JB23型のジムニーでよくあるトラブルとして「前より加速しなくなった」とか「坂道で登らない、加速がにぶい」という相談があります。
JB23系のジムニーのどのモデルでも言えることですが、タービンブローによる加速不良が多いですが、ほかにも考えられるトラブルはあります。
今回はジムニーのJB23型で加速しないトラブルについての原因や予防策に関するお話です。
ジムニーJB23型の坂道を登らない原因
登り坂はエンジンに大きな負荷をかけるため、平地走行では気が付かない不具合がわかることがあります。
過給圧が上がらないと加速しない
JB23型ジムニーはターボエンジン搭載車ですが、登坂車線で加速するにはターボがしっかりと働かないと、かなりもっさりした加速になってしまいます。
ジムニーは軽自動車としてはかなり車重があるので、ターボがしっかり効かないと十分な加速は得られません。
ジムニーでタービンブローが多い理由
JB23型のジムニーだけに限ったことではありませんが、軽自動車のターボが壊れる事例で多いのがエンジンオイルの管理不足によるものです。
タービンは毎分数万回転も回転していますが、その軸受けの部分はエンジンオイルで潤滑しています。
そのため、低品質なオイルや劣化したオイルを使用しているとタービンの寿命を縮めてしまうことになり、本来の性能を発揮できなくなります。
エンジンオイルの劣化
国産車のなかで「エンジンオイルの管理に気をつけないといけない車は?」と聞かれたら、整備士としては『軽自動車のターボモデル』と答えます。
それくらい軽自動車のターボは負担が大きく、エンジンオイルの交換頻度がタービンの寿命に大きく影響してきます。
とくにジムニーのように本格的な4WDとしての機能を備えた車は、フロントデフ、トランスファー、リアデフ、ラダーフレームなど、それぞれがかなりの重量物です。
そのためJB23型ジムニーの車両重量はAT車、MT車ともにほぼ1tとなり、わずか660ccのエンジンにタービンで加給して走らせています。
またどの軽自動車にも当てはまりますが、馬力を出すためにはエンジンの回転をあげて絞り出すように出力をあげているためエンジンオイルの劣化が早いです。
できればジムニーなどの重量級の軽ターボ車は3000km前半くらいで交換がのぞましいです。
ちなみに、僕の愛車、「走る釣り道具入れ」ことエブリィワゴンはじむにーと同じ型式のターボエンジンで、3000km毎でオイル交換してます
14万キロ走行の現在でも、僕のエブリィワゴンのターボは元気です。
点火系のトラブルもかなり多い
プラグコードを採用していたころのジムニーはコードの劣化やディストリビューターへの雨水の混入などがよくあるトラブルでした。
JB23型ジムニーはダイレクトイグニッションを採用しているのでこれらのトラブルは解消され、エンジンのレスポンスもかなりよくなっています。
ただし、エンジンを縦置きレイアウトにして搭載していることで2番シリンダーや3番シリンダーに熱がこもる傾向は同じで、イグニッションコイルの2番がダメになることがあります。
また、エンジンオイルの交換をサボり気味にしているとエンジン内部のブローバイガスの吹き抜けが原因でタペットカバーのオイル漏れもおきやすくなります。
するとプラグホールにエンジンオイルが流れ込み、イグニッションコイルを傷めてしまい、結果的には失火の原因となるケースもあります。
【実例】登り坂でエンジンがガクガクした原因
オーバーシュートで点火カット
同僚のメカニックが診断していて少しアドバイスを求められた事例がありました。
登り坂でエンジンがしゃくるようになり、とくに負荷をかけたときに毎回その症状がでるとのこと。
坂道を登らないわけはありませんが、アクセルを踏み込んでしっかりと加速しようとするといきなりガクガクとなり、試乗をした同僚はオートマチックのトラブルと感じたほど。
結果的にターボの過給圧が上がりすぎた状態(オーバーシュート)でエンジン保護のためにコンピューターが点火をカットしたことで馬力が落ちてしまったことが原因でした。
原因はウェイストゲートゲートの作動不良
ターボ車は排気の力をかりてタービンを回し、吸気側に空気を送り込むことで理論上は排気量が上がったようなトルクを出すことができます。
