
カーエアコンのメンテナンスや修理の際に
やたらとコンプレッサーオイルを入れたがる
整備工場やガソリンスタンドさんが多いみたいです。

エアコンのオイルって入れ過ぎるとどうなるの?
故障するとか?

まぁ少々オイルを入れすぎたくらいでは
とくに問題なく冷えることがほとんどですが、
多すぎると圧力が不安定になったり冷えにムラができるように思いますね。
カーエアコンのコンプレッサーに中には「コンプレッサーオイル」と呼ばれるオイルが入っています。
エンジンの中にエンジンオイルが入っているのと同じように、コンプレッサーオイルは、コンプレッサー内部の圧縮と潤滑のための大事な役割をしています。
コンプレッサーオイルも少しづつ汚れて劣化していくため、エアコンのメンテナンスとして、コンプレッサーオイルの部分的な抜きかえや補充をする整備工場もあります。
ところが、補充の方法やオイルの分量を間違ったりした場合、エアコンの冷えが悪くなったり不具合が出ることもあります。
今回はエアコンのオイルを入れすぎた場合の症状や、入れすぎたコンプレッサーオイルの抜き取り方についてのお話です。
エアコンのコンプレッサーオイルを入れすぎた症状
オイルを入れすぎた場合の症状はわかりづらい
車のエアコンコンプレッサーの中には冷媒となるフロンガスと、コンプレッサーの潤滑と圧縮効率を上げるためにコンプレッサーオイルが入っています。
エアコンのガス漏れ修理やコンプレッサーの故障などでコンプレッサーオイルを多く注入してしまうことがあり、どれくらいの分量を入れ過ぎているのかによって症状も違います。
多少の入れ過ぎは問題ない
エアコン修理の場合、コンプレッサーオイルをあえて多めに入れることもあり、修理をする整備士の経験値でも、そのさじ加減が変わってきます。
とくに、コンデンサーなどの大きな部品を交換する際は、コンデンサーの中に残っている古いコンプレッサーオイルの分量に合わせてオイルを入れる必要があります。
ただ、複数の箇所からのエアコンガス漏れがある場合などは、どれだけのコンプレッサーオイルが抜けていったのかが分かりづらいこともあります。
そのため、オイル不足によるコンプレッサー焼付きのリスクという最悪の状況を避けるためにオイルを多めに入れるという判断をすることがあります。

古い車や、何度もエアコン修理をしている場合は、注入するコンプレッサーオイルの量の判断は難しいですが「ちょっと多いかな」と思いながら入れることもあります。
結果的にコンプレッサーオイルが多い状態でもエアコンは問題なく冷えることが多く、不具合や異音も発生しないケースも多いのです。
とはいえ、明らかに多い量のオイルを入れてしまうと、やはりエアコンのサイクルに異常をきたすこともあります。
オイルの入れ過ぎでエアコンの効きが悪くなることも
フロンガスの流れが悪くなる?
コンプレッサーオイルが異常なくらいに入ってしまっている場合、サイトグラスから圧縮されて液化したフロンガスを見ていると明らかに流れが悪いことがあります。
正常な状態であれば、エンジンの回転数を2000回転くらいに上げながらサイトグラスを見ると、少しの泡がチラチラと見え、フロンガスもスムーズに流れています。
それに対して、多すぎるコンプレッサーオイルがフロンガスの流れを邪魔しているように見える場合は、高圧側の数値が高く、低圧側が低すぎることがあります。
エアコンのサイクルの中をリアルタイムで観察することはできませんので、基本的にはゲージマニホールドで示される数値と、エンジン回転との変化で判断するしかありません。
コンプレッサーオイルが「気化」の邪魔をする?
エアコンが冷たい空気を作り出す基本的な原理として、圧縮されて液化されたフロンガスが、エキスパンションバルブを通過するさいの「気化熱」で周辺の熱を吸収して冷たくなります。
つまり、液状のフロンガスがエキスパンションバルブから霧吹きのように一気に気化することでクーラーとして機能することができます。
ところが、コンプレッサーオイルがあまりにも多い場合、エキスパンションバルブにオイルが流れ込むと、液化したフロンガスがうまく気化できなくなることがあります。
そうなると、コンプレッサーが圧縮したフロンガスはコンプレッサーオイルがエキスパンションバルブの流れを遮り、高圧側のガス圧が異常に高くなります。
それに対し、エキスパンションバルブから下流は、コンプレッサーから吸い続けられたフロンガスが高圧側に偏ることで低圧側のガス圧が低くなっています。
これは、異物がエキスパンションバルブに詰まってしまったケースに少し似ていますが、コンプレッサーオイルなので極端な高低差が発生しないこともあります。

