オデッセイのハンドルが高速道路で振動する意外な原因

整備士の体験 整備士の体験談

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「タイヤ館やディーラーで相談したけどわからなかった・・・」

すこし気難しそうな五十代のお客様から、

ある不具合に関する相談を受けました。

症状を聞いたすぐに

(たぶんアレだろうな)

と自分の経験から目星をつけていたのですが、

先入観から診断を始めてしまったせいでしょうか、

かなり遠回りをしてしまいました。

今回は僕の失敗談でもあります。

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高速道路で走行中にだけハンドルが左右に振れる

運転席

低速では起きないのはホイールバランスが原因?

相談を受けたのはホンダのオデッセイ。

走行距離はたしか11万キロは超えていたと記憶してます。

当店に来られるまではディーラーオンリーの方だったのが、ディーラーでの対応に不満があり、それ以降、いろんな整備工場を利用するようになったとのことでした。

不具合の内容は、高速道路で走行するときだけ、ハンドルが左右にブルブルと振動することがあるとのことでした。

ハンドルが左右にブレるとくれば、僕が一番に思いつくのが、「タイヤの接地面の偏摩耗」です。

タイヤの空気圧をキチンと管理していないと、タイヤはかなり潰れた状態で走行することになります。

すると、タイヤの剛性を出しているカーカスと呼ばれる部分のスチールベルトが一部切れてしまうことがあります。

すると、その部分だけ空気圧を受け止め切れず、まるでコブのようにぷっくりと腫れたように隆起することがあるのです。

ところが、そのお客様のオデッセイの場合、タイヤはタイヤショップで交換してそれほど走っていない状態で、しかもタイヤは新車装着タイヤよりもややグレードが上のものでした。

当然空気圧は問題なし。こうなると、怪しいのはホイールバランスです。

打ち込みタイプのバランスウエイトの欠点

ホイールバランス

そこで、お客様と相談した上で、ホイールバランスをもう一度取ってみることにしました。

このオデッセイの場合、ホイールは新車装着のアルミホイールですので、「打ち込みタイプ」という、バランスウエイトが使われてます。

打ち込みタイプのバランスウェイトはたまに外れて飛んでしまうことがあり、運転手が気づかないうちにバランスが狂っていることがあります。

そのため、打ち込みタイプのバランスをとっている場合は、定期的にバランスウェイトの取り直しをした方が良いケースもあります。

今回のオデッセイのお客様の場合は、バランスが少しズレていたので、新たにバランス取りを少しだけしておきました。

簡易的なホイールアライメントもチェック

つまりタイヤそのものの状態も問題なし、バランスウェイトも問題なし、となると他に考えられるのは前輪側のホイールアライメントの狂いではないかと考えました。

つぎに、車検の際に実施するサイドスリップと呼ばれる簡易的なホイールアライメントのチェックもしてみました。

サイドスリップとは、簡単に言うと前輪タイヤが1メートル前に進むときに、内側または外側にめがけて何ミリずれていってるかと言う検査です。

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わかりやすく言えば前川のタイヤが車の上側から眺めて、がに股なのか内股なのか、ということを調べているわけです。

調べ方は車検と全く同じやり方で、サイドスリップテスターと呼ばれる左右のプレートが動くようになっているテスターの上を前輪を通過させます。

するとタイヤの触り始めと数カ所あるときの左右のズレが測定できるようになっています。

実際にはもっと複雑な要素が絡んでいてキャンバー角度なども関係してくるのですが、まずはこのサイドスリップのチェックだけでも何かわかるかもしれません。

ところがサイドスリップのチェックも全く問題なし、そもそもこのお客様のオデッセイの場合は完全にノーマルで乗っている方です。

しかも安全運転をされる方なので、タイヤを縁石に乗り上げたり、脱輪させたりすると言うこともまず考えられないそうです。

結局、突破口が見つけられる業務が忙しかったのでお客様に相談した上で、様子を見てもらうことになりました。

初歩的な見逃し・・・

結局お客様も納得していただいて、

「仕方ないね、それほど大きなブレじゃないからこのまま乗ることにするよ。だいぶ車が古くなったからなあ。」

そうおっしゃりながら車に乗り込もうとしていました。

その時、初めてお客様がおっしゃりました。

「タイヤ館やディーラーにもこのことは相談したんだけどなぁ。どこも同じこと言うんだね。あんなにはっきりと症状が出るんだけどね。」

そう言われると僕も申し訳ないような、ちょっと張り合いたくなるような気持ちになりました。

そこで駐車場に止めていたオデッセイの前輪タイヤを手に持って左右にぐりぐりと揺らしてみました。

すると、なんと右前のタイヤがカタカタと左右に形を発生しながら異音も確認できました。

(トラブルの本命はこれか!!)

われながら情けない気持ちになりました。

なぜタイヤまでも外すまで点検したのに、ハブベアリングの縦方向のガタとステアリングの左右方向のガタの確認をしなかったのしなかったのか・・・。

原因はタイロッドのカダだった!

タイロッドエンドの場所
↑画像は別の車両のものです
運転席からハンドルをぐるぐると左右に回すとタイヤも一緒に舵取りをしてくれます。その時ハンドルの力を伝える装置の中にステアリングギアボックスと呼ばれる場所があります。

このギヤボックスからタイヤにめがけて伸びた棒状の部品がタイロッドと言われます。

さらにそこからタイヤが取り付いているハブと直接つながっている部分がタイロッドエンドなどと呼ばれるボールジョイントの部分があります。

これはいわば関節のような、自由に角度を変えることができる連結部分なのですが、走行距離を重ねていくと、次第にガタができる消耗品でもあります。

つまり、このタイロッドエンドにガタができると、運転手がハンドルをしっかりと握っていても、タイヤが左右に振れるようになります。

すると、多少のホイールバランスのズレでも、タイロッドエンドのガタと相まって、高速走行をしているときだけハンドルにブルブルと振動が伝わってくるのです。

いわば、複合のちょっとしたガタや調整不良が原因で、しかも高速道路だけで起きるというトラブルだったのです。

整備士としては非常に反省するべきことで、はやり基本に忠実にならなければと思い知らされたしだいでした。

 

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