車中泊が流行っていたこともあり、エブリィワゴンの知名度も人気も上がってきました。
中古車で購入しようとすると、10万キロ超えの車体でもなかなかのお値段だったりします。
そこで疑問に感じるのは、エブリィワゴンはどれくらい走れるのもなのか?ということ。
なるべく安く状態のいい中古車を購入したいと考えていても、エブリィワゴンの中古車相場は高め安定です。
失敗しない中古車選びのための一助になれば幸いです。
エブリィワゴンの10万キロ超えはどんな状態?
『軽自動車の寿命は10年10万キロくらい』などと言われていたこともありますが、10万キロを超えた軽自動車が中古車として販売されています。
別の記事で『車の寿命は車種によって違う』とお話しましたが、エブリィワゴンの寿命は軽自動車のなかでは「悪くない」といえます。
「そもそも車の寿命ってなに?」
と思った方もいるかもしれませんが、車の市場価値を超えてしまうような修理費が必要になったり、複数の故障リスクがあり実用的でなくなってしまった状態を指します。
エンジンが焼き付いたりオートマチックが変速不良を起こしたりした場合は乗り換えを考えるユーザーさんが多く「この車はもう寿命だ」と言われます。
もちろん、交通事故で大破してしまったり、完全に水没してしまった場合などは言うまでもありません。
平成24年に新車で購入したエブリィワゴン(DA64W)ですが、この記事を書いている令和6年5月現在での状態を報告します。
エンジンオイルの管理が大事
まずは僕自身のエブリィワゴンの状態をお話していきます。
自動車整備士としての経験があるので、エンジンオイルの管理はかなり気を使っています。
たかが数千円のオイル交換をやらなかったことでターボとエンジンがダメになってしまうことは、本当にもったいないですしコスパが悪いです。
そのことを意識しつつ新車で購入して12年以上、オイル管理はしっかりと行ってきたおかげで大きなトラブルはありませんでした。
オイル交換は3,000キロ毎で交換
整備工場に訪れたお客様から
「もっともオイル交換に気を使わないといけない車種は?」
と聞かれたら、整備士としての経験上で『軽自動車のターボモデル』と答えます。
さらに厳密にいうなら『車両重量が重い軽自動車のターボ車』と付け加えます。
本格的なオフロード車のジムニーと同様、エブリィの乗用モデルはすべてターボ付きで、エンジンオイルの管理が大事です。
たまに「5,000キロで交換してるから大丈夫」とおっしゃるお客様もいますが、エブリィのターボモデルに関しては適切な交換サイクルとは思えません。
整備士としてたくさんのエブリィの整備をしてきましたし、自分自身のエブリィワゴンのオイル交換も自分ですべてやってきました。
5,000キロを超えた状態のエブリィワゴンのエンジンオイルはかなり汚れていて、茶色というよりも黒に近い状態です。
できれば3,000キロから4,000キロの間での交換が望ましく、エンジンオイルの管理がいいとオイル漏れもおきにくくなります。
オイル漏れは「にじみ」が少々発生
約12年間で14万キロを走行しましたが、12万キロを超えたあたりでシリンダーヘッドの周辺に少しだけホコリが付着するようになりました。
エンジンオイルは滲んでくるとこのような状態になりますが、今のところこの状態から悪化はしていません。
エンジンの調子はいい
エンジンの吹け上がりは問題なく、アイドリング時の音もかなり静かです。
発進時や低速時での「もっさり感」は新車のころから同じなので乗用タイプの軽自動車から乗り換えた人は「はじめの加速はいまいち」と感じるはずです。
タービンが変かも
中高速での加速は以前の加速力がなく、おそらくタービンになんらかの問題があるようです。
ただ、エブリィワゴンのタービン交換はけっこうめんどくさいので自分のエブリィの整備は大きな支障がでなければやりたくないです。
おそらく過給圧が上がっていないようで、本来ならタービンを交換するべきなのでしょう。
過給圧(ブースト)が上がらない原因として考えられるのは、オイル管理はかなりいいのでブローではないようです。
おそらく過給圧を逃がす弁が少し開いたままで十分な過給圧が得られていないのでしょう。
エアバイパスバルブ(ウエストゲート)の動きが悪くなって加速不良になっていたジムニーがありましたし、そこらへんがあやしそうです。
オートマチックの変速ショックもとくになし
