タイヤに窒素ガスを入れるのはなぜ? その効果や意味を解説

窒素ガス充填済みタイヤタイヤに関して

某有名タイヤショップなどでタイヤ交換を依頼すると、

「無料で会員登録できるので窒素ガスも入れておきますね」

などと、無料で窒素ガスを入れてくれます。

タイヤ交換をしただけで自動的に会員登録をしたことになり、

新しいタイヤには「チッソ」という、なにやらありがたそうなものを入れてくれているようです。

「タイヤに窒素ガスを入れるとどうなるの?」

僕自身も整備士として、お客様からもちょくちょく聞かれることのある話題です。

ちなみにですが、僕の勤務する整備工場には窒素ガスは置いてません。

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タイヤに窒素ガスを入れるのはなぜ?

レースで流行っていた窒素ガス充填

空気中の約78%は窒素です。つまり、直接人体に影響があるわけでもなく、水素みたいに可燃性の危険な気体でもないです。

一般的に、車のタイヤに窒素ガスを入れるメリットとは

・タイヤの空気圧が変化しにくい

・空気圧が下がりにくい(抜けにくい)

・タイヤやホイールの劣化(酸化)を防ぐことができる

大まかにはこんな感じのメリットがあるといわれています。

とくに空気圧の変化が少ないということに着目して、バイクや車でのレースに実戦投入されました。

「窒素ってすごいらしい」というイメージを持ったユーザーさんもいると思います。

レースの世界では、タイヤの空気圧の変化は微妙なタイヤの接地面積の変化となり、コンマ数秒のタイムを競うなかでは、重要なセッティングといえます。

窒素ガス充填で空気圧の変化が少なくなる理由

窒素は酸素に比べて粒子として小さく、タイヤのゴムの粒子からすこしづつ抜けていくというスローリークが起きにくいと言われています。

そのため、タイヤの空気圧をまめにチェックしなくても空気圧が安定しているので、燃費の悪化を防ぐことができるともいわれています。

ですが、実際に僕自身が感じたのは「水分の混入」があるかどうかのほうが重要かなとおもいました。

タイヤに充填されるエアの中に水分が入ると、より温度変化での空気圧の変化が起きやすくなります。

つまり、タイヤが冷えている状態と、温まっている状態でのエアの熱膨張が起きやすくなるのです。

タイヤに水分が入ってしまう原因

自動車整備工場には、必ずと言えるくらい、エアコンプレッサーと言われる空気を圧縮する機械と、高圧になった空気を貯めておくエアタンクがあります。

この圧縮された空気の圧を利用して、インパクトレンチとかエアラチェットなどのエアツールを駆動する力になっています。
タイヤに空気を入れるときも、このエアタンクから空気を充填しています。

空気中には水分が含まれていますが、タンクの中で圧縮された空気は水分を含むことができる容量が決まっているので飽和状態になってしまいます。

そのため、エアタンクの底の部分には水が溜まっています。しかもタンクの中の空気は水分を限界まで含んでいるのです。

水分の多い空気をタイヤに入れると・・・

エアタンクの中の空気をタイヤに入れることで、比較的に水分が多く含まれる空気がタイヤの中に満たされることになります。

さきほどご説明しましたが、より多く水分を含んだ空気ほど、温度の変化で熱膨張をしやすくなり、結果的にはタイヤの空気圧が大きく変化することになります。

僕自身がやった実験なのですが、通常の空気だけを入れた状態で、自宅を出るときの空気圧が2.3kgf/cm²だったのが、

峠道を少し攻め気味に走ったあとで同じタイヤゲージで空気圧を測定すると2.5kgf/cm²に上がっていました。

統計的には不十分ですが、それでもタイヤの温度が上がれば空気圧が上がるのは間違いないことだと実感できました。

実際にタイヤに窒素ガスを入れると効果はある?

大きな効果を感じることはできなかった

じつは僕自身、ほんの少しだけモータースポーツにハマっていたときがありました。とはいっても草レースのレベルですけど。

愛車には常にタイヤのエアゲージを載せていて、休みの日は近くのワインディングロードを早朝から走るのが大好きでした。

まるで走る前の儀式のように、自宅を出るときにはタイヤの空気圧を測定し、峠道の入り口につくとまたタイヤのエアチェックをします。

山を越えたゴールの展望台でもまたエアチェックをする。こんなバカな(?)こともやっていました。

窒素ガスを充てんしたことはあまりありませんが、タイヤの温度が上昇すると、タイヤの内部の空気が熱で膨張し、空気圧が少し上がることは確かです。

窒素ガスをすべてのタイヤに充填してもらってときも、それほどの大きな空気圧の変化の抑制を実感することはできませんでした。

モータースポーツでも賛否あるみたい

また、ミニサーキットでスポーツ走行をするときは、必ず空気圧は抜いておきます。

ウォーミングアップでコースを走るときは、いきなり全開の走行はせず、少しタイヤを温めてやることを意識して二週ほど周回していったんピットに帰ってきます。

レーシンググローブを脱いで、直にタイヤを触ってみて、「うん、いいかな」とタイヤの接地面の温度を確認してからタイムアタックを始めます。

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心配なら再度タイヤゲージをあてて空気圧を確認することもあります。