ただし、過給圧を上げ続けるとエンジンが壊れてしまうので設定した以上の過給圧にならないように逃がすためにウェイストゲートが作動します。
ウェイストゲートの機構は比較的にシンプルで、ダイヤフラムと連動したロッドの部分が動くことで弁を動かしています。
今回の症例ではロッドが固着していたようで、過給圧が上がり続けたために点火カットが入っていたようです。
最近知りましたが「ウエストゲート」じゃなくて「ウェイストゲート」なんだそうで・・・。
ジムニーJB23型の加速不良でよくあるトラブル
坂道を登るとき以外でも加速しないと感じることがある場合は、不具合がより顕在化しているため、ターボ意外の不具合も考えられます。
とはいえ、やはりタービンが壊れている可能性も高いです。
過走行車ならエンジンブローの可能性も
車体の重さや四駆であることのなどを加味するとかなりエンジンに負担をかけるのが軽自動車としてのジムニーのつらいところです。
10万キロオーバーなら2番シリンダーの圧縮があやしい
ジムニーでよくあるのが3気筒エンジンの真ん中のシリンダー、いわゆる「2番シリンダー」のバルブが破損しているケースです。
エンジンオイルの管理が良くなかったり、エンジンに負荷をかける運転を繰り返すことでおきやすく、エンジンが冷えているときは失火したようにエンジンが振動します。
エンジンが暖まった状態でも加速が悪く信号待ちなどでアイドリングが不安定でブルブルとエンジンが振動しています。
とくに10万キロを超えたあたりから起きやすく、それまでの使用条件やエンジンオイルの管理によっては10万キロ未満でもおきます。
イグニッションコイルの不良
ダイレクトイグニッション方式になったJB23ジムニーは、イグニッションコイルのトラブルもおこります。
とくに2番シリンダーは熱がこもりやすい部分なので、イグニッションコイル内の回路やダイオードなどが熱でパンクしてしまうことがあります。
コイルの不良で失火してエンジンがスムーズに吹け上がらず加速が悪くなったりエンジンが振動する症状が出ます。
スパークプラグの不良
スパークプラグもイグニッションコイルと同じく2番シリンダーのプラグがいきなり内部で断線して失火してしまうことがあります。
ただ、2番だけが顕著に壊れるわけでもなく、ほかのシリンダーでもいきなりプラグが突然死してしまうことがあります。
エンジンオイルの燃えカスがプラグに付着
エンジンオイルの交換が適度に行われていないエンジンでは、エンジンオイルが燃焼室内に入り込む「オイル下がり」がおきます。
とくにスズキのエンジンではバルブステムシールが弱いのか、オイル交換をサボるとオイル下がりが起きやすい傾向にあります。
燃焼室にエンジンオイルが入ると、その燃えカスがスパークプラグの外側電極に付着して、そのプラグ本来の性能が出せなくなります。
チューニングをしたジムニー
エンジンのライトチューンの定番といえば、エアクリーナーをファンネルタイプに交換してマフラーを交換するのが手軽でそこそこの効果を得ることができます。
ただし、エンジン出力を上げるということはそれだけエンジンに負荷をかけることになるため、ノーマルのエンジンよりも故障リスクは高くなります。
これまで述べてきた2番シリンダーのトラブルや点火系のトラブルもチューンしたことでそれぞれのパーツの寿命も早まることが考えられます。
ジムニーはエンジン出力を上げるために過給圧(ブースト)をノーマルよりも高くしたり、マフラーを抜けのいいものに交換していることが多いです。
ジムニーの加速不良のトラブルを防ぐには?
加速が悪くなる原因の大半はエンジントラブルが関係しています。エンジンをいたわるメンテナンスをしっかりとしてあげることでトラブルへのリスクも下げられ、かつ燃費の悪化も遅らせられます。
エンジンオイルの管理は大事
20年以上いろんな車のオイル交換をやってきましたが、エンジンオイルがもっとも汚れやすいのが軽自動車で、1500ccクラスのコンパクトカーと比べると、1.5倍くらいエンジンオイルが汚れるのが早い印象です。
3000km~4000kmでオイル交換しよう
ましてや、ターボエンジン搭載で車重も1tを超えるジムニーならなおさらエンジンオイルの管理は重要で、3000km~4000km、できれば3000km前半くらいの交換がターボには優しいです。
ジムニーにおすすめエンジンオイルの粘度は?
