車載レンチだけで
外車のホイールボルトを緩められる人って
すごい力持ちですよね・・!
外車のタイヤを外すときに、ホイールボルトが緩まずタイヤ交換作業がすすまなくなることがあります。
もともと外車は日本車よりもホイールナットやホイールボルトの締め付けトルクの値が高く設定されていて、
プロの整備士でも緩めるときにひと手間増えることがあります。
非力なインパクトレンチではビクともしないような外車も多いですが、原因は指定トルクの高さだけでないこともあります。
さらに、ホイールボルトが緩んでもタイヤが外れないことがあり、気がつけば全身が汗だくになることも。
今回は
・外車のホイールボルトやホイールナットが緩まない
・外車のタイヤホイールが外れない
それぞれの原因と対処のしかたについてのお話です。
なお、外車のホイールボルト・ナットの締め付けトルクについては一覧表を作成していますので、そちらを参照ください。
【関連記事】輸入車のホイールナット・ホイールボルト締め付けトルク一覧表
外車のホイールボルトが緩まない・外れない原因
締め付けトルク値が高い
↑
テスラのホイールナットの締め付けトルクは
175N·mというスーパーカーなみの値です。
これ、並の大人の力で緩めることができるの?というトルクです。
テスラのような、EVでハイパワーなモデルは特に高い締め付けトルクでラグナットを締めていますが、海外のスーパースポーツカーはどれも強力なトルクに対応しています。
欧州車のハブボルトはよく締まっている?
ハブボルトでホイールを取り付けしていることが多い欧州車の場合、かなりキツく締まっていることに驚きます。
たとえばBMWのMINIは排気量では小型車に該当しますが、ホイールボルトの締め付けトルクは140N·mで、トヨタのランドクルーザーのアルミホイール(131N·m)よりも高いトルクで締まっています。
フォルクスワーゲンのPOLOやビートルも小型車ですが、ホイールボルトの締め付けトルクは120N·mもあり、日本車の大型車よりも高いトルクで締め付けていることになります。
初めて外車のタイヤの入れ替えをしようとしたかたは「これ締めすぎじゃね?」と思ってしまうほどで、車載工具だけでハブボルトを緩めるのはかなり大変です。
17mmのボルト2面幅と高い締め付けトルクのギャップも感じる
ベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディなどのドイツ車勢は、ホイールボルトの2面幅が17mmで、一見するとボルトが小さく見えます。
ボルトの頭の部分が小さいなら締め付けトルクも低く設定されていると思ったら大間違いで、頭の部分は17mmでも、ボルトの太さはM14なので日本車のハブボルトよりも太いのです。
欧州車って悪路を長距離移動しながら
国境を超えるイメージですが
それだけタイヤのボルトも
頑丈に取り付けられているんでしょうかね??
僕自身も初めて輸入車のタイヤを脱着したときに、「こんなに高いトルクなのになんで17mmとか小さい頭なんだろう・・?」と不思議に思いました。
外車のホイールボルトを外して手に取ると、ずっしりと重くて丈夫な感じなので、そもそもの材質もサビや腐食に強く高いトルクで締め付けることを前提しているようです。
ハブボルトの締めすぎで外れないことも
キツく締めすぎてしまう作業者の心理
そもそも輸入車のホイールボルトの締め付けトルクを正確に把握していない人は多く、タイヤホイールの脱着をする際には、「だいたいこんなもんかな?」という予測で締め付けていることが多いです。
これはプロの整備士でもやってしまうことですが、締め付けトルクの基準値がわからないと、ついつい「緩んでしまうよりはマシ」という心理でやたらと強くハブボルトを締めているケースが多いです。
とくにインパクトレンチを使用して締付けをしている場合は、トルクレンチで確認しようにもほとんど「増し締め」ができないくらいに締める人もいます。
インパクトレンチで
ガンガンに締め付けている
整備士やサービスマンも多いですね・・。
たしかに緩んでしまわなければとりあえず走行中に危険な目に遭うことはないのですが、あまりにも強く締めてしまうと、次に緩めるときに緩まなくなってしまいます。
しかもタイヤの脱着作業はそれほど頻繁に行うわけではないので、早いスパンでも半年に一回、夏タイヤで通年走行できるエリアならタイヤ交換やパンクなどの緊急時くらいしかタイヤの脱着をしないことも多いです。
時間が経過しているほどホイールボルトも緩みにくくなるので、規定トルクをオーバーして締め込んだうえに、長期間そのままにしておくと緩めるのがさらに困難になります。
貫通したホイールボルトの先端が錆びている
ハブボルトを採用している車種のハブ周辺の構造として、ホイールが接触するハブにボルトがねじ込まれる穴があり、ホイールとハブを外側からハブボルトで締め付けて固定します。
ハブボルトはホイールとハブを貫通するように少し長めのものが多く、車種によっては1センチ以上もハブの内側に飛び出したままになっていることもあります。
ブレーキディスクの内側に飛び出した部分のハブボルトは、その部分だけが外気に触れたままになり、タイヤが跳ね上げたいろんな粉塵や水分、凍結防止剤などが付着していきます。
