30プリウスは2009年から2015年まで販売され、発売当初から好調なセールスを記録しました。
完成度が高く年代を問わず高い評価を受けたことでハイブリッドカーの信頼性の高さを世に広めた名作といえます。
今でも30系プリウスは現役でバリバリと走っていますが、「燃費が悪くなった」という相談を受けることも多くなりました。
「プリウスの燃費が悪くなったけど故障?」
「前よりも、アイドルストップする回数が減ったような・・。」
「燃費を良くする方法ってある?」
といったものや、
「30プリウスってどれくらい走れるの?」
というハイブリッドカーとしての寿命についての質問も受けるようになりました。
今回は、30プリウスの燃費が悪くなる原因や改善策について整備士としての経験もおりまぜてお話していきます。
30プリウスの「燃費が悪くなった」と言われる原因
駆動用バッテリーの劣化
30プリウスのメインバッテリーはニッケル水素バッテリーが採用されていて、10年10万キロくらいなら本来の燃費性能は発揮できると感じていました。
とはいえ、スマートフォンのバッテリーと同じく、充放電を繰り返すたびにバッテリーの性能は落ちていき、充電しても満充電にならなくなっていきます。
プリウスのハイブリッドシステムは、駆動用バッテリーに電気を供給するメインバッテリーの残量が少なくなるとエンジンでの駆動が増えます。
結果的にガソリンを多く消費するようになり、『燃費が悪くなった』と感じるようになります。
エンジンに依存した走行が増えると起きる現象
エンジンオイルが汚れやすくなると燃費も悪くなっている?
整備士として車検や整備の業務を行っていると30プリウスの整備をする機会も多く、同じ30プリウスでも個体差があるように感じることがあります。
プリウスのオイル交換をしていて感じるのが、エンジンオイルの汚れた車が増えたということです。
より長い距離を走行すれば、そのぶんエンジンオイルも汚れていきますが、ハイブリッドカーに関しては必ずしも走行距離だけがエンジンオイルが劣化する要素とは限りません。
本来のトヨタ製ハイブリッドカーの実力
別の記事でも書きましたが、新車から5年未満、走行距離が7万キロほどのアクアのエンジンオイル交換をしたときのお話ですが、
前回のオイル交換から1万キロを超える距離を走行していました。
このアクア、新車から整備全般を任されていたこともあり、それまでの殆どの整備を僕がやっている車体でした。
その女性のお客様は「すっかり忘れちゃってて・・。」とややバツが悪そうにオイル交換を依頼されました。
さぞかしオイルも汚れていると予想していましたが、ドレンから抜けたオイルがまだ透きとおっていたことに非常に驚かされました。
それまでの整備士の経験からは考えられないくらい『エンジンオイルが汚れない車』ということでハイブリッドカーに対する認識が大きく変わった出来事でした。
同じくプリウスに関しても、30プリウスが登場して数年ほどのころは、どのプリウスも本当にエンジンオイルがきれいな車が多かったです。
駆動用バッテリーが元気ならエンジンで走行する時間は短く、そのぶんエンジンオイルは汚れないのです。
エンジンオイルが推奨粘度と違う
30プリウスに推奨されるエンジンオイルの粘度は「0W-20」と呼ばれるもので、『0W』はエンジン始動時など常温での柔らかさを表しています。
0W-20のオイルの粘度は別格
ハイブリッドカーやアイドルストップ機能付きの車では、「0W-20」の粘度のエンジンオイルが推奨されていますが、その他の車種では今でも「5W-30」の粘度のものが使用されています。
実際に0W-20と5W-30のエンジンオイルをオイルジョッキに入れようとすると、その粘度の違いを感じることができます。
5W-30のオイルなら「コポコポコポ」という注ぎ音。0W-20なら「パシャパシャパシャ」という感じ。まるでサラダ油と蜂蜜みたいな粘度の違いです。
5W-30のオイルでも問題はないが・・・
0W-20という粘度のエンジンオイルは化学合成オイルの配合率が高く、そのぶんオイルとしての価格もやや高くなっています。
それにたいして5W-30のオイルは汎用性が高く、ほとんどのガソリン車に対応できる粘度なので、どの整備工場やメンテナンスショップでも大半の車に使われていて、比較的に安価です。
エンジンオイル交換をディーラー以外に依頼する場合、使用するエンジンオイルの粘度やブランド、価格の説明を簡単に受けるはずです。
そのとき、店員さんやフロントスタッフから「この5W-30のオイルを使っても問題はないですよ」と言われ、価格が安いこともあり「じゃあ、こっちの安いほうで交換して」なるケースも少なからずあります。
安いオイルを選ぶユーザーも増えた
じつはこの説明はどこの整備工場でもなされていますし、僕自身もエンジンオイルの価格に非常にうるさいお客様に「壊れることはありませんが」と付け加えています。
30プリウスは営業車や社用車として使用されることも多く、メンテナンスの費用に対してもシビアに管理している会社では少しでもオイル交換のコストを下げようとします。