現在市販されているエンジンオイルならどのブランドのものを選んでも、オイルの粘度を極端なものにしないかぎりタービンを壊すようなことはありません。
JB23型ジムニーに搭載される「K6A」と呼ばれる型式のエンジンならエンジンオイルの粘度は『5W-30』や『10W-30』くらいのものをえらべば問題はありません。
ごく一般的な走り方をするなら上記の粘度のエンジンオイルを選んでおけばあとは交換サイクルをしっかり管理しておくだけです。
ジムニーのエンジンオイルにこだわりたいなら『5W-40』といったワイドレンジの化学合成オイルもおすすめです。
スパークプラグは早めの交換がおすすめ
高寿命タイプのスパークプラグは「10万キロ毎の交換」というスパークプラグの常識のようなものが整備士の間でも言われていました。
JB23型の前期はとくに注意
JB23ジムニーの前期(H10.10~H20.6)では、「KR7AI」という、高性能だけど長寿命ではないスパークプラグが新車装着されています。
じつはこのプラグ、中心電極はイリジウムで外側電極が通常プラグと同じ耐久性のないものになっています。
詳しくは別の記事をチェックしていただくとして、このプラグはプラグメーカーのNGKでは『軽自動車は1万キロで交換』と説明しています。
【関連記事】KR7AIのイリジウムプラグは買ってはダメ!互換性のある適合品がおすすめ!
JB23型の後期はロングリーチのプラグ
後期型のJB23はシリンダーヘッド周りの改良があり、スパークプラグはロングリーチの「LKR7BI8」という型番のものになっています。
とはいえ早めの交換が望ましい
LKR7BI8という型番はNGKのものですが、NGKの公式サイトでも『片側貴金属タイプ』と記述されており、高性能であっても長寿命ではないとされています。
そのため
片貴金属プラグタイプ。交換の目安は一般プラグと同じおよそ2万km(軽自動車は1万km、二輪車は5千km)です
と書かれているのでおそくとも2万kmでの交換が望ましいです。
せっかく交換するのであれば同じ品番のものよりも両側が貴金属タイプの長寿命タイプ「LKR7BIX-P」への交換がおすすめです。
摩耗したプラグはイグニッションコイルを傷める
イグニッションコイルからスパークプラグに流れた高電圧の電気が火花となって混合気(ガソリン)に点火しています。
新しいイグニッションコイルの箱を開けてみると説明書が入っていることがあり、『イグニッションコイル交換時にはプラグも同時に交換することをオススメします』みたいなことが書かれています。
火花が飛びにくいスパークプラグではイグニッションコイルに負荷がかかり、コイルの寿命が短くなってしまうからです。
イグニッションコイルは消耗品?
エンジン上部のシリンダーヘッドに差し込むようにセットされているイグニッションコイルは熱に弱いこともあり、どの車種でも定期的に不具合の原因になります。
壊れたら交換するという考えでもいいのですが、エンジン不調のままで走行すると交通の流れについていけなくなることもあるので、できれば消耗品と考えて定期的に交換するのもおすすめです。
具体的なイグニッションコイルの交換サイクルですが、街乗りがメインの場合なら4年から5年で3本とも交換してしまうのがいいでしょう。
ただし悪路を競技するような走らせ方をするジムニーならもっと早く交換したほうがいいのかもしれません。
暖気走行とクーリング走行
エンジンを始動させたすぐではエンジン全体が均等に暖まっておらず、そのままでエンジンに負荷をかけることはエンジンの寿命を縮めてしまうことがあります。
そのため、暖機運転を意識したあとも、いきなり負荷のかからない運転をすることがエンジンを長持ちさせることにつながります。
同じように高回転で高負荷をかけた状態からいきなりエンジンを止めてしまうこともエンジンに負荷をかけてしまいます。
アフターアイドルも少しは必要?
ターボに負荷をかける運転をするとタービン周辺が高温になり、エンジンオイルの油温も高くなっています。
いまでは使われることが少なくなった「ターボタイマー」も負荷をかけた直後にエンジンをストップさせるとエンジンオイルや冷却水の流れが止まることを防ぐためのものです。
ほとんど必要ないという意見もありますが、高速道路でサービスエリアに入ってエンジンを止めるような場合は、少しアフターアイドルをしてもいいのかな、と個人的には思ってます。
できれば、目的地に近くなれば高負荷な走行をさけて巡航モードでエンジンやミッション、ブレーキなどを冷却するためのクーリング走行をしてあげることもおすすめです。
ジムカーナに近い走りをするミニサーキットを走っていたころ、愛車に油温計と水温計をつけていました。エンジンオイルの油温は水温よりも下がりにくいという経験をしました。
「ジムニー乗り」はエンジン載せ替えもいとわない?
走行距離が10万キロを超えて、なおかつかなり無理をさせてきたジムニーのエンジンなら、上述したようなトラブルが重なり始めます。
ある程度くたびれたエンジンなら、載せ替えをしてしまうほうが結果的には早くて確実な修理になることもあるので、部品交換などの予防整備をしていてもいずれは車の乗り換え、または大きな修理をすることになります。
ジムニーの場合は車体そのものに希少価値があるので、一般的な軽自動車よりはエンジン載せ替えを決断するオーナーさんも多いようです。
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