DA64系のエブリィワゴンやエブリィバンでお客様からよくご相談を受けるのが
「暖房の効きが悪い。」
「以前よりもヒーターが効かなくなった」
「寒い日の朝に走行中に水温警告灯の青いマークが点灯した」
などの暖房の効きの悪さやオーバークールに関するものです。
その原因のほとんどは「サーモスタット」と呼ばれる、エンジン冷却水の流れを制御する弁のような部品の劣化です。
他の車種でもサーモスタットの不良は珍しくないのですが、DA64系のエブリィでは定番のトラブルです。
今回はエブリィワゴンやエブリィバンのどちらでも起こりうる暖房が効かない原因と修理に関するお話です。
暖房が効かなくなってから修理をするのもいいですが、予防整備として交換するタイミングについても触れておきます。
「暖房の効きが悪いだけでしょ?べつに修理しなくてもいいよね・・・?」
と思ったあなた、オーバークールは燃費悪化の原因にもなりますよ。
エブリィワゴン/エブリィバンの暖房の効きが悪くなる原因
↑ サーモスタットが全閉にならない状態になると
エンジン暖気が遅くなり気温が低いときは
オーバークールの原因にもなります。
DA64系エブリィは暖房が効きにくい車種?
僕自身もDA64Wのエブリィワゴンを新車から乗っていますが、この車種はエンジンの暖気に少し時間がかかる車種だと感じています。
フロントバンパーのすぐ後ろ側に配置されているラジエーターもオールアルミ製で冷却能力もかなり高いようで、貨物車として過酷な使用をされることも想定されているのかもしれません。
他の軽自動車バンと比べてもラジエーターに関しては容量が大きく、逆に言えば寒冷地や寒い季節ではエンジン暖気に時間がかかるかもしれません。
走行距離が10万キロちかくになると、サーモスタットが本来の動きをしなくなることで、燃費が悪くなることもあります。
次の章でサーモスタットについて簡単にご説明しますね。
エブリィの水温警告灯が青く点灯
サーモスタットが開いたままになると出る症状
サーモスタットの本来の働きは、エンジンを速やかに暖気し、水温が上昇してくると冷却水をラジエーターを経由した流れにしてオーバーヒートを防いでいます。
サーモスタットが完全に閉じている時は、エンジン本体で暖かくなった冷却水が暖房用のヒーターに流れていきます。
十分に水温が暖まるとサーモスタットが開きはじめ、エンジンからもっとも離れた場所にあるラジエーターを経由するような流れになります。
ラジエーターを経由すると冷却水はいっきに冷やされる
冷却水が暖まっていない状態でサーモスタットが開いていると、一部の冷却水はラジエーターのほうに流れ込んでしまい、ヒーターコアが暖かくなりません。
とくにエブリィのラジエーターは容量が大きいので少しでもラジエーターに冷却水が流れるとオーバークールになります。
オーバークールは寒い深夜や早朝になりやすい
暖房の風量を多くしてしまうとヒーターコアから熱を奪うことになるので青い温度計のマークはなかなか消えなくなります。
寒いから暖房を強くする、すると余計にヒーターコアの熱が奪われて暖気が遅くなり一度は消えていた青い温度計のマークが再び点灯するケースもあります。
・気温が低い
・渋滞していない
・暖房の送風を強めにしている
オーバークールになりやすい条件を挙げるとこんな感じです。
これらの条件が重なることで、走行中に青い水温計のマークが点いたままになったり、点いたり消えたりすることがあります。
またサーモスタットの「開きっぱなし」の度合いによってもオーバークールの症状も違うため、「少しだけ開いたまま」の状態では整備士でも判断に迷うことがあります。
リアヒーターが効かない原因も同じ
フロントヒーターよりも効きが悪くなる
エブリィにはリアヒーターがあり、リア専用ヒーターコアの配管が後席まで取り回されていて、フロントヒーターから分岐された冷却水が循環しています。
サーモスタットが開いたままになるとエンジンが冷えているときのリアヒーターの効きも悪く、かなり走行しないと暖房として機能しません。
オーバークールが長く続く悪循環になるので
必要なければリアヒーターをOFFにしておきましょう。
オーバークールが燃費悪化につながる理由
エンジン暖気が早いほど燃費はよくなる
エンジン内でガソリンが燃焼し、効率よく動力を発生させるにはエンジン周辺の温度が「高すぎず低すぎず」の適温であることが大事で、燃費をよくするには暖気も早いほうがいいのです。
適正な水温に上昇しないままで走行する時間が長いほど、燃焼効率が悪い状態でガソリンを消費していることになり、「前よりも燃費が悪くなった」となってしまうのです。
ファーストアイドルも長くなってしまう
