今回はスズキのエブリィやキャリーでよくあるエンジンの不具合についてのお話です。
この手の症状に関する記事はほかにも出ているのですが、今回はこれらの不具合が起きやすい原因についても考えていきます。
今回の事例はK6A型エンジンを搭載しているDA64W|DA64Vのエブリィやエブリィワゴン、キャリーが対象です。
エブリィのエンジンがガタガタと振動する事例
ISCVのポートが詰まる
結論から言うと、エンジンがガタガタと振動する事例として多いのが、エンジンの回転を制御しているISCVにカーボンが詰まることで起きる症状です。
ISCV(アイドル・スピード・コントロール・バルブ)とは
ISCVはアクセルペダルをまったく踏んでいない状態でもエンジンが回転した状態を一定の回転数で維持するための部品です。
エンジンの回転数は、たとえばオートマチックのシフトをパーキングに入れているのか、ドライブに入れているのかでも変化しています。
ほかにもエアコンをオンにしたときやヘッドライトやリアガラスの熱線など、電気負荷が大きい電装品やエンジンの力が必要なときにエンジンの回転数を上げています。
その制御はメインコンピューター(ECU)に入力されてくるいろんな情報で判断され、最終的にはISCVが空気の流入量を調整することでエンジンの回転が変化するような仕組みになっています。
ISCVの通路は詰まりやすい
ところが、ISCVの通路(ポート)がカーボンなどで詰まってしまうと、コンピューターがエンジンの回転を上げるための命令をISCVに送っても、実際はエンジン回転が上がらないことがあります。
もしもそのとき、オートマチックのセレクターをドライブに入れていたら、エンジンの回転が低くなりすぎてエンジンはガタガタと振動することがあります。
ようするに、パーキングやニュートラルの場合はそれほどエンジンの力を必要としない状態でも、ドライブにシフトを入れたとたん、エンジンへの負荷が増えてそのままエンジンの回転数が下がりすぎてしまうのです。
エブリィのエンジンがアイドリング中にエンジンが止まる
エアコンを入れるとエンストする
この場合は単なる暖房や送風ではなく、エアコンのコンプレッサーのACスイッチを入れていることを指します。
クーラーを使用することでエアコンコンプレッサーをエンジンが動かすことになり、かなり大きな力を必要とします。
そのうえ、マグネットクラッチへの電源や電動ファンモーターも動き出すので、電気負荷も大きくなります。
結果的にはエアコンを使うことでエンジンに負荷がかかり、本来はそこでエンジン回転数が上がらなければならないはずが、ISCVのつまりや動作不良で回転が上がらず、そのままエンストすることがあります。
リバースに入れるとエンストすることも
止まりそうになったり止まってしまったり
つい最近に僕が担当したDA64Vのエブリィの事例では、『エンジンが冷えているときにだけ、バックに入れるとエンジンが止まってしまう』というものでした。
お仕事で車を使っているお客さまだったので、エブリィを預かることも難しく、症状も頻繁に起きることではないようなので、様子をみていただくことになりました。
その際に『もしかしたらISCV周辺の汚れが原因かも』とご説明をし、スローポートとISCVの周辺を洗浄することにしました。
冷間時だけエンストする理由
このエブリィの場合で気になったことは、エンジンが冷えているときだけエンストするということでした。
仮に、ISCVの通路が詰まり気味だったりISCVの動きが悪いとすると、エンジンが冷えているときはエンジン内部の燃焼室も暖まっていないことになります。
すると、エンジンの回転も安定せず、本来の出力も出ていないことが多いので、オートマチックのシフトをドライブやバックにいれたとたんにエンジンが止まるのかもしれないと考えました。
車を預かることもできず、症状も再現できないので、お客様にも「ダメ元」な施策ということを説明しつつ作業をすることとなりました。
結果的にはエンジンの回転数が若干安定したのと、すこし回転数も上がったような感じです。
ISCV周辺が汚れる原因とは
エンジンオイルの管理が悪いとISCVが詰まりやすい?
「少し無理があるのでは?」と言われそうな話ですが、僕はかなりマジメにそう思っています。
エンジンオイルの管理が悪い、つまりオイル交換をサボってばかりいるエンジンの場合、ピストンリングから吹き抜けてくるブローバイガスがかなり多くなります。
本来ならこれらはエアクリーナーの周辺にブローバイホースを通って最後は燃焼室に戻されていきますが、ブローバイガスが多いと、エアクリーナーがべちょべちょになってしまうこともあります。
ようは、エンジンオイルの性能が低下することでエンジンの密閉性が低下し、ブローバイが増えることで、スロットル周りにも気化したエンジンオイルやカーボンなどの不純物が入り込んでいきます。
オイルキャッチタンクがあれば防げる?
旧車やチューニングカーなどに装着されていることがある「オイルキャッチタンク」ですが、スロットルやエアクリーナー周辺へのブローバイガスの流入をかなりカットすることができます。
とはいえ、商用車であるエブリィに純正でキャッチタンクを付けることはコスト上でも難しいですし、オイル交換もサボってしまうユーザーさんにお金をかけてキャッチタンクをつけていただくのも現実的ではありません。
オイル交換をまめにするのが簡単で確実
あまりにも基本的なことですが、エンジンオイルの交換サイクルをきちんと守っていれば、エンジン本体だけでなく、周辺への悪影響も未然に防ぐことができます。
高価なエンジンオイルでなくてもOK
ブローバイガスの発生を抑制するという意味では、エンジンオイルを高性能なものや高価な添加剤を使用する必要はないと感じています。
たとえば、僕の勤務する整備工場で、かなり新しい状態の車をリース車として代車にしていたことがあります。
代車の場合、経費を抑えつつ管理していかなければならないので、オイル交換などのメンテナンスも必要なぎりぎりのラインでやってきました。
代車の管理をほとんど僕が担当していた時期もあるので、オイル交換のサイクルや抜いたエンジンオイルの汚れ具合なども観察することができます。
結論でいえば、ディーラーなどで推奨しているくらいのエンジンオイルに相当するAPI規格に合わせたエンジンオイルを使用していれば問題ありませんでした。
とはいえ、ターボモデルのDA64Wなどはそれなりのエンジンオイルを使うほうが安心で、ターボの耐久性にも影響してきます。
カストロールEDGE 5W-30 API SP 3Lもおすすめで、エブリイワゴンなら3リットル缶のものでちょうどいいです
最後に
今回はスズキのエブリィでおきたエンジンが止まる症例と、それにまつわるお話でした。
走行距離が多くなるにつれて、それまでのメンテナンスの良し悪しが結果としてあらわれてきます。
エンジンオイル管理が悪い車ほどスロットル周辺の汚れがひどくなりやすく、それにともなってISCVの作動不良やポートの詰まりなども起きやすくなります。
また、タペットパッキン周辺にブローバイガスが多く吹き抜けてくると、オイル漏れの原因にもなり、スズキのK6A型エンジンの場合はイグニッションコイルも壊れやすくなります。
お仕事で車を使用している方にとっては、エンジンオイルの交換を頻繁にすることは、かなり面倒に感じてしまうかもしれません。
それでも、大事な仕事の相棒が突然調子が悪くなるほうが、お仕事に大きな影響が出てしまいます。
「スズキのクルマって壊れやすいよなー」
などとおっしゃるお客様もおられますが、ことエンジンに関しては他のメーカーより大きく劣るというほどでもありません。
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