スズキのエブリィワゴン[DA64W]はすべてターボモデルとなっています。
走行距離が10万キロを超えたり、エンジンオイルの交換サイクルが適切でないとターボから異音が出ることがあります。
走行中に加速しようとアクセルを踏み込むと、かなり大きな音で
「ヒューーー」とか「ヒャーーー」といった笛吹音のようなタービンからのうなり音がし始めるとタービン交換となります。
周囲からも「あの車、どうしたの?」と思われるくらいの大きな音になるのでちょっと恥ずかしくなります。
今回はエブリィターボの異音や原因、交換費用や交換方法についてご説明していきます。
エブリィのターボから異音が出る原因
エブリィのターボの寿命は10万キロ?
別の記事で書いていますが、エブリィワゴンのターボの寿命は比較的に早いほうかもしれません。
僕自身もDA64Wのエブリィワゴンに乗っていますが、タービンに無理をさせている感じがしています。
とくにエンジンオイルの交換をスズキディーラーが推奨す5000km
毎で交換している場合は、10万キロほどでターボから異音が出たり加速しなくなることが多いです。
5000km毎のオイル交換が不適切とはいいませんが、ターボを長持ちさせるなら、もう少し早めのオイル交換が望ましいです。
つまり、10万キロ走行のエブリィのターボから異音が出るのはわりと普通というか、「故障」というより「寿命」という感じです。
【関連記事】DA64Wエブリィワゴン|10万キロ超えの状態は?あと何年何キロ乗れる?
エンジンオイルの管理不足
エブリィターボだけでなく、ターボエンジンにとってエンジンオイルの管理はターボの寿命にかなり大きく関係してきます。
とくに軽自動車のターボ車はタービンに無理をさせて走行させているモデルも多く、エンジンオイルの管理が悪いとタービンの故障につながります。
タービンの寿命を伸ばしたいなら、エンジンオイルの交換は3000km~4000kmで交換がおすすめで、できれば3500km以内で交換するのがベストだと思っています。
僕の釣りカーであるエブリィワゴンですが、走行距離にして14万kmでも大きなトラブルなくオイル漏れもほぼありません。エンジンオイルの管理は本当に大事だとおもいます。
エブリィのタービン交換費用はいくら?
スズキディーラーの場合
リビルト品を使っても15万円前後
交換工賃 | |
一式 | 40,000円 |
部品代 | |
タービン | 80,000円~100,000円 |
エンジンオイル | 3,000円~ |
オイルエレメント | 1,000円~ |
クーラント | 1,500円~ |
合計(税込み) | |
140,000円~ |
ディーラーに修理を依頼するとすべての交換部品は「スズキ純正新品」と思うかもしれませんが、タービンのような高額な部品に関してはリビルト品(再生部品)を勧めてくるディーラーも多いです。
とくにタービンは新品となると値段が跳ね上がるので、エブリィワゴンでも新品のタービンで交換となると20万円ちかい見積もりがでることもあります。
見積もりの際に「費用を抑えたい」と伝えるとリビルト品のタービンでの修理プランを出してくれるでしょう。
リビルト品の信頼性は?
リビルトメーカーは国内にもかなりありますが、新品との比較でどれくらいの信頼性があるかはメーカーによって違ってきますが、ディーラーが扱うものは値段もそれなりで信頼性もあります。
一般的にリビルト品の価格は新品の6割前後が多く、新品のタービンなら10万近くしますが、リビルト品なら6万円なかばくらいが多いです。
修理の日程は長め
タービンの交換に関しては、排気まわりのボルトを緩めていくことがメインで、ボルトが焼き付いて緩まないということもけっこう起こります。
そのため、ボルトが緩まないからと強引に緩めようとすると根本から折れてしまうという、かなりのタイムロスもあります。
予定通りにいかないことを見越して作業時間には幅を持たせてくるので「2日~3日」という感じになるでしょう。
一般整備工場の場合
リビルト使用で10万円前半
交換工賃 | |
一式 | 35,000円 |
部品代 | |
タービン | 70,000円前後 |
エンジンオイル | 2,500円~ |
オイルエレメント | 1,000円~ |
クーラント | 1,500円~ |
合計(税込み) | |
121,000円~ |
ガスケットなどショートパーツ
一般整備工場にエブリィのタービン交換を依頼する場合、交換費用には多少のバラつきがあります。
理由はいくつかありますが、軽自動車や小型車のタービン交換の経験があまりないようなところだと作業工賃はやや高めです。
とくに中古車の販売がメインで、整備は車検や軽いものしかやらない整備工場ではやや敬遠する傾向にあります。
販売した車の修理などでどうしても受けざるを得ない場合は外注に出してしまったり、日数と作業工賃を多めにしていることもあります。