そのため、車検の見積もりで作業内容のやり取りをするときにも「壊れないならこっちの安いオイルを使って」と5W-30のエンジンオイルを使用することが増えてきました。
また、乗り換えを検討しているユーザーさんはエンジンオイルの交換サイクルをサボり気味にしてしまったり、「とにかく安いオイルで」と依頼されるかたもいます。
5W-30が『流用』されている
30プリウスに本来指定されているエンジンオイルの粘度は0W-20で、わりとよく使われている粘度は5W-30が流用されています。
あえて『流用』という表現をしましたが、メーカーとしては使ってほしくない粘度をあえて使うという意味では流用なのかなと思っています。
約5%から7%の燃費の悪化が見られる
0W-20の粘度のエンジンオイルの使用を推奨しているエンジンに安価で汎用性の高い5W-30の粘度を使用した場合約7%ほどの燃費の悪化がみられると、とある純正部品の部品課担当者から説明を受けたことがあります。
7%はやや盛りすぎだろうと感じましたが、数%の違いはあるように思います。とはいえラフなアクセルワークやエアコンの多用で帳消しになるレベルです。
エンジン内の燃焼効率の悪化
エンジンデポジットの蓄積
プリウスなどハイブリッドカーのエンジンは常に駆動しておらず、渋滞や街乗りでは頻繁にエンジンを停止しています。
燃費を良くするためにはエンジンに仕事をさせないほうが効率がいいケースが多く、モーターとエンジンの駆動時間をコンピューターで最適にマネジメントしています。
結果的にエンジン内部が完全に暖気される時間も少なく、不完全燃焼が起きやすくデポジットと呼ばれる燃えカスが燃焼室内に蓄積しやすくなります。
とくに市街地での走行が多いとエンジンが停止する回数も頻繁になり、燃焼室ではくすぶったような状態が長くなり、デポジットも溜まりやすくなります。
デポジットが多くなると燃焼効率やエンジンの始動性が悪くなり、エネルギーのロスとなるため燃費が悪くなる原因になります。
トヨタディーラーでプリウスの車検を受けると「デポジットクリーナー」と呼ばれるケミカル剤をよく勧められます。
空気圧の不足
プリウスは営業車や社用車としても使われることが多く、メンテナンスや基本的な日常安全点検などが不十分なこともあります。
タイヤの空気圧は燃費に大きく影響する
複数の社員が使用している車の場合は「誰かがやってくれているはず」という心理なのか、空気圧を気にせず走行しているため燃費が悪くなることが多いです。
タイヤの空気圧チェックはできれば毎月一回はチェックと調整がおすすめで、3ヶ月ほどなにもしていないタイヤでは5%から10%ほど空気圧が低下しています。
タイヤサイズの変更やインチアップなど
ドレスアップのひとつとしてホイールをインチアップしたりタイヤを太くするユーザーさんも多いです。
プリウスでも扁平率の高いタイヤに変更しているものを見かけますが、みかけはかっこいいかもしれませんが、燃費は悪くなっているはずです。
転がり抵抗の増加
燃費を最優先するなら、タイヤは細いほど転がり抵抗も低く有利になり、タイヤの幅を太くするだけで転がり抵抗が増え、そのぶん燃費も悪くなってしまいます。
ソーラーカーなんかものすごく細いタイヤになってますよね。
ただしスポーツ走行をするならある程度の幅のあるタイヤのほうがコーナリング性能は上がるので、そこは燃費とのトレードオフと考えてもいいですが。
ホイールアライメントのずれ
ホイールアライメントとは、簡単に言うとタイヤと路面が接地する角度や左右のタイヤの向き合う角度などを指します。
例えば、前輪タイヤを真上から見たとき、内股になっている状態を「トーイン」、ガニ股のような状態を「トーアウト」と言います。
トーインもトーアウトもいきすぎた状態になっているとタイヤに負荷がかかり転がり抵抗も増えてしまうので燃費の悪化に繋がります。
車高を下げたプリウスの燃費は悪い
とくに燃費に影響しやすいのが前輪の「トー角」ですが、ドレスアップとして車高を下げているプリウスも多いですが、それだけでトータルトーが大きくズレてしまいます。
車検での最終検査では前輪タイヤのサイドスリップ(トータルトー)を測定し、大きく狂っている場合は修正します。
けっこうズレている車も多く、走行中の外部からの衝撃などですこしづつずれていきます。
30プリウスの燃費を良くする方法
デポジットクリーナーでも多少は改善できる
燃費が少し悪くなったかも?という段階ならメインバッテリーの交換をする必要はありません。
ただし、燃焼室内にデポジットが堆積していることも考えられるので燃料タンクに注入するデポジットクリーナーを試してみてもいいでしょう。
高速道路を走らないような使用条件だと、EVモードで駆動モーターだけで走行している回数も増え、エンジン内ではくすぶったような状態になりやすいです。
市街地走行が多いような使用条件なら定期的にデポジットクリーナーを使っておくことでデポジットが多く堆積しないように予防することができます。
【関連記事】デポジットクリーナーのガソリン燃料添加剤として効果や頻度は?
