車がオーバーヒートしたときに絶対にしてはいけないことを挙げると
・ラジエーターキャップは絶対に開けない
・軍手を付けてラジエーターキャップを外さない
・エンジンルームに顔を近づけない
・エンジンに水などをかけて急激に冷やさない
ほかにも細かい注意するべきことはありますが、まずは安全に考慮して冷静に対処する必要があります。
今回はオーバーヒートをしてしまった直後の対処法や、その理由についてご説明していきます。
オーバーヒートした時にラジエーターキャップを外すとどうなる?
冒頭でもお話しましたが、エンジンがオーバーヒートしているときにはラジエーターキャップを外すと非常に危険です。
高温の水蒸気や冷却水が噴水のように飛び出す
まるで間欠泉のような高温の噴水が出ることも
先輩整備士から効いたことのある話ですが、オーバーヒート直後にラジエーターキャップをうっかり外してしまった整備士がいたそうです。
ラジエーターキャップを素手で外した瞬間「ブシューーーーー!!ゴボゴボゴボ!!」という凄まじい勢いで熱湯が出たようで、最悪の場合は顔面に大やけどを負ってしまう可能性もあります。
しかもラジエーターキャップを外すまで、エンジンルームは熱気が立ち込めてはいるものの静かな状態だったとのことで、突然の出来事にほとんどの人は対処することはできません。
走行中にオーバーヒートを起こしてもここまでの状態にはなかなかなりません。
ラジエーター内の冷却水が吹き出す理由とは
ラジエーターキャップの表の部分に表示されている数字をご存知でしょうか。
0.9とか1.1とか書いてある数字には意味があります。
たとえば、「1.1」と表記してあるラジエーターキャップなら、ラジエーター内の圧力が2.1を超えるとリザーブタンクに圧力を逃がすように調整されています。
ここで、「え・・?なんで1.1が2.1になるの?」と思われたかもしれません。
地上の大気圧は約1気圧ですので、ラジエーターキャップの1.1は『大気圧に1.1の圧力が加わった状態』を指しています。
つまり、1.1と表記されているラジエーターキャップでは、ラジエーター内が最高で2.1の圧力がかかっていることになります。
オーバーヒートをしている状態で冷却水が100度以上の高温になっても沸騰しないのは、空気がなく密閉されているからです。
整備士としての経験でオーバーヒートをした直後の車の処置をやってきましたが、かなり慎重に対処するのがラジエーターキャップを外すときです。
とくにオーバーヒートをした直後はプロの整備士でもラジエーターキャップを外すことは絶対にしません。
もしもその状態でラジエーターキャップを外してしまうと2.1気圧に加圧されていた100℃以上の高温になった冷却水が1.0気圧にいっきに下がることになります。
すると冷却水は一瞬で沸騰し、まるでボイラーの水蒸気のような超高温の噴水となって吹き出してくるのです。
100℃の熱湯をかけられても大やけどをしますが、水蒸気はそれ以上の温度になります。
オーバーヒートをしているときにラジエーターキャップを外すことがいかに危険なことか、想像しても恐ろしいですね。
軍手をしてラジエーターキャップを外さない
冒頭で「軍手をしないこと」と書きましたが、その理由は火傷のダメージを大きくしないためです。
ラジエーターキャップを外すのはエンジン周辺が十分に冷えてからというのが大前提ですが、それでも熱湯が吹き出す可能性はあります。
もしも軍手を付けたままで高温の冷却水が軍手に付着してしまうと、皮膚の表面が高温にさらされる時間がより長くなり、火傷のダメージも深刻化します。
どうしてもラジエーターキャップを外したいときは、バスタオルのような厚手のタオルを素手で持ち、ゆっくりとキャップを緩めていきます。
素手にしておくと、タオルが高温になっても手を離してしまえば火傷にならずに済むからです。
ラジエーターキャップはいつ開ける?
