スズキ・ワゴンRのK6A型のエンジンがいきなり焼き付きついた話

整備士の体験整備士の体験談

整備士を二十年以上やっていると、いろんな経験をすることがあります。

今回は、僕の整備士人生の中でもワースト3に入るくらいの焦りまくった話です。

簡単に言えば、自分が整備したすぐのエンジンが30分後に焼き付いたって話です。

「経験」という知識にもなりましたが「体験」としてはまさに最悪の気分でした。

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オイル管理が悪いワゴンRに起きた悲劇

ドロドロになったエンジンまわり カムシャフト周辺

レベルゲージにエンジンオイルが着かないエンジン

ある日、あるお客様が来店されました。

四十代後半くらいの女性のお客様なのですが、

「しばらエンジンオイルを交換してないので見てください」

とのことで、さっそく車をピットに入れてエンジンルームをチェックすることにしました。

まずボンネットを開けたときの印象が「やけにホコリっぽい」です。

ふだんからほとんどメンテナンスをすることのないエンジンルームは全体的にホコリがまんべんなく降り積もっています。

整備士がエンジンルームに最後に触れたのはいつのことやら、という印象を受けながら、エンジンオイルのレベルゲージを引き抜こうとすると、やたら抜けにくく、「えいっ」って感じでレベルゲージを抜きました。

なぜレベルゲージが抜けにくいのかというと、レベルゲージはエンジンの内部に直結していますので、「ブローバイガス」と呼ばれる、燃焼室から吹き抜けてきた気体状の未燃焼ガスにもさらされます。

すると、「ワニス」と呼ばれるネチョネチョしたエンジンオイルやカーボンなどでできたペースト状のものでレベルゲージがこびりついてしまうことがあるのです。

整備士の予感としては、レベルゲージが抜けにくくなっている時点で、「オイル管理が悪いな」という印象を持ちました。

引き抜いたレベルゲージを見ると案の定「やっぱりね」という、エンジンオイルがほとんどレベルゲージの先端にも着かない状態でした。

健康なエンジンのオイルの量とは

エンジンとレベルゲージ
エンジンオイルの量は、レベルゲージの上限(フルレベル)から下限(ロアレベル)の間にあれば、オイルの量としてはとりあえずセーフな状態です。

ですが、基本的にはエンジンオイルの量は、オイル交換の際にフルレベルにきっちりと合わせています。

まれにモータースポーツをするからエンジンオイルの量を少し少なめにしてほしいと依頼されることもありますが、基本的にはオイル交換をしたらレベルゲージの上限に合わせます。

つまり、エンジンオイルがレベルゲージの半分くらいになっているということは、すでにエンジンオイルが少し減りはじめているということになります。

エンジンの型式によってはエンジンオイルが減っていくこと自体は異常ではないのですが、今回のスズキのエンジン「K6A」に関して言えば、これはよくない傾向にあります。

ましてやレベルゲージの先端にオイルが付着するかどうかの段階とは、エンジンの断末魔が聞こえてきそうな状態といえます。

案の定、エンジンオイルがレベルゲージの先端に着きかねる状態だったのを確認して、かなり古い前回のオイル交換のステッカーを確認すると、約10,000㎞ほどはオイル交換をしていないようでした。

これくらいの距離でエンジンオイルの量が最低レベル以下になっているということは、このお客様は慢性的にオイル交換をやらない方なんだとわかります。

エンジンフラッシンングのやりかた

そこで、このワゴンRのお客様にはエンジンフラッシングをおすすめすることにしました。

エンジンフラッシングとは、エンジン内部の洗浄で、もっとも簡単な方法としては、専用のフラッシングオイルを使用します。

まず古いオイルをエンジン下側のドレンボルトを外して抜き取ります。今回の方もものすごく汚れたドロドロのエンジンオイルが抜けてきました。

抜けてくるオイルがポタポタと滴下するくらいになればドレンボルトを締めます。

あとは通常のエンジンオイルを入れるためのフィラーキャップを外して、フラッシングオイルを入れます。入れる量は通常のエンジンオイルの八割くらいで十分です。

エンジンを始動し、そのままアイドリング状態で5分から10分ほどエンジンをかけっぱなしのままで待つだけ。

整備士にとってはこのエンジンかけっぱなしの時間はわりとありがたくて、その間に次回のエンジンオイルのステッカーを作成したりとか、作業指示書に書き込んだりとかできます。

清浄分散作用の強いフラッシンングオイル

オイルの汚れ具合などでエンジンフラッシングの時間も多少は変えたりしますが、だいたい10分もすればおおよそのエンジン内部の古くて汚れたオイルはフラッシングオイルが取り込んでくれているはずです。

