今回はシトロエンのC3のエアコン不調についてのお話です。
結果的にはガスを補充することで無事に冷房として効くようになったのですが、そのお客様にとってのベストな選択肢ではありませんでした。
これは輸入車にお乗りのオーナーさんには「あるある」なことなのかもしれません。
・輸入車のエアコンガス補充は特殊かも?
・正規ディーラー以外ではエアコン修理は受けてもらえない?
・輸入車はどんな修理をしても高くつく?
こんな認識をしているオーナーさんが多いのかもしれません。
【実録】シトロエンc3のエアコンが効かない診断
1年前からクーラーの効きが悪かった
全国的に災害的な猛暑日が続いていた2023年7月中旬。
シトロエンC3にお乗りのお客様から「エアコンからぬるい風しか出ない」とご相談をいただきました。
輸入車でも日本車でもエアコンの診断の手順は同じで、まずはエアコンの操作パネルでクーラーが機能するようにセットします。
送風は最大に、温度調整は再冷、ACのスイッチはオンにしてエンジンはアイドリングの状態にしておきます。
お客様からの依頼どおり、風は勢いよく出ますが生ぬるい風だけが出てきます。
ボンネットを開け、エンジンルームをチェックしマグネットクラッチの部分が回転しているか、電動ファンが回転しているかどうかを確認しました。
このC3の場合、チェックしたすべてがOKでしたので、エアコンに関する電装類はとりあえず問題ないと判断しました。
つぎに、エンジンルームの奥に見えるエアコンのガスが流れる配管の、室内から出ているパイプの部分を素手で触ってみます。
いわゆる「低圧側」と呼ばれる部分ですが、室内のクーラーユニットのすぐ下流に位置する部分なので、冷房が効いているならかなり冷たい部分です。
残念ながら「少し冷たい気がする」という程度の冷え具合で、この時点でクーラーガスが不足しているという判断に「ほぼ」至ります。
念のためにゲージマニホールドと呼ばれるガスの圧力を測定するゲージを接続して低圧側と高圧側の両方の数値が低いことを確認すればなおいいのですが、自分の経験上で省略します。
なぜ省略をするのか?手抜きですか?というツッコミが入りそうですが、そうではありません。
できれば目視でガスが漏れている部分を見つけることができればいいのですが、コンプレッサー本体もコンデンサーへの飛び石、配管周りのオイル滲みなどはみつかりません。
エアコンの診断の場合、費用も時間もかかることが多く、まずは現状の報告と今後の修理の流れをざっくりとお客様に報告することが大事だと思ったからです。
これは、輸入車や15年以上経過している旧車でよくあることですが「高額な修理はしない」とすでに決めているオーナーさんも多く、修理の着地点が人によって違うのです。
高額な修理の予感はしていた
お客様にはエアコンのガスが足りていないことをまずお伝えしましたが、そのあとで
・本来はクーラーのガスは減らない
・ガスが減るのは漏れているから
・ガス漏れの場所を特定には時間がかかる場合がある
・最悪のガス漏れは室内のダッシュボードの奥から
・ダッシュボード奥のクーラーユニット周りの修理なら20万円コースかも
お客様の反応を見ながらこんなお話をしていきます。
我慢するという選択肢はなし
猛暑日が続く中、炎天下の渋滞にハマった場合などは、走行風の窓から取り入れることもできないため、エアコンが効かないと大人でも熱中症になりかねません。
クーラーとして効かなくても送風だけで暑さをしのげるような状況ではなく、オーナーさんにはクーラーガスの補充をするのか、ガス漏れの修理をするのか、という二択になります。
なんとも気の毒な話ではありますが、シトロエンはもちろん、輸入車の場合、エアコンの修理にかかる費用は国産車の倍以上かかることもめずらしくありません。
シトロエンC3のエアコンガスの規定量は?
