今回は日産:ノートのオーバーヒートとエアコン不調の原因だった電動ファンの交換に関するお話です。
日産:ノート | |
車両型式 | DBA-E11 |
エンジン型式 | HR15 |
年式 | 平成22年式 |
走行距離 | 約103,000km |
エアコンがいきなり効かなくなり、少し走行しているとまた効きはじめるというケース。
結果的には電動ファンの「ファンの部分だけが回転していない」という少しだけ珍しい事例でした。
このノート、調べていくとエアコンリレーや電動ファンの制御が軽自動車とは違って無駄に(?)丁寧かもな、というものです。
日産ノート|オーバーヒートの事例
オーバーヒート・・エンジンは無事だった
お客様の話では、目的地に到着してエンジンを止めて数秒後にエンジン下側から、大量の冷却水とボンネットから白煙(湯気)が立ち込め、レッカーサービスを依頼とのこと。
原因は電動ファンが作動しないことでラジエーターが十分に冷やされず、車を止めてエンジンを切ったことで走行風も当たらずウォーターポンプも回転しないので冷却水が吹き出したようです。
軽自動車よりもラジーエーターの表面積も大きいので走行していると風が当たるのでなんとかオーバーヒートにはならなかったようです。
レッカーで運ばれてきたノートの初期診断ではラジエーターの下側に大量の冷却水が付着していたのでラジエーター本体からの水漏れかと思いました。
水道水をラジエーターキャップから補充してどこから漏れているのかを確認しようとエンジンをアイドリングさせてみましたがどこからも漏れていない様子。
ラジエーターキャップテスターを使って圧力をかけてみるのが早いのですが近くにテスターがなかったのでエンジンをかけたままエアコンを入れて電動ファンの作動チェックを先にします。
はたしてファンはまったく回転せず、この段階ではファンモーターの作動不良が原因でオーバーヒートをしていることがわかりました。
とはいえ、ファンモーターの作動不良がきっかけでラジエーターが壊れることも考えられるのでラジーエターの状態も確認する必要があります。
まるで二次災害のように1つのトラブルが複数の不具合を引き起こすこともよくあります。
ラジエーターファンリレーはどこに?
↑ いかにもリレーが入ってそうな部分にファンリレーはなし
ラジエーター本体に問題がないことがわかったのでラジエーターファンモーターが作動しない原因を調べることにしました。
よくあるリレー単体のトラブルから調べるのが早いと考えてラジエーターファンモーターのリレーを探します。
それらしいリレーボックスが分からなかったのでネット検索していると「例のあれか」という日産がよくやるユニットまるごとのなかに組み込まれているようです。
IPDMの中にリレーが組み込まれていた
IPDM(Intelligent Power Distribution Module)はリレーやヒューズを効率よく1つのモジュールに集約させたものです。
部品点数を減らしたり生産コストを下げることができるという利点があるのかもしれませんが、このモジュールの中のどれか1つでもだめになると「全部交換」となります。
電動ファンの回転速度を二段階に制御する意味は?
このE11型のノートの場合、ラジエーターファンモーターの接続カプラーを見てみると4極端子になっていて、たんなるオンとオフをするだけでななさそうです。
お盆のさなか、資料を取寄せることもできず、とりあえずネット情報を頼りに似たような事例と照らし合わせていきます。
2個のリレーでスイッチングしている
ラジエーターファンの回転をハイモードとローモードで回転させるためのリレーが組み込まれているようで、必要に応じてファンの回転を制御しています。
ハイモードとローモードが存在する理由はなんだろうと考えていましたが、おそらくファンの回転する音がけっこうな音なので、騒音対策と電力消費のマネジメントなのではないでしょうか。
ファンが外れている・・?!