ただ、窒素を入れてタイムアタックに臨むドライバーもいれば、全く気にせずに通常の空気を入れるドライバーと両方いることは確かです。

フォーミュラークラスのレースはまた別ですが、ジムカーナくらいのモータースポーツなら「どっちでもいい」と考えているドライバーは意外と多いです。

ものすごく神経質に管理している人もいれば、アバウトな人もいて、ラップタイムに影響はないように見えました。

どちらかといえば、常に窒素ガスを入れたり抜いたりすることの手間を考えているようです。

タイヤ専門店が窒素ガスを入れる意味とは

お客様が整備士にブチ切れた話

ある日、僕があるお客様の車のオイル交換をしていたら、それを手伝おうと別の先輩メカニックがその車のタイヤの空気圧をチェックしてくれていました。

少し減っていたようなので、エアを足してくれていたのですが、それを見ていたその車の持ち主さんが飛んできました。

「今なにした?! 空気入れたよな? ああ?!」

ものすごい剣幕で先輩メカニックはオラオラとやられていました。

そのオーナーさん、かなり興奮していたようで同じことを何度もまくし立てていました。

ようするに「新品タイヤのころから窒素ガス以外を入れたことがないのに、なんで勝手に空気を入れやがったんだ!!」

「もしもタイヤがおかしくなったらどうしてくれるんだ!!」

とまぁ、こんな内容のことを言っていました。

もちろん、お客様に了解を得ずにタイヤに空気を入れたのはマズいですが、その怒り方は異常なほどでした。

その時のお客様の表情には「怒り」と「憔悴」のような感情が見て取れました。

(100%窒素ガスが充填されたタイヤに通常の空気を入れると、大変なことがおきるのかも・・?)

(大変なミスをされてしまったに違いない・・・!!)

おそらくそう考えていたのでしょう。

こりゃぁ、かなりタイヤ屋さんに吹き込まれてるな・・・

と内心は苦笑いしてしまいました。

上述したように、通常の空気の約78%は窒素です。

仮に100%の割合で窒素が充填されたタイヤに、窒素が78%含まれている、「ただの空気」が入ったとして、いったいどんなことがおきるでしょうか。

もちろんなにも起きません。というか、タイヤに100%の窒素を充填するって不可能じゃないでしょうかね。

「タイヤ館」を運営するブリジストンの営業さんに聞いても「たぶん100%じゃないかも」と言ってましたしね。

「たぶん」じゃないとおもいますけど。

窒素ガスを入れたがるタイヤ屋のホンネ

顧客の囲い込みが狙い?

現在でも窒素ガスを充てんすることができる整備工場やタイヤショップは限られています。

そのため、わざわざ窒素ガスを充てんしたら、その日付と「混ぜないで」的な表記をしたステッカーを車に貼り付けています。

もちろん運転手もそのステッカーを常に目にします。

「窒素ガスを入れてもらってるから、どこでも空気を入れちゃいけない」

という認識が運転手にも出来上がります。

つまり、空気圧のチェックをしたければ、窒素ガスを入れてくれたショップに行かないといけない。

ガソリンスタンドに行けば手軽に空気圧を入れてくれるけど、売り込みもしてくるのでエアチェックは頼みづらい。

だからタイヤ交換をしてくれたショップに依頼する。そんな感じになっていきます。

これこそが窒素ガスを充てんするタイヤ屋さんの狙いではないでしょうか。

顧客が他店に行かないような仕組み、自店舗に来なくてはいけないような仕組み、という二つメリットがあるわけです。

まとめ

一般ユーザーさんの車のタイヤに窒素ガスを充てんするメリットは、「空気圧のチェックをまめにやらなくてもいい」という部分が大きいとおもいます。

ただ、窒素ガスとはいえどタイヤから抜けていきますので、定期的な補充は必要になってきます。そのとき、気軽にタイヤのエアチェックができないという意味では、単なる空気を「いつでも」「どこでも」補充するほうがメリットが多いと個人的には思ってます。

タイヤのわずかな空気圧の変化に気づくドライバーはごくわずかですし、タイヤやアルミホイールの劣化や腐食を抑制するというのも説得力に欠けます。

窒素ガスを充てんしたタイヤで走るということは、かなり神経質でシビアな管理をしたい、せざるを得ないような用途には必要かもしれません。

月に一回のエアチェックを面倒だと感じるドライバーさんには、

「とにかく空気圧が低いままで走らないようにだけ気を付けてください。」

と常々ご説明しています。

タイヤの寿命を左右するのはまず空気圧の低下ですし、タイヤ本来の性能を引き出すのも適切な空気圧です。

いくら窒素ガスが入っていても、空気圧が下がって潰れたままのタイヤで走るのは「本末転倒」と言わざるを得ないですね。

 

 

 

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この記事を書いた人
サボカジ

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キャリアは、自動車整備士として20年以上

カーライフアドバイザーとして5年以上です。

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