HE22S型のラパンでよくあるエアコンのトラブルといえば、エバポレーターからのガス漏れによるエアコン不調が定番です。
あまりにも多いトラブルなので、スズキでは通常3年6万キロの保証を新車登録から9年に延長しました。
ただし、保証が切れてしまった場合は、ユーザーの負担で修理をすることになるのですが、なかなかの高額修理です。
さらに、ガス漏れが原因で二次災害のように別の部分にも不具合が発生し、結果的には車の乗り換えにも発展しています。
今回は、HE22Sのアルトラパンのよくあるエアコンガス漏れ修理とそれに付帯する作業などを紹介していきます。
ラパン[HE22S]のエアコンガス漏れ修理
エバポレーターからの漏れがほとんど
冒頭で記述したように、この型式のアルトラパン(以下ラパン)ではエバポレーターからのガス漏れを起こすことが多く、修理に時間がかかるケースが多いです。
エバポレーターはどこにある?
エバポレーターは、室内のエアコンユニットの一部として組み込まれていて、コンプレッサーで圧縮され、コンデンサーで冷却された液化したフロンが流れ込む場所です。
直接的に冷たい風を作り出す部分なのでエアコンの吹き出し口の奥に配置されていて、直接目視するには周辺を多少は分解しなければなりません。
助手席のグローブボックスを取り外してエアコンフィルターを外して覗き込んでもブロアモーターがあるので見ることができません。
できれば助手席の足元にあるブロアモーターを取り外したほうが見やすいですが、それでも手鏡やファイバースコープを使わないと見ずらいです。
エバポレーターからのガス漏れ診断のやり方
HE22Sのラパンに関しては、エバポレーターからのガス漏れあまりにも多いのですが、それでも念のためにガス漏れをしているかどうかの確認はします。
この場合、もっとも手軽な確認方法は、車をリフトアップして車体の下側から見るやり方が手軽で確実でした。
ラパンをリフトアップして助手席の真下付近を覗くと、ステアリングギアボックスが見えますが、そこにエアコンの排水が滴るような位置関係です。
↑ ステアリングギアボックスにオイル混じりの水滴が付着しているならエバポレーターからのオイル漏れの可能性が高い
クーラーが正常に冷えているときは、室内のエバポレーターで冷やされた空気は除湿され、エバポレーター周辺に水滴が付着しています。
付着した水分はエバポレーターの下側に集まり、排水溝(ドレーン)から車外に排水されるのですが、ガス漏れをしているとコンプレッサーオイルも混ざっています。
そのため、車体のしたからエアコンの排水溝の先端部分やその真下にあるステアリングギアボックスが油っぽくなっていればほぼ間違いなくエバポレーターからガス漏れをしています。
エバポレーターはコンプレッサーオイルが溜まりやすい場所で、ガスが漏れるとかなりの量のオイルも一緒に漏れていきます。
エバポレーターの交換作業は時間がかかる
脱着で3時間+α
ラパンのエバポレーターは、別の車種と比べると比較的に取り外しやすいですが、それでもかなりの時間と手間がかかります。
スズキディーラーの整備士さんなら一時間くらいでクーラーユニットごと室内から引っ張り出すことができますが、初めて挑戦するなら取り外しだけで2時間以上はかかるでしょう。
ダッシュボードを外さなくても交換はできた
おそらくスズキディーラーの整備士さんもやっていると思いますが、最低限の工数でどうにかエアコンユニットを取り外したいと考えたすえ、ダッシュボードを外さなくてもいいことがわかりました。
詳しくはまた別の記事で紹介しますが、ワゴンRもパレットも基本的には同じ工程で分解していくことができます。
ラパンのエアコンに9年の保証延長
エバポレーターからのガス漏れがあまりにも多発することもあり、スズキはラパンのエバポレーターからのガス漏れに対する保証期間を延長しています。
安全上では問題がなくリコールにならなかったものの、イメージダウンになるため、大規模な保証の延長に踏み切ったのでしょう。
同年式のワゴンR、パレットにも適用
ラパンと同年式のモデルの中でも、同じプラットフォームを使って製作された車種でもエバポレーターからのガス漏れが多発しています。
そのため、スズキでは年式が近い車種に関しては保証期間を通常の新車登録から3年6万キロから、走行距離に関係なく新車登録から9年に延長しています。
【外部リンク】ワゴンR、アルトラパン、パレットのエバポレータの保証期間延長
保証が切れたらユーザーの自己負担
新車から9年というかなりの保証期間延長が行われ、ディーラーからの情報が入りやすい販売協力店などでは積極的に保証延長の案内がされています。
そのいっぽうで、リコールや保証延長の情報に疎いガソリンスタンドやカー用品店などでは、ガス漏れによるエアコン不調にはガス補充を有料で勧めているケースもあります。
もしもエバポレーターの保証延長を知っていたなら有料でガスの補充をすることはしないのですが、往々にしてこのパターンはよくあります。
自己負担でエバポレーター交換ならいくらかかる?
