今回はワゴンRのダッシュボードを動かすという、やや大がかりな作業ですが、完全にダッシュボードを外してしまうことはしません。
ただし、ここまで分解してしまえば、ほとんどの部品などを交換することができます。
MH34S型のワゴンRでよくあるエアコンのトラブルと言えばクーラガス漏れです。
とくにエバポレーターからのガス漏れはかなりおおく、メーカーからの保証延長の対象にもなりました。
ただし、新車から9年の保証が切れてしまっている場合、すべてユーザーの自己負担で修理をすることになりかなり高額な修理になってしまいます。
「なんでそんなに高いの?」
と見積書をみて思わず口に出すお客様もいますが、作業内容を画像付きで説明すると
「なんか大変そう・・・。」
と納得していただけることが多いです。
とはいえ、スズキの軽自動車の場合はダッシュボードを外すのは比較的にやりやすい方です。
それでは、MH34S系ワゴンRのエバポレーター交換の工程を紹介します。
今後のための備忘録的なおもに画像がメインの記事です。
MH34SワゴンRのエバポレーター交換
↓ 今回のガス漏れ修理の目的がこのエバポレーターの交換。そのためにエアコンユニットを車内から引っ張り出すための作業をしていきます。
エバポレーターの交換手順
これから紹介するやり方は実際に僕がやっていたやり方ですが、多少の順序が入れ替わっても問題ない工程もかなりあります。
まずはエンジンルームからアプローチできる部分の分解をしておきます。
クーラーガスを全量抜き取る
↑ ガス回収はエアコンガスクリーニングができるマシーンがあれば楽ちん。R134aのフロンガスは大気開放できず回収が義務付けされています。
ヒーターホースの配管を外す
↑ エンジンルームからエバポレーターの高圧側と低圧側、ヒーターユニットに入り側で出る側のホースを離します。
バッテリーのケースについている黒いケースを上に抜き取ってしまえば手が入りやすくなります。
エキスパンションバルブのボルトを外す
フロントワイパーを外してリンクモーション奥のボルトを外す
↓かなりわかりにくいですが、手前のワイパーモーターの奥に見えているボルトを緩めないと車内のダッシュボードを浮かすことができません。これはMH34SのワゴンRならではの作業で、HE22SのラパンやひとつまえのワゴンRでは必要のない作業です。
Aピラー左右の内張りを外す
画像を撮影するのを失念しておりましたが、フロントガラスの両サイドにあるAピラーの内張りを外しておきます。
ダッシュボードを上に浮かせるまでの外しておけばいいのですが、こういった外す部品の数が多い作業の場合は、大きくて外しやすいものから外しておくほうがなにかとやりやすいです。
もちろん、分解した部品を組み上げていくときはその逆で、小さくて奥まった場所にある部品を先に付けていくイメージです。
ダッシュボードの左右4本のボルトを外す
↑ エアーラチェットや電動工具があると、作業効率が飛躍的に上がります。
センターコンソールを外しておく
エアコンユニット周辺の6ミリボルトを外す
室内に配置されているエアコンユニットはわずか数本の6ミリボルトで車体側に取り付けられています。
ハンドル回りのカバーなどを外す
ハンドルを回すと樹脂製のカバーを止めているビスが左右に見えるので外します。
ハンドルポスト下側にもビスが隠れているのでこれも外します。
ハンドルポストを上下から挟んでいるカバーを外し周辺のカプラーを全部外します。
ヒューズボックス周辺の配線を外す
↑ 運転席の足元に見えるヒューズボックスに刺さっている殆どのハーネスはカプラーごと引き抜いていきます。
ステアリングシャフトの固定ボルトを外す
ハンドルの下側にあるカバーをビス、ボルトを緩めて外します。
↓ ステアリングシャフトを保持していたボルト・ナットを外した途端ハンドルごと下にドサリと落ちてきます。
グローブボックス周辺の取り外し
エアコンフィルターを交換する容量でグローブボックスを開けて取り外してしまいます。
ブロアモーター周辺の配線を外す
パンタジャッキを使ってダッシュボードを浮かせる
↓ 車に付属しているようなパンタグラフジャッキとそこらへんにあるようなパイプを使ってダッシュボードを上に浮かせます。人力でもやれなくはないですが、しっかりとハマっていてなかなか苦労します。
↑ 長いハンマーの柄を使ってダッシュボードが落ちてこないように支えています。
ダッシュボードを宙に浮かせたままにしておく
エアコンユニットを引き出す
↓ ここがミソ。ダッシュボードをごっそりと車内から出してしまわなくてもエアコンユニットを引っ張り出すことができます。
↑ ダッシュボードのトンネルをくぐり抜けるようにエアコンユニットを引っ張り出します。大柄な人はやや苦戦するかも。
エキスパンションバルブの○リングを交換しておく
↑ 丸見えの状態なのでエキスパンションバルブと接続する○リングを先に交換しておきます。
↑ 普段はマジマジと見ることができないダッシュボードの奥にあるエアコンユニット。手前に見えるのは外気導入に切り替えたり風向の切り替えをするダンパーたち。
↓ 左側のパイプが暖房用のヒーターコアで冷却水が室内に取り込まれています。
↑ 左側に見えるのがエキスパンションバルブで、エバポレーターの交換作業ではセットで交換します。ちなみに、エキスパンションバルブ詰まってしまうとエアコンが全く効かなくなります。
↓ エアコンユニットから取り出したエバポレーター
↑ よく見てみると腐食したような跡が見えます。このワゴンRの場合、ガスを補充しても3日も持たないくらいの激しいガス漏れでした。
作業後は真空引きをして確認
組み上げ作業は基本的にこの逆の工程で
無事にエバポレーターとエキスパンションバルブを交換できたらエアコンユニットを「ダッシュボードのトンネル」にくぐらせながら組み上げて行きます。
前述しましたが、取り外す部品点数が多い作業は、「組み上げは奥から」がセオリーなので、うかつにダッシュボードを組み付けてしまうと、奥の部品を付け忘れてしまうと大変です。
ちょっと休憩をはさみながら頭の中でイメージトレーニングをしながら工程を確認しておきましょう。
おしまい
今回は作業記録のような記事にしてみました。
実際にワゴンRのエバポレーターの交換をする際には参考になると思います。
とは言え、プライベーターの方がするにはややハードルが高いというか、フロンガスは大気開放は法規制でできませんので、ガス回収機が必要です。
MH34S型のワゴンRでの作業でしたが、同年式のアルトラパンやパレットなど、エバポレーターのガス漏れでメーカーの保証延長の対象になった車種はこのやり方で交換できます。
9年の保証延長が切れてしまったケースも多くなり、今後はユーザーさんが自己負担でエアコンガス漏れ修理をするケースが増えることでしょう。
【関連記事】スズキ|アルトラパンHE22Sのエアコンガス漏れ修理と保証延長
コメント