乗用車なら今やアイドルストップがついていないほうが珍しいくらい、アイドリングストップ車が普及しています。
しかも新しいモデルになるほど、頻繁にエンジンが停止する方向に改良(改悪?)されています。
これだけエンジンが止まる制御だと
「せっかく回転してるエンジンを止めるの・・・?」
と、逆に無駄なことをしているように感じてしまいます。
エンジンを止めて、また始動する。
本当にこれはメリットだらけなのでしょうか。
整備士として感じたことや経験からアイドルストップについてお話ししていきます。
アイドルストップするデメリットとは
エンジン再始動にもエネルギーが必要
当たり前なことですが、一度止めてしまったエンジンを再始動するにはあらたにエネルギーが必要になります。
アイドルストップ車には、エネルギーを節約するためにエネルギーを使うという矛盾が生じます。
車種にもよりますが、アイドルストップをすることで燃費の節約になるかどうかの「黒字ポイント」があります。
小型車クラスの場合だと、十秒以上のアイドルストップの時間がないと、再始動にかかったエネルギー分の節約にならないのだそうです。
つまり、まわりの交通状況によっては、せっかくアイドルストップしてもほとんど燃費の節約にならないケースもあるわけです。
スターターには過酷な仕組み
アイドルストップシステムで最も酷使されるのがスターターだといえます。
通常のアイドルストップしない車種と比べると、スターターへの負担は何倍にもなります。
もしもスターターが突然不具合を起こしてしまえば、エンジンの再始動はできなくなり、そのまま不動車となってしまいます。
そのため、アイドルストップ車はスターターモーターを駆動させた回数をエンジンコンピューター(ECU)がカウントしています。
一定回数のアイドルストップがカウントされると警告灯が点灯し、セルモーターの定期的な交換やカウント数のリセットをする必要が出てきます。
僕自身は整備士として今のところアイドルストップ車のセルモーターがダメになって交換したという経験はありませんが、
壊れない部品などないわけで、いずれは定期的なメンテナンス、または故障修理としてセルモーターの交換が必要になってきます。
アイドリングストップがエンジンにかける負担とは
燃焼室のデポジットが引き起こすトラブル
トヨタ系のディーラーでは、ハイブリッド車やアイドルストップ車が車検で入庫すると、かなりの頻度で「デポジットクリーナー」というケミカル用品を勧められます。
これは、エンジンを頻繁に止めてしまうような車種で、燃焼室にデポジットと呼ばれる燃えかすなどが付着してしまうことへの対策です。
デポジットは、燃費の悪化や、場合によってはエンジンの始動性が悪くなる原因になります。
エンジンを止めてしまい、そのあとすぐに再始動させるということは、エンジンにとっては決して望ましいことではないのです。
年間走行が極端に少ない使用条件だと、アイドルストップ機能のせいで、エンジンの始動性だけでなく、スパークプラグの突然の不調などにも関係しているとされています。
アイドルストップ車のバッテリーの寿命はどれくらい?
専用のバッテリーでも短命になるケース
アイドルストップ車には専用のバッテリーが搭載されています。もしも汎用のバッテリーを組み込んでしまうと、バッテリーがすぐに上がってしまったり、寿命が短くなったりします。
ところが、アイドルストップ車用のバッテリーを組み込んでもあまり長持ちしないケースもあります。
街乗りが多く、一回の走行距離が少ない、いわゆる「シビアコンディション」といわれる場合などだと、比較的に高価なアイドルストップ車専用のバッテリーが二年ももたないこともあります。
また、冷房の使用頻度が高く、発電機への負担が多い場合もバッテリーへの負担が大きくなります。
アイドルストップ車はエアコンスイッチがオンになっている状態ではアイドリングストップをしないようになっています。
シビアコンディションでなおかつエアコンの使用頻度が多い場合は、アイドルストップ専用のバッテリーでも二年未満で電圧が下がり、
アイドルストップをしない状態の警告灯が点灯し、バッテリーの交換を促されてしまうのです。
バッテリーメーカーが証明するアイドルストップ車のデメリット
じつはアイドルストップ車用のバッテリーは、アイドルストップ以外の車にも使うことができます。
↑ これはアイドルストップ車に対応したバッテリーの保証書です。
御覧のように、アイドリングストップ車とそれ以外の車では、バッテリーの補償期間や補償する走行距離が違います。
上記の保証書の場合だと、
・アイドリングストップ車 24か月または4万㎞
・アイドリングストップ車以外の車両 36か月または10万㎞
と表記されていて、アイドリングストップ車用のバッテリーでも、アイドルストップ車以外の車に組み込んだ場合では、寿命が2/3になってしまうことを示しています。
ただし、使用条件によってもバッテリーの寿命は大きく左右されますので、あくまでも基準値として考えておいてください。
まとめ
アイドルストップ車は環境に優しく燃費もいいとされていますが、消耗部品が増えたり、高額な定期交換部品を指定しているケースもあります。
自動運転の制御の一部として、アイドルストップのタイミングも含まれると思っていますが、まだまだ制御の精度をあげる余地もあると感じています。
アイドルストップをしないようにするスイッチもありますので、運転手が手動で制御の抜けを補うことも大事だといえます。
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