↑ こんな感じ。
超・汚い図解ですみませんがw
ボルトの先端が錆びてしまうと、ハブボルトを緩めていく際にハブのネジ山を傷めてしまい、そのままがっちりと食い込んだままになりそれ以上緩められなくなってしまいます。
とくにスペーサーなどを使ってホイールを外側にオフセットさせている場合は、純正よりも長いハブボルトを使用していることがあり、必要以上に長いハブボルトは先端部分が錆びていきます。
ホイールボルトが緩まないときの対処法
本来の締め付けトルクを確認する
外車の中には非常に高い締め付けトルクで締まっていることがあり、175といN・mという、もはやアクスルナットに近い締め付けトルクを指定している車種もあります。
「締まりすぎてて緩まない!」と思っていても、ただ単に力が足りていないだけで正常な状態かもしれませんし、その場合はより大きな力でボルトを緩めるための道具なり、方法なりを探す必要があります。
おすすめできないのは、力ずくでなんとか緩めようとすることで、怪我をしてしまうこともあります。
【関連記事】輸入車のホイールナット・ホイールボルト締め付けトルク一覧表
外車でも逆ネジは少ない
貨物車などでは車体の左側のホイールを逆ネジで締め付けていることがあります。
逆ネジとは左方向に回すと締まっていくようにネジ山が切られているボルトやナットで、タイヤの回転方向に慣性が働いても緩まないように車体左側のホイールにだけ採用することがあります。
あまりにもボルトが緩まないと、「もしかして逆ネジとか??」と不安になることもありますが、外車でも乗用タイプの車なら逆ネジを採用することはありません。
それでも不安なら、
まずは車体の右側のホイールボルトを
緩めるようにしてみるのもいいでしょう。
長いレンチや継ぎ手を使う
車載工具のレンチだけでは、ハンドル部分が短すぎて並の大人の力でもかなりてこずってしまうことが多く、車載のレンチに長いパイプ差し込んで継手にすると便利です。
ちなみに僕が外車の車検で使用しているのが、ハンドルの長さを自在に変えることができる大ぶりのラチェットレンチです。
外車の場合、ハブボルトを盗難防止のキーにしてある車種も多く、インパクトレンチでキーを緩めると破損させるおそれがあるので手動で緩めるときに使用しています。
伸縮ができるラチェットなので場所を取らず、DIYでタイヤの脱着をする方にもオススメの工具です。
高い締め付けトルクだからこそ、力の入れ方に気をつける
緩め作業をする場合はレンチをセットしたら、上に持ち上げるようにして緩めるのがコツで、下に体重をかけるようなやり方はおすすめできません。
体重をかけてボルトを緩めようとすると
いきなり緩んだときに
大勢をくずしてしまい怪我をしてしまいます。
絶対にやめましょう。
インパクトレンチがあればいいんだけど・・・
僕が仕事で愛用しているマキタのインパクトレンチTW300DZは300N·mのトルクを誇りますが、外車のホイールボルトも簡単に緩めることができます。
マキタの電動インパクトレンチを半年使ってみた感想。
・エアホースの煩わしさから完全開放された
・140N・mのMINIのラグボルトが一撃
・締め付けにはちょっと注意が必要
・LEDライトが便利
・バッテリーの充電は月に一回で大丈夫
・格安社外品バッテリーでもいけるもう手放せない😌 pic.twitter.com/6b3GfFHCju
— サボカジ@整備士ブロガー (@sabokaji_blog) September 30, 2022
ボルトの角をなめてしまった場合
古いボックスレンチを使っていると内側が摩耗していることがあり、ボルトにフィットしていないままで緩めようとするとボルトの角がなめてしまうことがあります。
こうなってしまったらDIYでボルトを緩めることは難しく、自動車整備工場に運んで緩めてもらうほうが現実的です。
ただ、5ピーススパイラルタイプディープエクストラクターセットなどの角が潰れたボルトに食い込む工具があればどうにか緩められる可能性もあり、整備工場に高い作業料金を支払うまえに試してみるのもありです。
外車のタイヤが外れなくなる原因
↑
外車の場合、
ホイールとハブがきっちりと嵌合するようにハマっているものもあり
ホイールが外れにくいくらいです。
ハブとホイールが錆で固着している
すべてのホイールボルトやホイールナットを緩めて取り外したのにホイールがビクともしないことが外車にはよくあります。
本来なら最後のホイールボルトを外せばタイヤが傾きながら「ポロリ」と外れるはずですが、両手でタイヤを持ってもガタつかないし、足で蹴りつけても動かない場合もあります。
原因として多いのは、ホイールと車体側のハブの合わさった部分がサビなどで固着してしまっているケースで、がっちりと一体化したようになっていることもあります。
ドイツ車ではかなりよく起きることなので、車検などでタイヤを脱着した場合はハブ周辺の清掃とホイール固着防止剤の塗布をメニューにしている整備工場もあります。
欧州車はセンターハブが長く飛び出している車種が多いです。
ホイールの中に深く入り込んでいて触れている面積が広いぶん
