スペアタイヤを車に装着して走行すると、かなり違和感があります。
とにかくロードロイズが大きくて、まるで鉄板の上を走っているような振動も伝わってきます。
それでも緊急時にはスペアタイヤが頼みとなることもありますので、そのままの状態で走行しないといけません。
今回は、スペアタイヤを装着する取り付け位置の注意点や、
スペアタイヤを装着したままではどのようなことに気を付けて走らないといけないのかなどについてのお話です。
スペアタイヤはどのくらい走れるのか
応急用タイヤの使命とは
ほとんどの車のスペアタイヤは、ノーマルタイヤよりもはるかに細い、テンパータイヤ(テンポラリータイヤ)が搭載されています。
このタイヤは見るからに頼りないというか細くて薄い外見ですが、見た目そのままに、あまり頼りにならないタイヤです。
基本的には応急用ですので、タイヤのパンクやバーストのトラブルで走行不能になった状態から自走して修理を受けに走るための目的で使用するという、用途だけで使うものです。
そのため、そのままで走らざるを得ない場合のみ、最低限度の性能を有する状態となっています。
ABSなどにも悪影響をおよぼす
ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)は四輪それぞれの回転数をコンピューターが測定し、緊急ブレーキなどで、
一部のタイヤが滑ったときに、その車輪の回転数を通して異常を検出して最適なブレーキングに調整してくれます。
スペアタイヤを装着していると、その車輪だけはタイヤの外径がほかの三本のタイヤと違うため、ABSが正常に作動しないことが多いです。
また、車種によっては「パンク検出システム」を備えたモデルでは、メーターの中にパンクを通知するマークが点灯してしまいますが、これもABSのシステムを利用した仕組みです。
ほかにも車の横滑りを防止するシステムASCやVSC(ヴィークル・スタビリティ・コントロール)などの高度な車の挙動を安定させる制御も正常に機能しません。
スペアタイヤで走れる距離や速度について
タイヤの外径や幅の違いを考慮すると・・
随分と細いタイヤの幅になっていますが、そのぶんグリップは若干いいゴム質になっているのですが、そのぶんタイヤがすり減るスピードも早いです。
そのことを考慮するとほんの数日間だけ、タイヤを新しく取り寄せするとか、スチールホイールやアルミホイールが曲がってしまって再使用できないからスペアタイヤでその場をしのぐという使用用途に限られます
。
スペアタイヤでの走行スピードは時速100㎞まで、ともいわれていますが、荒れた路面では「キックバック」といわれる轍などからのハンドルへの影響も受けやすく、
高速道路だけでなく一般道でも通常の運転よりも気を付ける必要があります。
左右のタイヤが違うことの影響
スペアタイヤを後ろ側に入れる場合はあまり運転していても気になりませんが、前輪にスペアタイヤを入れる場合はとくに注意が必要です。
なぜなら、スペアタイヤと通常のタイヤはタイヤの外径(大きさ)が違いますので、前輪タイヤがパンクしたときと同じように、ハンドルが左右どちらかに流れていくようになります。
例えば左の前輪にスペアタイヤを入れた場合、右の前輪タイヤが大きいことになりますので、少しづつ右のタイヤが左のタイヤを追い抜くように働くため、ハンドルが左へ流れていきます。
もちろんその逆も同じで、右へ流れていきます。
運転手が漫然と運転していたり、走行中になにか別の操作に気を取られていると、車体が知らず知らずのうちにセンタラインからはみ出したり路肩のほうへ向かったりするのです。
もしも居眠り運転などでハンドルをしっかりと握っていない状態だと、重大な事故になってしまいます。
スペアタイヤの取り付け位置の注意!寿命も変わる?
前輪駆動車の場合
前輪駆動車はエンジンの力を前側の二本のタイヤへ伝えていますが、ハンドル操作も前輪タイヤで行っています。さらに、ブレーキングでも前輪タイヤが制動力の約七割ちかくを担っています。
前輪駆動車のタイヤは、後輪タイヤの二倍から三倍のスピードで前輪タイヤがすり減っていきます。
そのため、前輪にスペアタイヤを入れて、そのまましばらく走るということをすると、あっというまにすり減ってしまいます。
重要な操作のほとんどを受けている前輪にはスペアタイヤを入れることは避けたほうがいいでしょう。
もしも前輪タイヤがパンクなどをした場合でも、前輪駆動車の場合は、後ろのタイヤを前に入れ直し、スペアタイヤを後輪として使用するようにしましょう。
後輪駆動車の場合
後輪駆動車は、前輪と後輪がわりとバランスよくつかわれていますので、ほんの少しだけの移動のつもりでスペアタイヤと交換するなら問題はありません。
ただし、スポーツタイプの車の場合は、後ろの駆動輪の中央付近に「デフ」という、エンジンから伝わった動力を変換する部分があるのですが、
このデフにスポーツタイプの車はLSD(リミテッド・スリップ・デフ)という、左右の回転差の吸収を制限してしまう機構が組み込まれているときがあります。
その場合は後ろのタイヤにスペアタイヤを入れたまま走行するとLSDが壊れたり焼き付いたりすることになります。
基本的には、スペアタイヤは前輪に入れ、後輪に入れたままで走行するときはLSDがついていないことを確認したうえで低速で走行するようにしましょう。
まとめ
スペアタイヤを使って走行する機会はどんどん減ってきています。
任意保険に付帯しているロードサービスですぐにレッカー移動や簡単なパンク修理もしれくれますし、わざわざ自分でスペアタイヤを装着して走る必要性がなくなっています。
そのため、スペアタイヤをどうしても使わざるを得ない状況だと、スペアタイヤの正しい使い方や寿命などを気にせず、
「次の給料日までこれで走れるかな・・・?」
などと考える方も実際にいらっしゃいました。
車の正しい扱いの一環としてスペアタイヤとの付き合い方を知らないと思わぬ事故や車を壊してしまうことにもなってしまいます。
コメント