エアコンを入れたときだけ「ウィーン」というモーターのような異音がすることがあります。
異音としては珍しくはなく、整備士をやっていると必ず出くわすトラブルの一つです。
ですが、異音診断のやっかいなこととして、
『あたかもその部分から異音がしているようで、じつはそこではない』
という油断できないトラブルシュートもあります。
今回はエアコンの異音についての、ちょっと意外なお話です。
エアコンの異音と「ウィーン」という音の正体
コンプレッサー内部の異音が本命
エアコンが作動しているときに発生する異音として多いのが、エアコンガスを圧縮しているコンプレッサーからのものです。
カーエアコンとして冷房を効かせるときには「AC」のボタンを押すことでコンプレッサーが作動し始めます。
逆に言えば、この「AC」のボタンを押さなければコンプレッサーは止まったままです。
コンプレッサーが作動すると、正常な場合は、一度だけ「カチン」というマグネットクラッチが作動する音とともに電動ファンが周りだす「ブーン」という音がします。
ところが、コンプレッサーの内部になんらかの異常があると、「ウィーン」とか「カリカリ」「ジリジリ」といった異音がすることがあります。
また、フロンガスを圧縮することはコンプレッサーにとってはかなり負担になるので、内部の損傷が大きくなるほど、異音も大きな音になります。
異音の原因はさまざま
よくあるパターンとしてはエアコンのガスが様々な部位から少しづつ漏れていて、規定量よりもガスが少なくなった状態でエアコンを作動させると異音がすることがあります。
また、走行距離も多く、エアコンを酷使してきた車の場合、コンプレッサー内部にガタができて異音が出ることもよくあります。
やっかいなのは、上記の「ガス不足」と「コンプレッサーのガタ」が同時に起きている場合などは、料金を頂いてガス補充をしたら異音が大きくなるケースもあります。
この場合、エアコンガスの補充をする前にお客様に「もしかしたら不具合が出るかも」と断りをいれておかないと
「おたくでエアコンガス入れをしたらヘンな音がするようになった!」
というクレームに発展してしまうこともあります。
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エアコンを入れるとモーター音がするケース
異音の原因はコンプレッサーだけではない?
整備士もよくやる、異音の原因を特定する方法として「消去法」があります。
エアコンを入れているときにだけウィーンという異音がする場合、エアコンをオフにすると異音がしない。
ということは異音の原因はエアコンに関係する部分である。
こんな感じで、関係はないであろう部分は異音の原因の候補から外してしまうという方法で、この消去法というやり方はかなり有効なトラブルシュートの常套手段です。
ところが、今回のようにエアコンを入れたら異音がするという場合、必ずしもエアコンと直結している部分からの異音とは限りません。
たとえば、エアコンのコンプレッサーを駆動させているエアコンベルトの張りを調整している「テンショナー」や、
ベルトの取り回しを補助している「アイドラー」などのプーリーの付け根にあるベアリングから異音がすることもあります。
つまり、コンプレッサーが仕事をすると、そこにつながっている部分がベルトを介して負担がかかり、普段は小さな異音なのが、エアコンを作動させたことで大きな異音になるのです。
ただ、異音が大きくなるタイミングがエアコンのスイッチを入れた途端大きくなるので「コンプレッサーが原因だ」と誤診してしまうことがあるのです。
オルタネーターへの負担増で異音に
ウィーンという異音の原因は発電機、つまりオルタネーターからの場合も多いです。
エアコン(冷房)は車の電装品の中でも、もっとも電気を消費するので、クーラーを作動させ始めると、発電機への負担がいっきに増えます。
すると、普段は気にならないくらいのオルタネーター内部からの異音が、エアコン作動により大きくなります。
「ウィーン」はおもにベアリングからの異音
ここまでのお話をまとめると、エアコンを作動させているときだけのウィーンという、モーター音のような異音は、コンプレッサー本体からの異音もありますが、
おもになにかしらのベアリングから異音がしていることがかなり多いです。
車のいろんな回転部分にはベアリングが使われています。
ベアリングは、発電機(オルタネーター)の内部や、ベルトテンショナーと呼ばれる、ベルトを張るためのプーリーの中心部分などにあります。
つまり、回転している部分の付け根にはかならずベアリングが付いていて、ベアリングを構成している球状のボールが傷んでくると異音がするのです。
ベアリングからの異音は、そのベアリングのサイズや損傷のレベルによって異音の聞こえ方が違います。
小さなベアリングの異音
ベアリングが少し傷んできた初期の場合、ウィーンという音として聞こえることが多いです。
さらにベアリングが傷んでいくと、「ウィーン」ではなく、「ガラガラ」とか「ゴロゴロ」といった大きくて粗い音に変化していきます。
これは、ベアリングのサイズによっても違ってきて、小さなベアリングのほうが「ウィーン」というモーター音に近く、大きめのベアリングは「ゴー」という、低い音に聞こえます。
まとめ
エアコンの異音の原因は主に2つ
エアコンの冷房を作動させているときだけウィーンといったモーターのような音がする場合、主に2つの原因が考えられます
コンプレッサーそのものからの異音である場合は診断としては判断しやすいのですが、間接的に異音がしている場合は、いろんな可能性が出てきます。
とくに判断に迷うのはエンジンルームが狭い車種や、エアコンコンプレッサーと、他の補機類(オルタネーター、パワステポンプ、)が隣合わせに配置されている場合です。
他にも、コンプレッサーを回転させているベルトとつながっているテンショナープーリーやアイドルプーリーなどのベアリングからモーター音のような異音がすることもあります。
修理にかかる時間や費用はさまざま
コンプレッサー本体からの異音であれば、コンプレッサーを交換することになるので、10万円近い出費になります。
それ以外の補機類などのベアリングの異音となると、診断に時間がかかることもあり、交換する部品の値段も非常に幅があります。
ただ、高額修理になるからといってめんどくさがっていると、異音がどんどん大きくなっていったり、オルタネーターの故障である場合だと、走行不能になってしまう可能性もあります。
異音がするときはまず整備工場に相談することが望ましいです。
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