今回はスズキの人気車『アルト:ラパン』を中古車で購入しようとしている方に向けたお話です。
いきなり過激なタイトルで驚かれたかもしれませんが、整備士の僕としての本音でもあります。
とはいえ、ラパンのネガティブな話をするのではなく、ラパンと同じようなことが別の車種でも起きる『傾向』についてのお話です。
僕自身、整備士とクルマの販売員を兼任しているので新車・中古車のラパンを販売したことがあります。
この記事を最後まで読んでいただければ
「なるほど」
「たしかに!」
「でもラパン欲しいな・・」
と思っていただけるかもしれません。
スズキ:ラパンの中古車によく見られる傾向とは
まず今回の記事のタイトルである
『スズキ/ラパンの中古車は買うな?!故障は〇〇なクルマに起きやすい??』
の〇〇なクルマの部分の答えを言ってしまうと、【人気なクルマ】ということです。
では、なぜ人気な車に故障が起きやすいのか、単に販売台数が多いからというわけではない理由をお話していきます。
ラパンによくある中古車の傾向とは
ではなぜ人気な車に故障が多いのかというと、すべての人気車に起きることでもなく、使用するユーザー層で違いがあるということ。
ラパンという車の特徴を言うと
・軽自動車
・価格帯も手頃
・取り回しがよく運転しやすい
・デザインが可愛く女性に人気
ざっくり言えばこんな感じの車で、僕がラパンを販売したのも全員女性でした。
取り回しのいい軽自動車は日常の「足」になる
ラパンに乗っているのが全員女性というわけではありませんし、男性が好んで乗っているケースもあります。
ただ、軽自動車は日常の通勤や買物に使用されることが多く、走行距離の伸び方も短い距離をちょこちょこ乗る方が多いです。
そのため、オイル交換や車検などでラパンを整備していると、走行距離がそれほど伸びていないけどタイヤやブレーキの減りが早い車が多いです。
ストップ・アンド・ゴーを繰り返している車の特徴とは
いわゆる「ちょい乗り仕様」の車によく見られることですが、信号待ちからの発進、すぐに次の信号で止まり、また加速するという走り方が多いです。
これは車の使用条件としてはわりと過酷な部類に入り、エンジンやトランスミッションにも負担をかけます。
とうぜんブレーキやタイヤも加減速をするたびに摩耗していきますし、ブレーキングにともなってブレーキ周りに熱が発生しています。
ラパンのブレーキ性能は問題ありませんが、ブレーキを使う頻度が高いと、放熱も十分できないケースもあります。
ブレーキを多用するとベアリングが痛みやすい?
タイヤの付け根の部分には「ハブ」と呼ばれる車軸があり、ハブの奥にはハブベアリングという部品があります。
ハブベアリングはタイヤを滑らかに回転させるための部品ですが、ブレーキを多用することでハブの周辺の温度が上がったままになります。
すると、ハブベアリングに封入されているベアリンググリスも高温になり粘度が下がります。
この状態になるとベアリングの中にある鋼鉄製のボールの部分の潤滑が十分でなくなることがあり、結果的にベアリングの痛みが早まることになります。
スズキの軽自動車に多いハブからの異音ですが、
ちょい乗り仕様の車に起きやすいですね。
そのため、ハブベアリングの痛みが進んでいる中古車のラパンも多いのですが、中古車として販売した時点では異音が出ていないこともあります。
すると、購入したあとで一年未満くらいで、走行中にどこからともなく「ゴー」みたいな異音が発生することがあります。
とくに前のオーナーの運転方法が急加速と急減速を繰り返すような、少し荒い運転をしていた場合、ハブからの異音も出やすくなります。
短距離の走行はシビアコンディション
故障リスクは人によって違う
一度の走行距離が8km未満である場合は、「シビアコンディション」という使用条件にあたります。
シビアコンディションでの使用は自動車メーカーが想定するよりも故障のリスクが高く、走行距離が少なくてもメンテナンスの頻度を多くする必要があります。
具体的には、エンジンオイルの交換推奨距離やオートマチックフルードの交換など、油脂類は早めの交換が望ましいです。
生活の足として使われ続けると・・・
先述したように、ラパンという車は取り回しがよく価格帯も軽自動車としては比較的に安いモデルもあります。
そのため、買い物や通勤をメインとした使い方をするユーザーさんが多く、「日常に溶け込んだ移動手段」になっています。
とくに仕事や子育てで忙しくしているような女性ユーザーにとって、定期的にオイル交換をするとか、タイヤの空気圧を気にすることは難しいかもしれません。
幸いというか、僕がラパンを販売担当した女性のお客様は、みなさんメンテナンスはしっかりとされている方がほとんどです。
