今回は、2AZ型エンジン搭載のアルファード(ANH10)のお話です。
・ウォーターポンプの水漏れ修理の概要
・アルファードのウォーターポンプの寿命
・交換する際の時間と費用について
以上についてのご説明していきます。
排気量2400ccの2AZ型エンジンを搭載するモデルで、車検で入庫した際にエンジン周辺から冷却水が漏れていました。
水漏れの原因は定番のウォーターポンプからでしたが、交換すると意外な事実もあり、お客様への説明に少し困ってしまう内容でした。
DIYでこの作業をするのは大変ですが、作業の内容を備忘録的に残しておきます。
10系アルファードのウォーターポンプ水漏れ
エンジンルームの右下周辺に冷却水漏れ
アルファードのエンジンレイアウトは横置きなので、エンジンの前側にあるウォーターポンプは車体の右側にあります。
ウォーターポンプからの水漏れが多い理由
ウォーターポンプは水冷式のエンジンには必ずある冷却水を循環させるためのポンプですが、どのエンジンもウォーターポンプからの水漏れはおきます。
ウォーターポンプはエンジンの回転する力を借りて回転していますが、常に動いているため、回転部分の軸にガタができることがあります。
ガタができると異音の原因にも
アルファードでもウォーターポンプにガタができることでエンジンをかけると「ガラガラ」と異音がするケースもあります。
2AZの定番の水漏れ
また、製造工程でできる嵌合部分からも水漏れすることがあり、今回のアルファードの場合は軸受ではない部分から水漏れをしていました。
水漏れの初期段階は分かりづらい
車検の点検などでエンジンの周辺をしっかりと確認する場合は発見できますが、オイル交換などで水漏れを見つけることは難しいです。
とくにウォーターポンプからの水漏れは初期段階ではベルトの奥にあるので、意識して見ないと冷却水の滲みは見落とすことが多いです。
水漏れ発見のきっかけ
2AZエンジン搭載のアルファードの場合、ウォーターポンプから冷却水が漏れてきても意外とわかりずらく、駐車場にシミができてもユーザーは気づかないこともあります。
水漏れを見つけるきっかけになるのが車検というケースもかなりありますが、エンジンルーム周辺から冷却水の鼻をつく臭いがして気づくこともあります。
また、最悪の場合だとウォーターポンプからの水漏れが進行して冷却水が不足することでオーバーヒートをすることもあります。
その際には、運転手はメーターの中にあるオーバーヒートの警告灯によって異常に気づき整備工場に車を持ち込むこともあります。
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アルファードのウォーターポンプ交換作業
2AZ型エンジンの場合
右タイヤを外す
横置きエンジンなのでエンジンの前側が車体の右にあり、まずはウォーターポンプ周辺に触れるようにタイヤとアンダーカバーを外しておきます。
補機ベルトを外す
ウォーターポンプを回しているのは発電機やパワステポンプ、コンプレッサーを回しているベルトなので外して起きます。
ベルトを外すにはオートテンショナーという、ベルトの張りを自動で調整しているプーリーを手動で動かします。
かなりの力が必要になるので、僕の場合は長いスピンナーハンドルに12角の19ミリソケットをつかって車体の下側からアプローチします。
取り外す前にベルトの取り回しを覚えておきつつ、スピンナーハンドルにパイプを使ってケガをしないように力を入れてオートテンショナーを動かしていきます。
エアコンコンプレッサーをずらす
補器ベルトを外したら車体の上側からエアコンコンプレッサーを固定しているボルトの上側を緩めておき、そのあとで下からすべてのボルトを緩めてコンプレッサーを切り離します。
本来はオルタネーターを外すのがセオリーなのかもしれませんが、バッテリー端子を外すと10系アルファードの場合、エアフロメーターがいきなり壊れた事例もあるのでリスクがあります。
ウォーターポンプのボルトを緩める
ウォーターポンプをとめているボルトはストレートのメガネレンチとゴムハンマー使った小技で簡単に緩めることができます。
ウォーターポンプのプーリーを抜き出す
ウォーターポンプとプーリーがくっついたままではエンジンルームから取り外すことはできません。
プーリーだけをエンジンの上側に知恵の輪のようにしながら先に取り外しておきます。
クランクプーリーも外す
