軽自動車はブレーキの効きが悪い?自動車整備士が車検や整備で感じたこと

ドラムブレーキ内部ブレーキ

軽自動車ってブレーキの効きが悪いよね?

とおっしゃるお客様がおられますが、

たくさんの車に乗り込んで検査をしてきた僕としては、

サボカジ
サボカジ

そうかもしれないし、間違ってるかも

と内心は思っています。

軽自動車の進化はすごい

進化してきた軽自動車は、今やファーストカーとして一家のメインの乗り物として使われることも多くなりました。

とはいえ、普通乗用車や貨物車と比べると、タイヤは細いし車体も小さいし、そもそも車両の価格も安いこともあって、ブレーキも小さいと思われているかもしれません。

2022年現在、整備士として20年以上車検や整備をしてきましたが、20年前とは比べ物にならないくらい今の軽自動車はしっかりと作り込まれています。

ですが、車検などで整備をしていると、ブレーキに関する部分で、「おや?」と思うこともあります。

今回は、

・軽自動車のブレーキの効きが悪いと言われる理由

・軽自動車のブレーキが甘いと感じる人に知っておいてほしいこと

こんなお話をしていきます。

軽自動車のブレーキの効きが悪いと言われる理由

ブレーキング

チープだったころのイメージしかないユーザーさんも多い?

軽自動車に対していいイメージを持っていないユーザーさんもかなりいますが、その方の車の保有歴や運転経験には共通点があるようです。

高級車や大型貨物などの運転経験が多い方で、軽自動車を所有したことがあまりなく、たまに家族の軽自動車に乗った時に「ブレーキの効きが悪い」と感じるようです。

また、古い軽自動車に乗ったころの記憶しかないユーザーさんも軽自動車に対して「安っぽい」「しっかりしてなさそう」というマイナスなイメージが固定されているようです。

プラットフォームを流用して作られた軽自動車

初代ワゴンR

引用元:suzukiデジタルライブラリーより

たとえば、スズキのワゴンRは今でこそコストをかけて作り込まれた軽自動車ですが、1993年にリリースされた初代ワゴンR(CT21S)はかなりチープでした。

セルボモードを肥大化させた代償がブレーキフィールに

CT21S型のワゴンRは、セルボモードのフロアパネルなどを流用していましたが、ロアアームやサスペンション、ブレーキキャリパーなども専用設計ではありませんでした。

背が低く軽量なセルボを肥大化させたような生い立ちの初代ワゴンRのブレーキはかなりキャパ不足で、車体が重くなったぶんブレーキの効きもよくありません。

CT21SのワゴンRは、走行距離が3万キロ台でブレーキパッドがペラペラに減っていることも珍しくありませんでした。

それだけ容量の小さなブレーキに負担がかかっていたのでしょう。

整備士サボカジ
整備士サボカジ

とはいえ、そのチープさがワゴンRの良さというか、すごさというか・・・

開発費をかけず、

既存の技術で革新的なアイデアを具現化したのはすごいと思いますが。

サスペンションの出来でもブレーキフィールが違う

フロントのサスペンション周辺がプアな出来だと、ブレーキを踏んだときの車体の姿勢も安定しません。

ふにゃふにゃの足回りだと、かなり極端な前のめりになってしまい運転手は怖いと感じることもあります。

ホイールベースが短いと姿勢も安定しない

上述のワゴンRを例に取っても、小型で小回りがきくセルボモードはホイールベースも長くはなく、それを流用したワゴンRではブレーキング時の姿勢変化も大きくなりがちです。

サスペンションの踏ん張りがきかないうえにホイールベースの短さもあって、ふだん普通乗用車を運転している人なら、ブレーキングで「うわ。ちょっと怖いな」となるかもしれません。

※初代ワゴンR(CT21S)のホイールベースは2,335mm、2022年モデルの(MH85S)のホイールベースは2,460mm ホンダのN-BOXのホイールベースは軽自動車としては最長の2,520mm
サボカジ
サボカジ

ホイールベースとは前輪と後輪の離れ具合のことを言います。

同じ全長でもホイールベースが長いほど直進安定性も増し、

ブレーキングでの姿勢も極端な前のめりになりにくくなります。

ワゴンRだけではなく、ダイハツやホンダなど軽自動車を作っていたメーカーではプラットフォームを流用してハイトワゴンを作ることは当時ではあたりまえでした。

タイヤの扁平率も関係してくるかも

今でこそ軽自動車のタイヤは小型車に近いサイズで、タイヤの扁平率も155/65R14などの65%扁平くらいが主流です。

それに対して、20年以上まえの軽自動車では145/80R12など、80%扁平のタイヤが当たり前に採用されていて、ブレーキング時での「ふにゃふにゃ感」を助長していました。