「なんとなく高圧側が高くて、なんとなく低圧側が低いなー」
という微妙な数値を示すので判断に迷うケースだったりします。
分解してみたあと、コンプレッサーオイルがやたら出てくることがあり
複数の整備工場やガソリンスタンドで作業していることが判明し、
「ああ。オイルの入れ過ぎってことか・・。」
という感じで納得するのです。
ガスの圧力が不安定になる
あくまでも僕のエアコン修理の経験から「たぶん」という感じの見解ですが、コンプレッサーオイルの入れ過ぎの場合、ゲージマニホールドの数値が乱れることがあります。
おそらく、コンプレッサーオイルがエキスパンションバルブに流れ込む現象がムラになって起きることで「ときどき邪魔をする」という、不安定な状態なのでしょう。
そうなると、冷房としての冷え具合も安定しないので、運転手は「なんかあんまり冷えないな」と感じるかもしれません。
配管の取り回しの違いが原因?
エアコンの仕組みはどの車でも基本的に同じですが、エンジンルームのどの位置にコンプレッサーやコンデンサー、それから途中の配管が取り回されているかが全く違います。
たとえば、コンプレッサーがエンジンルームの比較的に高い位置に配置されていることもあれば、エンジンの下側付近にあることもあります。
エアコンのガスの入れ過ぎの場合は、これらの配管やコンプレッサーの位置の違いに左右されないと僕自身は感じています。
それに対して、コンプレッサーオイルは気化してガス状になることのない、つねに液体であるため、エアコンのサイクル内の低い位置に溜まりやすいことになります。
つまり、エアコンコンプレッサーが作動していないと、コンプレッサーオイルはそれぞれの低い場所に降りていることになります。
コンプレッサーが低い位置にある車種の場合、コンプレッサー付近に大量のコンプレッサーオイルが溜まってしまいやすくなります。
それに対して、コンプレッサーが高い位置にある車種は、バンパーの裏側などの低い位置にあるコンデンサーの近くにオイルが溜まりやすくなります。

ワゴンRとかのスズキ車はかなり低い位置にコンプレッサーがあるので、配管を外しているとコンプレッサーオイルがドバッと出てくることがあります。
エキスパンションバルブ破損のおそれ
エクスパンションバルブは、霧吹きの先端部分のような役割をはたす部品で、高圧に圧縮されて液化したフロンガスが細い通路を通って気化させます。
本来なら液化されているとは言え、フロンガスが通っていくだけですが、既定値よりもはるかに多い量のコンプレッサーオイルがエキスパンションバルブを通過しようとすると想定外の圧力がかかることになります。
この状態が長く続けばエキスパンションバルブ内部の破損や変形になることがあり、フロンガスを適切に噴霧させられなくなります。
ただし、ほとんどの場合は入れすぎたコンプレッサーオイルを抜いて上げれば解消できます。
エアコンコンプレッサーオイルを抜き取りする方法
エアコンのサイクルにはコンプレッサーオイルを抜き取るドレンのような部分はありません。
そもそもフロンガスは大気中に放出してはいけないので、車からガスを抜き取るためのクーラーガス回収機が必要になります。
ガスを全量抜き取ったら、コンプレッサーオイルが大量に残っている部分の配管などを外して手動で抜き取るのが手間がかかりますが確実なやり方です。
エアコンガスチェンジャーを使用する
チェンジャーならお手軽にオイルを抜き取れる
いろんなメーカーからカーエアコンのメンテナンスを目的にしたマシンがリリースされています。
主な目的はクーラーガスチャージをすることですが、いったんフロンガスをすべて抜き取ったあとで真空引きをしたあと、コンプレッサーオイルの補充や抜き取りもできるものがあります。
これらのなかには、マニュアルモードでコンプレッサーオイルの抜き取りをすることができる機械もあり、指定しただけの分量のコンプレッサーオイルを抜き取ることもできます。
ただし、それぞれのマシンの性能の違いもあり、コンプレッサーオイルをどれくらい強力に吸引してくれるのかも各メーカーで違ってきます。
コンプレッサーを取り外して抜き取る
手間はかかりますが、確実に入れすぎたコンプレッサーオイルを抜き取る方法といえば、いったんフロンガスを全て抜き取ってコンプレッサーを取り外すことです。
コンプレッサーオイルはコンプレッサーの中に多く入っているので、コンプレッサーを車から外して単体にして逆さまにするなどでオイルを抜くことができます。

注射器があるとかなり便利です
抜き取ったオイルの量を覚えておきながら、あらためてオイルの量を適正にする必要がありますが、コンプレッサーオイルがどのような経緯で入れすぎになったのかがわからなければ判断が難しいです。
逆に、コンプレッサーオイルを抜き取りすぎるとコンプレッサーの焼付きの原因になってしまうので、多少は多くオイルを残しているくらいのイメージでもいいでしょう。
本来ならば、オイルが大量に残っている部分である、コンプレッサーだけでなく、エバポレーターやコンデンサーも外してなるべくオイルを抜いてから注入するオイルの量を判断するほうが望ましいです。
ただ、ワンボックスカーやミニバンのように、エバポレーターが2つあるようなタイプもあり、どの程度オイルが余分に入ってしまっているのかがわからなくなっていることもあります。
まとめ
新車の状態ではコンプレッサーオイルは規定量がただしく注入されていますが、エアコンのガス漏れ修理やメンテナンスの際にコンプレッサーオイルを入れすぎてしまうケースがあります。
とくに多いのが、ガソリンスタンドなどで「エアコンの季節なのでメンテナンスしませんか?」といった感じの、必要性があるかどうかがあいまいなままでの作業です。
ガソリンスタンドさんの悪口を言いたいわけではありませんが、エアコンのガスチャージしかできず、エアコン修理の知識や経験もないお店もかなり多いのが現状です。
こういったガソリンスタンドやカーショップでは、エアコン不調からの修理を経験していないこともあり、エアコンの予防修理に関しても必要性を感じられない作業もすすめることがあります。
どんな業者にエアコンのメンテナンスを任せるのかはユーザーさんの判断ではありますが、できれば同じ業者に依頼するほうが、それまでの作業の履歴が把握できます。
なおかつ、本格的なエアコン修理を行っているような電装業者や整備工場に一任するほうが、コンプレッサーオイルの入れすぎなどという初歩的な間違いもありません。
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