今回はリアブレーキがディスクブレーキになっている車のブレーキ鳴きについてのお話です。
リアブレーキのブレーキ鳴きは低速から止まるときになったり、バックしていてブレーキを踏んだ時に「キー」という金属質の音が出るケースがあります。
また、走行中に後ろのタイヤ付近から「シャラシャラ」とか「シャシャシャ」といった異音が発生することもあります。
実は、特定の車種のリアディスクブレーキが偏摩耗することで異音になりやすいケースもあり、その原因についてもご説明していきます。
ディスクブレーキの異音がリアだけに発生するケース
低速から止まるときにブレーキ鳴き
朝の始動直後に鳴りやすい
ブレーキの鳴きとディスクローターの表面温度とは深い関係があります。
寒い日の朝や数時間ぶりに車を動かすときにだけブレーキが鳴くことがあり、リアブレーキだけ鳴くようなこともあります。
これは、どの車種で前後どちらのブレーキで発生するという法則や傾向は特定しにくく、リアブレーキが鳴く車は特定の条件がそろうと高確率で発生します。
この場合はディスクローターの表面温度がかなり低いときにだけなる場合が多く、あくまでも僕の整備士としての経験ではありますが、高速や中速ではあまり発生しません。
どちらかといえば中高速でブレーキ鳴きが発生するのはフロント側のブレーキでなることが多いです。
スポーツパッドはブレーキ鳴きがひどい
上述しましたが、低速で止まるときにリアブレーキから鳴きが発生するのは、スポーツモデルのタイプの車種に多いように感じています。
スポーツパッドはディスクパッドのなかでも、ローター温度が高温になったときに強い制動力を得るための味付けをしています。
そのぶん、ブレーキパッドに求められるほかの部分では犠牲を払っていて、ディスクローターへの攻撃性やブレーキダストの多さ、そしてブレーキ鳴きがひどいことが多いです。
とくに、ディスクローターが低温のときのブレーキ鳴きがひどく、乗っているご本人が「朝、ガレージから出るときに恥ずかしいくらい大きな音がする」と相談するほどです。
GB系のインプレッサWRXのリアパッド鳴き
いつも常連で来ていただいているお客様ですが、インプレッサWRXにお乗りの方で、車検や整備で車を預かると翌日の朝に動かすときにものすごく鳴きます。
とくにインプレッサのWRXのなかでもこの車両はSTIバージョンという、サーキット走行もこなせてしまうような最上位のスポーツモデルです。
ディスクパッドもSTIバージョンとほかのWRXとはノーマルパッドとスポーツパッドで使い分けられているようでした。
バックしている状態から止まるときに「グググ」と異音がする
雨の日の朝に鳴きやすいケース
ディスクローターが濡れた状態でブレーキを踏むと「ゴゴゴ」とか「グググ」といった、低い異音が発生することがあります。
これはフロントブレーキでよくあることですが、バックした状態からのブレーキングではリアブレーキのほうに荷重がかかることで、後ろから異音が発生することがあります。
前進しているときはフロントブレーキから、
バックしているときはリアブレーキから
ブレーキ鳴きが発生しやすいのは
荷重が多くかかっているからです。
走行中に壁際を走っていると後輪から「シャラシャラ」と擦れ音
ある特定の車種には、リアブレーキにだけディスクパッドの当たりが悪くなりやすいものがあります。
ディスクパッドの当たりが悪いとは
ディスクブレーキはキャリパーに油圧が伝わることでピストンがディスクパッドをディスクに押し付けることでブレーキが効きます。
ブレーキペダルを離すことでキャリパーへの油圧も抜け、ピストンはゴム製シールの弾力でほんの少しだけディスクパッドを浮かせています。
ところが、なんらかの原因でディスクパッドが均等にディスクローターから離れていないことがあり、ディスクパッドがローターに均等に触れていないことがあります。
整備士の間では、こんな状態を『ディスクパッドの当たりが悪い』といった言い方をすることがあります。
これは「ディスクパッドの当たり付け」とは全く意味は違いますね。
「当たり付け」とはディスクパッドとローターを初期馴染みさせることですね。
ディスクパッドの当たりが悪い状態では、ディスクパッドの一部だけがディスクローターに触れたままになってしまっています。
つまり、ブレーキを離していてもほんの少しだけブレーキが効いている状態なのですが、この状態を「引きずり」といいます。
ただ、ほとんどの場合は運転手にはわからないくらいの軽い引きずりなので問題はありませんが、ディスクパッドが偏摩耗する原因にもなります。
そのうえ、常にディスクパッドが部分的にローターに触れていることでディスクパッドが斜めにすり減るような偏摩耗をすることもあります。
ディスクローターの温度も部分的に上昇することもあり、これらがブレーキ鳴きの原因になることもあります。
ディスクローターの表面温度が鳴きを誘発する
本来、ディスクブレーキはブレーキングで発生した熱を効率よく放熱させられる構造になっています。