ようするに、軽自動車がチープだったころの印象が残っているユーザーさんが「軽自動車はブレーキの効きが悪い」と、今でも言うことが多いのです。

車検での制動力検査では問題なし

アルトラパン 車検整備

今どきの軽自動車はかなり優秀

軽自動車も普通車と同じく、新車から3年、以降は2年ごとに車検をすることが義務付けられています。

車検ではブレーキの分解点検を実施し、消耗品や摺動部分のチェックがされ、必要に応じて部品の交換や調整が行われています。

検査の最後には「検査ライン」と呼ばれる機器に乗せられてブレーキの効きを測定し、車検の合否が決まります。

車両総重量に対して合格ラインが変わる

車検ではブレーキの効きを「制動力」として測定し、その車が公道を安全に走行できるかどうかを判断する重要な項目としています。

合格ラインは前後のブレーキで車両総重量の50%以上の制動力を出すことができることが条件となっています。

たとえば、車両総重量が1000kgの軽自動車なら、前後左右のブレーキでトータル500kgf以上の制動力を発生しなければならないことになります。

さらに左右の制動力の差が8%未満であることや全後輪で偏りすぎた制動力も不合格になってしまいます。

軽自動車の制動力には余裕がある?

僕自身は自動車整備士であり、検査員でもあるので、車検の合否の判定をしなければなりませんが、コンピューターと連動した検査ラインのお陰で軸重などの計算もする必要はありません。

実際に軽自動車を車検の最終検査ラインで検査してみると、ほとんどの車は車検合格ラインよりをはるかに上回る制動力が出ています。

50%どころか、60%以上の制動力が出る軽自動車も少なくありませんが、それでも軽自動車のブレーキの効きが悪いと感じているユーザーさんもいることはたしかです。

「制動力」より「フィーリング」が印象を決める

これまでたくさんの軽自動車の車検をしてきた僕としては、軽自動車の制動力は非常に進化してきていると感じています。

それでも、高級車や外車も含め、いろんな車に乗り込んできたことで、軽自動車ではブレーキのフィーリングがよくない車種もあります。

ブレーキペダルまわりの「しなり」が気持ち悪い

軽自動車もオートマチック車がほとんどですが、クラッチペダルがないぶん、ブレーキペダルも踏みやすいように大きめのペダル・パッドになっています。

ところが、T字型になっているペダルの剛性が弱いと、ブレーキペダルを踏み込んだときに、付け根部分からしなることがあります。

スポンサーリンク
マスターバックの作動も関係してくる

マスターバックとは、ブレーキペダルの付け根あたりにあるブレーキを踏む力を補助してくれる装置です。

エンジンをかける前にブレーキペダルを強めに踏んだままエンジンをかけると、ペダルごと奥に沈み込んでいくのがわかります。

エンジンが発生させる負圧を利用して軽い踏力でもしっかりとブレーキを効かせることができますが、車種によってはかなりフワフワした感じになるものもあります。

じつはこのマスターバックの効き方も重要で、あまりにも奥のほうからブレーキが効き始める車種だと、初めて乗ったときに「ブレーキが効かない!怖い!!」となります。

ブレーキキャリパーの共用も関係する?

路面凍結防止剤で錆びたディスクブレーキ

整備士をしているとたまに「おや?」と思うのが、車検などでブレーキパッドの交換をするために部品の品番をしらべているときです。

ディスクパッドが入った箱には、その品番のディスクパッドに適合する車種が記載されていますが、意外な車種で同じ部品が使われていることがわかります。

たとえば、ワゴンRとアルトで同じ品番のディスクパッドが使われているときもあり、つまり同じキャリパーが採用されているということになります。

ただし、ワゴンRといっても同じ年式でさまざまなモデルもあり、パワーのあるターボモデルではキャリパーも大きなものになっています。

ところが、ワゴンRでも廉価モデルではアルトと共用のブレーキになっていることもあり、同じワゴンRといえど、ブレーキの容量も違うことになります。

サボカジ
サボカジ

車両重量が100kg以上違うアルトとワゴンRのブレーキパッドが

共用ってちょっと心配になりますよね。問題はないですけど。

ただし、それだけでブレーキの効きが悪くなるということはありませんが、ブレーキペダルを踏んだときのフィーリングが違うことはあります。

ブレーキパッドの表面積が小さいぶん、マスターバックの効かせ方やブレーキマスターのストロークなども違う可能性があります。

すると、奥まで踏み込まないとブレーキの効き始めが遅かったり、ペダルを踏み込む力を変化させないとスムーズにブレーキングできないこともあります。

結果的には「なんかこの車、ブレーキが気持ち悪い」と感じることもあるでしょう。

軽自動車のブレーキが甘いと感じたら

焦げたドラムブレーキとハブベアリング
↑ これはサイドブレーキの戻し忘れでブレーキ内部が異常高温になってしまった、とある軽自動車のドラム内部です。ドラムの内側に漏れ出したブレーキフルードが付着して焼けています。