そのいっぽうで、「スズキ車の販売も修理もいっぱいこなすよ」という整備工場なら、エブリィのタービン交換などは手慣れています。
作業日程などはディーラーと同じくらい
ディーラーと同じく、タービンの交換に関しては時間に余裕を持たせてくるのでやはり2日から3日くらい、手慣れた整備工場なら1日で仕上げるところもあるかもしれません。
ちなみに、今回の記事の画像は僕が作業したものですが、他の車検業務やオイル交換などと同時進行でタービン交換をやっていたので、朝にリフトに入れて交換作業が終わったのが夜の8時くらいでした。集中してやれば4時間くらいという感じです。
エブリィのタービン交換の手順
リフトアップできるとかなり作業性が上がる
腰痛持ちの僕は絶対にしませんが、フロント側だけをジャッキアップしてリジットラックをかけた状態でもタービンの交換はできます。
ですが床に寝た状態で作業をしようとすると、工具に力を入れにくかったりと無理な体制で作業をするぶん効率が落ちてしまいます。
いまどきの整備工場でこの作業を「床でやれ」と指示するところは少ないとおもいます。
このあとの工程もリフトアップ前提で説明していきます。
タービン交換ではオイル交換がセット
タービンが壊れる原因として劣化したエンジンオイルが挙げられます。
そのため、タービンを交換するときには必ずエンジンオイルの交換もセットになっています。
いきなりオイルを抜くのがおすすめ
エンジンオイルを抜くタイミングは、車をリフトアップしたらいきなりオイルを抜いておくほうがおすすめです。
どのタイミングで抜いても問題はありませんが、タービンのオイルパイプなどを外すとエンジンオイルが出てきて床を汚すので、はじめに抜ききっておきたいところです。
普段のオイル交換よりも時間をかけて滴下しなくなるまで抜き取りながら、周辺の部品も同時に外しはじめます。
アンダーカバーを外して下回りを外していく
↑リフトアップしたらまずは黒いアンダーカバーを外してしまう
タービンを外すためには周辺の部品を外していく必要がありますが、この手の作業のセオリーは「手前の大きな部品をまずはずしていく」です。
つまり、外しやすい順番のなかでも大きな部品を外していくと手や工具が入りやすくなるので、まずは広いスペースを確保するために大きな部品をはずしていきます。
アンダーカバーをはずしたら次はタービンと繋がっている部分の部品を外していきます。
エキゾーストマニホールド周辺の遮熱板
↑ 上下に見える遮熱板を止めている6mmボルトを10mmボックスレンチなどで外しておきます
O2センサーの後側を緩めておく
インタークーラーからのサクションホース
タービンの水ホースを外して冷却水を抜く
タービンの軸部分を冷やすために冷却水が循環していますが、このホースをはずすと結構な量のクーラントが抜けてきます。
エンジンオイルを抜くためにリフトアップしているうちにこの冷却水もしっかり抜いておきます。
助手席側からタービン上部周りの分解
リフトダウンしてエンジン上部、エンジンルームの左側(助手席側)からタービン周辺の小物を外していきます。
タペットカバー周辺の小物たちを外す
タペットカバーの上側にはバキュームホースやらブローバイホースなどが繋がっているのでこれも外しておきます。
ブローバイホースはまるで樹脂のように硬化していて割れてしまうこともよくあるので交換を前提に取り寄せておいてもいいです。
作業後にホースの接続部分から二次空気を吸ってエンジン不調になることもあります。
ウエストゲートなどを外す
エアバイパスバルブやウエストゲートチャンバーとタービンとの接続を外しておきタービン単体にしていきます。
バキュームホースなどもわかりやすく外しておき、組み付けるときに迷わないように覚えておきます。
タペットカバーも一緒に交換しておきたい
タービンとタペットカバーパッキンの関係
エブリイワゴンの場合、タービンがエンジンの真横に位置しているので、シリンダーヘッド周辺が高温にさらせれます。
タービンの熱が原因でタペットカバーのパッキンの劣化も早いようで、エンジンオイルの管理が悪くブローバイガスが多いとダブルパンチでオイル漏れが起きやすくなります。
タペットカバーパッキン単体の交換は手間がかかる
今回はタペットカバーパッキンからオイル漏れもしていたので一緒に交換することをお客様にも提案し作業工賃も節約となりました。
↑ タービンを外すといとも簡単に外すことができるタペットカバーの遮熱板の6mmボルトが、タービンがついたままだと緩めるのも大変。
ちまちまと板ラチェットやコンビネーションレンチをつかって時間と神経を使って緩めていくはめになります。
クロスメンバーとマウントの取り外し
タービンの真下には車体を横方向に横断しているクロスメンバーを取り外してタービン下側のボルトが外せるようにします。
