整備士のサボカジです。
今回は長年使っていたトルクレンチを買い替えたので
そのレビューをしていきます。
購入したのは『アストロプロダクツ1/2DRプリセット型トルクレンチTQ969』というモデルです。
アストロプロダクツのトルクレンチのラインナップのなかでは上位モデルにあたりますが、
他のメーカーのトルクレンチとの使い勝手の違いなどを比べてみました。
アストロプロダクツの工具はプロの整備士も愛用している人が多く、コストパフォーマンスにこだわる人は必ずチェックしています。
今回比較する対象として選んだのは、日本製の工具の最高峰ともいえるKTC製の同じくプリセット型のトルクレンチです。
KTC製はお値段もサンデーメカニックでは手が出ないような価格ですが、その信頼性は折り紙付きです。
はたしてアストロのトルクレンチの精度はどうなのでしょうか。
プリセット型トルクレンチの基本的な使い方を紹介しつつレビューしていきます。
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アストロプロダクツのトルクレンチの精度は?
まずアストロプロダクツのトルクレンチの信頼性について。
過去に同僚の整備士がプライベート用としてアストロ製のトルクレンチを持っていましたが、使用感やトルクレンチとしての精度は問題ないと言っていました。
バイクの整備に使うらしく、ややこぶりなタイプを選んだようですが、プリセット型のほうが複数のボルトやナットを素早く連続で増し締めできるので便利です。
トルクレンチの仕組みはシンプル
\トルクレンチ7つの誤解 その⑤/
トルクレンチを使うとき、握り方や握る位置を意識していますか?
あなたの持ち方、実は間違いかもしれません。続きはこちらをチェック!⇒ https://t.co/fRarwDjCvY pic.twitter.com/OMCvYkHzOx
— 【公式】KTC 🔧 京都機械工具株式会社 (@kyototool) May 28, 2019
トルクレンチも実はシンプルな構造になっていて、今回のプリセット型トルクレンチも仕組みそのものはどのメーカーもあまり変わりません。
シグナル式トルクレンチの心臓部はバネ
トルクレンチは単純でごまかしがきかないので、違いが出てくるとなると材質や精度しかありません。
とくにメインのバネの部分の材質や加工精度が低いと正しいトルク設定ができなかったりばらつきができてしまいます。
また、設定トルクに到達したときのカチンという音の鳴りかたに違いがあるような場合は、トルクレンチ内部の部品の精度が悪いということになります。
アストロプロダクツ|1/2DRプリセット型トルクレンチ[TQ969]をレビュー
商品仕様など
ASTRO PRODUCTS 01-09695 1/2DR プリセット型トルクレンチ TQ969 01-09695
・全長:457mm
・重量:1.4kg
・測定範囲:40~210Nm
・最小目盛:1Nm
・精度:±4%
・差込角:1/2DR(12.7mm)
・ギア数:24T
・材質:スチール
・付属品:専用ケース×1
トルク校正証明書もついていた
説明書と保証書はいたってシンプルでしたが、トルクを校正している証明書にはシリアルナンバーも振ってありました。
トルクの設定方法
ロックリングをスライドさせた状態でグリップの部分を回転させてトルク設定をしていきます。
グリップを時計回りに締め込んでいくとより高いトルクにすることができます。
この操作は両手を使わないとできませんが、そのぶん作業中に不用意にトルク設定値が変わってしまうことがないので素早く連続で増し締めをするようなタイヤ交換には向いています。
どのトルクレンチでもそうですが、内部のスプリングに負荷をかけたままではトルクレンチとしての精度が落ちるので、使ったら最低トルクに戻しておきます。
乗用車のタイヤ交換にはちょうどいい長さ
国産車のホイールナットの締め付けトルク
スズキ85 N·m
ニッサン軽自動車 85 N·m
トヨタ103N·m
ダイハツ 103N·m
ニッサン108N·m
ホンダ普通車108N·m
短いトルクレンチは疲れる
タイヤ交換後の増し締め作業では100N·m前後の締付けを連続でしていくので、短すぎるトルクレンチでは力が必要になり、少し疲れます。
このサイズ(全長457mm)のトルクレンチがタイヤ交換にはちょうどいい長さといえます。
設定トルク値の幅が広くプロ向け
↑ アストロ製のほうがKTC製より目盛りはかなり見やすいです♪
40N·m~210N·mはありがたい
