
オーバーヒートをした車の診断って意外と難しいです。
整備経験がそこそこ長い僕でも苦戦することは今でもあります。

でもさー、
ちゃんと修理すれば元通りになるんでしょ?
お客様のなかにはこんな感じでたかをくくっている方もけっこうおられますが、
一度でもオーバーヒートしたエンジンがどんな後遺症を抱えることになるのかをあまり想像されていないようです。
そもそもエンジンの冷却水の漏れが原因でオーバーヒートするというパターンは非常に多い事例です。
僕が勤める整備工場も、レッカーサービスでこのような車両が運ばれてくることがよくあります。
そもそも水漏れを起こす車とはどんなコンディションなのか?
このことから考えていくと、とてもじゃないですが楽観的に考えられる状態ではないのですが・・・・。
車が水漏れをおこしてオーバーヒートするとどうなる?
オーバーヒートを経験したエンジンのその後
エンジンを構成している主な部品として、「シリンダーヘッド」と「シリンダーブロック」があります。
この大きなかたまりは非常に精密に作られていて、わずかな歪みもエンジンの不具合の原因になる恐れがあります。
エンジンの内部を常に循環している冷却水が、シリンダーブロックとシリンダーヘッドが熱で歪んしまわないように、つねに冷却をしてくれています。
もしも冷却水が漏れてこれらの部分が冷やされなくなったら、シリンダーまわりは異常なまでの高温になり、鋳鉄やアルミでつくられたこれらの部品に致命的なダメージを与えてしまいます。

やっかいなことに、オーバーヒートをしても、どの程度のダメージをエンジン本体が受けてしまったのかが、ベテランのメカニックでもわかりかねることがよくあります。
エンジンが通常通りに回転し、それ以降ヒートすることもないとなると、致命的なダメージを受けていないと判断されます。
ところが、しばらく乗っているとシリンダーヘッドのまわりから冷却水が混入することがあります。
するとエンジンが冷えている時だけエンジンのかかりが異常に悪くなったりとか、燃費がものすごく悪化したりすると言う現象が起きます。
点検をしても、「オーバーヒートしたことがある」とユーザから伝えられなければ、これらの症状は何が原因なのかがつきとめられずにいるかもしれません。
長時間の試運転をすることも業務上難しく、総合的な判断だけで決断を下すことになり、オーバーヒートをしたあとの後遺症は見抜きづらいといえます。
エンジンは車の価値の半分?
もしもエンジンが壊れていて、載せ替えをしないとまともに走れない状態だとすれば、その車の買取価格は半額以下どころか、
場合によってはスクラップとしての値段しかつかない場合があります。
つまりそれくらいエンジンが壊れているかどうかというのはその車の価値を左右する重要なことだといえます。
オーバーヒートの後遺症のおそろしさ
サーモスタットが壊れてさらにヒートしやすくなる
部品の値段は2,000円ほどですが、サーモスタットという、冷却水の流れを制御する弁の役割は非常に重要です。
サーモスタットとは、エンジンが冷えているときはラジエーターへの流れを遮断し、速やかにエンジンが暖気するようにし、
エンジンが暖まったらラジエーターを冷却水が通ってしっかりと冷やされるようにする役割をしています。
一度でもエンジンがオーバーヒートをすると、このサーモスタットが壊れてしまうことがあります。
開ききったままで壊れる分にはいいのですが、サーモスタットが閉じたままで壊れた場合は、さらにオーバーヒートをしやすい状態になっています。
しかもこのサーモスタットという部品は、冷却系統の中に組み込まれているので目視で確認することはできず、壊れていても気が付かないことがほとんど。
この状態で高速道路や長い上り坂を高負荷で走れば、再びオーバーヒートを起こしてしまいます。
これもオーバーヒートの後遺症といえるでしょう。
もしもサーモスタットが開いたままで固着してしまうと、暖房がなかなか効かない状態になってしまいます。
シリンダーヘッドの「歪み」という後遺症
最近はアルミ製のシリンダーヘッドが増えてきました。軽くていいのですが、高温にさらされ続けたときの耐久性にはやや不利です。
そのため、オーバーヒートをしたことで、直接症状が表面化しない程度にシリンダーヘッドが歪んでしまっていることもあります。
シリンダーヘッドとシリンダーブロックには、ウォータージャケットという冷却水の通り道や、オイルラインと呼ばれるエンジンオイルの通り道があります。
もしもシリンダーヘッドが熱の影響で歪んでいたら、オイルラインに冷却水が混ざったりする現象が起きます。
なかには燃焼室に冷却水が入り込み、どこも水漏れが確認できないのに冷却水がなくなっていくという現象が起き始めます。