↑ 外れたファンが暴れてラジエーターにも傷が入っていた
診断の途中になんとなく電動ファンモーターの回転する重みというか抵抗を確認するつもりでファンに触ろうとしました。
よく見るとファンがずいぶんとファンシュラウドの下の方にあり、ファンだけが外れて落ち込んでいるのがわかり「マジか・・」という感じで原因が判明。
モーターは単体で回転していることが確認できたので回路系はすべて問題なし、ファンモーターとファンのどちらかに問題があるようです。
ファンは異常なし、念のためにモーターを交換
外れていたファンを見てみると変形もしておらず、中心部分のナットが外れているだけで、外れた原因はわからないものの、モーター側には劣化の兆候があったので交換となりました。
「そういやエアコンも効かなかったな」とのこと・・・。
1個の電動ファンでラジエーターとコンデンサーを冷却しているタイプの車ではファンモーターが壊れることでオーバーヒートとエアコン不調が同時に始まります。
普段からエアコンの診断などをやらないカー用品店やガソリンスタンドでは、
「とりあえずガス入れましょう」とか「ディーラーに行ってもらったほうが・・・」という対応をされることも多いです。
オーバーヒートで異変に気がつくパターンよりもエアコンが効かなくなることで整備工場で診断を受けるお客様も多いです。
E11ノートのエアコンが効かないトラブル
車のエアコンが効かない原因には、大きく分けると『ガスが不足している』『電装系のトラブル』の2つの原因があります。
「なんとなく冷えている」という状態ならガス不足があやしいですが、時々冷えないとか、いきなり冷えなくなるという場合は電装系のトラブルといえます。
ガスが不足していない場合はエアコンを入れた状態で低圧側のパイプを手で触ってみて十分冷たいと感じたら圧力を測定して判断をすることが多いです。
冷えたり冷えなかったりを繰り返す原因
車の冷房は暖房よりも複雑な仕組みなので、クーラーが効かなくなった場合の故障診断も手間と時間がかかることが多いです。
ただし症状がはっきりと出た状態なら原因を絞り込むこともできるので、それぞれの部位に問題がないか確認しながら故障箇所を見つけていきますが、今回のようにいきなり電動ファンが動いていない場合もあります。
エアコンがいきなり冷えなくなる
別の記事でも書いていますが、エアコンがしっかりと冷えるためには、コンプレッサーで圧縮されて高温・高圧の液状のガスがコンデンサーで冷却される必要があります。
コンデンサーはラジエーターと背中合わせのように重ねて配置され、1個の電動ファンで冷やされるタイプも軽自動車やコンパクトカーでは多いです。
圧力異常でフェイルセーフモードに
電動ファンが故障してコンデンサーが冷えなくなるとエアコンサイクル内のガスが異常高圧になり、保護のためにコンプレッサーの電源がカットされます。
正確にはマグネットクラッチが切れた状態なのですが、「カチン」とい音とともにコンプレッサーの回転は止まってしまいます。
走行風で冷却されるとまた冷える
そのままエアコンが効かない状態で走っていると、コンデンサーに走行風が当たるので少しづつ高圧側のガスも冷えて圧力も下がり、思い出したようにまたエアコンが効き始めます。
コンデンサーの表面積が大きな車では、走行風で冷やされる効率もいいので復帰するのも少し早いのかもしれません。
雨が降っているとエアコンが効きやすい?