自費で購入したASTRO PRODUCTS 01-09695 1/2DR プリセット型トルクレンチ TQ969ですが、このモデルを選んだ理由は信頼性とコスパ、そしてキャパの大きさでした。
キャパの大きさとは、[TQ969]は他のアストロプロダクツのトルクレンチの中でも設定できるトルク値が大きく、210N·mまでトルク値を設定できます。
冬タイヤとの脱着だけならここまでのトルク設定で増し締めすることはありませんが、整備士としてはアクスルナットの増し締めも頻繁にしています。
とくに多いのがスズキの軽自動車のリアアクスルのハブロックナットの増し締めで、車検での分解点検では非常によく扱うトルクです。
スズキのリアアクスルナットは175N·mで増し締め
スズキの軽自動車ならフロントのアクスルナットも同じく175N·mなのですが、アストロ製の価格の安いトルクレンチの場合は180N·mまででした。
個人的には、トルクレンチの精度はそのレンチの設定範囲の上限や下限で使うとやや精度が落ちるのではないかと考えています。
つまり、175N·mのスズキ車のアクスルナットをキャパがギリギリのもので締め付けるのに少し抵抗があるのです。
そのうえ、内部のスプリングをギリギリまで締め付けて使うので精度が落ちやすいのかもしれないと思っています。
ホンダやニッサンにも180N·m超えのアクスルナットがある
他にもリアのアクスルナットの締め付けを想定すると、どうしてもマックスで180N·mはやや心もとないというのが理由でこのモデルを選びました。
設定トルクでのクリック音はしっかりしている
ASTRO PRODUCTS 01-09695 1/2DR プリセット型トルクレンチ TQ969の場合、設定したトルクまで締め込んだときの音はわりと大きめで、「カチン」とか「コチ」ではなく「ガチン」というイメージ。
トルクレンチとしての音はやや大きいだけに、はっきりと設定トルクに到達したことが確認できて安心できます。
また、設定トルクになったときの音もそのつど同じ音、同じ手応えで内部の動きも安定していることがうかがえます。
個人的には小さな「コチ」というクリック音のような感じよりも、大きめの音がホイールナットを締めていて気持ちがいい音でした。
専用のケースで保管しやすい
↑ 正直言えばアストロのラインナップで高いモデルにしてはケースはチープ
トルクレンチにとって錆や腐食は大敵で、久しぶりに使おうと車のトランクルームから出したら使えなくなっていたということもあります。
スタッドレスタイヤとの入れ替えをするだけのサンデーメカニックにとっては年間に数回の使用ということになり、トルクレンチに負担をかけない保管が必要です。
今回購入した「アストロプロダクツ プリセット型トルクレンチTQ969」は、商品の梱包も兼ねた樹脂製のケースに入っていてしっかりとしたねじ込み式になっています。
↑ ケースの後ろ側は五角形になって転がりにくくて◎
価格の安いモデルよりもコストがかかっていない感じがしますが、ホコリや水分が入らず、多少の衝撃もスポンジで保護されるようになっていて、保管しやすくなっています。
平坦な場所で温度変化の少ない冷暗所に保管するほうが望ましいので、車の中に入れたままはおすすめできません。
KTC製トルクレンチ[CMPC3004]との使用感の違いは?
アストロ製トルクレンチ[TQ969]と、当整備工場でメインで使用しているKTC製のプリセット型トルクレンチ[CMPC3004]との使い勝手を比べてみました。
トルク設定のやりやすさは◎
トルクの設定方法はどちらも同じで、ロックリングをグリップの部分を回して設定トルクを調整していきますが、ロックリングの重みや回しやすさに大きな違いはありませんでした。
このロックリングをスライドさせるタイプは、グリップの端に設定トルクを固定するタイプと違って勝手にトルクがズレてしまうことはありません。
目盛りの見やすさはアストロプロダクツ製がいいです。
老眼が進んでいる僕にはありがたいです。
トルクレンチのクリック音は好みの問題
先に少し触れましたが、アストロ[TQ969]の増し締め時のクリック音は「ガチン」というわりと大きめで手応えもはっきりしています。
それに対してKTC[CMPC3004]のクリック音は「コチ」という感じで音も手応えも大人しい感じで、「上品」ともいえますが、手応えが感じにくいと感じるかもしれません。
これは好みの問題なのかもしれませんが、個人的にはKTCの音が静かなほうがやや快適に感じました。
毎日の作業の中、20個以上のホイールナットを連続して増し締めしていく作業を何台もやっていると音が大きいと少し気が滅入るのです。
トルクレンチとしての精度は?
