エアコンの風がぬるくなる | トヨタ車だけじゃないトラブルの定番

整備士の体験 エアコン

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毎年、五月のゴールデンウィークに入るころから増えるのが、「エアコンの効きが悪い」というお客様からの相談です。

整備工場の「あるある」な季節ネタとして、初夏のエアコンが冷えないというトラブルと、真夏のエアコンが原因のバッテリーあがり。

今回はトヨタのイプサム(ACM26W)のエアコン診断のお話ですが、実はまったく同じ原因で、ホンダ車、スズキ車にも発生するトラブルです。

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いきなりエアコンの風がぬるくなるトラブル

イプサム エアコンボタン点滅

「AC」のボタンが点滅しはじめた?!

まず、お客様からのご依頼は、

「エアコンがときどき効かなくなって、ぬるい風しか出ない」

「エアコンが効かないときはなぜかACのボタンが点滅している」

というものでした。

それを聞いた僕は、

(あれ?もしかしてエアコンのコンピューターでも壊れたか??)

と内心は思っていました。

車のエアコンにもコンピューターがついている

イプサム エアコンパネル

現在の車のエアコンのなかでもオートエアコンと言われるタイプのエアコンは、運転手が「AUTO」というボタンを押せば、自動でエアコンの制御をしてくれます。

ユーザーはただエアコンの温度調整を設定するだけで、それぞれの状況に応じて最適なエアコンの操作をしてくれます。

日射センサー、水温センサー、外気温センサー、エアコンガスのプレッシャーセンサー、などなど、さまざまなセンサーからの情報をもとにコンピューターが制御をしてくれています。

ところが、なんらかの不具合や劣化などで、重要なセンサーからの情報がコンピューターに入力されなくなると、車種によっては異常の発生をドライバーに知らせる表示をすることがあります。

今回のトヨタイプサム(ACM26W)の場合、エアコンのコンプレッサーがロック(がっちりと焼き付いた状態)した場合、エアコンの操作パネルにある「AC」のボタンの中にある黄緑色のランプが点滅するようになっています。

資料を用意して、診断をはじめました。

AUTOのボタンと内気循環を切り替えるボタンを同時に押しながら、イグニッションキーをオフからオンにします。

すると、自己診断機能からのエラーコードが表示されるようになっています。

案の定、コンプレッサーロックによるものかと思いましたがそうでもないみたいでした。

そうこうしているうちに、エンジンを再始動すると、突然エアコンが正常に冷え始めました。

クーラーガスは入っているのに冷えない場合

車のエアコンのトラブルでも、いきなりぬるい風になるというトラブルは、クーラーガスの量が原因ではありません。

クーラーガスは、エアコンのコンプレッサーから始まって、コンデンサー、エバポレーター、エキスパンションバルブ、そこからまたコンプレッサーへ。

簡単に説明するとこんな感じで車の内部をぐるぐると回っているだけなので、正常な状態ならクーラーのガスが減ることはありません。

つまり、エアコンが冷えることがある、ということは、クーラーガスはある程度は入っているということになります。

ぬるい風になったり、またもとのように冷えたりする場合は、ガスが増えたり減ったりすることはありえないので、消去法の考え方でいけば、ガスの量は関係ないということになります。

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原因はエアコン不調では定番なリレー

不具合を起こしたマグネットクラッチリレー
エアコンが突然効かなくなってぬるい風しかでないということは、ほとんどの場合はエアコンコンプレッサーが作動していません。

つまり、コンプレッサーの動きを制御している電装系のトラブルといえます。

この場合、あまりにも多いトラブルがあるので、

(さてはアイツかな?)

とエンジンルームのリレーボックスを探し、マグネットクラッチリレーを探して、ドライバーの柄の部分でコンコンと叩いてみます。

ただ、一度正常な状態になると、不具合が再現できないことも多く、この場合もエアコンのコンプレッサーは正常に作動したままです。

これもまた整備工場でよくあるパターンで、トラブルシュートをしていると調子が良くなってしまうケース。

こうなると、それまでの経緯や自分の経験などから推測していくしかありません。

あまりにも高価な部品を交換しなくてはいけないときは、そのまま暗礁に乗り上げてしまうこともありますが、今回の場合はエアコンのマグネットクラッチのリレーが非常に怪しいです。

しかもリレーを直接触ってみると異常なくらいに熱くなっています。

(このリレー、末期症状かな)