急なアクセル操作をひかえてきたことや、定期的なATF(オートマチックトランスミッションフルード)の交換をしてきたことで変速のショックなどはありません。
ただ、エンジンが冷えているときの一回目のシフトアップで「スコン」というやや大きめのショックがあります。
燃費はリッター12kmちょっと
ターボの過給圧が上がらないこともあって中高速での加速力は以前よりよくないものの、燃費は新車で乗り始めたころとあまり変化はありません。
ただしエアコンを入れると以前よりも燃費が悪化するようになり、夏場は燃費が11km/Lくらいまで落ちることがあります。
下り坂だけ冷房のスイッチを入れる「エンジンブレーキ」ならぬ「クーラーブレーキ」を使ったりしてます。
エアコンの効きはかなりいい
冷房に関してはよく冷えるほうで、釣り道具を盗難から避ける意味で後席と間仕切りをしていることもあってよく冷えます。
エアコンのメンテナンスはとくやっていませんし、クーラーがスクリーニングもしていません。
ただしエンジンが高回転のときにエアコンのスイッチを入れることはさけています。
停止状態のエアコンコンプレッサーがいきなり高回転のエンジンとつながるというのはよくないと考えているからです。
コンプレッサーにも慣らし運転がいるはずなので、できるだけアイドリングでスイッチを入れます。
冬場の暖房の効きが遅くなった
エブリィ(DA64WやDA64V)でよくあるトラブルが、サーモスタットの作動不良による暖房の効きが悪くなる症状。
僕のエブリィワゴンも10年を過ぎたあたりから冬場の暖房の効きが悪くなりました。
ひどいときは青い水温計のマークがいったん消えてからまた点灯することもありました。
走行風でラジエーターが冷やされて冷却水がオーバークール状態になり、冷却水の熱で暖房を効かせていることもあり、いくら走行しても暖房が十分効かなくなります。
【関連記事】エブリィの暖房の効きが悪い|定番のサーモスタット交換費用や交換時期など
エブリィワゴンは何年、何キロまで乗れる?
エンジンの圧縮がなくなった事例
エブリィワゴンではなく同年式のエブリィバンでおきた事例を紹介します。
ターボモデルでワゴンと同じく4速ATでしたが、電気工事士さんが仕事で使っていました。
2列目シートをフラットにして常に重いものを満載にした状態で高速道路もよく走行するとのことでした。
17万キロで2番シリンダーの圧縮がなくなる
17万キロほど走行したときにエンジンがガクガクと振動して吹け上がらないということで診断しました。
コンプレッションゲージで圧縮を測定したところ2番シリンダーの圧縮がほとんどなく、おそらくバルブが破損していたようです。
この状態では車検の排ガステストも合格しませんし、修理よりも乗り換えを選択されました。
「エンジン載せ替えをしても次はオートマチックがやられるかも」
たしかこんなアドバイスをしたと記憶してますが、17万キロという距離は軽自動車にとっては複数の故障リスクを抱えた状態です。
仕事用の車としてはランニングコストが高く、故障で仕事に支障が出る回数も増えてきます。
トータルで判断するならこの場合は乗り換えが賢明といえます。
高負荷な高速走行がエンジンの寿命を縮めてしまう
この電気工事士さんの事例では、荷物を満載にした状態で高速道路を、本人曰く「アクセルベタ踏み」だったようです。
エンジンが縦置きのエブリィの場合、走行風がエンジン周辺に取り込みにくいうえに座席の下にエンジンがあるため、熱がこもりやすくなります。
連続走行をすることでエンジン全体の熱ダレが発生し、3気筒エンジンの真ん中、2番シリンダーの排熱性がとくに悪くなりピストンの棚落ちやバルブの破損になりやすいです。
オートマチックの不良が怖い
ATFを交換しないままで10万キロ走行をしてしまうと変速ショックや変速時の滑り感を感じることがあります。
とくにターボのパワーにものを言わせてガンガン加速させるような運転をしているとオートマチックにかなりの負担になります。
15万キロ未満でATの滑りが発生したケースもある
また登り坂が多い地域にお住まいのお客様のエブリィワゴンもオートマチックの寿命は短かったです。(たぶん14万キロくらいだった)
結果的にはオートマチックの不良は高額な修理となり、エンジンが元気な状態でも乗り換えになることが多いです。
とはいえ、買い取ったAT不良のエブリィワゴンなら中古のミッションと載せ替えをして中古車として販売されることも少なくないです。
オートマチックを長持ちさせるには?
