ここ最近増えているのが、ダイハツの「KF型エンジン」のオイルパンからのオイル漏れ。
その原因が、オイルパンと言われるエンジンオイルが入っているエンジンの下側にある部分からのもの。
かなり乱暴な例でいえば「洗面器をさかさまにしたような部品」です。
ところが、このオイルパン、ダイハツの特定の車種でオイル交換をする際の作業ミスで
オイル漏れが始まることが多いのです。
同じ整備士としては「明日は我が身」ではありますが、
そのリカバリーの仕方やお客様へのお詫びの仕方は随分と違うようです。
ダイハツ車のオイルパンからオイル漏れする原因
アルミ製のオイルパンは要注意
ダイハツ車だけではありませんが、最近はエンジン本体もアルミ製のエンジンブロックを使うことが多くなりました。
さらにエンジンブロックの下側にあるオイルパンも以前はスチール製だったのが、最近は(と言っても2010年以降くらいから)アルミ製に変わってきました。
アルミでできたオイルパンは金属の性質上強度があまりないことも多く、特にダイハツ車の場合は、ドレンボルトのねじ山の数が他のメーカーのものよりも少ない傾向にあります。
そのため、ねじ山の接地面積が少ないため、それぞれのネジ溝に受けるトルクが大きくなってしまい、同じ材質でもダイハツのアルミ製エンジンオイルパンだけがネジ山をなめてしまいます。
他のメーカーのアルミ製のオイルパンはそんなに弱くこともないので、ダイハツのこのエンジンに特に多いです。
他のメーカーの場合、よほどのオーバートルクでドレンボルトを締めあげない限りはオイルパンのネジ山を傷めてしまうことはあまりありません。
オイルパンの交換に発展してしまう?
エンジンオイルの交換をする際にオイルパンのネジ山を痛めてしまって、オイルパンを丸ごと交換してしまうと言う事は昔からあったことです。
特にスチール製のオイルパンを力任せで締め上げてオイルパンの側もオイルドレンのねじ山も両方とも痛めてしまったと言う未熟な整備士もいました。
ただしこういう場合でもネジ山を修正するタップと言われる道具を使って、一回り太いドレンボルトが使えるようにしてオイルパンを交換しなくてもいいようにリカバリーすることも多いです。
要するにエンジンオイルを抜き替えする際にだけはずすものなので、普段はしっかりと固定されていてエンジンオイルが折れて来なければいいのです。
特に非常に古い旧車などは、部品が製造中止になっていて手に入らないこともあります。
こんな場合は、今ある部品をどうにかして使えるようにしないといけないので、ネジ山を修正するタップを使って別のボルトが使えるようにすることも多いです。
またねじ山の痛み具合が初期の状態であれば、シールテープと呼ばれる水道工事等にも使われるテープ状のパッキンをドレンボルトに巻きつけてオイルが漏れないようにすることもあります。
旧車などの、部品が手にはいらないような車ではドレンボルトにシールテープというやり方で応急処置をすることは多いです。
これらは応急処置なのですが、ユーザーさんからの希望や、部品の有無、オイルパンの交換が高額な修理になる場合などは、応急処置のままでずっと行くと言うこともよくある話です。
話を戻して、今回のダイハツ車のアルミ製オイルパンの場合は、比較的車も新しいことが多いですし、製造して10年未満の車ならオイルパンは充分入手することができます。
ただ、アルミ製のオイルパンを脱着する場合は、それなりに作業料金をいただかねばならないので、オイルパンの部品代金と作業料金を含めて30,000円ぐらいはかかることが多いです。
そのため、できれば費用をかけたくないと言うユーザさんも多いので、応急処置で終わらせてしまうケースも多いです。
便利なタップボルトで大助かり
本来ならオイルパンのねじ山が痛んでしまったら、ネジ山修正タップと呼ばれる道具でねじ山を修正します。
またはドリルでねじ山を全て削ってしまい、一回り大きなドレンボルトが合うようにネジ山修正タップも一回り大きくして加工してしまうこともあります。
ところが、最近は便利なものができたもので、タップボルトと呼ばれる強度の高い材質で作られたねじ山を痛めてしまったオイルパン専用のボルトがあります。
お値段はドレンボルトとしては少し高めですが、オイルパンを丸ごと交換してしまうことを考えると非常に割安な方法といえます。
タップボルトとは、ボルトに刻まれたねじ山が先端部分から付け根にかけて円すい状になっています。
つねに在庫している整備工場も