オーバーヒート直後に一般ユーザーさんがラジーエーターキャップを外す必要はありませんが、エンジンが完全に冷え切った状態で冷却水を補充することはできます。
エンジンを止めて1時間ちかく経った場合ならラジエーターキャップを外しても冷却水が吹き出すことはありません。
それでも念のためにタオルなどでラジエーターキャップを押さえながら外すことをおすすめします。
なお、オーバーヒートをしたあとの詳しい処置に関しては別の記事を参照ください。
【関連記事】車のエンジンがオーバーヒートしたらどうなる?応急処置の方法は?
オーバーヒート直後にヒーターを入れるのは正解?
メーター内の赤い水温計が点灯したり点滅したとき、ドライバーとしてはなにかしらの対処をしたいと考えてしまいますが、なによりも安全を最優先しなければなりません。
そのうえで、少しでもエンジンにダメージを与えないようにできる処置として、『エンジンをゆっくり冷やす』という対処が有効です。
その方法の一つとしてヒーターのファンを回すというやり方があります。
操作は簡単で、暖房の温度設定はもっとも高くし、風量も最大にして作動させ、このときエンジンはアイドリングしたままにします。
ヒーターは冷却水の熱を再利用している
↑ 室内に繋がっているヒーターホースを外すと冷却水が出てきます。
エンジンで温められた冷却水はまずヒーターを経由しています。
電気自動車は別ですが、エンジンが搭載されている車の場合、エンジンを冷却するための冷却水がエンジンの内部や周辺を循環しています。
エンジン内部で温められた冷却水は室内のエアコンユニットのなかの「ヒーターコア」と呼ばれる部分にも流れています。
冷却水の熱を取り込み、暖房に再利用しているので、オーバーヒートをしているときは暖房を入れることで冷却水を早く冷やすことができます。
とはいえ、ヒーターコアはラジエーターのような大きなものではないので「やらないよりはまし」というくらいの処置となります。
このとき、温度設定を最高に、風量を最大にするのは、できるだけヒーターコアの熱を排出させるためです。
ボンネットを開けるとエンジン周辺の熱を排出できる
エンジンが車体の前側にあるタイプの車は、ボンネットを開けておくだけでエンジンルームの排熱をすることができます。
ただし、オーバーヒート直後では高温の水蒸気が噴出していることがあるのですこし待ってから処置をします。
また、風が強いときはボンネットを開けていると、いきなりボンネットが動くこともあるので、その場合は開けないほうがいいです。
キャップを外す以外にやってはいけないこと
エンジンルームに顔を近づけない
オーバーヒートをしているエンジンは非常に高温になっていて、冷却水が循環しているゴムホースやパイプがいきなり破損して高温の冷却水が吹き出すことがあります。
ラジエーターキャップ周辺では、樹脂でできているラジエーターアッパータンクなども部分も非常にもろくなっていることがあり、手を乗せるだけで割れる可能性があります。
プロの整備士でもエンジンルームが高温になっているときはエンジン周辺には手を入れませんし、修理もせずに時間をおくことがあります。
エンジンに水などをかけて急激に冷やさない
エンジンが高温になっていることでエンジンにダメージを負うからといえども、いきなりエンジンに水をかけたりすると逆効果になってしまいます。
エンジン本体はアルミや鋳鉄でできていて、高温になった状態で水をかけたりするとエンジンに大きな歪みができてしまうことがあります。
また部分的に急激な熱収縮を起こすことでクラック(ひび割れ)が発生してしまうとエンジンに深刻なダメージが残り再生できなくなります。
オーバーヒートをすると後遺症が残る?
オーバーヒートをのレベルでも違ってきますし、ヒート直後の処置のやり方でも違ってきますが、かなりの確率でなんらかの後遺症が残ることが多いです。
言葉は悪いですが、「だましだまし」で乗り続けることもできますが、燃費が悪くなっていたり、突然にエンジンがかからなくなるリスクもあります。
なかには燃焼室に冷却水が流れ込んでセルモーターが回らなくなる事例もありました。
くわしくはオーバーヒートの後遺症について書いている記事を御覧ください。
【関連記事】高額修理かも!?車がオーバーヒートした後遺症ってどんな症状?
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