お客様から、「この車、止まるときにスーッて進もうとするんです!」というご相談や、当店で販売した車へのプチクレームのような苦情をいただくことがあります。
その場合、決まってCVT車だったりするのですが、もしも本当にブレーキを踏んでいるのに車が進もうとするのなら、それは危険な状態のはずです。
今回は、CVT車でよくお問い合わせをいただく内容のなかでもCVTは乗りにくいとか、ブレーキの最後がヘン、といったお話について解説していきます。
CVTが乗りにくい原因とは?
CVTの特性は、ギアの変速がないことで、つながりがスムーズということです。
しかし、つながりが滑らかといわれる反面、いつも滑っているような感覚になってしまうこともあります。
これは無段階変速機であるCVTの変速の制御をコンピューターで行っていることも原因の一つです。
運転手がアクセルやブレーキを操作することで、その情報がECU(メインコンピューター)に入力され、運転状況に応じて適切と思われる制御が行われます。
ラバーバンドフィーリングとは
「ラバーバンドフィーリング」とはそのまま直訳すれば「ゴムのような感覚」ということになります。
CVTを搭載する車に乗った感じをネガティブな表現で揶揄しているわけですが、
たしかにアクセルワークと加速する瞬間のタイムラグはこんな感じです。
さらに、このフィーリングになってしまうには別の原因があります。
電子スロットルの欠点がCVTにも・・
燃費をよくするための技術の中に、電子スロットルがあります。
「ドライブ・バイ・ワイヤ」とも言われますが、ようするに、アクセルとスロットルが直接つながっていないのです。
それまでの車は、運転席の足元にあるアクセルペダルとエンジンの回転を制御するスロットルは、アクセルワイヤーで直接つながっています。
このタイプのほうがアクセルを踏み込んだ時のエンジンのレスポンスも非常にいいのですが、低燃費を細かいレベルで稼いでいくには、
人の足ではなくコンピューターがスロットルを動かすほうが、細やかなマネジメントができるのです。
ところが、このワイヤレスのスロットルは、運転手がアクセルペダルを踏み込んでも、ワンテンポ遅れてスロットルが動くことがあったりと、明らかにダイレクトな感覚が失われています。
運転手の意図とは別にコンピューターがスロットルを動かしていることがあるので余計にそう感じてしまうのです。
スロットルコントローラーで解決できる部分もある
とくに排気量の小さな軽自動車やコンパクトカーは、発進するときに「もっさり」としか加速できない車種もあり、右折をするときなどはヒヤリとしてしまうこともあります。
燃費を少しでも良くするためにはスロットルを緩やかに開いていくほうが有利ですが、その制御がいきすぎると発進にもたつくことにもなるので、スロットルの動きをダイレクトにする必要があります。
今ではスロットルコントローラーが社外品でリリースされていて、ノーマルの状態よりも発進時の加速をよくすることができます。
パワーアップするわけではありませんが、とくにCVT気持ち悪いくらいのラバーバンドフィールを改善するには、もっとも手軽で効果が感じられる解決策の一つです。
ただし、スロットルコントローラーはワイヤレスでスロットロルを動かしている車種にしかつけられませんので、2015年以降くらいの車種がおもな対象です。
おすすめはPIVOT(ピボット) スロットルコントローラー 3-drive PRO 3DPで、レビューの内容もかなり参考になります。
CVT車とマニュアル車とのレスポンスの違いがすごい
電子スロットルを採用したCVTの車と、アクセルワイヤーでスロットルを動かしているマニュアルトランスミッションの車、
この2車は対照的なレスポンスの差を感じさせてくれます。
なにせマニュアル車はタイヤからエンジンまでを直結にできるので、エンジンの回転を上手に合わせてやらないとぎくしゃくどころかエンストしてしまいます。
その分、エンジンブレーキを効かせたときの感じや、アクセルを踏み込んでいったレスポンスの良さは、運転する楽しさを味わうことができます。
CVT車が乗りにくい、気持ち悪いという感想を持つドライバーの多くは、マニュアル車に乗っていた期間が長い方が多いのでしょう。
かくいう僕自身も車の運転が大好きなので、いろんなマニュアル車に乗っていました。
それだけに初期のCVT車に初めて乗ったときは「なんじゃこりゃ」と思ったことを覚えています。
レスポンスが悪い電子スロットル、ダイレクトにつながった感じに欠けるCVT、この2つの機構だけで、かなりフィーリングが落ちていることは確かです。
CVT車は止まる寸前に加速する?!
これは僕自身もお客様から相談を受けることがある症状です。
とくにAT車からCVT車に乗り換えてすぐのお客様からよく言われます。
それぞれの言葉で説明してくれるのですが、総合的にまとめると、ブレーキを踏んでいきながら、最後に止まる寸前にスッと前に進む感じがするという内容です。
走行距離が多くなった車ではなく、新車から納車したすぐでもこれに似たような症状をお客様からお聞きすることもあります。
ディーラーの整備士に相談しても「それはCVT特有のものなので異常ではありません」みたいな返事が返ってくるだけです。
原因は燃料カットからの復帰?