と判断したので、お客様に事情を説明し、マグネットクラッチリレーが怪しいことや、部品は在庫していること、部品の値段は2000円ほど。

これらをご説明したうえでこの部品を交換してみましょうということになりました。

とにかくこのリレーが原因でエアコンが効かなるなるトラブルが多いので見切り発車でしたが交換することに。

その後、お客様からの連絡はなく、問題なくエアコンも冷えているようなので、やはりこのリレーが悪さをしていたんだと思います。

「便りがないのが良い便り」

などと言いますが、エアコンが冷えないようなトラブルなら再発したらすぐに連絡が入るはずです。

2AZ型エンジン搭載車ならすべてありうるトラブル

トヨタイプサム リレーボックス

アルファード、ヴェルファイヤ、ガイア、ナディアなど

今回はたまたまイプサムの修理をすることになったエアコンの診断でしたが、同じエンジンを搭載するトヨタ車なら同様に起こりうるトラブルです。

トヨタだけに限りませんが、同じエンジンを使う場合、エアコンなどの補器類部品を共用することもよくあります。

そのため、マグネットクラッチリレーも同じ部品を使っていることが多いです。

排気量は違っても、カローラアクシオやカローラフィールダーにも同じリレーを使っていましたので、これまた同じトラブルになる可能性は高いです。

スズキ車にもありうるエアコントラブル

実はこのデンソー製のリレー、スズキの軽自動車にも使用されています。

どちらかといえば、「スズキ車のエアコン効かないあるある」のトップ3に入るくらいの割合でリレーの故障があります。

エンジンをかけたままの状態でエアコンを作動させ、クーラーが効かないとなるとまずするのがエンジンルームのリレーボックスを開けることです。

マグネットクラッチの制御をしているリレーを指でコンコンと弾くように振動を与えると、いきなり「カチン!」とマグネットクラッチが作動し始めしっかりと冷えはじめます。

あまりにも多いトラブルなので、純正品ではありませんが、汎用のリレーを在庫しているくらいです。

予防整備として交換してもいいのかも?

最初は「あれ?たまにエアコンの効きが悪い??」と感じるくらいなのですが、このマグネットクラッチリレーの調子が悪くなると、どんどん不具合の頻度が高くなります。

エアコンがきちんと冷えないと、たとえば、炎天下に車を停めているときに、車内にお年寄りや小さな子供さんがいるときなどは熱中症になってしまうこともあります。

基本的に車の中に自力で脱出できないような人たちを残して離れるようなことはしてはいけません。

エンジンが突然止まってしまうこともありますし、今回のトラブルのようにエアコンがいきなり効かなくなることもあるからです。

ですが、トラブルの原因として、予測できるような場合なら、不具合が発生する前にあらかじめリレーを交換してしまうのもいいかもしれません。

 

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コメント

  1. ちこ より:

    はじめての書き込み失礼します。サボカジさん、はじめまして。
    スバルのフォレスタ2015年に乗っています。エアコンの効きが5−10分ほどで悪くなり、一度消すと改善しますが、再度起こります。この時期にこの状況は正直つらく、知恵を貸していただきたく存じます。他の方のブログ等ではコンプレッサーの異常が疑わしい原因なのかと推測しています。
    現在、日本国外で生活しており、整備工場で相談したのですが異常は見受けられないと一蹴されてしまいました。ディーラーに持っていくと、法外な値段の請求がある気もして、なかなか踏み切れません。原因が多少推測可能であれば、普段通っているその整備工場に無理を言ってお願いしてみようかなと思っています。
    ご助言いただけましたら幸いです

    • サボカジ サボカジ より:

      ちこ様

      はじめまして。

      ご質問にお答えさせていただきますね。

      まずエアコンを入れて5分から10分で冷房が効かなくなると言う事ですが、それまでの間はしっかりとエアコンは冷えているのでしょうか?

      その場合ですと、エアコンのコンデンサーと言われる部分が冷却されていない可能性があります。

      例えばエアコンを入れたときにコンデンサーファンと呼ばれる部分が回転しないと、コンデンサーが冷やされず、圧縮されたフロンガスが高温かつ高圧になります。

      高圧ホース内が異常な圧力になると保護機構が作動し、エアコンのコンプレッサーの電源をカットしてしまいます。

      問題は、コンデンサーがなぜ冷却されないかと言うことになりますが、よくあるケースとして、コンデンサーファンがモーターが壊れることで作動しないことがあります。

      まずはエアコン入れたときに、コンデンサーファンが作動しているかどうかを確認してください。

      さらに電動ファンが回転している場合は、コンデンサー周辺がほこりやゴミなどで、目詰まりしていないかを確認してください。

      ですので、

      >普段通っているその整備工場に
      >無理を言ってお願いしてみようかなと思っています。


      とのことですが、まずはエアコンが作動中の高圧側と低圧側の測定をゲージマニホールドを使って測定してもらってください。

      もしも高圧側が高すぎる場合は、ガスの入れすぎやコンデンサーファンの作動不良が考えられます。

      他にもリレーやマグネットクラッチなど、いろんな原因はありそうですが、まずはこれらの内容を参考にしてみてください。

      またなにかご不明なことがあればご質問ください。

      サボカジ

  2. ちこ より:

    サボカジさん

    返信頂きありがとうございます。
    5−10分は確かに効いています。変な音や臭いもありません。

    提案していただいた内容を、整備工場の方に相談してみます。
    多少お金がかかることはしょうがないとしても、現状では不快指数が高くなかなか長距離の運転に支障をきたしています。

