キセノンヘッドライトはHID(High Intensity Discharge lamp)の一種で、キセノンを封入させたバーナー内部にアーク放電をさせ発光する仕組みになっています。
数年間に渡って使用し続けていると、たまに赤やピンク色に変色して光るようになることがあり、初めて目にしたユーザーさんは驚いて整備工場に来ることがあります。
その一方で、一定数のユーザーさんは感覚的にバルブの寿命と理解されていることもあるのですが、修理をすれば部品交換をしなくてもいいように考えている方もいました。
今回はキセノンを封入したディスチャージヘッドライトについて
・キセノンライトが赤やピンクに変色する原因について考察
・整備工場やディーラーに依頼すると修理費はいくらほどかかる?
といった内容のお話です。
キセノンヘッドライトが変色する原因
寿命を迎えたバーナーはピンク色や赤色に光ることがありますが、具体的に変色する原因を説明することはできません。
ただ、取り外したバーナーを観察してみるとキセノンガスが入っている管の中が黒く変色したり、炭化したようなものがあり、本来の白い光にならなくなっているようです。
バーナー内部にできた不純物が原因
↑ これは上記のエブリィワゴンから外したHIDヘッドライトのバーナーですが赤く光っていたほうは内部が黒く濁っていました。高く付きそうな予感・・。
アーク放電の温度が低くなると赤やピンクに光る?
例えば、恒星の色とその表面温度には密接な関係があるように、キセノンライトの光の色も内部の温度が低温になると赤い光を多く出すのかもしれません。
ロウソクの炎とガスバーナーやアセチレンガスの炎では、その温度が違うことで炎の色も高温では青白く、低温では赤く見えるのと同じ理由だろうと思います。
そういった意味では、ピンク色よりも赤色のほうがより温度が低くなっていて、バーナーとしての寿命が近いといえます。
僕自身も愛車のキセノンバルブが寿命に近づいていたとき、はじめは左右の色の差がわからないくらいだったのが、しだいに片方だけがピンク色のようになり、最後は赤色に変化していきました。
結論として、バーナー内部で発光する光が赤くなるのは、内部に不純物が残り抵抗になっているために本来のアークが発生できないようになっているのではないでしょうか。
HIDライトが赤色やピンク色になればバルブ交換のサイン
上述したようにキセノンなどの貴ガスが封入されているHID(ディスチャージ)のバーナーが赤やピンクに光っているのは、バーナー内部のアーク放電が正常に行われていないことが原因です。
内部からガラス管が焦げたように黒くなっていたり白く濁っているのは、繰り返しスパークが行われてきたことで、バーナーが寿命を迎えていることを表しています。
さらにそのままで使用し続けていると、いずれはスパークすらできなくなり、まったく発光できないようになります。
キセノンヘッドライトの構造
蛍光灯に近い?キセノンライトの基本構造
家庭やオフィスでもよく使われる照明で蛍光灯がありますが、蛍光灯が点灯するときは蛍光管の中で両端の電極から熱電子が放出され、気体の水銀電子とぶつかり紫外線を発生、蛍光物質を経由して可視光線として光ります。
ざっくりといえば雷のように空間をスパークさせて光源を作り出していますが、キセノンランプは蛍光灯の水銀電子の代わりとしてキセノンが使用されています。
キセノンライトの光は電気溶接のスパークの光に近い理屈で発光させていますが、空気中ではなく石英ガラスの管のなかに封入された貴ガスが発光しています。
バーナーの内部でキセノンガスが発光している
蛍光灯なら蛍光管の中に入っている水銀電子の中をスパークさせていますが、キセノンライトは「バーナー」と呼ばれるヘッドライトバルブのような部分がそれにあたります。
ハロゲンランプのバルブの部分にあたるのでキセノンライトのバルブとかHIDのバルブという言い方をされますが、「バーナー」が正しいようです。
ただ、整備士でも「キセノンライトのバルブ」という言い方をする人も多く、バルブという言い方もわりと一般的になっています。
キセノンライトのバーナーは、外側の透明の部分が石英ガラスでできていて、熱膨張しないうえに丈夫で衝撃に強いので、内部で高電圧をかけるキセノンライトやディスチャージライトに適しています。
キセノンとは貴ガスの一種
以前は「希ガス」と呼ばれていたヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、ラドン、そしてキセノンは、英語表記でrare gasからnoble gasになり今では「貴ガス」と呼ばれています。
今でも「希ガス」と呼称しても
間違いではないようですがややこしいですね。
キセノンバルブの寿命はどれくらい?
バーナー(以下バルブ)の寿命は2000時間ほどと言われていて、通常の使用頻度なら5年以上は無交換で済む計算になりますが、連続して点灯させる時間が長かったり、逆に短い点灯を繰り返すことで寿命は短くなります。
製品としての個体差もあるので左右のバルブが同時に変色したり点灯しなくなることは少ないですが、ヘッドライトの場合はつねに同時に点灯しているので交換するなら左右を同時にするほうがおすすめです。
ちなみに僕自信の経験では、新車装着のHIDヘッドライトのバーナーが赤く変色し始めたのが新車登録から11年、走行距離で13万キロを超えたとき。
前日まで普通だったのにいきなりピンク色になるのが意外でした。
光量や色も少しづつ変化している
キセノンライトのバルブを同時に交換するべき理由として、数年間にわたり使用してきたことで劣化しているため、明るさや光の色も変わっていることもあげられます。
かりに純正相当のもので片方だけを新しいバルブに交換しても、反対側のバルブと色や明るさが違ってしまうこともあり、夜間の走行ではヘッドライトの左右差で見えにくくなることになります。
今では純正相当のバーナーもネットで購入することもできるので整備工場に部品持ち込みで交換依頼をしたり、DIYで交換するのもおすすめです。
キセノンライトのバルブ交換費用はいくら?
ヘッドライトが切れた状態で夜間に走行するのは危険ですし片側が切れた状態では整備不良車として違反切符を切られてしまいます。
新車の状態からHIDのヘッドライトになっている場合は、純正部品としてバルブ(バーナー)も供給されているので急ぐ場合はディーラーや整備工場に行けば交換をしてくれます。
バルブ交換は片側で15,000円くらい
■部品代(D2R)(D4S) 12,000円~14,000円
バルブの交換作業料とバルブの部品の費用を合計すると片側で13,000円~16,000円ほどです。
交換するための作業料金はヘッドライトを外さないとできない場合はさらに2,000円ほどの追加料金になることもあり、整備工場やメンテナンスショップによってさまざまです。
場合によってはフロントバンパーを外さないとヘッドライトを外すことができず、その場合は左右のバルブを同時に交換することで少しだけ作業料金が安くなる場合もあります。
交換を依頼するときに
「左右同時に交換するなら作業料金って安くなりますか?」
と聞いてみるのもいいでしょう。
まとめ
今回はキセノンライト(HID)のライトの色が赤くなったりピンク色になった場合の原因や修理費用についてのお話でした。
・発光するバルブ(バーナー)が赤やピンク色に変色するのは部品としての寿命
・バルブを交換するなら左右交換がおすすめ
・バルブの交換費用は片側で15,000円前後、左右同時交換なら安くなる車種もある
・純正バルブはかなり高額だが、純正相当のものなら安く購入できる
ちなみに僕のおすすめのHIDバルブは純正品として採用されることもあるPHILIPSのHIDバルブバルブです。
左右セットで純正の半額以下で購入できるので実質4分の1の価格で購入できます。片側が変色しはじめたら2個セットで購入して同時交換するのがコスパもよくておすすめです。
コメント
ヘッドライトの電球って高いんですね。
サンバーの時は交換しても3千円くらいで済んでたので、今度乗るエブリィもそのくらいだと思っていました。同じ明るさのLEDで車検に通るやつって安いの無いんですかね。
最近はLEDで電球色のやつも出てきましたし。
くまっぽい何か様
>ヘッドライトの電球って高いんですね。
そうですね。
通常のハロゲン球なら交換作業料金も含めて3000円くらいですが、キセノンヘッドライトのバーナーはかなり金額があがります。
キセノンヘッドライトの場合はLEDにすることはできませんが、H4タイプのハロゲン球ならLED化できますよ。