↑ よく見るとこのタップボルト、ボルトがテーパー上になっていて、アルミ製のオイルパンに食い込むようにねじ山を刻みながらドレンボルトの役割も果たします。
つまり、ドリルの先のようになっていて、タップボルトをぐいぐいと締め込んでいくとオイルパンに食い込んでいくようになっています。
そのため比較的柔らかい金属であるアルミのオイルパンの方が、まるでねじ山修正タップをねじ込んでいったように少しずつ削れて修正されていきます。
このタップボルトの場合は、ドレインボルトのパッキンだけ交換してしまえば、そのまま何度も再使用できます。
一度タップボルトに交換してしまえばそれ以降はオイル交換のためにドレンパッキンを交換するだけでオイル漏れを止めることができます。
ダイハツ車でオイルドレンボルトを締めすぎていた話
KF型エンジン搭載のタントのアルミ製オイルパンがズルズルに・・・
オイル交換のお客様がご来店ということで、キーを受け取り乗り込んだダイハツのタント。
ところが、ピットに入れてリフトアップしてオイルドレンを見て
「あーぁ・・・やられてる・・・」
つまり、今回のお話であるアルミ製オイルパンのねじ山の傷みです。
まずはこのお客様の整備カルテを確認し、当店での作業履歴がないことを確認したうえでお客様にご報告します。
もしも当店にて作業をしたうえでのオイル漏れなら当然お詫びからはいらないといけません。
このお客様の場合は初めての作業だったので、作業を始めるまえにお客様を車の下に来ていただいてオイル漏れをしている部分を確認していただきます。
すでにオイルパンのねじ山には、らせん状に削れてしまっているアルミのかけらがポロリと付着しています。
この状態では通常のドレンボルトをセットしても、本来のトルクで締めるとができません。締めようとしても「ぐにゃり」とした嫌な感覚が伝わってくるだけです。
お客様の目には削れたかけらがかなり印象的に映ったようで、ある程度の状況は理解できたようです。
こんな場合は、なるべく手を加える前の状態から説明をするべきで、「じつはボルトがおかしかったです」みたいな事後報告をしてしまうと、こちら側も疑われてしまいます。
傷んだオイルパンの状態を直接見ていただくこと、前回オイル交換を施工した整備工場に問い合わせをしたほうがいいことなどをご説明したのですが、驚いたことが二つ。
一つは、前回オイル交換をしたのは、なんとディーラー系の整備工場だったこと。
二つ目は、もうその整備工場には行きたくないから有料でもここで修理してほしいと依頼されたことでした。
タップボルトで様子をみることに
アルミ製のオイルパンを交換する場合、部品代も一万円は軽く超えますが、それ以上に作業料金(工賃)がそこそこかかります。
トータルで3万円近い修理費となりますが、オイルドレンボルトを特殊なタップボルトに変更すれば、オイルパンを交換しなくてもいいかもしれないとお伝えし、試してみることに。
その後、そのお客様は当店でオイル交換を定期的にされるようになりましたが、オイルドレン付近からオイルがにじむことはありませんでした。
エンジンオイルの下抜きを頑なに断る赤帽の運転手
スバルのサンバーがダイハツのハイゼットのOEMになってから、同じようにアルミ製のオイルパンのドレンボルト締めすぎの事例が出てきました、
とくに年間走行距離が多い赤帽さんなんかはオイル交換の頻度が高いぶん、ドレンボルトの締めすぎをされる確率も上がります。
そのため、赤帽さんの業者仲間では、「エンジンオイルは下抜きでさせるな」という声もあるのだとか。
当工場を利用される赤帽さんの一人の方は、オイル交換は上抜きしかしないでくれという方もおられます。
オイルドレンを締めすぎてしまわれないための予防策と、ドレンの締め忘れという、ヒューマンエラーを恐れてのことのようです。
ただですね、このオイル交換をレベルゲージから上抜きだけするやり方、僕は好きじゃないですね。
オイルパンの底にスラッジが堆積していくのが目に見えてますから。
ダイハツとトヨタはオイルのドレンパッキンは紙製のものを使うのですが、正しい締め付けトルクと、毎回きちんとドレンパッキンを交換すれば、オイルパンを痛めたり、オイルがにじむこともないと思うのですが。
といいつつも、自分の車で実験しましたが、紙製のドレンパッキンは再使用しても漏れることはほぼないです。
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