ノーマルに近い状態が燃費もいい理由
プリウスだけに限ったことではありませんが、ドレスアップなどでタイヤやホイールのサイズを変更したり車高を下げることはどれも燃費にはよくありません。
ホイールも車高もノーマルがおすすめ
社外品のアルミホイールはかなり重いものも多く、タイヤの幅が1センチ広くなっても転がり抵抗は増えてしまいます。
車高を下げてしまうとキャンバー角がキツくなり、直進時での抵抗が増加する要因にもなり、これまた燃費の悪化につながります。
先に述べたように、ノーマルに近い状態に戻すようにすることで悪くなった燃費を改善することができて、なおかつロードノイズも減り静かなプリウスになるかもしれません。
転がり抵抗の少ないエコタイヤにしてみる
プリウスに新車から装着しているタイヤは転がり抵抗を少なくする「エコタイヤ」が装着されています。
エコタイヤとは、タイヤに配合されるコンパウントと呼ばれるグリップ性能に関わる成分ですが、コンパウンドの配合率を変えるだけで転がり抵抗をよくすることができます。
日本のタイヤメーカーのものなら、必ずエコタイヤが商品ラインナップに入っていますので、少し価格は上がりますがエコタイヤに交換してみるのもおすすめです。
とはいえ、エコタイヤの価格を燃費でカバーすることは難しいようなので元を取るのはちょっと無理かも。
駆動用のメインバッテリーを交換する
走行距離にして15万キロを超えているくらいなら、メインバッテリーがかなり劣化している可能性があります。
本来の30プリウスのポテンシャルなら20万キロくらいはメインバッテリーが寿命を迎えることは少ないとされていますが、10年以上経過しているので経年劣化も考えられます。
メインバッテリーの健全性を測定することができる
トヨタ系ディーラーにプリウスを持ち込めば、メインバッテリーがどれくらいの性能まで落ちているかを診断してくれます。
「ハイブリッドシステムチェック」と表示が出るケース
前期型の30プリウスなら10万キロなかばくらいで起きたことのあるトラブルで、「ハイブリッドシステムチェック」とメーター内で表示されエンジンチェックランプも点灯することがあります。
このコードが表示された場合、駆動用のメインバッテリーが寿命を迎えている場合が多く、メインバッテリー内のセルと呼ばれるバッテリーの最低単位の部分が1個でもダメになるとこのエラーがでます。
フェイルセーフモードで走行はできる
この場合はエンジンに依存した走行に移行することで問題なく走行はできますが、燃費が非常に悪くなり、なおかつ加速などの走行性能も悪くなります。
この状態は「フェイルセーフモード」と呼ばれ、車に重大なトラブルが発生した状態でも安全な場所まで移動できるように設定されたものです。
一時的にコードを消すこともできる
瞬間的な不具合を記憶している場合は、専用のオフボードテスターを接続することで過去の履歴としてのコードを消去することはできます。
ただし、少し走行するだけですぐにチェックエンジンとシステムチェックの異常を知らせる表示が出てしまうことがほとんどです。
とはいえ、メインバッテリーを交換するしか選択肢はない
メインバッテリーの不具合をコンピューターが認識し、フェイルセーフモードに移行している場合は、最終的にはモーター駆動が全くできなくなる可能性もあります。
車検も近いなら、エンジン警告灯が点灯したままでは車検に合格できないので車検とメインバッテリーの交換という、かなり高額な出費となります。
最後に・・
30プリウスの海外での人気がすごすぎる理由
日本ではすでに型遅れという感じは否めない30プリウスですが、海外では未だに高い人気を誇っています。
30プリウスはバッテリー交換で現役バリバリ
30プリウスで高額な修理といえばメインバッテリーが寿命を迎えて交換作業になるケースです。
それ以外でエンジンやトランスミッションが寿命を迎えたという事例は極めて少なく、タクシーではいまだに30プリウスが現役で走っています。
つまり、メインバッテリーだけ交換してしまえばまだまだ走れるというかなりコスパのいい車なので、自国で車を生産していない発展途上国などでは人気が高いです。
ハイブリッドカーは輸出が規制されている
以前から、新車から1年以内のハイブリッドカーは中古車として海外に輸出することができませんでした。