まぁ、僕がしつこく言ってるのもあるかもしれませんけど・・・。
ですが、車検などで入庫するラパンの中には、メンテナンスをほとんどしていないような「乗りっぱなし」なラパンもけっこう多いです。
まず、エンジンオイルは一年以上交換してないなんてことはザラで、空気圧も管理してないのでタイヤは偏摩耗しています。
案の定、後ろのハブベアリングを回してみるとわずかに異音が出始めているし、ハンドルを据え切りすることが多いのか、ブーツのヒビも多め。
エンジンオイル交換するために抜いてみるとオイルの量がかなり減っていてチョロチョロとしか出てこない・・。
走行距離で言えば、まだまだ乗れるはずの6万キロくらいのラパンでもだいぶくたびれてしまった印象のものはけっこうあります。
車検などで車の状態をお客様本人にお伝えすると
「けっこう傷んでるのね。スズキの車って弱いのかしら・・?」
という発言には
(うーん・・・この人の車は高く買い取りたくない)
と思ってしまいます。
ですが、実際はこんな扱いをしてきたラパンでも買い取り業界ではわりと高く買い取られることがかなりあります。
次の章でお話しますが、これこそがラパンなどの人気車におきる「価格と価値のねじれ」なのです。
ラパンの買取価格は適正じゃない?
あらためて、今回のお話の趣旨を振り返ると、「中古車としてのラパンってどうなの?損なの?」という内容です。
上述したように、ラパンは実用的な軽自動車で初心者や女性にも人気が高く、それゆえに整備への意識が低いユーザーが乗っていることも多いです。
そのいっぽうで、ラパンはデザインがよく幅広いユーザー層から支持されていることもあり中古車としての需要が高い車でもあります。
「距離が少ないから調子がいい」とは限らない
それまでのメンテナンスが不十分でも、走行距離が5万キロくらいなら「距離が少ないから故障も少ない」と錯覚してしまうのが人気車の怖いところです。
ですが、5万キロを走行している車とは、それまでのメンテナンスで大きくコンディションの差が出てくる距離でもあります。
もちろん車の買取査定でもエンジンルームやそれまでのメンテナンスを推測して買取額に反映させています。
ただし実際に試運転をして異音などのチェックをすることはありませんし、将来的なトラブルを予測して査定をすることはありません。
すでに調子が悪い部分にはマイナスポイントを付けますが、壊れるかもしれないという可能性にはマイナス査定はできません。
人気車には利益を乗せやすい
買取業者が欲しがる車とは「儲かる車」ということになり、すぐに再販できる「売れやすい車」でもあります。
ラパンのように実用的でデザインがいい車は、展示されていると多くの人の目にとまり、そのまま購入さることもあります。
車に対してデザイン性と維持費の安さを求める人達は「この車、可愛い・・!」という感情から入るため、実物のラパンを見ると購買意欲も高くなります。
そのため、多少のメンテナンス不足が見られるようなラパンでも外装をしっかりと磨いておけばすぐに売れていきます。
もちろん販売してすぐに不具合が出れば保証がきく場合もあり、無償で修理してくれることもあります。
ただ、買い取りと販売しかやっていないような中古車販売業者の場合は、販売した中古車のアフターはあまりよくありません。
購入したあとで異音や不調を申し出ても「それも含めての中古車ですから」みたいな対応をされることもよくあります。
ラパンの中古車によくある故障
スズキの軽自動車の定番トラブルとは
ラパンの正式名称は「アルト:ラパン」で、ベースの部分はアルトと同じ部品が多様されています。
アルトに起きるトラブルはラパンにも同様に起き、同じくワゴンRなどの販売台数が多いモデルにも同じことが言えます。
後ろのハブベアリングからの異音
スズキのど定番のトラブル
リコール対象ではありませんが、走行距離が6万キロくらいになるとよくあるのが走行中に後部座席まわりで「ゴー」とか「シャー」みたいな音が速度に比例してすることがあります。
これがスズキの軽自動車のなかでも前輪駆動をベースにしている車種で起きる「リアハブベアリング」からの異音です。
ただし、ベアリング単体で交換することができるため、異音がしたら交換すればいいだけですが、中古車の場合は一度も交換されてない状態で販売されていることもあります。
エアコンコンプレッサーの異音と不調
高額修理になる可能性が高い
ラパンでよくあったのがエアコンのコンプレッサーから「ガラガラ」とか「キュルキュル」といった異音が発生するトラブル。
最悪の場合、コンプレッサーが内部で破壊されて、コンプレッサーベルトが滑り始め凄まじい異音になることもあります。