オートマチック(以下AT)の寿命を伸ばすにはメンテナンスと日頃の扱い方が大きく関係してきます。
・ミッション内の暖気を意識する
・連続して負荷をかけない
・定期的なフルード交換をする
・急激なキックダウンをさける
とくに大事だと考えているのがこんな感じ。
とくに定期的なATフルードの交換は大事で、個人的には5万キロごとの交換が望ましいと思ってます。
ストップ・アンド・ゴーが多い普段使いが多い場合はATフルードの汚れも早まるので「車検のときにまとめて整備する」はあまりよくありません。
ターボの寿命が乗り換えのタイミングになる?
ターボが壊れると10万円~15万円の修理費用が発生しますが、これに車検の時期が重なると「もう乗り換えしよっか」となるケースもあります。
8万キロでターボが壊れた事例
エンジンオイルを車検のときにしかやらない方がいました。
年間走行が8000kmほどの走行ペースで、2年で16000km、8万キロほぼでタービンは壊れマフラーから白煙を出す状態になっていました。
オイル管理がターボの寿命を左右する
エブリィワゴンのタービンはお世辞にも丈夫とはいえないもので、なおかつ車両重量が重いのでつねに高い負荷がかかっています。
エンジンオイルでタービンの軸の部分を潤滑していますが、超高回転な部分だけにエンジンオイルの役割は大きいです。
劣化してしまったエンジンオイルではタービンが高温になった状態では十分な粘度を保つことができず、タービンブローに直結します。
【関連記事】スズキ・エブリィ|上り坂で白煙が出る車の下周りから焦げ臭いニオイがする
【関連記事】DA64系エブリィのターボから異音|タービンの交換費用や交換方法
まとめ|エブリィワゴンの寿命はどれくらい?
20万キロ走れるケース
エンジンオイルの管理がよく高負荷な運転もしない状態なら、20万キロくらいは走れるでしょう。
ただし、タービンの交換は一度はあるかもしれませんし、タペットカバーパッキンの交換などオイル漏れ修理はすることになります。
15万キロで乗り換えるケース
エンジンオイルの管理はそこそこよくて、5,000キロ未満で交換をしていて仕事でバリバリ使っているし、高速道路も走る。
こんなケースなら15万キロほどでオートマチック不良やエンジンの圧縮が抜ける可能性があります。
仕事道具としてエブリィワゴンを使っているなら、そろそろ引退させるかセカンドカーのような乗り方に切り替えてもいいでしょう。
車検が近くタイヤ、バッテリーなどの消耗品も交換が必要ならリセールの高いエブリィワゴンの場合は売却してしまうのがいいかもしれません。
10万キロ未満でもガタがくる残念なケース
エンジンオイルの管理は5,000キロごと、たまに交換時期を忘れてしまっているし、いきなり急加速させるような荒っぽい運転もする。
こんな場合は10万キロほどでタービンはダメになっているし、エンジンオイルも減りやすくなる「オイル消費」が始まってしまっているでしょう。
エンジンオイルが減りやすいことでタービンへの負担も大きく、タービン交換をしてもすぐに新しいタービンが壊れてしまう可能性が高いです。
最後に
エブリィワゴンやエブリィバンに乗っていて、「そろそろ寿命かな・・・」と考えているなら廃車や下取りよりも、車の買取査定に出してみることをおすすめします。
エブリィワゴンやエブリィバンは海外でも人気が高く、日本ではすでに製造していない型落ちのエブリィが海外では未だに新車で販売されています。
オートマチックが滑ってしまっていても、エンジンの状態が悪くても、海外では現地で修理をして現役で使われることが多い車種です。
車検制度が日本よりも厳しくなく、自国で自動車を生産していないアジア圏やアフリカでは日本から輸入する車は重宝されています。
2年おきに厳しい車検をパスしてきた日本の自動車は海外では「まだまだ乗れる」と考えられているので実用性の高い車種ほど高値で取引されています。
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「その値段なら売るのはやめます」とキャンセルもできるので、状態が悪いエブリィでも、海外への輸出が多いモデルなので、まずは査定額を出してもらうことが大事です。
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