    また、経時報告させていただければと思います。

    • サボカジ サボカジ より:

      ちこ様

      >また、
      >経時報告させて
      >いただければと思います。

      そうですね。他の訪問者様にも共有したいと考えていますので、結果がわかれば教えてください。

      よろしくおねがいします。 サボカジ

      • ちこ より:

        サボカジさん

        本日、相談しに行って参りました。
        やや涼しい状況でしたし、整備場まではスピードを出すような道がないため、エアコンが通常運転しており、やや不安になりましたが、事前の予約の際に「異常が出ている状態で訪問してもらった方が原因がわかりやすい」との打ち合わせをしていたため、30分ほどウロウロしての点検となりました。
        やはり、最終的にはほぼ外気と変わらない風がACを通して出てくるような状況でした。

        点検を開始してもらうと、コンプレッサーが回っていませんでした。
        その状態で、電圧?パワー?がコンプレッサーまで到達しているかどうかのチェックしてもらうと、それは来ているとの判断でした。
        その後、おもむろにハンマーを取り出して、軽くコンプレッサーを叩いてみると回転は再開し冷却も改善されました。
        その後は、特に再度止まることなく、コンプレッサーの異常でしょうという結論になっています。

        コンプレッサーが高音になると磁力が低下して自動的にオフとなってしまうのでしょうか?

        2015年の型で具合が悪くなって来る頃ではあるかと思いますが、「つい最近、別件で$800ほど部品代でかかった」と言われ、交換しなければいけないかなと思いつつ、財布には優しくない値段だなと感じています。

        現状では長時間移動がつらいため、高額ではありますが交換しようと考えています。

        なにか良い工夫や案が思い浮かびましたら、教えていただければ幸いです。

        また、ご相談にのっていただきまして誠にありがとうございました!
        感謝申し上げます。

        • サボカジ サボカジ より:

          ちこ様

          >ハンマーを取り出して、
          >軽くコンプレッサーを叩いてみると
          >回転は再開し冷却も改善されました。
          >その後は、特に再度止まることなく、
          >コンプレッサーの異常でしょうという結論になっています。


          この場合ですと、コンプレッサーが回転しない原因はマグネットクラッチの中のコイルが原因だとおもいます。

          >コンプレッサーが高音になると
          >磁力が低下して自動的に
          >オフとなってしまうのでしょうか?


          フォレスターのコンプレッサーは、エアコンのスイッチをオフにしているときはマグネットクラッチと切り離されているので回転しない構造になっています。

          マグネットクラッチの奥にあるコイルに電源が入ることで電磁力が発生し、クラッチとコンプレッサーが繋がり、コンプレッサーが回転するようになっています。

          ところが、コイルが高温になると内部の抵抗が大きくなり電磁力が発生しなくなることがあり、ハンマーで衝撃を与えたり少し冷やしてやると一時的に作動するようになります。

          フォレスターでは経験したことはありませんが、ダイハツのハイゼットなどでコイルだけを交換したことが何度かありました。

          >2015年の型で具合が悪くなって来る頃ではあるかと思いますが、
          >「つい最近、別件で$800ほど部品代でかかった」と言われ、
          >交換しなければいけないかなと思いつつ、
          >財布には優しくない値段だなと感じています。


          最小限のコストで修理するならコイルだけを交換するやりかたもありますが、マグネットクラッチとセットでしか部品が流通していないこともあります。

          また、マグネットクラッチ内部のベアリングも寿命が近いこともあるので、マグネットクラッチとコイルを交換するのがベターではないでしょうか。

          つまりコンプレッサー本体は交換する必要はなく、コンプレッサーの前側についているマグネットクラッチだけ交換すればいいということになります。

          ただし、整備工場によっては、頑なにコンプレッサーとマグネットクラッチをセットで交換することをすすめてくるところもあります。

          なんとかコストを抑えたいことを伝えて、交渉してみるといいかもしれませんね。

          マグネットクラッチに関する記事も書いていますので、よろしければ参考にしてください。

          【関連記事】カーエアコンのマグネットクラッチ交換費用は?交換できない車種もあり

          • ちこ より:

            サボカジさん

            御提案ありがとうございます。とても有意義に感じています。

            コイルの劣化については、整備士の方が言及されていました。
            2015年の型ですし、10万kmほど走っている車なので、他にも異常が出てきてもおかしくない状況をふまえると、なんとかコストを抑えて乗り切りたいなと考えています。コイルの交換、もしくはマグネットクランチとコイルの交換を一度提案してみようかなと思いました。

            ありがとうございます!追って御報告させていただきます。

          • サボカジ サボカジ より:

            ちこ様

            >コイルの交換、
            >もしくはマグネットクランチと
            >コイルの交換を一度提案
            >してみようかなと思いました。


            安く修理ができるといいですね。

            ご報告お待ちしてますね!

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