炎天下の中、車で走行中に「エアコンが効かない」とメーターを見るとオーバーヒートの警告灯が点灯している?!
これは偶然に重なった症状なのか、それとも関係しているのか・・・?
二十年以上整備士をしていると、このような症状は何度も経験していますが、初めて経験する一般のドライバーさんなら、
「え・・?どうしよう・・・すぐに車を止めたほうがいいの?」
となってしまいますね。
今回はエアコン(冷房)が効かないこととオーバーヒートとの関連性についてご説明していきます。
車のエアコンが効かないのはオーバーヒートが原因?
エアコン制御と水温の関係
夏場によく依頼を受ける診断の中に、「エアコンが効かない」というものがあります。
エアコンが効かないことの主な原因は、マグネットクラッチというエアコンコンプレッサーの一部にあたる部分に電源が供給されていないことが多いです。
さらに、マグネットクラッチへの電源がこない原因にもさまざまなケースがあるのですが、今回はオーバーヒートとエアコンの効きに関するお話ですから別の原因は割愛します。
車のエアコンは「エアコンアンプ」という、コンピューターがエアコンを制御していることが多いです。メインのコンピューター(ECU)が制御していることも多いですが、基本的な制御は同じです。
エアコンのクーラーを使用しようとすると「AC」のボタンをオンにしますが、この信号をエアコンアンプやメインコンピューター(以下ECU)が感知すると、エアコンコンプレッサーのマグネットクラッチへの電源をオンにさせます。
水温が高すぎるとエアコンへの電源がカットされる
このとき、エンジンの冷却水の温度もエアコンの制御の中に組み込まれています。
冷却水の水温が異常に高温になっている場合は、エンジンへの負担をこれ以上増やさないために、「AC」のボタンをオンにしてもマグネットクラッチへの電源を供給しない制御になっています。
つまり、冷却水温が高温になってオーバーヒートしていると車が判断したらエアコンは効かないようになっているのです。
このときにできる対処法としては、車を安全な場所に止め、エンジン周辺から水蒸気が出ている場合はボンネットを開けずにエンジンを止めておくことです。
水蒸気が出なくなったら、ボンネットを開けてエンジンルームが冷えやすい状態にしておき、救援を呼ぶようにしましょう。
車種によってオーバーヒート時のクーラーの制御が違う?
エンジンレイアウトとエアコン制御の違い
車の基本的な構造のなかに、エンジンが「縦置き」なのか「横置き」なのかというレイアウトの違いがあります。
くわしいことは今回は省略しますが、前輪駆動車はエンジンが横置きになっていることが多いです。
ハイブリッドカーや軽自動車、コンパクトカーなど、ここ最近はエンジンが横置きのタイプが多いです。
ファンベルトでファンを回している車種もある
縦置きのタイプはかなり珍しくなっていますが、高級車や貨物車に多いのですが、電動ファンをメインにしているタイプと、エンジンの回転と連動して常に回転している車種とで違いがあります。
このファンの回転の制御の方法もエアコンを使っているときと若干関係することがあります。
電動ファンとカップリングファンの違い
↑ たった一個の電動ファンモーターがラジエーターの冷却とコンデンサーの冷却を担っていることがあり、オーバーヒートとエアコン不調を同時に引き起こす原因になります。
エンジンが縦置きの車の場合はクランクシャフトの回転をそのままファンベルトを利用してファンを回転させている車種があります。
トヨタ車で言えばクラウンとかマークⅡとか、かつて主流だったミドルクラスの車は、上記のタイプです。かなり少なくなったタイプなので今回はこのあたりで割愛。
エンジンが横置きのタイプの車がほぼ主流になっている現在、エアコンを使うと、冷却水を冷却する電動ファンがそのままエアコンの冷媒ガスを冷却しているコンデンサーの冷却も兼用していることが多くなりました。
1個のファンモーターで制御するリスク
車の構造をシンプルにし、製作コストを下げる工夫でもありますが、このラジエーターとコンデンサーの冷却を兼用しているメインの(唯一の?)電動ファンが壊れたら、そくオーバーヒートし、クーラーも全く効かなくなります。