ダッシュボード脱着でかなりの工数になる
検索して他の整備工場さんのラパンやワゴンRのエバポレーター交換を拝見していると、ダッシュボードを完全に外すやり方をしていることが多いです。
もちろんこれが正しいやり方ですが、あくまでもエバポレーターを交換するだけなら必須作業ではないです。
とはいえ、ダッシュボードの脱着を前提とした作業の見積もりとなると、作業工数は4時間くらいはつけることになります。
8,000円 × 4時間 = 32,000円
ということになります。
作業に慣れている整備工場のほうが安くしてもらえる?
作業に対する難易度も整備工賃を決める上での基準になりますが、同じ作業を多くこなしてきた場合、作業にかかった時間から算出することもあります。
結果的には同じ作業をたくさんこなしてきた整備工場は、その作業に対しての作業料金へのハードルが下がっていることもあります。
とくに作業をする整備士が自分で作業見積書を作成するときなどは、安くしすぎるきらいがありますが、ユーザーにとってはありがたい話です。
エバポレーター本体も2万円以上
ラパンのエバポレーターの場合、部品の価格が24,000円ほどしますが、追加でエキスパンションバルブも交換することになります。
エキスパンションバルブも交換する理由
エキスパンションバルブはエバポレーターの一部のような形で付いているため、エバポレーターの交換をするなら同時に交換することがほとんどです。
エキスパンションバルブの交換をしなかった場合、エキスパンションバルブの「しぼり加減」が基準値から外れているとクーラーとしての冷えに大きく影響してしまいます。
最終的にはクーラーが効くようにすることが目的なので、ここまで大がかかりな作業なら同時交換をしないほうがリスクなのです。
コンプレッサーも連鎖的にダメかも
エバポレーターからガス漏れをしている場合、ガスと一緒にコンプレッサーオイルが漏れていることが多いです。
たとえば、エンジンルームの比較的に高い位置にあるエアコンの配管の継ぎ目などでガス漏れが発生してもそれほどオイルは漏れません。
ガスだけが抜けていく場合はガスの補充でも問題ありませんが、エバポレーターのようにコンプレッサーオイルが溜まる場所からのガス漏れではオイルも漏れ出しています。
オイルが減っていたら要注意
↑ 焼き付いたコンプレッサー。ベーンがすべて引っ込んだまま固着しています
エバポレーターを外したときに、エアコンユニットの下側に大量のコンプレッサーオイルが漏れていたら、オイルが不足したままでコンプレッサーを使用していたことになります。
その場合、コンプレッサー内部で潤滑不足が起き、内部が焼付きを起こしている可能性が高いです。
初期段階なら、コンプレッサーオイルをエバポレーターに直接注入して組み付けることでコンプレッサーの焼き付きを回避することができます。
それに対して、ガス漏れの修理を先送りにしてクーラーが効かないとガス補充だけを繰り返していた場合、長期間にわたりオイルが不足していた可能性があります。
コンプレッサーから異音が出ていれば危険信号
エアコンのコンプレッサーからの異音にもいくつかの原因がありますが、HE22Sのラパンに関してはエバポレーターからのオイル漏れによるオイル不足の異音が多いように感じます。
オイル不足のたまに焼き付いたコンプレッサーからは金属片や金属粉がエアコンサイクル内に巡ってしまい、エアコン修理をさらに大掛かりなものにしてしまいます。
本来ならもっと早い段階でガス漏れの修理にとりかかることで、コンプレッサーが潤滑不良になるようなことにはなっていません。
エアコン修理だけの話ではありませんが、
修理を先延ばしにすることにメリットはありません。
まとめ
今回はアルトラパン[HE22S]のエバポレーターからのガス漏れについてのお話でした。
ただ、同年式のワゴンRやパレットなどでもまったく同じ原因でガス漏れが起きており、メーカーとしても保証延長という措置もとっています。
ガス漏れを早く発見し、保証として交換することができれば、そのあとのオイル不足でコンプレッサーが焼き付くこともありません。
やみくもにクーラーガスを補充してその場しのぎな処置をし続けているとコンプレッサーオイルが少ない状態でコンプレッサーを傷めてしまうことになるのです。
クーラーが冷えない → クーラーガスの補充をしてもらう
こういった考えで暑いシーズンを乗り切ろうとすると、いずれは高額な修理になってしまうケースもあります。
エアコンの診断やガス補充も本格的な修理をしている整備工場に相談することも大事です。
最近のエアコン修理では予想外のトラブルで悩んだのが、まさにこのラパンのエアコン修理での出来事でした。
【実録】HE22S型ラパンのエアコンが効かない原因と修理の振り返り
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