ただ、フラッシングオイルは汚れを取り込む「清浄分散作用」に特化したオイルですので、今まで動くことのなかった汚れの塊のようなスラッジまでも浮かせてしまうくらいです。

そのため、大量のスラッジが一気にエンジンの下側にあるオイルが溜まる部分「オイルパン」に送られてしまうこともあるのですが。

この時の僕はまだ気づいていませんでした。清浄分散作用の強いフラッシングオイルが引き起こすその悲劇を・・・・。

 

無事にフラッシングオイルを抜き切り、オイルエレメント(フィルター)も交換し、新しいエンジンオイルを入れて、いったんエンジンをかけてオイルエレメントの内部までエンジンオイルを行き届かせました。

再度エンジンオイルを規定量まで入れて作業は完了。もちろんオイルレベルゲージを抜いてエンジンオイルの量と色を確認するとバッチリ。

お客様も「あー来てよかった~」と喜んでいました。

ご精算も終わり、お客様をお見送りして次なる作業へと取り掛かり始めます。

ところが、三十分ほどして、そのお客様から電話が入りました。

そこからが悪夢の始まりです。

「交差点を曲がろうとしたらいきなりエンジンが止まりました!!」

 

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突然エンジンがブルブルと振動して異音とともに止まった・・?

電話を替わってもらい、お客様とお話をしました。

そのとき、ある意味でラッキーだったかもしれないことがありました。

それは、そのお客様のご主人さまが同乗していたことです。

メカ弱いと言っていた女性に替わっていただき、電話でエンジンが止まった時の状況を教えていただきます。

「そちらの工場を出たときは普通だったらしいんですがね、私が隣に乗ったときはエンジンがブルブルと振動するときがありました。」

さらに話を聞いていくと

「そのうちエンジンからカタカタって大きな音が出始めたんですよ。」

もう、その時の僕の心臓はバクバクものでした。

「しかもね、メーターの中のオイルのランプがチラチラってついたり消えたりしたんですよ。ちゃんとエンジンオイル入ってんのかなって思って・・・」

オイルプレッシャーランプ警告灯1

(オイルのランプ?いやいや、絶対オイル入れたよな・・・?)

エンジンオイルを入れ忘れた先輩の整備士のことを思いだしながら自問自答しました。

オイルを入れたという行為には間違いなく記憶がある。

ということは、下側のオイルドレンを締め忘れてオイルが道路にぶちまけられたとか?

いやいや、それも絶対にない!

僕の場合、メガネレンチでドレンボルトを締めこむときに二秒ほどドレンとにらめっこするという作業上のルーチンがあります。

オイルドレンをきっちりと締めたかどうかを自分の記憶として焼き付けるための儀式みたいなものです。

記憶は・・・はっきりとある。じゃあオイルエレメントを締め忘れたか・・・?

いや、それもない。

で、この場合、エンジンオイルが入っていたかどうかは非常に大事なことなので、ご主人様にその場でエンジンオイルの量を確認するようにお願いをしました。

はたして・・・

「エンジンオイルはしっかりと入ってます。じゃあなんでだろう・・・?」

この場合、お客様に直接オイルの量を確認してもらったということは非常に大事なことです。

なぜなら、後日クレーム処理というか、作業ミスとしての保証をする際にも、作業ミスの過程を保険会社に報告しないといけません。

それに、お客様の心情としても、エンジンオイルを入れ忘れるという、あまりにも初歩的なミスをされたかどうかというのも、今後のお付き合いというか、整備工場の信用にかかわることでもあります。

この場合、車を整備工場に持ち帰って自分たちだけでオイルの量を確認してしまうと、よりマズい状況になる可能性があります。

つまり、エンジンオイルを入れ忘れたという事実を隠蔽することができてしまうわけで、あとになってからの「エンジンオイルはちゃんと入ってました」という報告は、お客様から不信感を持たれてしまうからです。

整備工場側が確認するまえの最初の確認をお客様本人にしてもらったのはそういう意味があるのです。

とにかくすぐにお客様のところへ積載車でお迎えに行こうと準備をしていたところ、再度、ご主人様から電話がありました。

「もしもし?エンジンの音はうるさいけど、なんとかエンジンはかかりました!」

ご主人様からの電話報告を受け、すぐに馳せ参じることを伝えると、「近いから自走するよ」とのこと。

ほっと胸をなでおろしながらも、エンジンが止まった原因を調べないといけません。

その時の僕は、昼食が喉を通らないくらい精神的に追いつめられていました。

ちょっと文字数が多くなったのでこの続きのお話は別の記事にします。

◆続きのお話⇒ワゴンRのメーターにオイルランプがチラチラ点灯した本当の原因

 

 

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整備士の体験談 車の振動
この記事を書いた人
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