今回は実用的で根強い人気があるホンダのバモスのタイミングベルトに関するお話です。
バモス、バモスホビオ、アクティバン、にお乗りの方には気になるであろう
『なんでこの車種はタイミングベルトの交換費用が高いんだろう?』
という疑問にお答えしてきます。
バモスのタイミングベルト交換費用の内訳は?
リアエンジンのバモスは整備性が悪い
タイミングベルトはエンジンの前側に付いている非常に重要なパーツです。
そのため、タイミングベルトの交換をするためにはエンジンの前側の周辺にある補器類のベルトやカバーなどを外していくのですが、同じエンジンを搭載しているライフなどと比べると整備性がかなり違ってきます。
とくにバモスのようにエンジンが車体の後ろ側にある場合は、荷室の荷物をすべて車から降ろさないとエンジンの上側に触ることすらできません。
無事にエンジンに触れるようになっても上側からする作業とエンジンの下側からアプローチしないといけない作業などがあり、荷室から手を伸ばしてみたり車体の下側にもぐったりで、なかなかに骨の折れる作業です。
余談ですが、真夏に車体の中に入り込んで作業をしていると、換気や日当たりによっては熱中症になりそうになります。
アクティ・トラックとバモスの作業性の違い
同じエンジンを搭載していてもタイミングベルトの交換作業にかかる時間が違うケースがあり、とくにバモスとアクティ・トラックの場合はかなり作業のやりやすさが違ってきます。
トラックの形状のアクティ・トラックは荷室が丸出しなので、車体の下側からエンジンにアプローチする作業とエンジンの上側にアプローチする作業がとてもやりやすいです。
それに対してバモスの場合は、エンジンの下側は「車体の外」ですが、エンジンの上側の作業をしようとすると、室内に入り込まないといけません。
箱の形状をしている車種は、この巨大な壁の外と内側を行ったり来たりしないといけないため、車体の後ろ側をうろうろすることになります。
作業に慣れている整備士なら、効率よくまとめて作業をすすめていきますが、あまり慣れていないと無駄に時間がかかってしまうことになります。
不思議なことにトラックの形状の車種と箱バンタイプでもタイミング・ベルトの交換作業料金にほとんど変わりがないケースがあったりします。
バモスが安い料金というよりもあアクティ・トラックが高めに設定しているのかなと思えるようなディーラーの工賃設定です。
部品の点数が多いのもホンダ車ならでは?
ホンダのエンジンに多く、他のメーカーのエンジンにはほとんど見られない特徴があります。
それがシリンダーヘッドカバーを外さないとタイミングベルトのカバーを外すことができないということです。
シリンダーヘッドカバーの交換がセットに
通常はシリンダーヘッドカバー(別名でタペットカバーパッキンともいいます)はオイル漏れ修理するときに外すことが多いのですが、ホンダ車の場合タイミングベルトを外すうえでどうしてもヘッドカバーが覆いかぶさるようになっているので外さざるをえないのです。
この工程が増えるだけでも30分くらいは作業時間が多くなってしまい、結果的にはタイミングベルト交換の費用が上がってしまうことになりますし、部品の代金もプラスされてしまいます。
E07Zはクランクシャフトのボルトが緩まない?
ホンダ系のエンジンの特徴が、クランクシャフトのボルトの締め付けトルクがやたらと高く設定されていることです。
ホンダ車の中でも設計の古いエンジンは回転方向が左回転です。これはかなり珍しく他のメーカーではあまり見られませんが、バモスに搭載されるエンジン「E07Z」も左回転です。
クランクシャフトは他のメーカーと同じく右に回すと締め込んでいく、いわゆる「正ネジ」なので、左回転のエンジンはクランクシャフトの締め付けトルクが右回転のエンジンにくらべてかなり高くなっています。
僕自身もそうですが、他の整備士に「クランクシャフト緩めるのに苦労したエンジンは?」と聞けば、大抵はホンダのエンジンを挙げる整備士が多いはずです。
僕の整備士人生で、とくに苦労したクランクシャフトの緩め作業はトヨタの「2JZ」と日産の「RB26」ホンダの「G25A」でしたが、軽自動車のエンジンならほぼホンダのエンジンばかりでした。
タイミングベルトを交換するには、クランクシャフトのボルトを緩めないことには先に進めません。むしろ人によってはタイミングベルト交換作業の「最大の山場」というほどです。
クランクシャフトが緩まないために作業がストップしてしまって、知り合いがいるディーラーに特殊工具を借りにいく羽目になるのも「タイベル交換あるある」といえます。
話が少しそれてしまいましたが、バモスもクランクシャフトを緩めるのに苦労することがあるのでタイミングベルトの交換作業の工賃を他のエンジンよりも高めに設定する整備工場もあるでしょう。
水回りのエア抜けの悪さも特筆もの
バモスやアクティのエンジンのタイミングベルト交換をすると、セットでウォーターポンプの交換をすることもよくあります。
作業を始める前にエンジンの下側からウォーターポンプ周りの眺めているとすでにクーラント(冷却水)が滲んでいるのが見えることもあり、E07Zのエンジンの場合はウォーターポンプを交換するケースが多いです。
作業後の暖気&エア抜きが大変
バモスは車体の後ろにエンジンがあるので、車体の前側にあるラジエーターとの距離が遠いため、エンジンとラジエーターの間にエア抜きのための小さなボルトがあります。
