ウォーターポンプから異音が発生した場合は、
水漏れなどのトラブルの前兆のシグナルかもしれません。
それでは、ウォーターポンプの異音はどんなことが原因で発生するのでしょうか。
今回はウォーターポンプの異音についてのお話として、
・異音が発生する原因
・応急処置はできるのか
・修理するならどれくらい費用がかかるのか
などについてご説明していきます。
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【ウォーターポンプの異音】「キーン」「カラカラ」の原因とは
そもそもウォーターポンプとはどんな部品?
車の場合、ほぼすべてのエンジンは「水冷式」と呼ばれる、冷却水をエンジンの内部に循環させる冷却方式をとっています。
ウォーターポンプは、冷却水をエンジン内部に送り続けるためのポンプで、エンジンに貼りつくような位置にあります。
エンジン内部の冷却水が流れる通路にウォーターポンプのインペラと呼ばれる羽根が配置されていて、外側のプーリーと内側にインペラは同軸で回転しています。
このインペラが冷却水をエンジン内部に送り込むことで、エンジンブロックやシリンダーヘッド周辺が燃焼室の熱でオーバーヒートしないように常に冷却しています。
ほとんどのウォーターポンプは、補機類のベルトによって駆動されていますが、タイミングベルトでウォーターポンプを直接駆動させているタイプもあります。
なかにはハイブリッドカーのように「電動ウォーターポンプ」もありますが、電動のタイプは異音を発生することは少ないです。
異音はベアリングの劣化で発生
エンジンが始動して止まるまでウォーターポンプは常に回転しているので、回転する軸に当たる部分にはベアリングになっています。
よく言われる、ウォーターポンプからの異音は、回転する軸の部分にあたるベアリングが痛んでくることにより発生します。
軸部分のシールの劣化も頻発
ウォーターポンプの回転する軸の部分は、ベアリングにプラスして、「シール」と呼ばれる、冷却水がエンジンの外側に漏れないための部品も組み込まれています。
このシールの部分と回転する軸の部分とで、異音が発生することもかなりあります。
ある程度のキャリアのある整備士に「ウォーターポンプの異音ってどんな音?」と聞けば、「シールからの甲高い異音でしょ。」と答えるくらい、よくある異音の原因です。
ウォーターポンプのベルトが滑る原因は2つ
ウォーターポンプはエンジンが回転することで、ベルトを介して同じ速度で回転しています。
そのため、ベルトの張り具合が不十分だとベルトとウォーターポンプのプーリーの間で摩擦がおき、ベルトが滑る甲高い異音が発生します。
初期段階だと「キュルキュル」とか「キリキリ」といった音ですが、ベルトの張りがかなり緩い場合だと、「キュ~」とか「キャーー」といった連続音になります。
この場合の異音の原因はベルトの張りが不十分なだけなので、ウォーターポンプからの異音とは言えません。
ベルトの張りを適切に張り直せばこの異音は発生しなくなります。
ただ、ごくまれに、ウォーターポンプが回転できない状態になり、ベルトの張り具合に問題がなくてもベルトが滑ることがあります。
この場合、エンジンの力でほぼ強制的にベルトを駆動しているので、回転しなくなったウォーターポンプのプーリーとの間に発生する異音は非常に大きな音になります。
「キュ~」というものから「ギャ~」といった、断末魔のような音と、ベルトがまたたく間に焼けていく、ゴムが焼けるような焦げ臭い臭いがエンジンルームに充満します。
ウォーターポンプからの異音にはどんな音がある?
