車から出る振動や異音にはいろんな原因があります。
今回はちょっと意外な(?)原因だった異音と振動のお話です。
車はスズキのアルトでしたが、この車種だけに限ったことではなく
「ある部品」を使っている国産車はすべてありうるトラブルです。
走り出すとパタパタと音と振動がする
一定の速度で症状が起きるケース
まずお客様からの問診では、
「走り出してスピードが出るとバタバタというかパタパタってヘンな音がする」
とのことでした。
そこで、実際に走ってみると確かに音はしますが、ある程度スピードがでると、その音と振動は「ピタリ」とやんでしまいます。
で、スピードを落としていくとやっぱり同じ速度域で同じように振動と異音がします。
このような特定の速度域でしか症状を再現できない場合は、整備工場に帰ってピットに入れても止まっている状態なので再現できません。
音の場所をある程度記憶しておいて、なおかつ異音の音質からどんなものが音を発生させているのかを想像することも大事です。
異音の表現の仕方は人ぞれぞれ
異音に関してよくあるのが、お客様ご本人と、整備士の僕とで音の表現のニュアンスが違うということです。
お客様は「パタパタ」と表現することも僕には「バタバタ」と表現したくなることもあります。
そのため、異音の確認は、できればご本人にも同乗してもらって一緒に音の確認をするのがもっとも間違いがないというか、行き違いのないやり方です。
今回も念のためにお客様に同乗していただき、助手席からお客様に振動と音が出たときに口頭で教えていただくことにしました。
パタパタは金属以外の材質?
音の表現の仕方は人それぞれとは言いましたが、それでもかなりヒントになることは確かです。
問診をしていて「パタパタと変な音がする」と聞かされた時、内心は(たぶん、軽い材質のものが原因だな)と考えていました。
金属製のものが異音を出すときは「カンカン」とか「コンコン」といった、もっと硬いものがぶつかるような表現をします。
しかも、金属製のパーツにはある程度の重量があるので、風圧などではばたくようなことにはなりにくいです。
お客様と試乗をしていて異音を聞いた時、プラスチックとかウレタンなどの樹脂製の部品が風圧でバタついているんだろうと予測しました。
ハンドルを切っても異音がした?!
試乗を終えて整備工場に帰ってくるときにハンドルを切って敷地内に入ろうとしたときに、
「ザザッ」
と、タイヤとなにかが干渉する音が聞こえました。
(ははーん)
僕の中では、ほぼ目星がついた瞬間でした。
フェンダーライナーが原因だけど・・
工場にもどりピットにてリフトアップして音と振動があったあたりを確認すると、はたして、フェンダーライナーの前側の一部が外れてパカパカとだらしなく浮いていました。
この場合は、外れた樹脂の部分が進行方向に向かって開口していたので、一定の風圧でバタついてバンパーのあたりに干渉していたことが原因でした。
しかもすこしずつ外れ方が大きくなっていたので、タイヤをいっぱいに切るとタイヤにも干渉しはじめていたようでした。
フェンダーライナーとは、タイヤの周辺を囲むようにしてついている樹脂でできた泥除けみたいな部品です。
軽量化とコストカットのため、極力薄くできているのですが、結果的には破損しやすく、軽いこともあって風圧でバタバタとタイヤハウスの中で暴れることもあるのです。
今回の異音と振動の直接の原因はこのフェンダーライナーが外れていたことです。
ただし、そもそもの原因は、フェンダーライナーとフロントバンパーをつないでいた小さな樹脂製のクリップが劣化して粉々に割れていることが原因でした。
整備士泣かせな樹脂製の部品たち
この「クリップ」と呼ばれる部品は、ほぼすべての自動車メーカーが採用しています。とくに日本車は高級車も含めて多用しているパーツです。
この部品を使うメリットは、車を製造するときの効率の良さといえるでしょう。
工具も必要とせず、クリップを差し込んでパチンとロックさせるだけなので、組むときは楽です。
ただ、整備士が整備をするときとなると手間取るときもあります。
というのも、クリップは樹脂製なので、熱や経年劣化で弾力がなくなっていることが多く、外そうとするとパキッと割れてしまうことも多いです。
板金修理を主にするような整備工場だと、あらかじめ各メーカーの新品のクリップも在庫していますが、いろんな種類があるので、一般的な整備工場では上手に外して再使用することが多いのです。
ところが、外しているとほぼ不可抗力のように割れてしまうことも多々あります。
僕もいろんなメーカーのクリップの中古を外してストックしてますが、なければ結束バンドで止めたりすることもあります。
そのため、整備工場やディーラーで整備をしてもらってすぐに今回のような症状が出た場合は、外したクリップが外れたり割れてしまっている場合もあります。
整備の不備といえますが、代わりのクリップが用意できないときは、かなりいい加減な付け方をしてごま化していることもあります。
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