途中の配管で少しづつ抜いてあげないと、なかなか冷却水のなかに入ったエアが抜けません。
これがかなり大変で、マニュアル通りのエア抜き作業をしても完全にエア抜きができていないこともあり、エンジンを暖気させたり、実走したりで時間がかかります。
なかには、どうしてもエアが抜けずにオーバーヒート気味になると悩んでいたら、そもそもヘッドガスケットが抜けていた、という悲劇に見舞われた整備士もけっこういます。
その場合はタイミングベルトの交換作業どころではなくなってしまいますので、それまでかけた時間がすべてむだになってしまいます。
それらも含めてバモスのタイミングベルト交換作業にはリスクもあり、いろんな経験をした整備士であるほど、かなり警戒する車種でもあります。
僕なら作業を始める前にバモスやアクティの保証延長の対象車種かどうかを調べることもあります。(ただし、あまりにも年式が古かったり走行距離が多い場合は対象から外れています。)
【外部リンク】ホンダ公式サイト|VAMOS、VAMOS Hobio、アクティのシリンダーヘッドガスケットの保証期間延長
まとめ
バモスのタイミング・ベルトの交換が他の軽自動車よりもかなり高くなっているのは、単純に手間がかかるということです。
しかもホンダのエンジンはシリンダーヘッドカバーも外さないとタイミングカバーが外せないので余計に工程が多くなっています。
・クランクシャフトのボルトが他の車種よりも硬く締まっている
・ウォーターポンプの交換作業もすると冷却水のエア抜きに時間がかかる
・箱バンの形状なので荷室と車体の下側の両方から作業するので手間がかかる
・ホンダ車ならではのヘッドカバーの脱着も必要になる
個人的にはバモスのタイミング・ベルトの交換作業は嫌いではないです。ホンダ車ならではの部品の精度の高さというか、材質の良さもあってボルトをナメしてしまうこともあまりありません。
組み付けているときも「カチッ」としている印象で安心してボルトにトルクをかけられる印象です。
とはいえ、オイル交換などの軽いメンテナンスしかやらないメンテナンスショップなどはタイミング・ベルトの交換は敬遠しがちです。
つまりタイミング・ベルト交換などの重整備に関してはライバルが少ないこともあり、作業のリスクもあるので、作業工賃に関してはかなり高めに設定する整備工場が多いのです。
最後に
今回のお話は、E07Z型エンジンのタイミングベルトの交換についてでした。
バモス、バモスホビオ、アクティ、アクティ・トラックなどは同じエンジンを搭載している車種にはすべて関係しています。
そのなかでもバモスとバモスホビオに関しては、タイミングベルトの交換作業の見積もりを出すときに、他の車種にはないやり取りが交わされることがあります。
それは、バモスが根強い人気を誇る車種であるために買取査定をしてみると、持ち主も驚くような価格が提示されることがあるのです。
ごく普通に通勤や趣味のために便利で経済的という理由でバモスに乗っていたユーザーさんからすると、そもそもタイミングベルトがあることすら知らない方も多いです。
いきなり「10万キロ走行なのでタイミングベルトの交換をしましょう」と言われても、ディーラーなら8万円近い交換費用を提示されて目をむくかたもいます。
どうしてもバモスでなければダメだという理由がないのであれば、タイミングベルトの交換をしないままで買取り査定に出してしまうのもいいでしょう。
バモスの人気は根強く、走行距離が多くてもかなり需要がある車種です。
たとえば、僕ならバモスにお乗りのお客様にこんな提案をするかもしれません。
「もしもバモスにこだわらないのであれば、一度買取査定をしてみませんか?」
「10万キロ走行している状態のバモスならシリンダーヘッドのトラブルも考えておいたほうがいいですよ」
大きなトラブルの可能性があって、なおかつ買取査定の評価が安定して高いのなら、トラブルが出る前に売ってしまうほうがお得ということです。
必ず相見積もりを取ろう
車だけではありませんが、物を売ろうとするなら、なるべく多くの買い手に「いくらで買ってくれるの?」とリサーチをしていく必要があります。
とくに車の場合は、査定金額にかなりの開きがあるのですが、ついついめんどくさくなってしまい、最初に査定してもらった買取店の営業マンのトークに乗せられてそのまま売買契約を交わしてしまうこともあります。
とくに他社との競合がないとわかると買取店の営業マンはあの手この手で、アプローチをしてきます。
「今なら少し高めの査定額が出せます」
「今日決めてくれるならプラスで2万円乗せますよ」
「他社さんならかの買い取り額は出せませんので」
これらは実際に裏を取らないかぎりなんの根拠もありません。
そこで大事なのが相見積もり。
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面倒な名義変更などもすべてユーカーパックがやってくれますし、クルマの引取や査定も自宅に来てくれます。
手間いらずでしかも愛車を高く売ることができるサービスとしてTwitterなどでも話題になっています。
実用的で人気の高いバモスなら走行距離が多くても査定額に期待できます。
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