エアコンのトラブルの中でもよくあるコンプレッサーのマグネットクラッチの作動不良が挙げられます。
そのなかでもマグネットクラッチリレーが原因で電源が入っていないことも多く、夏場の「整備士あるある」なトラブルです。
なかにはエアコンの修理に詳しくない整備工場に相談にいくと「コンプレッサーをまるごと交換」などと言われることもあるようです。
今回はDIYでマグネットクラッチのリレーのチェックをするための、リレーの場所を見つける方法をご紹介します。
マグネットクラッチリレーの場所の見つけ方
エンジンルームのリレーボックスやヒューズボックスを探す
マグネットクラッチはエアコンのコンプレッサーの一部なのでエンジンルームにあり、そこに電源を供給するためのマグネットクラッチリレーもそのちかくにあることが多いです。
↑ バッテリーの近くに見える黒い箱のようなものがヒューズボックス
エンジン周辺の制御に関するリレーは他にもあり、ラジエーターファンやヒューエルポンプなど、小型車や軽自動車クラスでもリレーは5.6個ほどあります。
そのため、「ヒューズボックス」と呼ばれる、リレーやヒューズを集約させている部分があり、マグネットクラッチリレーもそこに配置されていることが多いです。
ヒューズとリレーが混在しているボックスもあり、リレーボックスと呼ばずヒューズボックスと呼ぶこともあります。
黒くて四角いフタがあればたぶん正解
リレーボックスはエンジンルームの外側付近にあることが多く、ボンネットタイプの車ならバッテリーのプラス端子の近くによくあります。
リレーボックスは黒い樹脂製のフタで保護されていて、上側のフタは振動などで外れないようになっているので爪の部分を起こしながら外すようになっています。
それらしい部分をみつけたら黒いフタを外して確認してみて四角いリレーやヒューズが並んでいたら正解です。
車の取扱説明書にも載っている
ほとんどの国産車なら車検証入れに収められている取扱説明書を参考に、リレーボックスを探し出すことができます。
ただし、説明書の目次のどの部分を探しても「リレー」とか「リレーボックス」といった項目はないのでヒューズに関する項目を開いて、ヒューズボックスの場所を探します。
じつはヒューズとリレーは同じボックスのなかに集約させていて、説明書では「ヒューズボックス」という表現をしていることがほとんどです。
マグネットクラッチリレーはエンジンルームのヒューズボックス(リレーボックス)のなかにあるので、説明書を頼りに探すなら、エンジンルームの大きめのヒューズボックスの中にあります。
ヒューズボックスのフタを確認する
リレーボックスのフタの裏側を見てみると、どのリレーがなんの役割をしているのかがわかるように配置図が表記されていて、アイコンや英数字で記されています。
ただしサービスマンが確認するための暗号のようになっているので、初めて見る人にとってはどれがなんの意味なのかわからないかもしれません。
それぞれのメーカーでもマグネットクラッチリレーの表記の仕方が違うのでここではいくつかの例を挙げてみます。
MGCと略していることもある
マグネットクラッチ(magnetic clutch)を略して「MGC」という表記をしている場合もあります。
ここらへんの表記のパターンは、電装品としてどのメーカーがサプライヤーなのかで違ってくるのかもしれませんが、
CPRSRの略はコンプレッサー
コンプレッサーを作動させるためのリレーということでコンプレッサー(Compressor)を略して「CPRSR」という表記をしている場合があります。
A/Cは「エアコン」の意味
「A/C」という表記ならエアコンのコンプレッサーへの電源を意味するので、マグネットクラッチへの電源供給のリレーということを表しています。
雪の結晶のようなマーク
クーラーを雪の結晶で表していることもあり、リレーボックスの中に雪マークがあれば、マグネットクラッチリレーのことを指しています。
マグネットクラッチのヒューズもある
ヒューズボックスの中にはマグネットクラッチリレーのすぐ近くにヒューズも配置されているので、クラッチが作動しない場合は、リレーと一緒にヒューズが切れていないかも確認する必要があります。
マグネットクラッチリレーがよく壊れる車種
スズキ車の定番トラブル
平成10年から20年くらいの年式のスズキ車にとくに多かったのが、マグネットクラッチリレーが壊れることでエアコンが効かなくなるというケース。
とくに初代のアルトラパンや、同年式のMC系やMH系のワゴンRでもクラッチリレーのトラブルは多く、あまりにも多いのでリレーを在庫するくらいでした。
同じリレーを採用している車種が多数
トヨタ車やホンダ車でも同じタイプのマグネットクラッチリレーを使っていて、リレーの作動不良でエアコンが突然効かなくなるトラブルが発生してました。
僕が思うには、そのリレーはマグネットクラッチの電源の制御に使うには容量が小さく負荷に耐えられないのでは、と感じています。
スズキ車のマグネットクラッチリレーの場所
アルト・ハスラー・ラパン・ワゴンRなど
スズキの軽自動車のなかでもエンジンが横置きで前輪駆動タイプのモデルなら、同じようなプラットフォームを採用しているので、電装関連もよく似た場所にあります。
車体の右側にエンジンがあり、左側にはトランスミッションがあるので、バッテリーやヒューズボックスはミッションの上側にあるのでエンジンルームの左側に集まっています。