ヒーンとかキーンという異音はシール部分から
その音を聞いたとたん、整備士なら「ウォーターポンプでしょ」と答えるくらい、「キーン」とか「ヒーン」といった、甲高い異音はよく発生します。
とくにダイハツの軽自動車に搭載される「KF型」エンジンでは定番の異音で、このエンジンを積んでいるイース、ミラ、タント、キャンバス、ムーヴ、ウェイク、ハイゼット、アトレーなど。
ようするにダイハツの軽自動車全般に起こりうるトラブルです。
ピーという連続音は要注意
上述したヒーンとかキーンというシールからの異音がさらにひどくなると「ピー」という、さらに音のボリュームが大きくなってきます。
この段階になると、信号待ちなどでエンジンをアイドリングさせておくと、車内や周りの車にも聞こえるくらい大きな異音になっています。
この状態にまで異音がすすむと、シール部分から冷却水が漏れ始めることが多く、結果的にはオーバーヒートの原因になります。
ガラガラやカラカラはベアリングの異音
ウォーターポンプの軸受部分からの、「ガラガラ」とか「カラカラ」と言われるような異音の場合は、ベアリングにガタができることで発生します。
原因は単なるウォーターポンプのベアリングの寿命と言うケースもありますが、ウォーターポンプを回転させているベルトの張り調整が適切でないとベアリングにガタができやすくなります。
ガーという連続音ならすぐにエンジン停止
もしもウォーターポンプから「ガー」とか「ゴー」といった異音がし始めたら、すでにウォーターポンプの軸受部分に致命的なガタが発生して水漏れが発生しているかもしれません。
この状態は、まともに車を走らせるべきではない段階ですので、エンジンを止めてレッカーサービスなどを依頼するなど、自走はしなようにしましょう。
車を止めてエンジンの下側部分を覗き込んだら、液体がボタボタと地面に落ちているかもしれません。
すでにオーバーヒートしている可能性もあるので、エンジンルームを開けてラジエーターキャップなどに触るのはやめましょう。
ウォーターポンプの異音への応急処置はできない?
ウォーターポンプは修理できない
ウォーターポンプは、ケースの部分と回転する部分が一体型になっていて、このひと塊でしか部品として存在していません。
つまり、ウォーターポンプの軸にあるベアリングのガタや、その隣にあるシールの劣化などで異音が発生しても、ウォーターポンプをまるごと交換するしか異音を消すことはできません。
しかも、ウォーターポンプはエンジンの前側付近にあってベルトや発電機、エアコンコンプレッサーなどに隣接しているので、直接触れることもできない場所にあることが多いです。
応急処置などをすることはまずできませんが、単なるウォーターポンプを駆動しているベルトの張りが緩い場合などは、張り調整をすることで異音は解消されます。
初期段階のシールの異音には添加剤で対応
ウォーターポンプの軸受けの部分にあるシールからの異音の場合、シールの摩擦を変えることで異音が消えるケースもあります。
実際にシールから異音を発生させていたウォーターポンプを外して、じかに手で回してみると、やたらと重かったり、ひっかかりを感じることがあります。
なかには手で回すたびに「キュイッ」とゴムが擦れるような音がすることもありますが、冷却水の濃度を濃くすると、シールの異音が一時的に消えることもあります。
また、ウォーターポンプの鳴き止めを目的とした添加剤もあり、これをラジエーターキャップから注入することでシールの異音が消えることもあります。
ただし、この処置は本来の修理ではなく、あくまでも「その場しのぎ」というか、応急処置にすぎません。
整備工場でウォーターポンプを交換してもらうしか異音を消すことはできませんが、そもそもウォーターポンプは消耗品だと考えておいてください。
おすすめの添加剤は?
ウォーターポンプの鳴き止め添加剤に関しては別の記事を書いていますが、意外とラインナップが少ないです。
また、おすすめの添加剤とはいえ、使用しても異音やシールの鳴きが止まらないこともあるので、「ダメ元」くらいに考えておいてください。
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まとめ
ウォーターポンプからの異音は他の補機類などの異音と同じく、はじめは小さな聞き取りにくい異音です。
ウォーターポンプからの異音の原因は
・軸部分のベアリングのガタ
・軸部分のシールの劣化
・ウォーターポンプベルトを駆動しているベルトの張り不足
これらが原因になって異音を発生させることが多いです。
またウォーターポンプのシール部分からの甲高い「キーン」とか「ピー」といった異音に関しては添加剤を注入することで初期段階なら異音を消すことができます。
だたしこれはあくまでも応急処置として考えておくほうが無難で、根本的な修理としては、ウォーターポンプを交換するしかありません。
ウォーターポンプの修理費は?
ウォーターポンプの交換費用は、車種やエンジンの型式などで違ってきます。
とくにタイミングベルトが付いているタイプのエンジンだと、ウォーターポンプはタイミングベルトを外す必要があるため、結果的には軽自動車やコンパクトカークラスでも5万円以上の出費になるでしょう。
ミドルクラスの国産車なら7万円前後、V型エンジンやスバルの水平対向エンジンならタイミングベルトの交換も兼ねるとディーラーなら10万円近い出費になるケースもあります。
タイミングベルトがないタイプのエンジンでも、軽自動車やコンパクトカークラスで3万円ほど、ミドルクラスなら2万円から4万円ほどの修理費がかかるかもしれません。(国産車の場合)
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