シトロエンc3のこのモデルのエアコンガスは425gほど。
エアコンに関する高額な修理の話が出ると、お客様のなかには車の乗り換えを意識するかたが一定数おられます。
つぎの車検までなんとか安くエアコンが効くようにして、車検のときに乗り換えをするかどうかを考えたい、と考えるお客様もかなり多く今回の方もそう判断されました。
とはいえ、別のシトロエンのお客様で、エアコンのコンプレッサーが突然壊れたケースもありましたので、ガスだけを補充するのではなく、コンプレッサーオイルも少し足すほうが望ましいです。
そのことをお伝えし、たんなるガス補充よりも、
・ガス回収
↓
・真空引き
↓
・真空テスト
↓
・オイル回収
↓
・オイル補充
↓
・規定量のガス充填
という流れを自動でやってくれるエアコンガスクリーニングの機械を使った作業をおすすめしました。
ただ、この作業の説明をしようとすると、オーナーさんはなんとなく気が乗らない様子です。
「外車だから高い作業料を取られるんだよね?」は間違い
輸入車の整備をやっている整備工場は日本国内でもどちらかといえば少数で、オイル交換やタイヤ交換と簡単な車検だけやっているところも多いです。
ましてやエアコンの修理となると、多くの整備工場が断るためディーラーしか診断もガスの補充もやってくれないこともあります。
僕自身も輸入車はそれほど多くの作業を経験したわけではありませんが、エアコンのガス補充くらいなら日本車とほとんど手間に違いがない車種もたくさんあります。
そのため、クーラーガスの補充やエアコンガスクリーニングに関しては同じ料金で受けています。
一般的な整備工場でエアコンガスクリーニングを依頼すると、だいたいは8,000円から12,000円くらいの価格帯になります。
あとはどれくらいの付加価値を付けているかによりますが、作業の工程には日本車も輸入車もほとんど変わりはありません。
ただ、作業後に不具合が出た場合のクレームに対応することも想定すると、リスクに備えるという意味では「外車には高めの料金設定でリスクヘッジ」という考えの整備工場もあります。
シトロエンのエアコンガス補充のやり方
今回のシトロエンC3の場合は、冷媒はR134aというタイプの、もっともよく使われるタイプのフロンガスなので、日本車とまったく同じやり方で補充します。
使用する機器もおなじものが使えるうえに、充填するガスの量もコンパクトカークラスと同じでした。
エアコンガスクリーナーでガスを注入する場合
エアコンのメンテナンス用に導入されているエアコンガスクリーニングができる機械を使ってガスの補充をしました。
正確にはエアコンガスクリーニングをすることで、抜けてしまったフロンガスの量を「調整する」という感じ。
エアコンガスクリーニングのメリット
今回のシトロエンではただのガス補充ではなくガスクリーニングをおすすめした理由として、ユーザーさんが本格的なガス漏れ修理を考えていないということです。
コンプレッサーオイルの補充もできる
とりあえず夏場をしのぐためにガスの補充を毎年繰り返していると、コンプレッサーオイルが減り続けることになり、最終的にはコンプレッサー焼付きの原因になります。
ガス補充と同時にコンプレッサーオイルも補充しておくことで焼付きのリスクを下げるというのが狙いです。
料金に関してはガス補充よりも2,000円ほど高くなりますが、お客様は納得していただけたようでした。
抜きとったガスの量を把握できる
エアコンガスクリーニングの工程として、先にエアコンサイクル内のガスを全量抜き取ることになります。
これはどれくらいのガスが抜けているのかを知ることになり、ガス漏れのレベルを把握することができます。
結果的には425グラムあるはずのフロンガスが90グラムしか抜き取ることができなかったので、「去年も効きが悪かった」と話すユーザーさんのお話ともつじつまがあいます。
もしも「去年はバッチリ効いていた」ということであれば、ガス漏れが急激に進んでいることになり、せっかく充填したガスがすぐに抜けてしまう可能性が高いです。
その場合はご本人に説明してガス漏れの修理をおすすめしたかもしれません。
ただし、輸入車のエアコン修理となると非常に高額になることが多く、ガス漏れ修理が必要となった時点で車を手放すオーナーさんもわりといます。
シトロエンでよくあるエアコン修理の費用は?
定番はコンプレッサー交換
シトロエンの別のモデルであったのが、コンプレッサー本体からの激しい異音とガス漏れでした。
ただし、コンプレッサーの位置もエンジンの下側あたりにぶら下がるように配置されていたので、リフトアップして下から交換することができました。
なおかつコンプレッサーはリビルト品があったので、コンプレッサー交換作業料金と合わせても10万円を超えることはなく修理が終わったケースもあります。
ディーラーの見積もりに顔をしかめていたオーナーさんも大喜びでした。
ガス漏れはわりとよくおきるトラブル
今回は国産車をメインに整備士てきた僕としては珍しいシトロエンのエアコンガス漏れのお話でした。
正規ディーラーも近くにはありますが、エアコンの修理はあまり詳しく診てくれず、新しい車と乗り換える提案ばかりされることも珍しくありません。
そのことを狙ってなのか、エアコンの修理費用はかなりの高額な見積もりを出されることもあります。
7万キロを超えるころになるとエアコンのトラブルは珍しくなく、ガス漏れが原因で効きが悪くなることも定番かもしれません。
コメント