エンジン周辺の温度が低いと「ファーストアイドル」と呼ばれる、通常よりもアイドリングの回転数を高めにする制御が働きます。
とくに寒い日の朝にエンジンを始動させると普段よりも高い回転数になり、気温が10度以下ならアイドリングでも1000rpm~1500rpmほどで回転しています。
エンジン暖気が完了し水温が適正に上昇するとアイドル回転数も下がり始め、完全暖気では850rpmほどまで下がります。
ファーストアイドルの時間が長いほど余分な燃料を消費してしまうことになります。
エブリィのサーモスタット交換費用と日程
ディーラーで作業を依頼した場合
スズキディーラーでエブリィのサーモスタット交換を依頼した場合のざっくりとした見積もりの内容はこんな感じ。
・5000円~8000円ほど
■サーモスタット部品代金
・サーモスタット(パッキン含む) 2000円ほど
■冷却水補充または抜きかえ
・クーラント原液(長寿命タイプ)2㍑ 2000円ほど
■税込み合計金額
9900円~13200円
多少の誤差はあると思いますが、おおむねこれくらいの交換費用になると思います。
なおこの作業の場合、ディーラー以外の整備工場に依頼しても大きな差はないでしょう。
サーモスタット交換の工程
サーモスタット交換は1日もかからない
エブリィのサーモスタットは運転席の下側、ドリンクホルダーの真下あたりにあるので、シートをはねあげてドリンクホルダー下のパネルを外せば交換できます。
冷却水のエア抜きに時間がかかる?
サーモスタットの交換作業よりも、サーモケースから冷却水が抜けてしまうことで冷却サイクルの中に入ってしまった空気を追い出す「エア抜き作業」をする必要があります。
エブリィの場合はボンネットを開けたバルクヘッド付近にエア抜き専用のサービスホースがあるので、エンジンを暖気しながら時間をかけてやれば確実にエア抜きができます。
ただし、冷却水のサイクルが他の車種よりも分岐しているのですべての冷却サイクル内を循環させるには時間がかかります。
僕の場合は最低でも30分以上は暖気させて放置、その間は別の作業をしながらサービスホースから少しづつエアを抜いていき、サーモケースから水漏れがしていないかも確認しています。
軽バンの中ではエブリィのエア抜き作業はスムーズにできるほうで、
バモスのように苦労はしません。
DIYでも時間をかければ確実にできます。
まとめ|エブリィのサーモスタットは定期交換部品かも
サーモスタットは5年~7年で交換がおすすめ
今回はおもにDA64系のエブリィのサーモスタットに限定したお話でしたが、サーモスタットはどの車でも水冷であるかぎり付いています。
サーモスタットのトラブルが多い車種とあまり事例がないものがあり、エブリィに関してはオーバークールはよく聞きます。
知らないうちに燃費が悪化する原因になっていることもあるので車検の際にはクーラント交換のついでに交換してもいいかもしれません。
交換の目安は
新車登録から5年~7年、
走行距離なら8万キロを超えているようなら
交換を検討してみてもいいですね。
ラジエーターキャップもチェック
冷却水が高温になり内圧が高くなるとラジエーターキャップからリザーブタンクにいったん圧を逃がすようになっています。
ラジエーターキャップは簡単な構造ですが少しづつ劣化していくので消耗品と考えてもいいのでサーモスタット交換とセットで交換してもいいです。
エブリィの場合はサーモケースの近くにもありますが、予防整備としてならラジエーター上部のものを交換しておくといいでしょう。
サーモスタットを交換しないと最後はどうなる?
「開いたまま」より「閉じたまま」になるとヤバい
サーモスタットが開いたままになるとオーバークールになりますが、閉じたままで固定されてしまうとオーバーヒートになります。
サーモスタットの動きが悪くなると今回のように完全に閉じなくなって冷間時だけのオーバークールになりますが、ごくまれに閉じたままで動かなくなることもあります。
サーモスタットは閉じたままになりにくい設計にはなっているようですが、本来の開き方、閉じ方をしなくなった場合は、いつどのタイミングで動かなくなるのかわかりません。
もしもサーモスタットが閉じたままになってしまうと、冷却水がラジエーターを経由しないままでヒーターとエンジン周辺だけを循環するだけになってしまいます。
電動ファンが作動してラジエーター周辺が冷やされても意味はないので深刻なオーバーヒートになり、エンジンが焼き付く可能性もあります。
サーモスタット本来の価格は安いですが、その役割はかなり重要で、それだけに交換すればコスパのいいメンテナンスと言えるでしょう。
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