自動車の油圧警告灯(オイルランプ)が点灯した場合、その修理代にはいくつかのパターンがあり、一回の修理で安く済むケースもあれば、エンジンに後遺症が残り、高額な修理に発展することもあります。
その一方で修理したあとは問題なく走行できるようになるケースもあり、まずは油圧警告灯の原因を知り、具体的な修理プランを立てることも大事です。
残念ながら・・・。
整備士としての経験上では修理代が安く済むことは少なく、
車の買い替えに踏み切ってしまうユーザーさんもいます。
ただし、今回紹介している修理費用に関しては、一般的な国産車を前提にしています。
輸入車や旧車、ミッドシップなど特殊なエンジンレイアウトのスポーツカー、ローターリーエンジンなどは除きます。
油圧警告灯の修理代はいくらかかる?
エンジンオイルが不足
油圧警告灯ランプが点灯する最も多い原因は、エンジンオイルが不足していることで、エンジンオイルを長期間交換していないとオイル量が減ってランプが点きます。
オイルの補充または交換
■作業内容 | エンジンオイルとフィルターの交換 |
■費用 | 5,000円前後 |
エンジン内部を潤滑する最低限のオイルがないと、ストレーナーからオイルを吸い出せず、空気を吸ってしまうことで油圧が安定しなくなります。
初期の段階では、油圧警告灯がチラチラと点いたりカーブの途中やブレーキを踏むとたまに点くようになります。
【関連記事】エンジンオイルのランプが一瞬だけ点いたり消えたりする原因とは
このようなオイル不足の初期段階ではエンジンオイルの補充、または交換をすることで問題なく走れることが多いです。
オイルの油圧異常
↑ オイルストレーナーが詰まってしまうと
エンジンオイルを吸い上げることができなくなり
油圧警告灯がチラチラと点灯し始めます。
エンジンオイルの量が不足していない場合でも油圧警告灯が点灯することがあります。
原因は「スラッジ」とよばれるエンジン内部に溜まってしまった汚れの塊がオイルの通路に詰まってしまうことです。
オイルストレーナーの交換や清掃
■作業内容 | オイルパン脱着およびストレーナー交換など |
■費用 | 30,000円~50,000ほど |
エンジンオイルはエンジンの下側にあるオイルパンという容器のような形をした部分に溜まっていて、そこからオイルポンプがオイルを吸い上げて循環させています。
エンジンオイルの交換距離が不適切だと、エンジン内部に汚れが蓄積していき、オイルパン内部のストレーナーと呼ばれる金属製のフィルターが詰まってしまいます。
そのため、エンジンオイルをオイルパンから抜き取ったあとオイルパンを外し、ストレーナーを取り外してきれいに清掃するか交換する必要があります。
どろどろのエンジンオイルがオイルパンの底にも溜まっているのでエンジンオイルとセットでオイルエレメントの交換も必ず行います。
初期段階のオイルラインの詰まり
■作業内容 | シリンダーヘッド周辺の分解など |
■費用 | 20,000円~150,000円ほど |
エンジンの構造によっても違ってきますが、エンジン上部のシリンダヘッドカバーを外してみると、大量のスラッジでヘッド周辺のオイルの流れが悪くなっていることがあります。
その場合はシリンダーヘッド周辺にこびりついたスラッジをこそげ取るようにして取り除き、シリンダーヘッドカバーパッキンも新品にしておきます。
■作業内容 | オイルポンプの分解または交換 |
■費用 | 50,000円~150,000円ほど |
オイルパン内部にあるオイルストレーターの上流にはオイルポンプがあり、ポンプが正常に機能していないとエンジンオイルが吸い上げられません。
オイルポンプの不具合にも様々なケースがあり、一概には言えませんが、オイルポンプ周辺のスラッジによる目詰まりを解消することで油圧が復活することがあります。
初期段階ならエンジン内部に洗浄液を圧送するタイプのエンジンフラッシングの機械で強制的にスラッジを排出させることもできますが、これはやってみない結果はわかりません。
なかには、オイルポンプを回しているチェーンが切れてしまっていることもありますが、その場合は一瞬でエンジンが焼き付いているのでエンジン載せ替えしか選択肢はありません。
異音をともなうオイルラインの詰まり
■作業内容 | エンジン載せ替えなど |
■費用 | 200,000円~400,000円ほど |
エンジンから「カタカタ」とか「カンカン」といった異音が発生している場合は、オイルの油圧が不足した状態でエンジンに負荷をかけることで起きてしまいます。
音の原因は「メタル」と呼ばれる、カムシャフトやクランクシャフトの軸受部分への油圧不足により焼付きが発生したことで起きます。