ですが、今では日本で買い取られた30プリウスがメインバッテリーの交換がなされた状態で優良な中古車として海外に輸出されることは多く、ロシア、UAE、ニュージーランドでの人気も高いです。
『プリウスはバッテリーがダメになると高くつく』ということは海外でも周知されているものの、日本でバッテリー交換もメンテナンスもされている状態のプリウスが輸出されることもあります。
自動車に関してはいまだに『メイド・イン・ジャパン』のアドバンテージはあります。
また、30プリウスは発売当初からかなりのセールスを記録し、日本での登録台数も多いので中古パーツやリビルトパーツも豊富に手に入ります。
メインバッテリーすらもリビルト品がいくつものメーカーから出ているのでバッテリーが寿命というだけで乗り換えになったプリウスは再生され、海外に輸出されていくのです。
これは十分にビジネスとして成立しますし、「プリウスなら買い取るけどトヨタ以外のハイブリッドカーはいらない」という輸出業者も多いでしょう。
海外でのトヨタブランドは信頼性という意味では世界一なのかもしれません。
燃費が悪くなったプリウスでも高く売れる
これまでお話してきたように、歴代プリウスのなかでも30プリウスは完成度が高く、メインバッテリーもリビルト品が入手できるので海外からの需要は高い車です。
そのため、輸出をメインにビジネスをしている買取店にとって30プリウスは高く買い取っても大丈夫な車といえます。
20系のプリウスは問題もあり、古くなりすぎているきらいはありますが、30系のプリウスならまだまだ現役で世界中で走っています。
今でも30系プリウスは海外から求められている
生産台数も多く、リサイクルパーツも豊富な車ほど中古車としてのニーズも高く、実用的な車なら買取価格も安定して高いです。
プリウスを売ろうとするなら海外への輸出を得意とする買取店に査定をしてもらうほうが、より高く買い取りしてもらうことができるので、まずはたくさんの買取店にアプローチすることがおすすめです。
最悪のプリウスの売り方はディーラーに下取りで、ホントにおすすめできません。
「広く」「早く」買取業者にプリウスの査定を依頼する
最後に、このブログではよくおすすめしている車の査定サービスを紹介しておきます・
これまでの下取りや買取りサービスのデメリットは
・ディーラーでの下取りは最悪の買い取り額の安さ
・一括査定では営業電話が多数入り対応に疲れてしまう
・買取専門店に車を持ち込むと言葉巧みにその場で契約させられる
・複数の買取店を回るのは時間がかかり効率が悪い
ざっくりいうとこんな感じでしたが、今はネットワークを駆使した新しい買取査定の仕組みがあり、車の市場価格に詳しくないユーザーさんでも車を高く売ることができるようになりました。
大手のオークション代行サービスがおすすめ
今回は30プリウスだけにフォーカスしたお話でしたが、プリウスのように海外からの需要が安定して高い車種なら、オークションに車を出品して、高い入札をした業者に車を売るというやり方が合っています。
ここで大事なのが、より多くの買取業者が参加しているサービスを利用するということで、オークション代行サービスの場合は「楽天car」と「ユーカーパック」が有名で大手です。
なお、オークション代行サービスについては別の記事を書いていますので、「なにそれ?安全なの?」「デメリットは?」などと感じたらそちらの記事もチェックしてみてください。
【関連記事】オークション代行サービスとは?メリットやデメリットは?
2,000社 VS 8,000社でユーカーパックに軍配が上がる
海外への輸出を視野に入れた車の売却という意味ではより多くの買取業者にアプローチするほうが、入札額も上がりやすくなります。
楽天のオークション代行サービスである「楽天Car」の場合は2,000社が参加するのに対し、ユーカーパックは最大8,000社が参加するオークションを独自で運営しています。
楽天にもそれなりのメリットがあり、楽天ポイントが付与されるなど独自のセールスポイントがありますが、なによりも高く車を売るなら多くの業者が参加するユーカーパックがおすすめです。
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