車にはバッテリーを充電するための発電機(オルタネーター)が付いています。
正常な状態だと発電機は車に消費されていく電気よりも多くの発電をしていますが、
何らかの原因で発電機が発電しないようになってしまいます。
発電機の故障の原因にもいくつかのパターンがあり、
それを知ることで故障を遅らせることもできます。
ただしあくまで「遅らせる」だけで「防ぐ」ことはできません。
発電機が故障する原因とは
過走行による発電機内部の消耗品の寿命
発電機のなかには「ブラシ」といわれるカーボンでできた部品があります。このブラシは、発電機ので回転し続ける軸(ローター)の部分に常に触れています。
回転する部品に触れることでつねに電気回路が成立した状態を維持しているわけです。
ところが、このブラシも少しづつ消耗していきますので、裏側にあるバネで軸側に押し付けているのですが、限界まで摩耗してしまうと、軸側との接触不良が起きます。
発電機の警告灯がチラチラと点灯するのも、この「ブラシの接触不良」が原因なのです。
そのほかにも発電機の中には消耗品がいくつか組み込まれていて、軸の部分の両端にあるベアリングにガタができて、
本来の正確な回転ができなくなり、結果的にはブラシの破損や以上摩耗につながるケースもあります。
これらの故障は車の走行距離とほぼ比例していますので、十万キロ前半を超えたあたりから発電不良の原因となります。
発電機内部の部品が熱により故障するケース
ダイオードの一種であるレクティファイヤといわれる部品が熱などの原因で故障することがあります。
この部品は発電された交流電流を直流電流に整流するためのもので、この部分が壊れても、ほとんどの場合は発電機をまるごと交換することが多いです。
また「ICレギュレーター」と言われる、発電機の過剰な発電を制御する部品もわりと熱に弱いです。この熱による発電機の故障は、車の使用条件でも変わってきます。
長時間、駐車してエンジンをかけたままの状態で車を使用しているとエンジンルームに走行風が入ってこないので、発電機のまわりの温度が高温になってしまうことがあります。
業務上、このような使用条件をするタクシーなどは発電機が熱で故障するケースもすくなくありません。
また、車種によっても発電機への熱的な負担が増える場合があります。たとえば、エンジンが車体の後ろ側にあるタイプの車だと、熱が出ていきにくいために、発電機の中の熱に弱いICレギュレーターが突然壊れたりすることもあります。
ガソリンエンジンの車よりもディーゼルエンジンを搭載した車のほうがエンジンが出す熱量が多いため、発電機とエンジンが隣接しているようなタイプの車だと、比較的に発電機が壊れやすいように思います。
そのほかにもV型エンジンだと、発電機が随分とエンジンルームの奥の熱がこもりやすい場所にある車種の発電機が立て続けに故障したこともありました。
弱ったバッテリーが発電機の負担になることも
バッテリーの交換をなかなかしないユーザーさんが多いですが、弱った状態のバッテリーは発電機への負担を増やすことがあります。
発電機の故障を少しでも防ぎたいと感じたなら、バッテリーは整備工場やサービスステーションの点検結果で要交換と言われたら早めの交換がお薦めです。
発電機のベルトが原因になるケース
これはハッキリと検証できたわけではありませんが、発電機のベルトの張り具合が原因で発電機が壊れることもあると思います。
発電機のベルトが緩いままだと、発電機が本来の性能を発揮できません。そのうちに削れたベルトのかけらが発電機の中に落ち込んでいるのを見たこともあります。
また、整備工場で点検や車検を受けたさい、発電機のベルトの張りをかなり強く調整してしまっているケースもあります。
この場合、あまりにも強くベルトの張り調整をしてしまうと、発電機のベアリングの寿命が早まってしまうでしょう。(これはユーザーさんには責任はないですけど)
水にぬれやすい場所に搭載された発電機
車種によっては、随分と下側にあり、地域などにもよるのかもしれませんが、雨天時に路面の水を大量にかぶってしまうようなケースだと、発電機にはよくないと感じています。
本来は水洗いとかは厳禁な部品なんです。
発電機の故障を少しでも遅らせるには?
まず、僕が整備士として声を大にして言いたいのは、「バッテリーだけはケチらないほうがいい」ということです。発電機の負担が全然違います。
きちんとした点検ができるお店や工場から交換を勧められたら「まだいける」と思わずに少し早めの交換をしましょう。
僕自身も自分の車や家族、友達の車には弱ったバッテリーは「十害あって一利なし」みたいな勢いで交換をすすめますので。
発電機の故障の予兆はないの?
発電機そのものの故障に関しては故障の予兆が全くない状態から悪くなることも多く、突然マークが点灯するケースもあります。
実際に発電機が発電不良を起こすと運転席のメーターパネルの中にバッテリーの形をした警告灯が点灯するようになります。
これは『発電機からの充電が不十分です』という内容をドライバーに知らせるための警告灯で、その状態のまま走行すると、バッテリー内に蓄えれた電気を使い果たした時点でエンジンが止まってしまうことがほとんどです。
ただ、ある程度の車の走行距離で予測することはできます。僕の経験では走行距離が十万キロ前半から故障の確率が上がるように思います。
「最近バッテリーを交換したのにバッテリーが弱っていると言われた」
この場合だと発電機の故障をかなり疑ったほうがいいですね。
発電機の充電不足によるトラブルを避ける最善の方法は、車そのものを乗り換えしたほうがいい、などという「元も子もない」説明をお客様にすることもあります。
なぜなら、十万キロを過ぎた車は発電機だけでなくいろんな故障のリスクがあるからです。
「十万キロ過ぎたあたりから故障が増えたな・・・」
と、こんなことをぼやくお客様から増えてくるのも「整備士あるある」なのです。
コメント
よくわかりました。
よく書いてあってよい記事でした。
(・発電するのは交流で、それを直流に整流するため、記述が逆になってました。)
Fujiwra様
コメントをくださり、ありがとうございます。
ご指摘の部分ですが早速修正いたしました。