校正が終わって返ってきたすぐのKTC[CMPC3004]なので、やや使い込んだ感じの見た目とは違って信頼性を感じます。
実際のトルクの精度比べに関しては、同じ車のホイールナットの増し締めを交互に行い、少しでも増し締めにばらつきがあればKTCの勝ちということにしました。
やはりメーカーもので、しかも校正が完了したすぐのものに間違いはありませんので、購入したすぐのアストロ[TQ969]に締め付けトルクの違いがあれば大問題です。
結果的には、どちらのトルクレンチで締め込んでも二度目の締め付けでホイールナットがわずかでも締まることはありませんでした。
つまりKTCの校正済みのトルクレンチと、購入したすぐのアストロ製のTQ969トルクレンチに誤差はなかったということになります。
念のために、
85N·m
108N·m
175N·mの
3通りのトルクで比べてみましたがすべて同じ結果となりました。
アストロ製トルクレンチ[TQ969]のデメリット
再校正はできない
残念ながら再校正はできないと説明書にありましたが、高価格帯のトルクレンチ以外は校正ができないものが多いです。
とはいえ、正しい保管方法をしていればトルク値が大きく変わってしまうことはなかなかないでしょう。
僕自身もいただき物のプリセット型を長年使ってきましたが、他のトルクレンチと「トルク比べ」をしても大きくズレていません。
他のトルクレンチもほとんどは校正ができないモデルが多く、KTCやトーニチのような4万円以上するような高価格帯のモデルしか校正はできません。
KTCのトルクレンチを校正してもらうと6,000円かかります。
航空機の整備などトルク管理に証明書が必要な場合は
料金を払ってでも校正証明書を発行してもらうんでしょうね。
アストロ製にしては価格が高め
アストロ製トルクレンチ|TQ969は公式サイトでは税込で6,578円となり、他のアストロ製モデルより2,000円以上は高く、最もお値段は高いです。
デメリットとはいえないかもしれませんが、年間に数回しか使用しないようなプライベートメカニックにとってはバカにならないかもしれません。
サンデーメカニックの方で、一年間に数回しか使わないのであれば、ネットで購入できるコスパのいいものを持っておくのもいいかもしれません。
たとえば、エクステンションバーと国産車のホイールナットのサイズ17mm、19mm、21mmがセットで付いてケースもしっかりしたものとか。
まとめ
アストロはプロも愛用しているコスパのいいメーカー
まずアストロプロダクツというメーカーについての評価ですが、決して「安かろう悪かろう」ではありません。
海外で製造しコストを抑えたことで比較的に低価格な商品が多いですが、プロの整備士が日々の過酷な業務で使用しても問題なく使えています。
とはいえ、KTCなどの国内工具メーカーの高価格帯のものと比べると、塗装の仕上げや質感に見劣りすることも確かです。
整備士の中には、工具に対して一種のステータスを味わいたい人もいて、アストロ製の5倍以上の金額を投資して工具を揃えている整備士もいます。
ですが、多種多様な工具を多く揃えるほうがより幅広い整備ができることも確かです。
Snap-onの高価なトルクレンチ一本よりもラインナップを多くするほうがコスパがいいことは確かです。
今年で整備士としてのキャリアが25年になり、僕自身も「工具はコスパ重視」と考えるタイプですが、今回のトルクレンチに関してはかなりおすすめな一品と言えます。
コメント
自分は量販店で売っていたBAL製を使ってます
4000円で17,19,21のコマ+10cmくらいの延長がセットだったので自家用と社用車ちょこちょこで年6回使うくらいなので
タカハシ様
BAL製のトルクレンチもAmazonの評価が高いですよね。
ボックスレンチもついている商品も多いのでDIYにはばっちりですね。
トルクレンチは結構長持ちしますし、BAL製なら安心ですね。