一つの電動ファンモーターが作動しないだけでオーバーヒートと、クーラーが効かないという症状がセットで起きるのですが、その大事なモーターが意外と壊れやすい車種もあります。
軽自動車やコンパクトカーなどは、このパターンのトラブルが非常に多いです。
オーバーヒートでクーラー効かないときの対処法
エンジンの負担を減らすことが最優先
今回はかなりメジャーな車種でのお話にさせていただきますが、ほとんどの軽自動車、コンパクトカー、ミニバン、2000ccクラスまでのセダン、などの場合です。
エアコンが効かなくなり、なおかつ運転席のメーターの中にオーバーヒートを知らせる警告灯が点灯したら、なるべく車を走らせることを控えるようにしましょう。
この時、エアコンは作動させてもほとんど意味はありませんのでスイッチはオフにしておきましょう。
渋滞時など、その時の交通状況などによっては、すぐに車を止めることができないケースもありますが、この場合はエンジンがオーバーヒートして、最悪の場合はエンジンが止まってしまう可能性がある状況です。
ハザードランプを点灯させるなどして路肩に車を待避させ、道路の途中で車が停止することを回避できるようにします。
オーバーヒートのダメージを軽減するための処置
安全な場所に車を止めることができた場合は、ボンネットを開けることでエンジン回りの温度を下げてオーバーヒートのダメージを抑えることができる場合があります。
あくまでも「できれば望ましい」という程度のことなので、運転手や同乗者の安全確保が最優先です。交通量の多い場所での処置避けるようにします。
まとめ
オーバーヒートとクーラーが効かない状態は関係していることが多く、オーバーヒートが起きたことでクーラーの機能を車が止めてしまうケースが多いです。
オーバーヒートが起きたら、なによりもエンジンの保護を最優先にしないといけないので、エアコンコンプレッサーへの電源をカットすることで少しでもエンジンへの負担を減らすようになっています。
そのため、少し時間をおいてエンジン内部の温度が下がり、冷却水の温度も通常の温度域まで下がると、エンジンを再始動してエアコンを入れると正常にエアコンが効き始めることが多いです。
ただし、なにかしらの異常があってのオーバーヒートですから、極力エアコンは使用しないようにし、整備工場で点検を受けるようにしましょう。
その際に、担当してくれる整備士やサービスフロントに
「エアコンが効かないときにオーバーヒートもしていた」
ということを伝えることで、故障の原因を突き止めるのが早くなることがありますので、伝えておくようにしましょう。
【関連記事】高額修理かも!?車がオーバーヒートした後遺症ってどんな症状?
コメント
全くこれと同じ症状が、いま発生してます!
一度診てもらった時はサーモスタットが固着していたため交換して治りかけてたのですが、また、同じ症状が出始めました~冷却水の漏れはないみたいですが、リザーブタンクに吹き替えした痕があります。エンジンだめなんでしょうか??
俊様
オーバーヒートをしているということですが、エンジンがヒートする原因としては、冷却水が本来の流れ方をしていないことがあります。
たとえば、ラジエーターの内部が詰まっていたり、エンジンブロックの冷却水の通路にサビが発生して詰まっていることもあります。
エンジンがダメになってしまっているかどうかはなんとも言えませんが、オーバーヒートをした時間が長いほどエンジンに深刻なダメージを受けている可能性が高いです。
また、走行距離が多い車であれば、複数の要因でオーバーヒートをしていることも考えられます。
まずは整備工場に預けて詳しく診断をしてもらってください。
エンジンに大きなダメージが残ってしまっている場合は冷却水にエンジンオイルが混ざっていたり、冷間時にラジエーターに吹き返しが起きたりすることがあります。
診断もできる整備工場ならそこらへんを確認してくれるでしょう。
サーモスタットを はずしたらエアコンのコンプレッサー マグネットクラッチが動く可能性が有るのかな?冬は寒いですが
匿名様
サーモスタットを外してもマグネットクラッチの電源カットにはあまり影響しないでしょうね。
オーバーヒートの原因を修理するほうが間違いないと思います。