シリンダーヘッドのゆがみは、高額な修理になり、場合によってはエンジンの載せ替えを勧められることもあります。
車の価値を左右?オーバーヒートで買い替えになるケース
慢性的なヒートは冷却系統を全滅させる
オーバーヒートをしたことのある車のラジエーターキャップをはずすと、冷却水が焦げ臭いときがあります。
しかも、ラジエーターのホース周りがパリパリになっていて、指でつまむと「メリメリ」と嫌な音がします。
限界を超えるような水温になることで、ゴム製のホースの劣化が一気にすすんでしまうことがあり、室内に続くヒーターコアなどがダメになると、
室内の助手席の足元から冷却水が漏れ出すことがあります。
もしもヒーターコアを交換するとなると、室内のダッシュボードをごっそりと外す必要があり、非常に高額な修理費が必要になります。
しかも冷却水が通過するほとんどのゴムホースや金属製のパイプ、樹脂製の継ぎ手も傷んでいて、
まるで「いたちごっこ」のように次から次へと水回りのトラブルに見舞われはじめます。

さすがにこの状態になると、車の持ち主さんは度重なる修理に疲れてしまいます。
「先に言ってよ!」ユーザーの悲痛な叫び
僕自身が経験したことですが、上記のようなオーバーヒートとその後の水漏れ修理が連続しておきることで、結果的にはかなりの修理費と時間、それにトラブルによる実害を被ることになります。
担当した僕自身も非常に心苦しく、お客様からも
「なんでこうなるって言ってくれなかったの?」
というお叱りをいただいてしまいました。
この状況をはじめから予測できていたなら、最初のオーバーヒートの時に乗り換えも提案するべきでした。
まとめ
オーバーヒートは、ヒートしたレベルにもよるのですが、あとあと後遺症を抱えることがあります。
とくに新車から10年以上経過した車の場合だと、オーバーヒートをきっかけに、いろんな故障が続くことも珍しくありません。
たとえば、ラジエーターから水漏れしたのなら、ラジエーターの交換ですべて解決、というわけにはいかず、
サーモスタット、それぞれのホース類の劣化、水漏れした冷却水が発電機にかかってオルタネーターが壊れた(日産車に多かったです)などなど、高額修理が連鎖的におきることも考えられます。

もしもオーバーヒートをしてしまったら、整備工場で点検を受けるときに、今後のトラブルについて聞いておくのもいいでしょう。
また、現状のままで車を売るならいくらほどになるのか買取査定をしておくことで、高額な修理となった場合でも「修理する」か「車を売却する」かで選択の幅ができます。
ただし、オーバーヒートの診断を依頼した整備工場で買い取り査定をしてもらっても、かなり安い査定額になることは覚悟しておかないといけません。
より高く車を売るには、なるべく多くの買取店にあなたの車の価値を提示してもらうことが大事です。
買取査定はネットでオークションしてもらうのがベスト
そんなとき便利なのが、ネットで申し込めるオークション形式の査定サービスのユーカーパックです。
最大5000社があなたの車の買い取り額をオークション形式で提示してくれ、しかも実際に査定をしてからのオークションスタートなので、売買契約寸前の「買い叩き」もありません。
また、査定をしたあとからのしつこいほどの買い取りの勧誘電話もなく、やりとりするのはユーカーパックのスタッフだけです。
オーバーヒートをしてしまって、車を修理するかどうか迷っているなら、車の買い取り額も同時に調べておきましょう。
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