ブレーキのタッチが明らかに変化した場合

これは軽自動車だけに限ったことではありませんが、普段から乗り慣れている車のブレーキに違和感を感じたらすぐに整備工場に相談してください。

軽自動車の場合にたまにあるのが、後ろのドラムブレーキの中でブレーキフルードが漏れていることがあります。

ホイールシリンダーと呼ばれるブレーキシューを押している部分からブレーキフルードが漏れ、漏れたフルードがライニングに付着してブレーキの効き具合が変化します。

 

サボカジ@整備士
サボカジ@整備士

ドラムブレーキ内部の液漏れでは、ブレーキがスーーっと滑るように感じるようになったり、逆に強烈なカックンブレーキになることがあります。どちらにせよ、危険な状態ですから整備工場で点検をしてもらってください。

乗り慣れていない軽自動車の場合

軽自動車

ブレーキペダルの調整はできない

たまにお客様から相談されるのが、「ブレーキが奥のほうで効く感じが嫌なので調整してください」といった、ブレーキのタッチに関することがらです。

ただ、ブレーキペダルの付け根部分にあるブレーキマスターのプッシュロッドの長さを調整できるようになっていますが、基本的にはこの部分を調整することはできません。

うかつに調整してしまうと、ブレーキマスターの内部にあるピストンが踏力ゼロのところまで戻らなくなり、「ブレーキ抜け」になる可能性もあり非常に危険です。

ドラムブレーキ内部の調整でも変化する

ドラムブレーキ内部

ブレーキの効きが甘いと感じたらまずやってみてほしいのが、ドラムブレーキの調整です。

ほとんどの軽自動車は、今でもうしろブレーキにはドラムブレーキが採用されていて、車検や法定点検ではドラムブレーキの調整がされています。

ただし、ドラムブレーキの調整をすると、サイドブレーキの引きしろ(踏みしろ)も調整することになり、サイドブレーキの遊びが少なすぎてしまうこともあります。

そのため、車検での点検ではサイドブレーキの引しろが問題ないと、そのままドラムブレーキの調整をしないこともあります。

サイドブレーキ調整で踏みしろも変化する

軽自動車だけに限ったことではありませんが、後ろブレーキがドラムの場合、ブレーキシューの調整機構を動かすとブレーキペダルの踏みしろも変わります。

お客様から、ブレーキペダルの踏みしろが深く奥の方まで踏み込まないとブレーキの効き始めが遅いと相談を受けた場合、後ろがドラムブレーキの場合はドラム調整をすることがあります。

ただし、そのままドラムブレーキ内の隙間調整だけをやってしまうとサイドブレーキが引けないくらいキツくなってしまいます。

そこで、

・ドラムブレーキ内の隙間調整をギリギリまで詰めておく

・サイドブレーキの弾きしろをサイドブレーキワイヤーの調節機構を緩める

この二つの調整をしておくことで、サイドブレーキの引きしろを変化させずにフットブレーキの踏みしろを手前側にすることができるのです。

この作業を行うことでブレーキペダルを踏んだ時の奥まで踏み込まないとブレーキが効かないという症状を緩和することができます。

ただし、それも車種によっては難しいこともあり、サイドブレーキのワイヤーを詰める作業も大変な車種もあります。

 

最後に

ワゴンR リアハブベアリング

今回は、軽自動車のブレーキは今でも効かないのか、ブレーキが甘いときに気をつけることについて書いてみました。

まとめると、軽自動車のブレーキが効かないと言われる理由として

・昔のイメージで軽自動車のブレーキは効かないと思い込んだままのユーザーもいる
・ブレーキキャリパーを軽量なモデルと共用しているハイトワゴンなどは効きが甘い
・ドラムブレーキ内部のシリンダーから液漏れをしている可能性がある
・ドラムブレーキの調整でブレーキペダルの踏みしろが改善することがある

とはいえ、ブレーキのフィーリングがどうしても改善できないような車種もあり、整備工場で点検を受けても問題ない場合は、その車に慣れるしかないケースもあります。

 

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました