エアコンのフィルターを交換しないままで使い続けると最後はどうなるのでしょうか。
整備士としての僕自身の経験談も含めてお話していこうと思います。
「あれでしょ?エアコンの臭いがきつくなるだけなんでしょ?」
などと思っている方にはわりとショックなお話かもしれませんよ。
エアコンフィルターが詰まると起きること
フィルターが詰まると風量が減ってしまう
第一段階は、このフィルターの目詰まりが原因で風量減っていくことです。エアコンの操作パネルで風量を最大にしても「ゴーー」とか「ブオーーー」といった音がします。
やたら音が大きいわりにはエアコンの吹き出し口からはあまり風が出ていません。
この状態になったらエアコンフィルターがけっこうすごいことになっています。
エアコンフィルターがバイパスされていくと・・
エアコンフィルターがとことん目詰まりをすると、フィルターの横のすき間から風が通り始めます。
すると、本来はホコリが届かない場所にゴミなどが風に送られてきます。
↓これはエバポレーターという、冷房(クーラー)を効かせる時に機能する、冷たい風を作る場所です。
ご覧のように、ホコリなどが細かいフィンにびっしりと入り込んでいます。
この状態ではさらに風の量が減ってしまいます。しかもこのエバポレーターは、冷たい風を作る場所なのでクーラーをオンにすると常に冷えています。
そのため大気中の水蒸気がエバポレーターで冷やされて水分が凝固し、そこに水が付着します。
ホコリがびっしりと詰まった部分が水分でビチャビチャになっているので、エバポレーターからはカビなどの異臭がします。
エアコンを入れたとたん、酸っぱいような臭いや、かび臭い臭いがするのは、まさにエバボレーターに詰まったホコリと水分が原因なのです。
ブロアファンモーターが壊れると修理費もバカにならない
車のエアコンにもブロアファンモーターという、扇風機のモーターにあたる部品があります。
↑ エアコンフィルターもエバボレーターもホコリが詰まってほとんど風が通らない状態になると、送風するためのブロアファンモーターにも大きな負担をかけてしまいます。
たとえば、家庭用の掃除機の吸い口を手でふさいだまま掃除機のスイッチを入れるとどうなるでしょうか。
モーターからは苦し気なモーターの音が聞こえますね。
風を送りたいけど送る先が詰まっているからすごく負荷の高い回転をしているわけです。
そのため、ブロアファンモーターも壊れやすくなるということになります。
エアコンフィルターを交換しないだけで思わぬ修理費が発生してしまいます。
余計な故障の発生を抑えるという意味でもエアコンフィルターはぜひ交換してください。
エアコンフィルターの種類について
エアコンフィルターにも様々なタイプがあります。用途に応じて金額も違うのですが、アレルギーや花粉症、(注1)PM2.5対策などに対応しているフィルターもあります。
・スタンダードタイプ
もっとも基本的なエアコンフィルターで、集塵のみを目的としています。
・花粉などの除去
花粉の粒子は比較的大きく、花粉をフィルターで取り除くことができるタイプです。花粉よりも小さな粒子のものは通過してしまいますが、逆に言えば目詰まりしにくく、長持ちするとも言えます。また、黄砂アレルギー(注2)の方にも有効といえます。
・脱臭タイプ(注3)
脱臭、つまり臭いを取り除いてくれるものです。活性炭や吸着剤を組み込んだものなどがあります。車内に入ってくる排気ガスの嫌なニオイを取り除いてくれます。
・抗菌、防カビ機能付きタイプ
脱臭タイプのフィルターにセットでついていることが多いです。
銀イオン(注4)、亜鉛イオンの働きで嫌な臭いの元になる菌やバクテリアの繁殖を抑えてくれます。銀イオンは防カビ機能も併せて備えています。
・抗アレルゲン、抗ウィルス機能(注5)タイプ
上級タイプのフィルターにはアレルギーの対する機能もあります。
細かい素材を使用しているため、PM2.5などの微小粒子状物質も効率よく除去してくれます。
エアコンフィルターの交換方法
エアコンフィルターの外し方はわりと簡単
作業の難易度は車種によって違うのですが、かなり簡単にできる車種も多いので挑戦してみるといいでしょう。
特にトヨタ車なんかはグローブボックスの外し方もフィルターに位置もよく似た構造をしています。
車検の時にディーラーなどでおススメされることもありますが、エアコンフィルターをネットで購入し、自分で交換することでかなり安く済ませることもできます。
エアコンフィルターが装着されている場所は、おもに助手席の正面にある、グローブボックスの奥にあります。
多くの車種は、このグローブボックスを取り外してしまうことで簡単に エアコンフィルターの交換をすることができます。
エアコンフィルターの手前には樹脂でできたフタがあります。
ツメの部分を起こしながら手前に引くと外れます。
エアコンフィルターを引っ張り出すときに エアコンフィルターの向きなどを覚えておきましょう。
新しい エアコンフィルターには空気の流れの向きやどちら側が上側になるのかを表示してくれていることが多いです。
注釈
(注1)PM2.5とは
微小粒子状物質のなかでも、直径が2.5μm(ミクロンメートル)以下の物質の総称です。花粉よりも小さなため、エアコンフィルターのなかでもより繊維の細かい高機能タイプのものを選ばないと除去できません。
(注2)黄砂アレルギー
黄砂とは中国から飛来してくる黄河流域の砂塵を差します。粒子の大きさは花粉と同じくらいの10μmです。この黄砂には刺激物質が含まれおり(中国の公害ともいわれています)アレルギー体質の人には、この黄砂に含まれる刺激物質に反応しやすいと言われています。そのため、厳密には黄砂アレルギーではなく、アレルギー体質の人は刺激物質にも過敏に反応しやすいだけで、アレルギーではないと考えられています。
(注3)脱臭タイプのフィルター
実は脱臭に使われる素材もいろいろあり、緑茶に多く含まれるカテキンの成分を含ませたものや、ワサビの成分を使った物、冷蔵庫のニオイ取りにも使われる活性炭など、各メーカーが工夫を凝らしています。
(注4)銀イオンとは
簡単に言えば、原子レベルの銀(Ag)が水に溶けた状態のことを言います。銀イオンは臭いの元となるバクテリアの細胞の中に入り込み遺伝子を分離させて死滅される特性があります。銀イオンの抗菌効果はこのためです。
(注5)抗ウィルス機能とは
花粉対策やインフルエンザが流行する季節に需要が高まる「マスク」ですが、なかにはウィルスの活動を抑制する(不活性化効果)を有する薬剤を繊維に含ませたマスクもあります。これらの技術を応用したエアコンフィルターも発売されています。
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