エブリィ・キャリーは運転席の下にある
運転席の下にエンジンがあるキャブオーバータイプの車なら、マグネットクラッチリレーもエンジン周辺のコンプレッサーの近くに
あります。
DA64Wのエブリイワゴンのリレーの場所
運転席をはね上げてエアクリーナーのケースの真後ろに見える細長くて黒いのがリレーボックス(ヒューズボックス)です。
この配置は同じ型式のエブリイバンやキャリーでも同じような場所なので、覚えてしまえば見つけやすく、使用しているリレーも互換性があります。
マグネットクラッチリレーの場所の探し方
バッテリーの近くにリレーボックスが配置されることが多い
スズキ車と同じく、エンジン横置きのプラットフォームのトヨタ車でもリレーボックスの場所はバッテリーのプラス端子を目で追っていくと見つけやすいです。
ヒューズの親玉のようなヒュージブルリンクの近く、というか同じボックスのなかに集約されていることもあり、エアコンのリレーもそのなかにあります。
エアコンリレーを作動させて見つける方法
スズキ車やトヨタ車を例にとってマグネットクラッチリレーの場所を少しだけ紹介しましたが、どのメーカーの車でもバッテリーの近くにリレーボックスが配置されていることが多いです。
リレーの作動を振動や音で確認する
リレーボックスの裏側や表のどこにも配置図が記されていない車種もあり、取扱説明書で配置されている場所の番号を確認しないといけないことがあります。
マグネットクラッチリレーがどれなのかを知りたい場合は、そのリレーのヒューズがすぐ近くにあるので、エンジンをかけてエアコンを入れた状態で、リレーのヒューズを抜き差しすることもあります。
ヒューズを入れた瞬間に、該当するリレーにはかすかながら「カチ」というリレーがスイッチングした音と振動あるので、それらしいリレーに指先を当ててリレーを探し出すこともあります。
↑ 指でクラッチリレーを押さえたままでエアコンを作動させてみるとリレーの作動が確認できます。車種によっては助手が必要ですけど。
これはあくまでも自動車整備士が現場でおこなうやり方ですが、ネットで検索してもそれらしい情報が見つからない場合は、消去法はありますがひとつの手段です。
ただし、なかにはクラッチリレーがまるで隠されるようになにかのモジュールに組み込まれていることもあり、新しい車ほど今までのやり方ではリレーの場所が見つからないことがあります。
リレーがモジュールに組み込まれた車種もある
↑ 画像は村岡カーリペアユニット様 ホームページより
エアコンのトラブルシュートをしていて驚いたのが、マグネットクラッチリレーが単体で交換できない車種があったことです。
日産のセレナ(C25)でしたが、マグネットクラッチリレーがリレーボックスの中に組み込まれているため、リレー単体の交換ができません。
ちなみにこのリレーボックス、正しくはIPDM(インテリジェント パワー ディストリビューション モジュール)と呼ぶそうで、たしか数万円したと記憶してます。
基盤の修理ができる業者さんに依頼すればリレーの部分だけを切り離して交換することもできるようですが、どの整備工場もまるごと交換してしまいます。
マグネットクラッチリレーはオートバックスには売ってない
今回はおもにスズキ車によくあるマグネットクラッチリレーの交換や診断に関する記事となりましたが、おなじタイプのリレーを使用しているトヨタ車やホンダ車にも関連するお話です。
じつはこのリレー、デンソー製の白いリレーがよく使われているのですが、4極端子の形状はまったく同じで汎用性が高いリレーです。
そのため、別のメーカーの車についていたものを中古品として拝借して使うという応急処置もするくらいで、純正品以外にもリレー単体で流通しています。
基本的にカー用品店に純正タイプのリレーは在庫しない
純正の部品にこだわる方はともかく、問題なく使用できればいいという方なら汎用のリレーでも問題ありません。
ただしオートバックスやイエローハットなどのカー用品店には売っていないことが多く、診断用に整備士が個人的に持っていることはありますが、在庫はしていないでしょう。
クラッチリレーはネットで購入できる
Amazonなどでもマグネットクラッチのリレーを購入することはできますが、このリレーはかなり汎用性の高いリレーなのでクラッチ専用のリレーというわけではありません。
なおかつデンソー製のパーツを使用する自動車メーカーならどの車にも適合します。とはいえ、純正品も取寄できるので各メーカーのものを取り寄せてもいいかもしれません。
ちなみに、診断がまだ完了していない場合は、リレーボックスのなかの同じリレーと入れ替えてみてマグネットクラッチが作動するかどうかを確認しておきましょう。
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スズキの純正リレー
スズキ車のマグネットクラッチリレーは白いデンソー製のものがよく使われていますが、基本的には汎用のリレーなので色の違いは問題ありません。
それでも純正タイプが安心できるなら純正を選んでおきましょう。
トヨタの純正リレーもデンソー製が使われている
上記のスズキ車と同じくトヨタ車も同じタイプのリレーが使われています。
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