今回のお話は、ブレーキの異音のなかでも低速で鳴ることが多い「グググ音」についての具体的な対策についてです。
前回の記事では、異音が鳴るメカニズムについて説明してきました。
■関連記事 ブレーキの異音「グググ」や「ゴゴゴ」の音の原因を解説
「じゃあどうやったらあの嫌な音は消えるの?」
という疑問についていくつか対処法を挙げていきますが、車のブレーキを分解整備することは安易にすると事故につながってしまいます。
簡易的な対処法も紹介していますので、まずは自動車整備工場に相談するか、安全にできるものから試してみましょう。
ブレーキの異音で「グググ」は異常ではない?
別の記事で詳しく紹介していますが、ブレーキに関してはグググ音は異音ではないケースがあります。
・ブレーキペダルを離すとグググと鳴る
・車が止まる直前にグググと鳴る
・雨の日や寒い朝にだけグググと鳴る
これらの発生条件に関しては異音ではない可能性が高いのですが、運転手が不快に感じることもあるので、気になる場合は予防や対策をすることもできます。
グググ音はブレーキパッドを整えると消える?
↑
左側はディスクパッドの表面をサンドペーパーで軽く削った状態のもの。
この処置をするだけでもブレーキ鳴きは劇的に変化しますが、永続的な処置にはなりません。
ブレーキディスクとブレーキパッドの摩擦係数はつねに一定ではなく、ディスク表面の温度変化やディスクパッドが摩耗する際に発生するガスでも変化します。
ディスク表面の状態が均一でなくなり、部分的に不純物が焼き付いていることもあり、これらはすべて異音発生の原因になります。
新品のディスクとパッドではグググ音は出ない?
ディスクローターとディスクパッドを同時に交換した場合、水が付着した場合などを除けば、発生する確率はかなり低いです。
洗車機から出したときなど、車全体が濡れているときはどうしてもブレーキを離すときのグググ音が出やすくなっています。
ディスクパッドの表面を新品時に戻す
ディスクパッド、ディスクローターのどちらかの表面を研磨したりすることでブレーキ鳴きは大きく変化します。
残念ながら、物と物が擦れて制動力を得ている限り絶対に鳴きが発生しないということはありえません。
新車で400万円以上する車でも、いきなりブレーキ鳴きが発生してディーラーにクレームが入ることもあるくらいで、メーカーもブレーキ鳴きに関しては「出るときゃ出る」と考えているかもです。
それでも、パッドとローターのどちらか、または両方の表面を新品時に近い状態にすることでブレーキ鳴きは大きく改善できることが多いです。
ディスクパッドの表面を整える
ブレーキ鳴きの診断をするときに僕がたまにやる方法として、ブレーキ鳴きが発生しているであろうと思われるところのディスクパッドの表面を整えるというやり方です。
やりかたは簡単で、ディスクパッドを外してディスクとの当たり面をガシガシと削ってやるだけです。
60番ほどのサンドペーパーを平らな場所に敷いてディスクパッドを手で持って擦り付けると荒れていた表面を新品時にちかい状態にすることができます。
ディスクローターよりもディスクパッドのほうが簡単に表面を削ることができるので、ブレーキ鳴きの処置としてはパッド側に処置をするほうが比較的にコスパがいいです。
「たまにブレーキ鳴きがする」というお客様からの相談に対しても、ためしにやってみて様子を見てもらうためにも、お金も手間もかからない処置のほうが気軽にすすめられます。
ブレーキディスクの研磨または交換
ブレーキ鳴きでもグググ音はディスク表面に問題があることも多く、ディスク表面が荒れていたり不純物が焼き付いていたりすることが原因にもなります。
そのため、ディスク表面を削ることで異音の発生を劇的に抑えることもでき、段付き摩耗がある場合はブレーキディスクを新品に交換してしまうこともおすすめです。
できればブレーキディスクとブレーキパッドをセットで交換してしまうのが理想ですが、費用を考えるとちょっと思い切りがいりますね。
DIYでのローター研磨は難しい
サンドペーパーなどでディスクローターの表面を均一に削ることはかなり難しく、専用の研磨機にセットして回転させながら切削するのが本来のやり方です。
【関連記事】車のブレーキディスクの段付き| 摩耗限界と研磨できる限界や料金は?