コンデンサーを強制的に冷やすことができればコンデンサーファンが動かなくてもエアコンは効きます。
整備士としてたまにするエアコンの確認方法として、コンデンサーに水道ホースをあてがって直接に水をかけて冷やすことがあります。
その効果はてきめんで、エアガンで空気を通すよりもはるかに早くエアコンが効き始めます。
もしも雨降りのなか走行していれば、コンデンサーに水分が付着して熱を奪ってくれ、なおかつ走行風でも冷やされるので電動ファンが止まったままでもエアコンは少し効くでしょう。
E11ノートの電動ファン交換作業と費用
ノートの場合はファンシュラウドを下から引き出すことはCVTミッションが邪魔で物理的にできません。
バンパーは外さなくてOK
フロントバンパーを外すのかと覚悟していました。軽自動車はグリルとバンパーが一体型が多いので外すのが定番ですが、ノートはグリルだけを単体で外すことができたので外す必要はなし。
リフトアップしなくてもファンモーターの交換はできるようですが、腰痛持ちの僕はそんなとこでは頑張りません。
最近ではラチェットレンチを「カリカリカリ」とやるのも億劫なので、電動ラチェットで「ガガガガガ」と手早くボルトを緩めてやって同じ姿勢を維持する時間を短縮して作業をしています。
コアサポートは外しやすかった
ラジエーターを上から固定させているコアサポートを左右で4本のボルトで留めているだけなのでわりと簡単に浮かせることができます。
ボンネットのキャッチ周辺も外してしまえばまるごと上にずらすことができるので、ラジエーターのアッパーホースを外してエアクリーナーのケースを浮かせていきます。
あとはラジエーターを前側に倒すようにしてスペースを作ればファンシュラウドを引き出すことができます。
ファンが外れた原因は不明
ファンが外れたことでラジーエターのコアの部分に傷が入ってしまっていますが、お客様の「修理費用は最低限で」という依頼もあったのでそのまま再使用することにします。
コアの部分は柔らかいアルミでできているのですぐに変形してしまうものの意外と水漏れにならないことが多いです。
緩み止めが塗ってあるが緩んだ?
ファンとファンモーターを固定するためのナットはアンダーカバーの上に落ち込んでいましたが、ロックタイトのような緩み止めが塗ってあるように見られます。
なぜ緩んでしまったのかは不明ですが「緩み止め的な」ものを塗って組付け、無事にエアコンも冷えるようになり作業は完了をなりました。
シュラウドにはファンの回転方向が表記されていますが、正回転するモーターに対して正回転するナットで固定しているというのが少し気持ち悪いです。
家電の扇風機なら
逆ネジでファンを固定しているのにね。
最後に電動ファンモーターの交換費用をざっくりと
E11型ノートの電動ファンモーターを交換するだけのケースではバンパーの脱着は必要なく比較的に作業性はいい方でした。
ファンモーター | 税込みで約20,000円 |
交換費用 | 12,000円 |
クーラント | 少量なのでサービス |
※ただし交換費用に関しては整備工場で数千円の違いはあります。
予防整備にコストをかけるのもあり
真夏の車内、エアコンが効かない状況というのは健康を損ねるというよりも、小さなお子様やお年寄りだけでなく、体力が消耗している大人でも熱中症になるリスクがあります。
エアコンを多用するシーズンに入る前にクーラーの状態などを点検してもらうのも大事です。
もしも車検の一年前くらいの時期と重なるなら、法定点検を依頼するついでにエアコン全般のチェックを依頼してみるのもいいでしょう。
コメント
社用車で現在E12ノートを7台ほど使っていますが年間走行距離が多いのもあって毎年2台は重整備に入っています・・・
エアコンや冬場はエンジンの起動不良など
ちなみにエンジンは取引整備工場では原因不明(-20度と厳寒のため?)といったような具合です
数台をライズ?ロッキー?に替える模様
(私が乗るわけではないですが)1Lターボとか冬大丈夫なのかと不安ですが・・・
タカハシ様
>社用車で現在E12ノートを7台ほど使っていますが
>年間走行距離が多いのもあって
>毎年2台は重整備に入っています・・・
>エアコンや冬場はエンジンの起動不良など
↑
重整備・・・どんな整備でしょうか。
エンジンやミッションの載せ替えとか・・?
どちらにせよ走行距離が多いと整備する頻度を増えてしまいますよね。
それに厳寒の状況ではメーカーの想定していないトラブルも発生するのかも。
今年はミッションの載せ替えがあったようです
エアコンは毎年1~2台何かしか壊れるのでファンやコンプレッサー、ガス漏れなど
私のエクストレイルも一昨年、昨年と冷房が効かない、エアコンの操作盤が動かないなど
年数経っているのもあるので仕方ないかと思っていますが・・・
タカハシ様
ミッション載せ替えとはなかなかの作業ですね。
会社の車なのでコスパは大事ですが、買い替え費用との兼ね合いで重整備にもなりますよね。