エンジンサポートでエンジンを支える
クロスメンバーを外すとエンジンが落ちてくるのでエンジンサポートなどを使ってエンジンが落ちてこないように支えておきます。
このとき、支える場所を間違うとエンジンが傾いてしまい、組み付けるときにクロスメンバーのボルトがつけにくくなり苦労します。(エンジンオイルパンより中央よりがよかった)
センターマフラーとタービンの接続ボルトを緩める
タービンの排気側とマフラーとの接続部分のフランジ、ここのボルトは熱が入り続けたことで緩まないことが多いです。
6角のボックスレンチを使ってしっかりとトルクをかけてボルトの角をなめてしまわないように注意します。
内側が丸くすり減ってしまっているような、「くたびれたボックスレンチ」を使うとボルトの頭が潰れてしまいます。
クロスメンバーを外す
エキゾーストマニホールド側のボルトを緩める
こちら側のボルトも慎重に、かつおもいきりよく緩めていきます。
かつてのスズキ車よりもボルトの材質は良くなっている印象で、折れにくいです。
タービンを外せば折返し
タービンは下からずらすようにして取り外しますが、車体が上に上がったままなのでタペットカバーの遮熱板も外しておきます。
タペットカバーの交換が簡単にできる
タービンを外した状態なら、車体の下側からタペットカバー周辺のボルトを緩めておくことができます。
ものぐさな僕は脚立をつかって車の上によじ登って電動ツールでちゃっちゃとタペットカバーの交換を終わらしました。
タービンの取り付けなど
ここからは逆の手順で新しいタービンを取り付けていきます。
タービンのスタッドボルトが無い
取り寄せたリビルトタービンにはガスケット類はすべて付属していました。
ただしスタッドボルトが付いていなかったので古いタービンから取り外す必要があり、これがかなりの時間ロスとなってしまいました。
ダブルナットを使って緩めていきますが、固くしまっていたのでバイスプライヤーも併用して緩めます。
こんなことなら新品のスタッドボルトを取り寄せておけばよかった・・。
油脂類の確認とエア抜き
エンジンオイルを規定量入れる
作業前にしっかりとエンジンオイルを抜いている場合はいつもよりも多めにエンジンオイルが入ります。とはいえ入れ過ぎは禁物。
ボンネット奥から「エア抜き
ボンネットを開けてすぐに見えるエア抜きホースを外し、説明ステッカーの手順で冷却水のエア抜きを行います。
できればラジ‐エターキャップも新品に交換しておくのが望ましいですね。
試乗&最終確認
エンジンオイルや冷却水の量を確認したらエンジンをかけ、時間をかけて暖気を行います。
タービンには瞬間的にエンジンオイルが廻っていないので空ぶかしなどは厳禁です。
異音や加速不良が解消されていれば作業完了
オイル漏れや水漏れがないか、取り付けボルトに問題はないか、総合的な最終確認を終わらせればお客様に報告して納車となります。
トータルの作業時間は確認作業も含めると5時間くらい、お客様へのご請求は約13万円ほどとなりました。
最後に
ここからは蛇足なお話かもしれませんが・・・
ターボからの異音が出ていても、エブリィワゴンは人気車種なので買い取り店では意外な買取額を提示してくれます。
今回のようなタービンからの異音に加えて、
・車検が近い
・燃費の悪さが気になる
・年式も10年を超えたので他にも故障が出そう
こんな状態のエブリィユーザーさんなら、いちどエブリィの買取価格を調べてみるのもいいでしょう。
ただし、タービンからの異音を秘密にしたままで車を売却することは「瑕疵担保責任」に問われることになります。
異音が出ているということを伝えたうえで買取査定を依頼しましょう。
とはいえ、「異音が出ているようなクルマでは買い叩かれるのでは」と思うかもしれません。
たしかにそれは事実ですが、オークション形式で全国の買取業者にアプローチするなら話は違ってきます。
中古車として再販するまえにしっかりと修理する自信がある業者さんなら異音を差し引いてもそれなりの買取額を出してくれる可能性が高いです。
車の買い取り業界ではメジャーになってきた「ネットオークション」なら全国の業者からアプローチしてもらえます。
人気車であり、車中泊系のユーチューバーさんの影響でさらに需要が高くなったエブリィワゴンは、安定した買取額です。
おすすめするオークション代行サービスなら、参加する業者が業界最大級のユーカーパックがおすすめです。
自宅や近所のガソリンスタンド、ヤマダ電機で出張査定をしてくれて、オークション出品にかんするすべてのことを代行しれくれます。
希望した金額で売れなかった場合は、それ以降のオークションをキャンセルすることもできます。
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