固着すると外れにくいです。
タイヤが外れない場合はどうする?|自動車整備士のやり方
車検や法定点検、タイヤ交換などなど、整備士はタイヤを外すことが多いですが、ホイールとハブが固着してタイヤが外れないことはよく経験します。
まずは両手で揺すってみる
少し固いなと感じたら軍手やメカニックグローブを付けた状態でタイヤの上下を持って軽く揺すってみますが、このときタイヤに体重を預けてしまうといきなりタイヤが外れたときに怪我をします。
上下に揺すっても外れないときは左右に持って同じように振動を与えながら固着した部分にガタを作って大きくするようにします。
ホイールボルトを2箇所付けて強い衝撃を与える
ホイールボルトを1か所ないし、2か所に付けてみて、いきなりタイヤが外れないようにしておいてタイヤに衝撃を与えます。
お客様の前でやると怒られそうですが、タイヤのサイドウォールの部分を足で蹴るようにしながらタイヤを回していきます。
もちろんホイールのリムやスポークの部分を靴底で蹴るのは絶対NGで、傷がついてしまいます。
扁平率の高い(薄い)タイヤはリムを傷つけやすいので基本的にはやらないほうがいいですが、路上でのスペアタイヤとの交換作業などでは悠長なことは言えません。
ジャッキアップした状態では車の下側に入り込むのは危険ですが、できれば車の下側からホイールの内側を大ハンマーと当て物を使って大きな衝撃を与えていくしかない場合もあります。
これらの作業はかなり危険なケースもあるので、あまりにも強力に固着している場合は整備工場で外してもらうほうがいいでしょう。
最後に・・
今回は外車(輸入車)のホイールボルトが緩まない場合の原因や対処法について簡単にお話してきました。
基本的な対処法ではどうにもならない場合はハブボルトをドリルでもんでしまうとかハブごと外してしまうなどの大掛かりな作業になってしまいます。
ただ、よほどの悪い条件が重ならない限りはここまでひどい状態にはなりません。
・極端なオーバートルクで締め付けていた
・長期間放置してハブ周辺が激しく腐食している
・塩害を受けやすいエリアに車を置いていた
・長いハブボルトに交換、先端部分のネジ山が錆びている
などなど。
上記のような場合は整備工場に依頼して外してもらうほうが「急がば回れ」なのかもしれません。
事前の準備も大事
パンクなどの緊急でタイヤの脱着をする場合は致し方ない部分もありますが、冬タイヤへの入れ替えやローテーション作業なら事前に準備をしておくことも大事です。
パワフルな工具やツールを用意しておく
↑おすすめなのが伸縮ができるレンチで、普段は短くして収納できるので場所をとりません
↑ いざ使うときには長く伸ばして使用するのでかなり力が入りやすくて外車のタイヤ交換にも重宝します。
このブログでも何度か紹介したことのある僕のお気に入りの工具が伸縮可能なTONEのラチェットハンドル、トネ(TONE) 伸縮ラチェットハンドル(ホールドタイプ) RH4EH 差込角12.7mmです。
ご存知だと思いますがトルクレンチで緩める作業をすることはできません。
そこで、緩めるための工具を別に用意しておきたいところですが、場所を取るような長いアイテムは少し邪魔くさいです。
また、外車の場合は純正のロックボルトを採用している車種も多いのでインパクトレンチが使えないこともあります。
そんなときにも長くて力を入れやすい手工具はあると便利です。
電動インパクトレンチがあれば非常に便利
仕事でもプライベートでも大活躍してくれているのがマキタのインパクトレンチTW300DZで、外車のホイールボルトでも一撃で緩みます。
電動なのでどこでも使えますので、自宅でDIYでタイヤの入れ替え作業をするときでも便利このうえないです。
一度でもインパクトレンチの便利さを知ってしまうと、
手動で外車のホイールボルトを緩めるなどやりたくなくなります。
いきなりジャッキアップをしておいて「ガガガガ」という感じでホイールボルトが1秒ほどで緩んでしまう。
高いトルクでホイールボルトを締め付けている輸入車にこそおすすめの便利ツールです。
タイヤ・ホイールの固着防止も望ましい
センターハブとホイールがギリギリのクリアランスではまっているような車種は輸入車だけでなく国産車にもあります。
スプレータイプのホイール固着防止スプレーは手軽に使えてかなりオススメです。
僕も仕事で使っていますが、その効果はかなりのもの。コスパもいいので事前に用意して起きたいです。
コメント
TW300良いですよね
自分も春に買いました
ブロワー買ったときに1860Bが2個付いてきたので本体のみで
以前に社用車のナットが1つだけ緩まず、手近にあった単管でなんとか緩んだことがありました笑
タカハシ様
TW300は僕も今年の四月に購入して使っています。
コスパと人柱的な意味で社外品のバッテリーを使用していますが、
毎日3台くらいのタイヤの脱着をしています。
それでも月に1度くらいの充電でも問題なく、いい意味で驚いています。
>ブロワー買ったときに
>1860Bが2個付いてきたので本体のみで
↑ まさに「マキタの沼」ですよね(笑)
マキタは商品のラインナップが豊富なので
複数持つとバッテリーのコスパが良くなるイメージです。