毎日乗っているからこそ、愛車のエンジンが「前よりもうるさくなった?」と感じることがあるかもしれません。
自動車整備士として、これまでいろんな車の整備をしてきましたが、なかには、
「これが同じエンジンなの?」
と驚くらい同型式のエンジンでも音質や音量が違うことがあります。
その主な原因とは、
・エンジンオイル交換の頻度の差
・走行距離の違い
・運転条件の違い
などが挙げられます。
エンジンの健康状態は、その車の価値にも直結するような重要なことで、燃費にも影響してきます。
今回は、車のエンジンがうるさくなった場合の原因や対処法についてお話していきます。
なによりも確認して欲しいのは、『エンジンオイル交換のサイクルは適切にしてますか?』ということですが。
車のエンジンがうるさくなったら確認してほしいこと
エンジンオイルの交換距離
エンジンの健康状態を維持するうえで最も重要なのがエンジンオイルの交換サイクルです。
これはもう「言わずもがな」ですが、適切なタイミングでオイル交換をし続けてきたエンジンと、そうでないエンジンでは、同じエンジンとは思えないほどの違いがでます。
ただし、エンジンオイルはエンジンをパワーアップさせたりするものではなく、良いコンディションを維持するためのものです。
言い換えれば、エンジンの消耗を少しでも遅らせるための作業で、「高いオイルを入れときゃいいんでしょ?」ということではありません。
かりに、高価な添加剤などが入ったエンジンオイルを使用したとしても、エンジンオイルの交換サイクルが適切でなければ意味がありません。
整備士としては、平均的なエンジンオイルでもいいので、適切な時期に交換していくことがなによりも大事だと思っています。
エンジンオイルを交換しないとエンジン音がうるさくなる理由
「メカニカルノイズ」という言葉がありますが、複数のパーツが組み合わさって作動する時、接触している部分から打音や摩擦音が発生します。
エンジンからは、これらの音が重なり合いながらメカニカルノイズとして発生しています。
エンジンオイルは、エンジン内部の金属部分の潤滑を担っているので、エンジンオイルの粘度が変わっただけでもメカニカルノイズが変化することがあります。
古くなったエンジンオイルは、本来の粘度を保てなくなり、エンジン内部の温度が上昇すると、劣化したオイルでは打音や摩擦音などが大きくなります。
軽自動車のエンジンでは大きな違いが出ることも
軽自動車の場合、エンジンの回転を上げて馬力を出すため、エンジンオイルの管理の違いがはっきりとわかります。
たとえば、同じ10万キロを走行したエンジンであっても、つねに4000rpmで回転してきた660ccのエンジンと、2500rpmで回転してきた3000ccのエンジンでは内部の摩耗も違ってきます。
もともと短命な軽自動車のエンジンが、エンジンオイルの交換サイクルが違えば、そのコンディションに差ができるのは想像に難くないです。
本来は「カチャカチャ」くらいのタペット音が、
オイル管理がよくないと
「ガチャガチャ」や「ガラガラ」
になってしまうこともあります。
走行距離とエンジン音の違い
エンジンは消耗し続けている
エンジン内部から発生しているメカニカルノイズは、「クリアランス」と呼ばれる、組み込まれたパーツとの適切な隙間に調整されています。
たとえばクランクシャフトやカムシャフトのメタル部分、カムとバルブなどがそれに当たります。
これらのクリアランスはエンジンオイルにより潤滑され、金属部分が直接接触してしまわないように摩耗を遅らせています。
エンジンオイルの管理がしっかりとできていても、車として使用され続けることで、エンジンがこなしてきた仕事量に比例してエンジンは消耗していきます。
とくに大きな部品どおしのクリアランスが広くなってしまうと、メカニカルノイズも大きくなりエンジン自体の音も大きく感じるようになります。
ちなみにですが、
ディーゼルエンジンは圧縮比が高く、そのぶん頑丈に作られています。
そのためガソリンエンジンよりもくたびれにくいです。
運転条件の違いでも大きく変わる
トータルでどれだけの負荷をかけたのか
エンジン本体からの音がうるさくなるということは、それだけエンジンそのものが消耗していることになります。
たとえば、まったく同じ車種でも人や荷物をつねに乗せた状態で高速道路を走っているケースと、運転手一人だけで一般道路を走るだけではエンジンにかかる負担は違ってきます。
結果的に、同じくらいの走行距離でもエンジン内部の消耗は大きく違ってくることになり、エンジン音の大きさも質も走行距離が増えるごとに差が出てきます。
タイミングチェーンの音がわりとうるさい
今では主流になってきていますが、エンジン内部のカムシャフトとクランクシャフトを連動させるためにタイミングチェーンが使われています。
以前はタイミングベルトが採用されていて、ベルトのほうがチェーン駆動よりもかなり静かでしたが、技術革新もあってチェーンでも静かになっています。
ただ、タイミングチェーンはエンジンオイルで潤滑しているので、エンジンオイル管理が悪いとチェーンの音が多くなり、ひどい場合は「カシャカシャ」とチェーンが暴れるような音もします。
エンジンに負荷をかけるような運転をしている場合、タイミングチェーンの摩耗もはやくなり、チェーンそのものが伸びてしまうこともあります。
じつはエンジン以外からの異音かも
ベルトからの異音
「最近、エンジンがうるさくなったみたいなんだけど・・・。」
こんなかんじのご相談をいただいて、エンジンルームで実際に音を聞いてみると、発電機やエアコンのベルトから「キュルキュル」とか「シュルシュル」といった音がしていることがよくあります。
たしかにエンジンの回転と同じ周期で異音がしているのでエンジン本体からの異音と感じるかもしれませんが、補機類ベルトからの異音というケースもかなり多いです。
これは整備士と一般ユーザーとの認識の違いとも言えますが、発電機やエアコンのコンプレッサー、油圧のパワステポンプはエンジン本体ではありません。
エンジン周辺のパーツから異音
エンジンの振動でエアクリーナーのダクトが揺れて「カタカタ」「カンカン」といった音がすることがあります。
とくに樹脂製のパーツは軽いので、少し取付状態が変わるだけでもアイドリング中や発進時の振動の変化で音がすることがあります。
ミッションやパワーステアリングの異音
エンジンに近い場所にあるミッションやパワステのポンプから異音がしていることもあります。
軽自動車やコンパクトカーなどの前輪駆動車の場合、エンジンは車体の右側にあることが多く、よくよく音の場所を聞いていると車体の左側から聞こえることもあります。
その場合はエンジンと隣合わせになっているミッション(変速機)などからの音が原因でエンジンがうるさくなったと感じるかもしれません。
とくにCVT車の場合は、走行距離が8万キロを超えたあたりから、モーターのようなうなり音を発することもあります。
まとめ
今回は、エンジンの音がうるさくなったと感じたユーザーさんに向けて、
「エンジンの音と言ってもいろんな音があるよ」
「エンジンの音が大きくなる理由もいろいろあるよ」
ということを知ってもらった上で、車のメンテナンスとしては基本的な、エンジンオイル交換の重要性や、『エンジンは消耗し続けている』ということをお伝えしました。
僕の経験では、ユーザーさんからエンジンがうるさくなったという相談を受けた場合、実際に点検をしていると、エンジン本体からの音ではないケースがかなり多かったです。
とはいえ、気にせずにそのまま走りましょうという意味ではなく、なにかのトラブルのシグナルということもよくあります。
エンジンの音に対して「なにかおかしい・・?」と、違和感や変化を感じたら、整備工場に相談したり法定点検を受けてみるのもいいでしょう。
コメント