この場合、異音が出始めた初期症状ではコンプレッサーを交換することで修理は完了します。
コンプレッサーがどれくらいの距離で故障するかどうかは前オーナーがどんな扱いをしているかでも違うことがあります。
オートエアコンにしたままでエンジンを高回転にするような走り方をしていると、コンプレッサーが壊れる確率も高くなります。
エアコンのガス漏れによる冷え不足
エキスパンションバルブからよく漏れる
これもラパンの定番トラブルですが、室内とエンジンルームの入り口付近にあるエアコンガスを噴射するバルブからガス漏れをすることが多いです。
エアコンガスと一緒にコンプレッサーオイルも漏れているのでエンジンルームから目視で見てみるとすぐに分かることもあります。
修理するにはエアコンガスを全量抜いて作業をするので「真空引き」という作業も同時にする必要があります。
修理費で言えば軽く3万円くらいはかかることが多いです。
CVTからの異音
異音かもしれないけど故障ではないかも
僕が新古車で販売したHE22Sのラパンであったことですが、オートマチックの内部からモーターのような「ウィーン」という小さな音がしていました。
このモデルはATではなくCVTでしたが、CVTのスチールベルトからの音だと思います。
メーカーの保証期間は5年または10万キロの早いほうですが、残念ながら保証期間は切れていたころに発生した異音でした。
大きな異音ではなかったのでそのまま様子を見てもらっていますが、トラブルなく走行できているようです。
ウォーターポンプからの水漏れ
K6A型エンジンの定番
ラパンのなかでもHE21SやHE22Sに搭載されていたK6A型エンジンではウォーターポンプからの水漏れがよくありました。
走行距離がかなり少ないときに漏れていたこともあり、ディーラーで保証修理を依頼したこともあります。
冷却水がウォーターポンプの取付面からにじむように漏れ始め、なかには「ガラガラ」と異音が出ることもありました。
このエンジンはタイミングベルトは付いていないので、10万キロでの長期交換部品のついでに交換することもありません。
オートマチックのオイルパンから漏れ
ATフルードの抜き替えも必要
ラパン以外にもワゴンRなどにもよくあるのがオートマチックトランスミッションのオイルパンからのオイル漏れです。
その後、対策としてオイルパン側に締め付けを均等にするためのステー(?)も準備されました。
ラパンの車検見積もりでよく見る交換部品
ラパンを車検に出したときに見積もりに入ってくる作業はある程度決まっています。
これらの交換部品は中古車として販売されるときに整備してくれていることも多いのですが、そこらへんは業者によっても考え方が違います。
つまり中古車として販売するときに整備をしっかりとしてくれていないと、これらの整備が購入したあとで発生することになります。
ブレーキディスクローター左右交換
ディスクパッドの当たりが原因で偏摩耗
初代ラパン(HE21S)でよくあったのがディスクローターの偏摩耗で、ディスクパッドの当たりが均等でなく、「シャラシャラ」と異音がする原因にもなります。
スパークプラグ交換
長寿命タイプのプラグは意外とコスト高
ラパンのエンジンには長寿命タイプのスパークプラグが3本使用されています。
長寿命プラグは車検の分解点検の項目から外されているのでチェックする必要もありません。
そのため、車検のついてに交換するとしても交換の作業料金は請求されることが多いです。
オイルネータベルト + エアコンベルト交換
6万キロ~8万キロで交換を勧められる
寒い日の朝にエンジンをかけると「キュルキュル」と音がするようになれば交換時期といえます。
といいつつも、ベルトの張りを調整するだけでもいいケースもあります。
ロアボールジョイントブーツ交換
走行距離にかかわらずひび割れ
前輪タイヤの奥に見える「ロアアーム」と呼ばれる足回りの関節部分を保護するためにロアボールジョイントブーツがあります。
ごく自然にゴムとして経年劣化するので気づけばブーツが裂けていることがほとんどです。
ブーツ類は裂けてしまった時点で車検に合格できないので、ひび割れが深いと交換を促されます。
タイロッドエンドブーツ交換
ロアブーツよりは長持ちするかも
ロアブーツの上側付近にあるハンドルを切るためのステアリングロッドの外側にあります。
このブーツも裂けてしまうと車検には不合格で、ロアブーツとセットで交換することもあります。
これらのゴム部品は中古車として販売されるときに予防整備として交換してくれていることもあります。
ラパンの中古を買うならディーラー認定中古車が無難?