それでも、ブレーキキャリパーを外すことで簡単にディスクローターも外せるような構造の車種ならトライすることはできます。
軽自動車やコンパクトカーならブレーキキャリパーも小さく、スライドピンのボルトを1本外すだけでディスクを外すことができる車種もあります。
市販の鳴き止めスプレーもある
ただしやってみないと効果は確認できない
ブレーキの鳴き止をうたうケミカル剤はいくつかありますが、どの商品も実際に使っていないと効果がわからないというデメリットがあります。
メリットとしては手軽に試すことができるので「ダメ元で試してみるか」という感じで使ってみて効果が得られればしめたもの。
ディスクパッドの側面に塗布することでディスクパッドとディスクローターの接触面に少しづつ混合され、摩擦係数を変えることでブレーキ鳴きを止める効果があります。
この商品の場合は研磨剤が入っていますのでディスク表面に付着してもブレーキが効かなくなることはありませんが、使用方法としてはディスクパッドを取り外して塗布するのが望ましいです。
とはいえ、新聞紙や厚紙などでディスク面を隠しておけばスプレーなのでディスクパッドを外さなくても簡易的に作業をすることはできます。
スプレーする前にディスクにマスキングテープを貼っておく
タイヤ・ホイールを外してブレーキディスクに触れる状態なら、マスキングテープなどを使ってディスク面に鳴き防止スプレーが付着しないようにできます。
↑
ディスク面に
マスキングテープを手前に貼り付けておきます。
↑
手でディスクローターを回してマスキンテープをディスクパッドに寄せておきます。
↑
この状態なら、むやみにディスク面に防止剤をスプレーしてしまうことも防げますね。
ブレーキ異音に修理が必要なケース
「ゴゴゴ」という異音が続く場合は要注意
ブレーキの異音の中には一度鳴り出したら連続して発生するケースもあり、その場合はすぐに整備工場で点検を受けるべきです。
ブレーキの摩耗部分の限界かも
グググ音とよく似たブレーキの異音にゴゴゴというニュアンスのものがありますが、音を直接に聞いた運転手によってゴゴゴなのかグググなのか違ってきます。
ただ、ゴゴゴ音のほうは、なにかが削れていく音である場合もあり、ディスクパッドが限界を超えて摩耗しており、ディスクローターが削れていく音が「ゴゴゴ」と聞こえることがあります。
この場合は走行させるのをやめてレッカーサービスで整備工場に車を運んでもらうことが望ましく、面倒くさがってそのまま乗り続けるのは危険です。
最後に
今回はブレーキ鳴きのなかでも低い周波数から発生するグググ音についての対処法などについてお話をしていきました。
ブレーキパッドやブレーキディスクの表面は、ブレーキとして作動させるたびに摩耗していきますが、公道を走るため様々な状態の路面の影響を受けます。
・土埃などの不純物がディスク表面に付着する
・急ブレーキを踏むことでディスクが急激に暖まる
・水たまりを通過し、ディスクが急激に冷やされ歪みができる
などなど、さまざまな要因でブレーキディスクやディスクパッドに悪影響がおよぶことがあります。
ブレーキ鳴きの対処法全般で言えば他にもできることはあり、ブレーキパッドの摺動部分へのパッドグリスの塗布や錆取り、清掃など。
ほかにも引きずりが発生していた場合はキャリパーのオーバーホールやスライドピンの動きをよくするためにシリコングリスを流し込むなど、できることは様々です。
ブレーキを踏んだときに今まで感じなかったような異音が聞こえた場合、
「どんなときに」
「どの位置から」
「どんな音が」
などの、異音の発生条件を意識して覚えておき、これらの条件での異音が発生する頻度が高くなった場合は、すぐに整備工場に相談にいくことが望ましいです。
コメント