ディスクパッドに配合させる材質もディスクローターの表面温度との相性を考慮していて、ノーマルタイプのディスクパッドは低温でもブレーキの効きがいいタイプです。
ところが、ブレーキに引きずりが発生した状態だと、ディスクローターの表面温度が高くなりやすい条件になってしまい、ブレーキ鳴きが出やすくなることがあります。
ディスクパッドの当たりが悪くなりやすい構造もある
前置きが長くなってしまった感じなのですが、今回のリアディスクブレーキに発生しがちなブレーキ鳴きの原因だと言えるのがここからのお話です。
自動車の後輪には2系統のブレーキがあり、その構造の違いでリアブレーキの鳴きの発生するメカニズムが違います。
それが次の章でお話する、リアディスクブレーキの偏摩耗の原因と大きく関係しているのです。
リアディスクブレーキで偏摩耗が起きる原因とは
リアディスクパッドがサイドブレーキを兼用している車種
駐車ブレーキの構造の違い
乗用車に関して言えば、ほぼすべての車種で後輪に駐車ブレーキ(サイドブレーキ)が付いています。
後輪がディスクブレーキの場合、ディスクブレーキのローターの奥に駐車ブレーキ専用のドラムブレーキがついているタイプのものがあります。
このようなタイプを「ドラム・インディスク」とか「インナードラム式サイドブレーキ」などと呼びます。
整備士の間ではこのタイプの駐車ブレーキのことを「インドラ」なんて呼び方をする人もいて、僕も先輩の影響でインドラと表現しいてたりします。
ディスクパッドが作動するタイプもある
この「ドラム・インディスク」とは別のサイドブレーキの構造をしたものとして、ブレーキキャリパーにワイヤーがセットされて、手動でディスクパッドを動かす構造のタイプもあります。
このような駐車ブレーキを「ディスク式サイドブレーキ」などと呼びます。
ただ、サイドブレーキという呼び方は今では適切ではなく、サイドレバーを手で引いていた頃の名残です。
話が少しそれましたが、今回のリアディスクブレーキの偏摩耗にの原因として僕が取り上げたかった話題が、まさにこのディスク式の駐車ブレーキを採用している車についてなのです。
ディスク式パーキングブレーキと偏摩耗の関係
これは僕が整備士をしてきた上での経験則なのですが、リアがディスクブレーキになっている車の中でも、リアディスクパッドが偏摩耗する傾向が決まっているように感じます。
手動のワイヤーやオートパーキングシステムで直接にディスクパッドでディスクローターを挟むディスク式の場合、ディスクパッドの偏摩耗が多いと思っています。
なぜなら、ドラム・インディスクだと、駐車ブレーキのためだけにドラムブレーキがあるので、リアディスクパッドは駐車中は使用しません。
それに対してディスク式だと、ワイヤーなどでキャリパーにセットされた駐車ブレーキ専用のレバーを動かしてディスクパッドを動かしてディスクを挟み込んでいます。
一つのディスクパッドを全く別の方式で動かしているというのがポイントで、フットブレーキを踏んだときと駐車ブレーキを作動させたときでディスクパッドの動きが違います。
これこそが、
ディスクパッドの当たりのムラを起こしやすい原因だと僕は思っています。
外車でもよく採用されている構造
ディスク式の駐車ブレーキは外車でもよく使われていて、フォルクスワーゲンやBMW、メルセデス・ベンツなどのドイツ車にも多いです。
車検などでこれらの車種を点検することもあるのですが、ブレーキの偏摩耗も多いです。
↑ フォルクスワーゲンのゴルフのリアブレーキパッドもディスク式。ディスクパッドの当たりもムラもご覧の通り。
30系プリウスでもよくあるリアディスクローターの当たりムラ
トヨタのプリウスの中でもかなりの販売台数を誇るのが三代目の通称「30プリウス」です。
この30プリウス、リアのディスクローターが偏摩耗することが多く、みんカラなどでもユーザーさんから「偏摩耗がひどい」という声が多く見られます。
この場合、走行中に後ろ側から「シャラシャラ」という感じのローターとパッドが擦れるような音がすることがあります。
とはいえ、
同系統のプリウスαって30系プリウスとは違って
サイドブレーキはドラムです。にも関わらずディスクのムラはあります。
なので「ディスク式だから偏摩耗する」とは言い切れませんし、絶対的な優劣があるわけでもないみたいです。
まとめ
今回のお話のメインは、リアディスクブレーキの中でもディスクパッドを機械式に動かすタイプの「ディスク式駐車ブレーキ」を採用している車種に関するお話でした。
ざっくりと振り返ると
・リアブレーキからのブレーキ鳴きも発生しやすい
ディスク式の駐車ブレーキは
・リアディスクパッドの偏摩耗になりやすい
・ディスクパッドの当たりが均等にならないことが多い
・リアブレーキからの異音やブレーキ鳴きが発生しやすい
もちろん、これにあたらない車種もありますが、後輪ブレーキからの異音を判断するための判断材料になのではないでしょうか。
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