人気車の中古車相場は高止まり
実用車という側面もあるラパンですが、デザインのよさもあり、中古車としての相場はやや高めで推移しています。
人気車だからこその強気な価格設定をしている販売店もあり、かなには整備が不十分な「はずれ車」も混ざっています。
人気車種の中古車は割高とはいえ・・・
市場の原理として、欲しがる人が多ければそれだけ相場は上がり、その内容が適正ではない中古車でも売れてしまうことがあります。
とくに中古車の販売をメインにしているような販売業者ならなおさら人気車の強みを理解して価格設定をしています。
ときには「いくらなんでも高すぎでしょ」と思うような中古車もありますが、限定モデルだったり人気のボディカラーだとそれでも売れてしまいます。
スズキのディーラーでスズキ車を買うことの意味
新車とのバランスを取った価格設定
ラパンはスズキのアルトをベースに作られた車であり、スズキ系のディーラーでも中古車として販売していることもよくあります。
ただ、ラパンは現行モデルが新車として販売されていることもあり、いくら相場が高い人気色やグレードでも高くしすぎることはできません。
そこは価格が決まっている新車を販売しているからこそのバランスもあり、むしろディーラーのほうが人気車の中古車は価格が良心的かもしれません。
メーカー保証も付いている
スズキだけではありませんが、メーカーからの保証は一般保証は新車から3年または6万キロ、特別保証は5年または10万キロです。
中古車とはいえ、ディーラーで中古車を購入する際にはこれらの保証がしっかりと残っていることが多いです。
ディーラー系以外だと、オークションなどで新しい中古車を落札してきてもそのままではメーカー保証は受けられません。
中古車を購入したユーザーが新しい使用者として保証の継承をする必要があるのですが、その際にはディーラーに車を持ち込んで点検をしてもらう必要があります。
その際には保証継承の手数料、点検料をしっかり請求されるのですが、ディーラーで販売するときには自社で保証継承できます。
ここがディーラーで中古車を購入するメリットといえます。
とうぜんなにか不具合が出たときも保証を受けるまでの流れもスムーズなので、他の中古車販売業者よりも対応が早くなります。
【最後に】人気車の闇を知っておいてほしい
今回のお話のなかで特に覚えておいてほしいのは、実用的な軽自動車で人気車でもあるラパンでよくある問題点です。
らぱんは中古車としての品質のばらつきが比較的に大きく、もちろん大事に扱われてきた車もありますが、やはり「乗りっぱなし」だった個体も多いです。
にもかかわらず、外装や内装がキレイで走行距離が少ないと、かなりふっかけた価格で販売されていることが人気車の闇です。
外見がよくてもエンジンオイルがドロドロだったり、
オートマチック内部から異音がしている中古車を買ってしまうとあとが大変です。
中古車は品質のばらつきがあるので、その価格が適正かどうかの判断が難しく、人気のボディカラーや限定モデルなどが理由で車体価格が決まることもあります。
ですが通勤や買い物の大事な足として使用するのであれば、調子が悪い車はあとで余分な出費が出てしまうこともあります。
ラパンの中古車を買うときに気をつけること
ディーラー認定中古車のメリット
長く乗るなら調子のいい車を買って欲しい
ラパンは僕自身も欲しかったことがあり、個人的には好きな車種だったりします。(ラパンSSとか)
たんなる道具としてではなく、自分を表現するための服を選ぶような感覚でラパンを選ぶお客様もおられました。
だからこそ、愛車には調子よく乗り続けていただきたいですし、中古車として購入してすぐにクレームの電話なんかしたくありませんよね。
中古車のラパンをお探しの方は、外見も大事ですが中身もしっかりと判断しつつ、お気に入りの愛車を見つけてください。
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