メタルの交換するためにはエンジンを車体から降ろし、分解することが多く、作業工賃だけでかなりの高額になり、時間もそれなりにかかります。
ほとんどの場合は焼き付いたメタルだけの交換では終わらず、結果的にはエンジンをまるごと交換するほうが時間もお金も圧縮できます。
エンジン載せ替えをする場合、ほとんどの場合はリビルト品(最製品)を使用しますが、中古のエンジンがあれば費用を安く終わらせることができます。
軽自動車のエンジンであればリビルトエンジンが15万円ほど、中古エンジンなら7,8万円ほどで入手できますが、ターボがついているエンジンなら別でターボも必要になります。
コンパクトカーなら上記の軽自動車の3割ほどは費用が高くなりますが、新しい車種なら中古品が手に入らないこともあります。
とくに中古のエンジンが入手しづらいのがディーゼルエンジンで、状態の良いエンジンは海外に輸出されるうえに、ディーゼルエンジンはリビルト品もかなりの高額です。
3000ccクラスのディーゼルエンジンなら30万円ほどするものもあります。
もともとはユーザー本人のオイル管理がおろそかになっていたとはいえ、エンジン載せ替えとなると気の毒に思えてしまいます。
オイルプレッシャースイッチ周辺の異常
オイルプレッシャースイッチの交換
■作業内容 | オイルプレッシャースイッチ交換 |
■費用 | 38,000円~20,000円ほどほど |
配線修理など
■作業内容 | プレッシャースイッチ配線修理 |
■費用 | 5,000円~10,000円ほど |
警告灯ランプの回路異常
メーター内部の故障
珍しいパターンですが、油圧の警告灯が点灯しなくなるというトラブルもありました。
また、メーター内のショートなどで警告灯が点いたり消えたりしてしまうこともありました。
どちらにせよ「点灯しっぱなし」も「まったく点灯しない」のどちら状態も車検に合格することができません。
陸運支局や軽自動車協会でのユーザー車検で
たまに引っかっているユーザーさんもいますね。
ちなみに、メーター内部に問題があって油圧警告灯が点灯しない場合、メーター球が切れてしまっている場合なら1万円もかからない修理代で収まるはずです。
最後に・・
油圧警告灯の後遺症
オイルプレッシャースイッチなどのトラブルに関しては、そもそも油圧不足は起きていなかったので、修理を終わらせてしまえばその後の後遺症などは一切ありません。
ですが、なんらかの理由で油圧不足があった場合はエンジン内部にダメージを受けている可能性が高く、油圧警告灯を消すことができても修理が完了していないこともあります。
修理のプランが立てにくい
油圧警告灯のトラブルのやっかいなところは、一度の修理で完結しないことがあり、初期段階では修理のプランが立てづらいところです。
結果的には高額な修理になり、「こんなことなら初めから廃車にすればよかった」とおっしゃるユーザーさんもいます。
油圧警告灯が点いたらその後の初期診断こそ判断が難しくトータルの修理費用もはっきりしないのです。
初期診断は「エンジン屋」に依頼したい
油圧警告灯が点灯した原因がエンジンオイルの量不足やオイルラインの詰まりだった場合、エンジンに深刻なダメージが残っている可能性があります。
エンジンオイルを補充し、油圧警告灯が消えて走行できるようにするのはガソリンスタンドやカー用品店で行うことはできますが、その後の後遺症に関してはあらためて調べる必要があります。
たとえば、コンプレッションゲージがないとエンジンの圧縮比を測定することはできませんし、エンジン載せ替えやシリンダーヘッドガスケットの交換をした経験のある整備士の知識も必要です。
整備工場としての運営歴のながいところにエンジンの状態を診断してもらうことで修理の流れや具体的な修理代にいくらかかるのかを知ることができます。
ベテラン整備士がいるディーラーがベター
高額修理に発展しそうな車をディーラーに持ち込むと、営業さんがやってきて買い替えを勧められてうんざりすることもあります。
ですが、整備士としてのキャリアが長いサービスフロントや工場長がいるディーラーなら、しっかりと診断をしてもらえることもあります。
オイル不足やオーバーヒートなどのエンジン焼付きの診断は経験がものをいう分野なのでベテラン整備士を探し出すことが近道といえます。
ただ、整備士たちはこの手の診断はやりたがらず、エンジン載せ替え、または車の乗り換えを遠回しにすすめることが多いです。
予測が難しいことに対して見積もりを出し、お客様に高額修理の覚悟も持ってもらうことは、のちのちクレームに発展する可能性も高いからです。
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