーなどが異常を感知したのかもしれません。

      一度、整備工場でエンジンマークの検出履歴の内容を確認してもらうことをおすすめします。

      アイドル状態では問題なくても、エンジンが高負荷になったとたん「カンカン」「カタカタ」などの大きな打音が発生する可能性が高く、軸受部分の焼付きの一歩手前の状態かもしれません。

      少しでもエンジンの吹けが悪くなったり異音が出ている場合ですと、走行するのはやめたほうがいいと思います。

      しばらく様子を見ながら走行してみて、異音もなく違和感なく走れているようでしたらそのまま使用できるケースもあります。

      以上、ご参考になれば幸いです。

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