ウォーターポンプを下側から脱着するときに、クランクプーリーを外しておいたほうがやりやすく、パッキンがずれたりしないので楽です。
クランクプーリーのボルトはあっさりと緩むことが多いので前もってプーリーごと外してしまいます。
ウォーターポンプの取り外し
ウォーターポンプを外すと中から冷却水が大量に出てくるので予めラジエーターのドレンコックから抜いておきます。
ウォーターポンプをエンジンブロックに付けている6ミリのボルト、ナットを取り外して車体の下側から取り外せば作業の前半は完了。
新しいウォーターポンプの取り付け
エンジンブロック側のポンプ取付面に汚れや異物がないかチェックし、スクレッパーや細かいサンドペーパーなどで整えておきます。
あとは新しいウォーターポンプを取り付けてこれまでの工程の逆を意識しながら組み付けていきます。
冷却水の抜きかえ
アルファードの場合はトヨタのスーパークーラントが注入されているので頻繁に冷却水を抜きかえる必要はありません。
ただ、せっかくウォーターポンプを交換したのであればついでにクーラント(冷却水)の抜きかえをすることが望ましいです。
冷却水の汚れがひどいときは室内に繋がっているヒーターホースを外してしっかりと水道水を圧送させてきれいにすることもあります。
暖機運転をして完了
冷却水の抜きかえが終わったら暖機運転をして冷却水の通路に残った空気を抜いていきます。
エンジンをアイドルさせおけば自然にエア抜きは完了するので、あとは取り付けたウォーターポンプや作業での手落ちがないか再度チェックして完了となります。
2AZ型エンジンのウォーターポンプ交換費用と時間
補機ベルトも同時交換がのぞましい
アルファードに搭載される2AZ型エンジンの場合、ウォーターポンプは発電機やパワステ、エアコンのコンプレッサーを回しているベルトで動かしています。
つまり、この一本のベルトが切れてしまうとこれらの補機類と一緒にウォーターポンプも動かなくなってしまい、オーバーヒートします。
そのため、ウォーターポンプを交換する際にはこの補機ベルトもせっかくなので一緒に交換してしまうことがほとんどです。
修理費をギリギリまで抑えて欲しいというユーザーさんからの依頼があればベルトの状態によっては再使用することもあります。
ウォーターポンプ(純正) ¥14,000ほど
補機ベルト ¥6,000ほど
交換作業工賃 ¥15,000前後
スーパークーラント ¥2,000ほど
計____________¥37,000~
ウォーターポンプ(社外品) ¥11,800
補機ベルト ¥6,000ほど
交換作業工賃 ¥11,000前後
スーパークーラント ¥2,000ほど
計_____________¥30,700~
作業にかかる日数
2AZのウォーターポンプの交換作業は、整備士がかかりきりで作業をすれば半日くらいで確認作業も含めて完了します。
ただ、ディーラーはもちろん、他の整備工場でも他の作業や車検のスケジュールを調整しながら作業を進めていくので、半日で完了することは珍しいです。
ウォーターポンプなどの部品を事前に取り寄せておく必要もあり、車を預かるときに貸し出す代車も確保する必要があります。
これらの加味したうえで、車を預けてから2日から3日くらいはかかるのではないでしょうか。
最後に・・・
トヨタの2AZ型エンジンの場合、タイミングベルトは付いていないので10万キロを走行しても車検などで高額な作業などはありません。
補機類のベルトもかなり長持ちするようになっているので10万キロ近く走行してもベルトは無交換なケースもあります。
ただ、ウォーターポンプに関しては水漏れや異音の原因になることも多いです。
この記事を書いている前日にアルファードの水漏れ修理としてウォーターポンプの交換をしたのですが、その車両の場合、走行距離が11万キロほどでした。
ところが、取り外したウォーターポンプはすでに社外品のものになっており、すくなくとも今回が2回目のウォーターポンプの交換ということになります。
水漏れを起こしていたのはポンプの製造工程でできた継ぎ目のような場所だったので、純正タイプや別のメーカーのウォーターポンプなら漏れていなかったのかもしれません。
そう考えると、ディーラーでウォーターポンプの交換を依頼した場合は純正タイプのポンプを使用することが多く、もう少し長持ちしたのかもしれません。
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