電子制御の車はそうなのですが、走行中にアクセルペダルを完全に戻し切ると、オートマチック車でもエンジンブレーキが働きます。
この時、エンジンの内部では点火プラグは火花を飛ばしていますが、ガソリンは噴射されていません。
これは余分な燃料を消費しないための制御なのですが、エンジンの回転数が2000rpmであるときは、燃料カットがされていてもエンジンはぎくしゃくしません。
ところが、車が減速していき、エンジンブレーキがきく回転数がアイドリングの回転数を下回りそうになれば燃料が噴射され、少なくともアイドリングと同じくらいのエンジンの回転を維持しようと制御が働きます。
この『エンジンがタイヤに回されている状態』から『エンジンが単体で回転している状態』になる瞬間に、少しだけぎこちない感じがします。
場合によっては、一瞬だけエンジンブレーキがきかず、エンジンが車を進める状態になるので、スーッと進んでいく感覚を覚えるかもしれません。
AT車でもこの状態はありますが、CVT車の場合はエンジンブレーキのきかせかたにもコンピューターが介入してプーリーとスチールベルトの位置を変えていきます。
その際に生じるタイムラグやエンジンの回転への制御によっては、「ぴょこん」と車が前に出るような違和感を感じるのだと思います。
ようするに、瞬間的にエンジンブレーキが弱まり、瞬間的にエンジン回転が上がる、これが、CVT車に起きる、『止まる瞬間に加速する症状』の正体なのでしょうね。
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コメント
サボカジ様
はじめまして。
『お客様から、「この車、止まるときにスーッて進もうとするんです!」』
2023年8月に購入した中古パッソM700がこの症状が出て危険を感じて悩み苦しんでます。
購入して最初の一カ月はこの症状は感じず、加速の異常な不具合(いくつも同様書込みがあります)でしたがそれをディーラーに訴えて2023年9月の1か月点検時に無償でソフト更新をしてもらったら2024年5月時点では一度も加速異常は感じないようになりました。
ところが、この1か月点検を境に今度はサボカジさんのこの症状が出るようになりました。
表現は色々ありますが、私がディーラーに訴えたのは「停止寸前にブレーキが利かない瞬間がある」というものです。
経緯を話すと長くなるので、ここでは結論に近い部分だけ言いますが、
何度かTOYOTA店にて同乗テストをしてもらって漸く症状が出てTOYOTAも認めました。
録音も残ってます。
ところがそこからが問題で元々はダイハツ制作の車なのでTOYOTA店はダイハツにも同乗テストのデータも公開して問合せた所、
★そのような案件は1件も無い
★システムの異常では無いから不具合では無い
とダイハツより言われたそうです。
1件も無いというのはにわかに信じがたく、全国的に現場整備士には何件も声があがっているのではないか、本部(?)が認定しないだけなのではと思います。
また、ユーザーが危険を感じ、データにも表れているのに「不具合では無い」と言い切る理由は何なのか。逆に言えば「不具合では無い」と言えるという事は、「何かある、しかし不具合なのではない」という事で、「何かある」事は認めていると言えるわけです。
どうすれば良いのでしょうか。
ちなみに原因は分かってます。同乗した整備士が大変分かりやすく説明してくれ、私の体験(=サボカジさんの書き込み)と整合のある内容でした。
エンジンが暖まるまでの症状のようです。
こういう書込みが本サイトと趣旨が違ったらごめんなさい。
サボカジさんの書き込みが一番分かりやすくて全く同じ症状だったので、嬉しくてつい書き込んでしまいました。
でも他にこういう方、どの位いるんですかね。いないんですかね。
とく様
はじめまして。
コメントをありがとうございます。
>表現は色々ありますが、
>私がディーラーに訴えたのは
>「停止寸前にブレーキが利かない瞬間がある」
>というものです。
↑
これはCVTでよくある事例でこの記事の中でも触れている内容そのものですね。
僕自身も「おや?」と感じたことは何度もありましたが、その運転手さんのそれまで乗ってきた車の遍歴でも感じ方は違うかもしれません。
とくにMT車にばかり乗ってきた人はかなり違和感を感じたのではないでしょうか。
>★そのような案件は1件も無い
>★システムの異常では無いから不具合では無い
>とダイハツより言われたそうです。
>1件も無いというのはにわかに信じがたく、全国的に現場整備士>には何件も声があがっているのではないか、本部(?)が認定し>ないだけなのではと思います。
↑
そうですね。
ちょっと考えにくいですが、ディーラーでも情報共有できるネットワークがあるみたいなのであるはずですが。
ただ、今の時期のダイハツは不具合とか設計ミスみたいな事例には過敏に反応しているのかもしれませんね。
>どうすれば良いのでしょうか。
>ちなみに原因は分かってます。同乗した整備士が大変分かりやす>く説明してくれ、私の体験(=サボカジさんの書き込み)と整合>のある内容でした。
>エンジンが暖まるまでの症状のようです。
↑
冷間時のファーストアイドルが効いている状態ではとくに起きやすいことは確かですね。
これは僕自身が行っているやりかたなのですが、CVT車でエンジン始動直後のブレーキ操作に違和感があるときにやっていることがあります。
それは、減速中の最後の方でシフトレバーをニュートラルに入れて動力を切ってしまうとうやり方です。
つまり車が停まる直前にニュートラルに入れてフットブレーキだけで止まることでCVTのギクシャクした感じを切ってしまうわけです。
すべての人にオススメはできませんが、僕はアイドルストップ車でも停止中にニュートラルに入れたりしてます。
ニュートラルに入れてすぐさまドライブに入れるとアイドルストップが解除されるのでわりとやるのですが、同時にCVTの止まりかけのヘンな感じがでたらニュートラルにしてます。
>こういう書込みが
>本サイトと趣旨が違ったらごめんなさい。
↑
いえいえ、ぜんぜん問題ないですよ。
ちなみにですが、わりと最近、古い初期のダイハツタントCVT車と、一つ前ののタントのCVT車を乗り比べる機会がありました。
お客様の自宅に初期のタントを納車してきたのですが、CVTのかなり良くなってきてます。
止まりかけの違和感も感じにくくなっていますし、すべてのCVTに起きる症状でもないですね。
以上、
とく様のなにかしらの参考になれば幸いです。
サボカジ